図書館で予約待ちをしていた「町並み保存運動の理論と帰結」
やっと順番がまわってきた。
1984年から2016年まで実に33年間にわたる詳細な調査に基づき、小樽運河保存問題を社会学的に分析する本書。
運河保存運動がどのような変遷を遂げてきたのかを事実に忠実な分析により知ることができる。
特に興味深かったことなど。(自分用メモ)
・北大三人組によってつくられたというキーワード「環境の教育力」。
・小樽三人組、例三と言われた佐々木、小川原、山口各氏の保存運動に関わっていく経緯ライフ・ヒストリー。
・野呂定夫の仮名で登場する市職員0氏のライフ・ヒストリー。
・夢街、ポートフェスティバル、リコール準備会、百人委員会、五者会談。
・海軍少尉の経験から指揮官として毅然とした態度を貫いた元市長の志村氏のインタビュー。
・小樽市文化財審議会会長を歴任し、数奇な運命を辿る運河を守る会初代会長越崎氏。
・自腹を切って全国の町並み保存運動の先進地を行脚し、単身文化庁にかけ合う運河を守る会初代事務局長藤森氏。運動から脱離し、最終的に峯山氏を絶対に許せない人と言うに至るまでの人間ドラマ。
当事者にはそれぞれの想いや言い分があるだろう。
しかしいずれにせよ、一部であろうと現に運河が残り小樽が観光都市として今あるのは、保存運動に関わってきた多くの先達が注いだ情熱の賜物であることに間違いはない。
読み応え十分。
小樽市民にとって必読書と言ってよいかもしれない。
自分の後にも5名の予約待ちがあるため読了後すぐに返却。