大きな掛け軸は見ごたえはするものの、古い作品は扱いづらいこともありそれなりに痛んでいることが多く、その大きさゆえに修復には費用がかかるものです。
気に入っている作品でも思い切って修復しないと飾ってもつまらなくなり、ただの粗大ごみになりかねません。当方では好きな作品や貴重な作品は表具師に二月に一度ほど、掛け軸の作品約10作品ずつほど依頼して、染み抜きや改装、細々なメンテをしていただいています。
今回はその中で大きな作品が3作品ほどメンテしましたので紹介します。
最初の作品は下記の作品ですが、倉田松濤の晩年の代表作と言っていい作品でしょう。雨漏りの跡と思われるシミがあったので、染み抜きして改装しています。改装費用は箱のタトウなども含めて55,000円なり・・。
児戯之図 倉田松濤筆
紙本水墨淡彩軸装 軸先木製 合箱+紙タトウ
全体サイズ:横1110*縦2305 画サイズ:横933*縦1730
改装後寸法 全体サイズ:横1115*縦2300 画:横930*縦1722
倉田松濤の代表作と言えるほどの大作で、おそらく亡くなる直前くらいの晩年の貴重な作品だろうと推定しています。昭和2年頃の作品でもこれよりも大きな作品があり、表具材もほぼ同じであり、賛には昭和2年と明記されています。
次は下記の作品です。西郷南洲の書と思われる書ですが、だいぶ痛んでいましたが、真贋不明ですので既存の当時のままの表具を生かして最低限の補修にとどめています。印章などの資料が手元にない作品でしたが、その後の調査で印章は真印と一致するようです。
補修は裏面の補強や剥離の直しなどで5,000円なり・・。
三行書 「海の烈風」 西郷南洲筆 明治3年頃 その5
紙本水墨軸装 軸先木製 誂箱
全体サイズ:縦2253*横1088 画サイズ:縦1755*横927
最後はお馴染みの釧雲泉の作品です。
寛政庚申浅絳雪景山水図 釧雲泉筆 寛政12年(1800年)
水墨淡彩絹本軸装 軸先木製 杉古箱
全体サイズ:縦1330*横820 画サイズ:縦560*横680
掛軸のメンテについては迷う点が多々あります。真贋、対費用効果、人気の低さ、修復には大義名分いるのですが・・・。
残り少ない人生、「えいや!」という感もあります。
改修してみて良かったと思う作品と稀に「ん~??」という作品があるのが正直なところです。
下記の写真は改装前・・。
本日改装の紹介をした3点のような大きな掛け軸を飾れるような床の間は今ではかなり少なくなりましたが、下記の入手した作品はとうとう当方の展示室の床の間でも飾れないほどの大きさです。郷里の男の隠れ家しか飾れないかな・・??
天外一聲 倉田松濤筆 昭和2年
紙本水墨淡彩軸装 軸先木製 合箱
全体サイズ:横1895*縦1570 画サイズ:横1735*縦950
最初の改装の見積は25万円なり。当然、この値段では断念せざる得ませんでしたが、その旨を伝えると、表具師が工夫すればすでにある材料で9万円弱でできるという回答を得て、現在改装中です。
投稿前に改装が完了しました。
我は消えゆく身・・・、作品は改装されて遺るもの・・。
いろいろと検討してくれる表具師さんはありがたいものです。
横幅が2メートルほどの大きな作品、飾るところ、収納する場所に困るほどの大きさですが、これくらいの掛け軸を扱えるように展示の準備は当方はしてあります。
ただ体力的には一人で扱うサイズとしてはこれが限界ですね。扱いに不慣れだとまた表具を傷めることになります。