
家内が稽古先で使う来年の初釜のお道具探し・・。その一つが茶入れを載せる盆。

「釣花入ニ梅図青薄漆塗角盆」かな?

家内がインターネットオークションで落札した作品ですが、氏素性は不明です。漆の塗りがちょっと雑なのは気になるもののデザインや他の出来は良い………。

本日紹介する作品は杉本健吉が良く描いている「華精」と柘榴を組み合わせた作品です。この手の作品の多くが版画などの工芸作品ですが、本作品は肉筆による貴重な作品となっています。
入手してから額とマットを新たに誂えています。

柘榴と華精(仮題) 杉本健吉筆
紙本水墨着色額装 右下印
P4号 額サイズ:縦440*横363 画サイズ:縦325*横210

柘榴は新王国時代にエジプトに伝わり、ギリシア時代にはヨーロッパに広く伝わったとされています。東方への伝来は、前漢の武帝の命を受けた張騫が西域から帰国した際に、パルティアからザクロ(安石榴あるいは塗林)を持ち帰ったとする記述が『証類本草』(1091年-1093年)以降の書物に見られるため、紀元前2世紀の伝来であるとの説がありますが、今日では3世紀頃の伝来であると考えられているようです。
なお日本には923年(延長元年)に中国から渡来した(9世紀の伝来説、朝鮮半島経由の伝来説もある)とされています。

本作品の出品時の仮題は「柘榴と天平美人」でありましたが、天平は、日本の元号の一つであり、神亀の後、天平感宝の前となります。具体的には729年から749年までの期間を指すます。この時代の天皇は聖武天皇となり、奈良時代の最盛期にあたるため、東大寺、唐招提寺などに残るその時代の文化を天平文化と呼ぶことが多いとされます。なおこの時代には柘榴はまだ伝わっていないため、この仮題は天平時代の美人というより、天平風の美人と解することとなります。そこで作品の題名では天平(風)美人ではなく、よく杉本健吉が描く「華精」としています。

柘榴は縁起のよい木として昔から庭に植えられ、熟した果実に多数の赤い種子が入っていることから、子孫繁栄の意味をもち、世界的にも子宝のシンボルとされています。

作品は印章のみですが、肉筆の真作と判断しています。

額は数千円でのリサイクル品。マットや見切り縁は額装店で選びます。

マットや見切縁の選択肢は額装店、たとえば世界堂や神田の草土舎などで様々です。額装店で品揃えが違うので、選ぶのも愉しいものですが、意外に選ぶには種類は少ないものです。