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気が向くままに展示室の作品を変えていますが、基本的にはメンテ中の作品を展示しています。
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本日の紹介する作品はメンテの終了した呉州赤絵の作品紹介です。
当方にては、呉州赤絵の菓子鉢・大皿から餅花手の大皿など明時代末期から清初、中国福建省南部の漳州窯で焼かれた呉須赤絵の作品群を比較的数多く紹介しています。欧米ではスワトウ・ウェアと呼ばれている作品群ですが、これらの作品は日本に数多く輸出され、また日本から茶人による注文された作品も多くあり、おそらくこの作品群のほとんどが日本にあるものと思われます。
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本日は水指となっている珍しい作品ですが、菓子鉢が平水指となっている作品(上記写真:2018年輪島長屋工房に特注し塗蓋作成し水指に使えるようにしてあります。一度がたつきがある蓋であったために再製作しています。)は当方でも紹介しましたが、本格的な水指として体を成している本日から紹介する作品(下記写真)は非常にめずらしいものだと思います。
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古い杉箱に納まっています。骨董では「古い杉製の箱は中身がいいものが多いので、古い杉箱に納まっている作品は要注意という、」格言のようなものがあります。むろん後から箱を合わせた作品もあるので、すべてがいい作品ということではありませんが、当方の経験からも当たらずも遠からずということが多いようです。
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漳州窯 明末呉州赤絵 花鳥紋水指
底窯割金繕 古杉合箱
直径145*底径*高さ174
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この作品の魅力はなんといっても正面の水鳥のユニークでかわいい絵柄です。
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この手の作品は作品の絵の出来が肝心で、鳥や魚・獅子などにユーモラスさがないといけませんね。
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本作品は時代は清朝に下がった頃かな? もしかしたら明末かもしれません。
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底部には窯割れがあり貫通していますが、金繕いにて補修されています。出来の悪い金繕いですのですので修繕する必要がありそうです。
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明末から清朝にかけて時代が下がるにつけ、絵の面白さが消え、虫食い、砂付高台なども消えていきます。こうなるとこの手の作品は大皿でもなんでも評価はかなり下がります。
虫喰は口縁にでる定番の釉薬の剥がれですが、これを茶人は虫喰と名をつけました。器体と釉薬の収縮度が違って、このように剥げる部分ができます。中国人にとっては傷ですが、日本人は、傷では無く見所として評価します。日本では、さらに、この傷が良いと言う事で、人工的に作ることもあります。気の利いた、写し物作者または「偽作者」は、器体と釉薬の間に、不純物を噛まし込み、焼いた後、剥げて人口の虫喰ができるようにします。この様にしますと釉薬側の両端が吊り上がって見えますので、見分けがつくとされています
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漳州窯における明末呉州赤絵の作品は日本・南洋・欧米にの残っているものが多いようですが、前述のような評価ポイントが遺っている作品で水指に見立てられる作品は数少ないようです。
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丁寧な作りから日本からの水指とするための注文品の可能性もあります。無論作った本人は使いなど知らなかった可能性が高いと思われます。
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お茶会で賞翫される呉須赤絵の器物には赤玉香合・玉取獅子鉢・魁手鉢・呉須菊竹鉢・尾長鳥鉢・魚手鉢・骸麟手鉢・青呉須竜手鉢などがありますが、むろん今となってはこの手の作品は日本にしかない作品です。
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砂高台とは荒々しい砂が付いた高台で、これも明末(あったとしても清初まで)の特徴です。陶磁器には国の繁栄が現れますが、明が衰え清が登場してくる過度期に手抜きされた部分(高台)が見所になってきます。
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なにはともあれ陶磁器には時代の世情が色濃く反映されるもののようです。
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官窯が衰え、民窯が低コストで荒々しく作った民衆のエネルギーがこの手の作品を生み出していることは興味深いものです。