夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

魑魅魍魎たる中国絵画

2018-06-15 00:01:00 | 掛け軸
男の隠れ家の棚にしばらく放置されている中国絵画の掛け軸。

蒐集していた一時期に集めた中国絵画の作品ですが、中国絵画は贋作、模作、版画などの工芸品の多さは日本の比ではないこと気づき、蒐集はすぐに中断し、怪しげな作品は処分したのですが、「鑑賞にはいいだろう」と手元に遺したおいた作品がまだあったようです。

長い間、新聞紙に雑に包まれていたので久方ぶりに虫干ししてみました。



まずは著名な画家である伝八大山人の水墨画です。

瓶蘭図 伝八大山人筆
紙本水墨軸装箱入 縦870*横450



こちらは肉筆には相違なさそうです。肉筆の模作や贋作、工芸品の多さは中国絵画においては日本の比ではありません。



真贋に関わらず、絵そのものの出来としてはかなりうまいものです。

 

係蔭放牧之図 伝李可染筆
紙本水墨淡彩軸装 
全体サイズ:縦2390*横810 画サイズ:横650*縦176



こちらの作品は上海からの入手。



この構図は李可染では代表的なものですので、代表的ということはまずは怪しいと疑ってかかるべき作品だったのでしょう。



それでも涼しげな郷愁溢れる作品です。



大幅の部類になり、夏に飾るには最良の作品には相違ありません。



水孔版画かな? 当方には肉筆に見えます。

 

「係蔭放牧之図 歳次己巳冬月畏興可染干□□□□」と賛があり、真作なら1989年冬、李可染が82歳の最晩年の作。賛の下には「可染」の朱方印が押印されており、右下には「師半堂」と押印されています。

 

無量寿佛(その弐) 伝王一亭筆
紙本水墨淡彩軸装 
全体サイズ:縦1775*横796 画サイズ:縦677*横660



この作品の描き方はうまい それで遺しておいた作品です。事業家の余技とされる王一亭の作品ですが、画技は年ととも大いに進み、天衣無縫、雄健渾厚の筆使いです。



その画は呉昌碩に酷似しており、世間に呉昌碩の画とされるものの中に、一亭の画に昌碩が落款したものが混っていることは事実だそうです。



呉昌碩亡きあと、齊白石と並んで彼の作を愛好する人士が頗る多いとか・・。よって贋作も同様に頗る多いようです。



本日は魑魅魍魎たる中国絵画の紹介なので画家そのものについての紹介は省略しますが、本日紹介する大家の画歴くらいは近代日本画を好みしていても基礎知識として覚えておく必要はあるのでしょう。



賛は「無量寿佛 白龍山人王震敬写」とあります。落款に「白龍山人王震」とあり、真作なら50歳以降の作品と推測されます。「王震」の朱方印(参考文献にて真印と確認)と「一亭□白」の白方印が押印されています。



仙子弾琴図 伝黄慎筆
紙本水墨淡彩軸装 
全体サイズ:縦1590*横585 画サイズ:縦800*横460



黄慎は人物画が得意ではなく本作品の画力はそれほどでもない? 文人画として鑑賞すべき画家でしょう。



本作品を遺しておいたのは、かなり修復された跡のある作品というのが理由のひとつです。



尚、黄慎は「揚州八怪」の一人です。


下記は小生の説明資料として蒐集当時の記録にあった記事です。

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揚州とは中国江蘇省の河港都市。そこは明清時代に塩の大集散地として繁栄した。十八世紀半ば、清朝の政局安定に伴い益々商業が盛んになり、塩業は特に栄えた。塩商人は大富豪となり、豊かな財力が書画の収集や芸術文化の向上に注がれる。そして、パトロンが多い揚州には各地から芸術家が雲集してきた。

その中で、画風、生き方共に「怪」と称するにふさわしい独創的感覚を持った書画家が陸続と現れ、傑出した八人はその後、「揚州八怪」と呼ばれるようになった。

学者により八人の顔ぶれは少し異なるが、金農・鄭板橋・李鱓・黄慎・羅聘・李方膺・汪士慎・高翔らが選ばれる場合が多いようです。(この他、辺寿民・高鳳翰・楊法・李べん・陳撰・華嵓・閔貞らを八怪に含める候補に挙げられることもあります。)

八怪のメンバーは鄭板橋を除いて皆、官位のない布衣(ふい)でした。役人生活を送っていた鄭板橋も、やがては揚州が恋しくなって売文売画生活へと戻る。それだけ揚州というところは、芸術家の自由な気魂を思い切りぶつけることができる懐が広い空間であった。

この個性に富んだ人たちの中にあっても一際目立ち、仲間からもリーダーと認められていた人物が、富岡鉄斎が私淑した金農(冬心)である。八怪の作品中には金農の影響を見て取れるものが多く、金農の英傑ぶりが想像できる。

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画中に「松風□翁筆山月 四弾琴黄慎写」と賛があります。

 

山水図 伝呉冠中筆
紙本水墨淡彩軸装 
全体サイズ:縦1820*横890 画サイズ:縦700*横697



本作品も上海から入手した作品です。



呉冠中の作品としてはよく見かける作風です。



こちらも水孔版画? 



呉冠中については他のブログの記事で作品を紹介していますので、ここでは詳細は省略させていただきます。



独特の描き方の画家ですね。



いずれにしてもどの作品も当方では真作とは現在も判断しておらず、気楽に飾って愉しもうかと考えて遺してある作品です。虫干し後はまた新聞紙に包んで棚に放置・・・


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