夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

弁財天図 田能村直入・小斉・小篁筆

2013-03-21 06:09:22 | 掛け軸
祭日は家内とテレビを買おうかと大宮の量販店に行きました。前々から買おうと思っていましたが、なかなか決断がつかずにそのままのテレビとなっていました。転勤族ゆえ、小型のテレビですましていましたし、普段あまりテレビを観ず、ラジオ代わり程度ということもありました。

しかしながら量販店で迷ってしまい、また今度ということに・・・

家内が近所から採ってきたキブシとツバキの花を李朝後期の油壷に活けました。



器というものは不思議なもので、気に入って入手したはずが気に入らなくなったり、暫くしていいじゃないかと感じたりし、自分のなかで評価がばらつくことがあります。


さて本日は田能村竹田、直入、小斎、小篁そして直外と綿々と五代に渡って画家であった家系で、その直入、小斎、小篁の三代による合作という非常に貴重な作品です。

私が初めて掛け軸を購入したのは福田豊四郎の作品でしたが、他の画家では田能村直入の作品でした。この作品はまだ未投稿です。5万円ほどでしたが、いい作品を入手できたと思い、先輩のコレクターに見せたところ「いい作品だね、さすが直入。」い言われ、嬉しくなって収集に拍車がかかったものでした。今では直入の売買もだいぶ廉価になりました。

本作品は最近購入した作品です。表具がだいぶ痛んでいますので改装が必要です。

弁財天図 田能村直入・小斉・小篁筆
合箱
全体サイズ:縦1880*横487 画サイズ:縦1067*横360



賛より田能村直入が92歳の時の作品であり、1905年の作品と判断される。賛は「弁財天女楽琵琶 心似春風顔似花 孤嶌乾坤廣無極 性来福壽妙生涯 明治三六年乙巳夏日謹題於東畫神堂 九十二齢翁真徹人」とあります。さらに右下には田能村小斎による落款があり「華甲小斎田順敬寫」とあり、弁財天の絵を描いたのは小斎であり、60歳の時の作であることが分かる。左下には田能村小篁により「小篁逸士□寫水石」と落款があり、岩と水を小篁が26歳と時に描いたことが分かる。



弁財天:仏教の守護神である天部の神々の1つ。インドの神でヒンドゥー教の女神として信仰されているサラスヴァティー(Sarasvatī) が仏教に取り込まれてこのように呼ばれている。また、日本の神道にも取り込まれている。また、弁天とも呼ばれ、七福神の一員となっている。元々は古代インドの河神として音楽や学芸などの神として信仰されていたが、日本では「才」が「財」の音に通じることから財福をもたらす女神として信仰されている。





田能村直入:生年: 文化11.2.15 (1814.4.5) 没年: 明治40.1.21 (1907) 明治期の南画家。豊後国竹田(大分県竹田市)生まれ。本姓三宮,幼名松太のち伝太。9歳のとき,田能村竹田に入門し,南画と唐詩選を学ぶ。さらに国学,陽明学,武術などを幅広く修学,竹田にその才を愛され,田能村の姓を継いだ。竹田没後,南宗画で家を興し,堺,大坂に住む。明治1(1868)年京都に移り,以後名を小虎,号を直入とした。同13年京都府画学校設立とともに,翌年その初代摂理(校長)となり,24年には自ら自宅に南宗画学校を開いた。近代の南画は京都で継続的発展をみたが,直入はその明治期の中心的人物であった。

田能村小斎 :1845-1909 幕末-明治時代の画家。弘化2年生まれ。播磨(兵庫県)の人。養父の田能村直入に文人画をまなぶ。武道にも長じ,豊後(大分県)岡藩主につかえ,維新後は大阪,京都ですごした。明治42年12月31日死去。65歳。本姓は大野。名は順。字は子慎。通称は順之助。




田能村小篁 :1879-1910 明治時代の画家。明治12年生まれ。祖父田能村直入と父小斎に文人画をまなんだ。明治43年5月27日死去。32歳。本名は直太郎。



賛は直入、弁天様の絵は小斎 、岩と水は小篁が分担して製作した貴重な作品かと思われます。合作と言うとあまり緻密に描かれることもなく、駄作が多いのですが、小斎が還暦という祝いもあってのことか良い出来の作品に仕上がっていると思います。




父が絵を描き、息子が手伝い、祖父が賛を入れた・・。どのような心情だったのでしょうか。そうそう普通に有るものではなく、微笑ましい光景であったことを願わずにはいられません。賛からも幸福な思いが伝わってきます。

家業を代々維持することは非常に難しいことです。敬意を表して改装しようかと思っています。

ただ、これから5年後には3人とも亡くなってしまいます。人生は無常と向き合うことも求められます。


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