今まで蒐集してきた作品数が多くなったので整理していますが、「これは要らない」と思った作品を改めて見なすと「いい作」と改めて再評価してしまう作品があります。
下記の作品もそのような作品で杉の古箱に収まっていましたが、遺しておく作品にしょうと判断したのですが、水指として使うには合う蓋がありませんでした。
*この備前の水指は以前に本ブログで紹介されています。細工物でない武骨なところが見どころでしょう。備前の細工物の水指はわざとらしい点があって小生の好みではありません。
むろんお茶道具店で用意する既成の蓋ではガタついてうまく合いません。そういう場合は特注で輪島長屋工房に依頼します。
面倒なのは水指の正面を決めて、蓋の取っ手の向きを決めなくてはなくていけません。作品の正面は輪島工房さんが、どうやらでお茶を教えている方に教わって正面を決めていたようなのですが、この作品からは当方でここが正面という標を付けて依頼しました。このような歪な器形には蓋は一定方向にしか合いませんので・・・
本日紹介する作品は出来が気に入ったので一万円で購入した絵志野の水指です。誰がいつ作ったのかは全く分かりませんが、それほど古いものではなさそうです。「本ブログはガラクタ」の見本のような作品かもしれませんが・・・・
*こちらには入手時より水指用の蓋が付いていました。これだけで購入費用分になってしまいますね。
絵志野水指
合箱
内口径113*外口径*胴径180*底径*高さ170
口に蓋受けの段をもつ形状の水指を矢筈口水指と言います。
志野焼の胎土は桃山時代の美濃の志野のように、柔らかい粘土が基本となります。磁器質が強く近い固いすべすべした土をした作品はどうしても茶味に欠けるようです。
江戸期の絵志野や桃山期の作品を模倣した作品にみられますが、釉薬が硬すぎてガラス質のように透明感が強いものは、鉄絵が、いわゆる古志野に使われた鬼板のようなソフトな紅色ではなく、通常の鉄絵になりすぎています。不透明な釉薬によって鉄絵の部分が見えそうで見える、見えそうで見えない感じが絵志野には肝要だと言われています。
この作品のように底まで釉薬が掛かっている作品は稀有です。この作品は底に剥離用の目跡?が見えます。
志野の釉薬はどっぷりと掛かっているのが基本で、焼が甘くなくきちんと高温度でパリっと焼けていて、貫入がある感じがいいものです。
人間国宝の鈴木蔵の作品のような趣のある志野の作品です。
本日の作品は桃山期の作品を目指して作られた近代の作と推察されますが、その元となっている桃山期の名品には代表的な下記の作品があります。
参考作品 その1
絵志野水指
日本・桃山時代 16~17世紀 根津美術館蔵
高18.5cm 口径18.5cm 底径17.8cm~18.5cm
本日紹介した作品も同様ですが、口に蓋受けの段をもつ矢筈口水指は、志野を代表する茶陶の形です。「参考作品 その1」の作品の水指は桶形を陶器で力強く写した作品でさらに箆目を加えることで、重厚な姿を生み出しています。
胴に葦1株を、他面には三連の山並を描いていますが、伸びやかでたっぷりとした筆使いによって、志野独特の味わいを生み出しています。
参考作品 その2
志野水指 銘 古岸
桃山時代 畠山美術館蔵
サイズ(cm):高17.5 口径18.3~19.2 底径17.4~19.0
桃山時代の志野水指の中でも、これも代表的な作品で、器形・釉調・絵文様などすべてにおいて、最も優れた作行の作品と評価されています。
肩と胴下部に段をつけて箆で整えており、力強く堂々とした姿を成しています。腰のゆったりとしたふくらみに対して頸のしばりは強く、これが外側に開き気味の厚い口縁と矢筈口を強調しています。作為を超えた茶陶の美と言えるのでしょう。
どっぷりと掛かった志野釉が、よく溶けて貫入を生じており、口縁と裾には赤い火色が現れています。胴の周囲には鉄釉で葦と檜垣文が下絵付けされており、まるで水墨画のようなその風情が、冬枯れた岸辺を思わせることから「古岸」の銘が与えられたのでしょう。
以上は古志野の作品の名品の紹介です。
これらの参考作品とは、恐れ多くも本作品は見比べる作品ではありませんが、本作品を家内も気に入っているの使ってくれそうです。銘もなく、気軽に使えそうな水指ですね。
桃山期の古志野を超える作を目指して多くの陶工が心血を注いできましたが、加藤唐九朗、岡部嶺男、荒川豊蔵、鈴木蔵ら数人しかその領域には達していませんね。
そういう意味ではこの作品は銘もなく、気負いもなく、そして近代的な志野の釉薬を効果的に使ってそれらにつぐ味わいを醸し出しています。
形は古志野、釉薬は近代・・・、志野の水指、いいものがあるようで実は意外に品のある作品は少ないように思います。男が使う重みのある水指、志野にしろ備前にしろ水を入れたらちょっと重い
器形ではさすがに古志野の名品の足元にも及びませんが、その趣は十二分にあります。
荒川豊蔵氏や鈴木蔵氏の作品に見られる志野の釉薬のパリっとした感じがよく出ています。
これがないと近代の志野の感じが出ない?
さて箱仕舞もきちんとして家内に購入した金額で進呈・・・???
骨董は売買が基本、たとえ身内でも売るのはたいへんな労力が必要です
下記の作品もそのような作品で杉の古箱に収まっていましたが、遺しておく作品にしょうと判断したのですが、水指として使うには合う蓋がありませんでした。
*この備前の水指は以前に本ブログで紹介されています。細工物でない武骨なところが見どころでしょう。備前の細工物の水指はわざとらしい点があって小生の好みではありません。
むろんお茶道具店で用意する既成の蓋ではガタついてうまく合いません。そういう場合は特注で輪島長屋工房に依頼します。
面倒なのは水指の正面を決めて、蓋の取っ手の向きを決めなくてはなくていけません。作品の正面は輪島工房さんが、どうやらでお茶を教えている方に教わって正面を決めていたようなのですが、この作品からは当方でここが正面という標を付けて依頼しました。このような歪な器形には蓋は一定方向にしか合いませんので・・・
本日紹介する作品は出来が気に入ったので一万円で購入した絵志野の水指です。誰がいつ作ったのかは全く分かりませんが、それほど古いものではなさそうです。「本ブログはガラクタ」の見本のような作品かもしれませんが・・・・
*こちらには入手時より水指用の蓋が付いていました。これだけで購入費用分になってしまいますね。
絵志野水指
合箱
内口径113*外口径*胴径180*底径*高さ170
口に蓋受けの段をもつ形状の水指を矢筈口水指と言います。
志野焼の胎土は桃山時代の美濃の志野のように、柔らかい粘土が基本となります。磁器質が強く近い固いすべすべした土をした作品はどうしても茶味に欠けるようです。
江戸期の絵志野や桃山期の作品を模倣した作品にみられますが、釉薬が硬すぎてガラス質のように透明感が強いものは、鉄絵が、いわゆる古志野に使われた鬼板のようなソフトな紅色ではなく、通常の鉄絵になりすぎています。不透明な釉薬によって鉄絵の部分が見えそうで見える、見えそうで見えない感じが絵志野には肝要だと言われています。
この作品のように底まで釉薬が掛かっている作品は稀有です。この作品は底に剥離用の目跡?が見えます。
志野の釉薬はどっぷりと掛かっているのが基本で、焼が甘くなくきちんと高温度でパリっと焼けていて、貫入がある感じがいいものです。
人間国宝の鈴木蔵の作品のような趣のある志野の作品です。
本日の作品は桃山期の作品を目指して作られた近代の作と推察されますが、その元となっている桃山期の名品には代表的な下記の作品があります。
参考作品 その1
絵志野水指
日本・桃山時代 16~17世紀 根津美術館蔵
高18.5cm 口径18.5cm 底径17.8cm~18.5cm
本日紹介した作品も同様ですが、口に蓋受けの段をもつ矢筈口水指は、志野を代表する茶陶の形です。「参考作品 その1」の作品の水指は桶形を陶器で力強く写した作品でさらに箆目を加えることで、重厚な姿を生み出しています。
胴に葦1株を、他面には三連の山並を描いていますが、伸びやかでたっぷりとした筆使いによって、志野独特の味わいを生み出しています。
参考作品 その2
志野水指 銘 古岸
桃山時代 畠山美術館蔵
サイズ(cm):高17.5 口径18.3~19.2 底径17.4~19.0
桃山時代の志野水指の中でも、これも代表的な作品で、器形・釉調・絵文様などすべてにおいて、最も優れた作行の作品と評価されています。
肩と胴下部に段をつけて箆で整えており、力強く堂々とした姿を成しています。腰のゆったりとしたふくらみに対して頸のしばりは強く、これが外側に開き気味の厚い口縁と矢筈口を強調しています。作為を超えた茶陶の美と言えるのでしょう。
どっぷりと掛かった志野釉が、よく溶けて貫入を生じており、口縁と裾には赤い火色が現れています。胴の周囲には鉄釉で葦と檜垣文が下絵付けされており、まるで水墨画のようなその風情が、冬枯れた岸辺を思わせることから「古岸」の銘が与えられたのでしょう。
以上は古志野の作品の名品の紹介です。
これらの参考作品とは、恐れ多くも本作品は見比べる作品ではありませんが、本作品を家内も気に入っているの使ってくれそうです。銘もなく、気軽に使えそうな水指ですね。
桃山期の古志野を超える作を目指して多くの陶工が心血を注いできましたが、加藤唐九朗、岡部嶺男、荒川豊蔵、鈴木蔵ら数人しかその領域には達していませんね。
そういう意味ではこの作品は銘もなく、気負いもなく、そして近代的な志野の釉薬を効果的に使ってそれらにつぐ味わいを醸し出しています。
形は古志野、釉薬は近代・・・、志野の水指、いいものがあるようで実は意外に品のある作品は少ないように思います。男が使う重みのある水指、志野にしろ備前にしろ水を入れたらちょっと重い
器形ではさすがに古志野の名品の足元にも及びませんが、その趣は十二分にあります。
荒川豊蔵氏や鈴木蔵氏の作品に見られる志野の釉薬のパリっとした感じがよく出ています。
これがないと近代の志野の感じが出ない?
さて箱仕舞もきちんとして家内に購入した金額で進呈・・・???
骨董は売買が基本、たとえ身内でも売るのはたいへんな労力が必要です