夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

氏素性の解らぬ作品 白磁八面取壺 伝李朝後期

2021-05-07 00:01:00 | 陶磁器
築20年経ての自宅ですが、出窓のクレセントが何カ所かが掛からなくなり建具屋さんに見てもらったところ、出窓の屋根が下がってきたため全数の調整が必要とのこと。早速、その調整を依頼したのですが、2階は外からも調整する必要があり屋根に上っての作業となりました。



ついでに隙のあいた網戸もみてもらいました。幅が大きな網戸は当方の手におえずに、試しに依頼して一枚だけ既存の網を張り直したらとてもきれいになりました。写真左の2枚は未了の網戸、右は取り替えた網戸です。洗ってくれたようで網戸があるかないか解らないほどきれいになりました。ついでにほかの大きな網戸だけを張り替えることにしました。多少費用がかかってもプロに頼むことも必要なようです。



さて本日はよく見かける白磁の李朝の作品です。

李朝の作品に隙のない白磁の逸品を求めるのか、はたまた侘び錆の世界に当てはまる雨漏り手のような作品を求めるのかは趣向によりひと様々でしょうが、当方ではどちらも日本人の好むところは同じような気がします。それだからこそ「李朝と信楽で死ねる」という古陶磁器の骨董ファンの格言になる陶磁器群なのでしょう。



本日は白磁の作品ですが、李朝かどうかは確信がないので「伝」としております。

氏素性の解らぬ作品 白磁八面取壺 伝李朝後期
誂箱
口径108*最大胴径198*145*高台径*高さ220



李朝面取の各種の作品は「易経の影響を受けて胴部が八面に分割された形」とされ、李朝独自の造形のようですが、時代が下がるにつれて?李朝の面の数は10面になったり、12面になったりと一定の数ではないようです。ただし当初からそうであったのか、時代とともにそうなったのかは当方ではよく分かりません。



単純で安易に作れそうな作品にも見えますが、人間国宝の濱田庄司氏は生前「李朝の面取りは真似が出来ない。」と言っていたという逸話を本で読んだことがあります。



朝鮮半島においては13世紀後半から14世紀初めに儒教(朱子学)が伝来し、次第に広がりを見せました。それにともない清楚さ、潔癖さ、純粋さをイメージする白が宗教的にも重要視されるようになり、陶磁器においても白磁の隆盛をみるようになります。



1392年の李成桂による朝鮮王朝(李朝)の成立以後、白磁が国王の御器に指定され、15世紀になると白磁の一般使用が禁止され、1500年のはじめには朝鮮朱子学(儒教)が確立されます。

高潔、高邁な人格を求められ、そうした象徴の白が彼らの生活の場にも持ち込まれ、次第に白磁の隆盛となります。この頃に花を咲かせるのが李朝白磁ということになります。



白い清楚な美しい姿のやきものが登場しますが、それらの名品はソウルに近い広州を中心に焼かれていて、大きく分けると朝鮮半島中央部の鶏龍山から広州道馬里(とまり)窯に至る初期白磁。中期の金沙里(くむさり。きんさり、きむさりともいう)窯、後期から晩期の分院里(ぶんいんり。現地ではプノンり)窯に分類できると思います。王様の食事を司る部署を司饔院(しよういん)といい、その食事に使う白磁のやきものを焼かせた部署をその司饔院の分院ということからそれらの高級白磁を総称して「分院」と呼ぶようになったそうです。



李朝の陶磁器は、初期には粉青沙器が主流でしたが、前述のように17世紀以後は白磁に変わります。

中国の元、明の白磁の影響を受けたものですが、17世紀には色が青味がかり、李朝末期には濁った白色に変わっています。李朝では、磁器の製造は官窯でである工匠が行っており、1752年に広州に分院の官窯が作られ生産の中心になっていましたが、1883年に分院が民営化され官窯の歴史は終わります。



下絵付はありましたが、基本的に上絵付はありませんでした。コバルト顔料で下絵付した青花も作られましたが、コバルト顔料が不足したため、鉄絵具で下絵付する鉄砂や銅絵具で下絵付する辰砂も作られました。しかし、李朝白磁の95%以上は他の色による装飾がない純白磁であり、江戸時代に日本で作られていたような華やかな色絵磁器は李氏朝鮮には存在しないとされています。



つまり李朝のベースは白磁ということになります。本作品はおそらく李朝後期の作品と分類され、本作品は李朝の入門コースのようなものでしょう。



前述のように完品の白磁を求める面と、どこか傷があったり、雨漏りのような変化のある、ある意味の味わいのある白磁を好む傾向が日本人にはありますね。



潔癖さを求む儒教とは一線を画している好みかもしれません。網戸は隙間のないほうがいいかもしれませんが・・・ 「高潔、高邁な人格」を求めた朝鮮半島の気風は政治の場では今はどこへ・・・。






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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
依頼 (夜噺骨董談義)
2021-05-08 07:27:34
コメントについての依頼に件は了解しました。具体的な内容を連絡ください。
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Unknown (まり)
2021-05-08 20:05:53
お忙しいところ、ご対処いただき誠にありがとうございます
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Unknown (もりちゃん)
2021-10-27 01:40:15
贋物だと思います、中期の面取り壺の本物は一千万以上します。
高台の汚しもわざとらしくて口づくりもダメだと思います。
(・・;)
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面取 (夜噺骨董談義)
2021-10-27 10:59:50
的確なるコメントをありがとうございます。
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