2012年10月18日(木)、宮城県美術館で開催中の特別展・「東山魁夷展」を見る機会がありました。
「残照」(1947年、東京国立近代美術館)、「光昏」(1955、日本芸術院)、「青響」(1960年、東京国立近代美術館)、「映象」(1962年、東京国立近代美術館)、「花明り」(1968、株式会社大和証券グループ本社)、「晩鐘」(1971年、財団法人・北澤美術館)、「静唱」(1981年、長野県信濃美術館・東山魁夷館)、「緑響く」(1982年、長野県信濃美術館・東山魁夷館)などの作品が展示されていました。
http://www.pref.miyagi.jp/bijyutu/mmoa/ja/exhibition/20120922-s01-01.html [宮城県美術館:特別展:東山魁夷展]
NHK-TV[日曜美術館」の東山魁夷(ひがしやま・かいい)傑作10選
NHKEテレビ2で、2012年8月19日(夜8:00~8:59)に放映された「日曜美術館」の”東山魁夷・傑作10選”で紹介された作品。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2012/0819/index.html [夢の東山魁夷 傑作10選:NHK 日曜美術館]
(上)第1位:「道」昭和25(1950)年 絹本彩色・額装 134.4×102.2cm。 第6回日展。東京国立近代美術館・蔵。
(上)日本経済新聞出版社発行「東山魁夷アートカレンダー(2013年版・小型判)」より
道 スケッチA青森・種差海岸に取材したスケッチをもとに描かれたこの作品は、両親や弟の死、敗戦のショックを乗り越え、自己との対話を繰り返した末に生まれた。終着駅であり、出発点でもあることを象徴する1本のまっすぐな道の風景。それは画伯が到達した人生観のあらわれともいえる。[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
(下)「道」スケッチA 昭和25(1950)年 紙本着色・スケッチ 34.0×26.5cm。長野県信濃美術館・東山魁夷館・蔵
(上)[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
(下)第2位:「残照」昭和22(1947)年 第3回日展特選 紙本彩色・額装 151.5×212.0cm 東京国立近代美術館・蔵。
「残照」:山並は幾重もの襞(ひだ)を見せて、遙かに遠くへ続いていた。冬枯れの山肌は、沈鬱な茶褐色の、それ自体は捉え難い色であるが、折からの夕陽に彩られて、明るい部分は淡紅色に、影は青紫色にと、明暗の微妙な階調を織り交ぜて静かに深く息づいていた。その上には雲一つ無い夕空が、地表に近づくにつれて淡い明るさを溶かし込み、無限のひろがりを見せていた。(「風景との対話」1967)[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
(上)日本経済新聞出版社発行「東山魁夷アートカレンダー(2013年版・小型判)」より
第3位:「光昏」 昭和30(1955)年 紙本彩色・額装 181.7×136.4㎝ 日本芸術院・蔵 第11回日展 日本芸術院賞
私はこの作品で古い能衣装の持つような渋味のある装飾的な効果と、自然の荘厳な実感を両立させる試みをしてみたいと思った。また、いつも私の作品の基底を流れている孤独な感情が、センチメンタルな悲哀感でなく、むしろ荘重なものとして表われる可能性があると感じた。(「風景との対話」1967))[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
(上)平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より
光昏 新潟と長野の県境に近い野尻湖と、湖水を隔て西に聳える黒姫山の姿のスケッチがもとになった作品。「この空を金色にして、湖水を黒く描いてみたら」と閃いて、逆光に栄える自然の姿を表わした。「光と影が綾を織る夕べのひとときの風景」という東山47歳の時の制作)[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
第4位:「白夜光」 昭和40(1965)年 紙本彩色・額装 151.0×222.5㎝ 東京国立近代美術館・蔵 第8回新日展
昭和37(1962)年に北欧(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)の旅へ出かけた東山は、厳寒の地における人間と自然との雄大な共生の光景をしっかりとその眼のなかに焼き付けたのだった。日本では到底味わえない自然の神秘と奥深さを目の当たりにするとともに、そこに生き暮らす人間の存在感を強く感じ取った東山は、帰国後さらに重厚で格調高い北欧の風景を主題とする一連の作品を発表した。この作品はそれらの中の一つである。[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
第5位:「夕静寂」昭和49(1974)年 紙本彩色 額装 227.0×158.0㎝ 長野県信濃美術館・東山魁夷館/蔵 改組第6回日展
東山魁夷はそもそも、色彩や質感による対象の再現に意をたむけるタイプの画家ではない。現実の対象がどうであれ、色彩の調子や配分は、作者の意図によってあくまで画面の中で決定される。そうした色彩はいく分抽象的であるとともに、作者のように制作の動機にたえず内省をかかえる場合はモノトーンに近いものとなっていくだろう。唐招提寺障壁画第一期完成から第二期への制作の前後に描かれた「春雪」(1973)や「夕静寂」(1974)、「秋深」(1975)や「凍池」(1977)は水墨ではないが、ひとつの色彩(あるいは顔料)がもつ見えないものを具現化するいわば「力」のようなものに依りながら、その色彩の世界に作者自身が沈潜して描かれたものといえる。[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
第6位:「晩鐘」 昭和46(1971)年 紙本彩色・額装 81.5×115.0㎝ 財団法人北澤美術館・蔵
永久に師匠になんかならないほうが幸いだと、私は書いたことがある。大きな壁画の完成と、日本の古都を主題にした連作のあとで、この旅に出たのも、遍歴徒弟であった時の曽遊の地を巡ることによって、老い込もうとする私の心に、温かい鼓動が甦ることを希ってのことであろうか。いや、そういう意志的なものではなく、いつも円周運動を描いて歩かされている私の宿命によるものかもしれない。(「馬車よ、ゆっくり走れ~ドイツ・オーストリア紀行~」1971)[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
(上)日本経済新聞出版社発行「東山魁夷アートカレンダー(2013年版・小型判)」より
第7位:「花灯り」 昭和43(1968)年 紙本彩色・額装 126.5×96.0㎝ 東山魁夷展~京洛四季
昭和43(1968)年11月、東山は皇居新宮殿壁画「朝明けの潮」制作のための下図とともに、京都をテーマとした「京洛四季」と題した連作を展示した展覧会を東京・銀座の松屋で開催した。北欧への旅を終えた翌年(昭和38年)以降、彼はしばしば京都を訪れてスケッチを描き溜めていたのだった。東山が北欧への旅に出る前に、川端康成が彼に「京都はいま描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいてください。」と語ったというが、東山自身の心の内にもいつか京都を主題とした連作を描いてみたいという強い願いはあったようだ。
春霞にかすんだ、なだらかな比叡山の山並みを描いた「曙」、円山公園でスケッチした一株のしだれ桜が、背景の山並みの上にぽっかりと浮かんだ円い朧月とともに描かれ、観る者を夢幻の世界へと誘う「花明り」、深々と降り積もる綿雪のもと、ひっそりとした静寂のなかに、まるで眠るように立ち並ぶ屋並みを描き、家々から漏れるわずかな光を点ずることによって、かすかな生のぬくもりを描く「年暮る」。四季の移り変わりの機微を京都の景物に託しつつ、東山独特の清澄な趣きを基調とするそれらの画面には、常に息をひそめるかのように、ほのかな生命の光芒を見出すことができる。(以下省略)[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
第8位:「東福寺庭園」(画像なし)
第9位:「唐招提寺御影堂の障壁画・上段の間 「山雲」昭和50(1975)年 紙本彩色・壁貼付・襖」
(下)唐招提寺の障壁画 「山雲」は、西側に大きな床の間、その右に脇床、北側に4枚建の襖となり東側(写真手前襖の裏側)は幅広の4枚建で構成されている。写真中央の大きな画は、天生峠の写生をもとにしたという。日本の代表的な風景として「山」と「海」を描くと決めた東山魁夷は、昭和47(1972)年、およそ1年ほどかけて日本各地をくまなく歩き、取材スケッチに費やしたという。
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
唐招提寺御影堂障壁画全図:この障壁画は、1975年と1980年の2期に分けて奉納された(厨子絵は別)。「青の世界」は「山雲」床の間、脇床(飾り棚)と天袋小襖を含む襖が10面、「濤声」16面の襖で構成。「墨の世界」は「黄山暁有雲」8面、「揚州薫風」26面、「桂林月宵」8面のすべて襖で構成されている。構想よりおよそ10年の歳月を費やした大作。
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
第10位:「夕星」平成11(1999)年 麻布彩色 額装 66.0×100.0㎝ 長野県信濃美術館・東山魁夷館/蔵
(上)日本経済新聞出版社発行「東山魁夷アートカレンダー(2013年版・小型判)」より
[平凡社発行「別冊太陽・東山魁夷」(2008年2月21日初版第3刷)より]
http://ameblo.jp/myway0124/entry-11344942194.html [日曜美術館「夢の東山魁夷・傑作10選」]
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%B1%B1%E9%AD%81%E5%A4%B7
[東山魁夷(Wikipedia)]