イザベラ4冊目の読書でした。
イザベラバード著
中国奥地紀行2
東洋文庫708 平凡社
金沢清則訳
保寧府から西へ成都府、さらに岷江をさかのぼって、漢民族の生活圏を超えて、チベット族の住むあたりまで往復した。成都府からは重慶を経由して上海へ戻った。1880年代でも白人男性でも入り込まなかった、まさに奥地紀行といえよう。女性旅行家として文章のみずみずしさ、それと国政、経済、生活などの正確な調査は目をみはるのもがあります。
たんに旅行本というだけじゃない、へたな調査隊以上のことをイザベラ単独で成し遂げている。
イザベラは優秀な写真家でもある。
当時の写真機は大きくてフィルムじゃなくガラスの湿式板で相当な重量です。
旅行記の内容は全部省きます。
細々としたところは読まなきゃわからないし、イザベラの感想や世相判断の方が興味深い。
中国の橋は石積みでできているので屋根をつけられるだけの丈夫さがある。イタリアやヨーロッパ、エジプトなどの太古の建造物に通じるものがあります。
日本は橋といっても木製だったので、耐用年数がある程度決まっている。
昔から河川を制するものは国を制すると言うことか。
ある意味で権力が国民に施す大土木工事ですから。
背負った荷物に支え棒をつけて休める。
おそらく、当時の日本も同じようだっただろう。
仏教は中国では今ではだいぶ廃れたが、この当時はまだ勢いがあったか。
今は道教が一番だと、うちの中国人の社員が言っていた。道教とは日本人になじみがないがキョンシーが出てくるアレといえば多少わかるでしょう。
これなどを見ると、中国と日本の差は大きかった。
日本の1880年頃は東京と大阪、名古屋、京都あたりだけに文明があっただけ。
中国の西域はケシの花の栽培が盛んだった。
あへんの製造は政府から禁止されていたが、国民の3割以上があへん中毒だったという。
西域に入ると、時の清政府は手を尽くしていく手を阻んだと言います。
西洋人のイザベラに見て欲しくない地域だったようだ。
つまり、清(北方漢民族)にとって西域は南蛮であり、蛮子であり、夷人の地域で、漢民族による虐殺があった。それは今と同じでチベットへの侵略が1880年当時から始まっていた。元々これらの言葉は漢民族にとって「野蛮人」という意味しかない。「南蛮」は清王朝は北方のモンゴル系の民族の政府なので、南方の中国人を差別用語として呼んだ言葉です。
日本にしても倭国と呼んでいたし、矮小な国という意味合いがあるのだろう。実に中華思想は傲慢だった。しかし産業革命が起きた西洋の人たちが入ってきて、太古の昔からの太平夢からたたき起こされたのがこの時代だった。
チベットを武力で侵略した中国ですが、我々日本人も北海道を原住民のアイヌを虐殺、堕落させて手に入れたと世界の人たちは考えているかもしれない。北海道や沖縄は元々我々は日本だと考えているが、イザベラバードは倭民族が酒でアイヌを堕落させ懐柔したと書いてあった。北海道は元々は大和民族の土地じゃなく原住民のアイヌの土地だった。アイヌ=日本人と言うことじゃない。このへんは私らの頭には抜けているので注意しなきゃいけません。
蛮子の集落です。
もはや漢民族ではなくラマ教の範疇です。
現在のチベットの範囲なのかは定かじゃない。
ラマ教の勢力範囲では清王朝の力は及んでいなかったと言います。
これから考えると近年チベットを中国が併合するのは、侵略と考えてもいいだろう。
中国は力をつけてきたから、今になって勢力範囲を拡大をはかっている。
揚子江の奥地にある大都市、嘉定府の西門。
万里の長城の長城に似たつくりです。
四川省、雲南省だけでもフランスよりも広い土地を持ち、人口が4億人近くあったら経済の凄まじさは想像以上だった。
当時から商取引の完全さや複雑さは、白人が入り込めないほどだった。
清王朝は衰微していると言われ続けていて、その原因は政府の統治にある。
国民は正直なのだが、官史がが腐敗している。
政府の弱体化は西洋の列強が圧力をかけているとも考えられる。政府が圧力に屈していくたびに、国民は分裂してきつつある。
ちょうど日本が西洋文化を取り入れて、頑強な政府を作り出したのと正反対だった。
イザベラバードが中国奥地紀行したのは日清戦争の1年後だった。
中国にいたイザベラはこう書き記している。
中国の対日戦争では「賄賂のきく政府を持つ公明正大な国民」が「公明正大な政府を持つ賄賂がきく国民」に難なくやられてしまった。
かように、日本と中国を見比べている。
日本は明治維新で、理想を高く掲げて日本政府ができたのに対して、国民は賄賂がきく他のアジアとそれほど変わらない印象を持っていたようだ。
中国に対しては、国民や社会は公明正大で世界一自由であるが、政府が税金を集め国政に投入しても、役人が懐へ入れてしまい、実際に使われるのが30%にすぎないと、、、。それで日清戦争の時でも兵隊さんは戦意があっても、兵士に配られる兵器にまでは資金が回ってこなかった。戦争に使われる費用も役人の懐に入ってしまった。役人が軍事予算を自らの懐へ入れて、わずかしか現場に渡さなかったツケが日清戦争にあらわれたようだ。
あへんの影響も大きかった。上流階級はそのダメージがわかっているので吸わないが、経済が活発な影には暇な人たちがいて、それらがあへん中毒になっていた。
今の中国はどうなんでしょう?
イザベラバード・中国奥地紀行1
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7c1d52aa204ccb6975824f020bdcc504
イザベラバード・日本紀行2
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/119fb8e45d2c7563144f348f6c65d6bb
イザベラバード・日本紀行1
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イザベラバード・朝鮮紀行
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f2f1b42636aa986b44cb7594e14d909
イザベラバードのハワイ紀行
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7ac626dd5a29152ba319ad10d16b2ec3
日の名残り カズオ・イシグロ ブッカー賞受賞
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