一路、浅田次郎、下巻
中央公論社、1013年初版
江戸の末期、江戸への参勤交代の大名行列は形式や人数が簡素化されて簡略化されてきた。
その中で、19歳になった主人公が初の御供頭を命ぜられた。
参勤交代をどうやるか教えもなく知識もない若者は、古書を参考にして昔ながらの参勤交代をすれば文句はでマイと考えついた。
弱小の武家だったが、古来から伝わる家康公からいただいた御槍を先頭に、きらびやかな大名行列にした。
上巻は関ヶ原に近い田名部から下諏訪までの道中を、下巻は下諏訪から江戸までの道中を書き込んだ。
なぜ古式ゆかしく古来の参勤交代の通りにしたのかというと、元々江戸への参勤交代は「いざ地方の武士たちが、江戸に駆け参じる行軍」の意味があった。
それが江戸300年の平和で武士たちの存在が危うくなり、行事が簡略化されてきた。
武士、商人、の社会的な地位が逆転しかかってきた。
ここで武士の存在を古来様式の参勤交代をすれば、他藩に対しても目立つし示しが付くと考えたのだ。
上巻では中山道の最初の難関の木曽山を超えるところの描写。
下巻では下諏訪を抜け八ヶ岳の麓を抜ける和田峠越え。
12月なので和田峠は厳寒の吹雪。
そこの峠越えが最初の見どころ。
二つ目は深谷宿でも御本陣差合。
2組の参勤交代の大名行列が本陣の取り合いになったことです。
大抵は格のある大名が上座になるので本陣に泊まり、格下の大名が脇本陣に退く。
その掛け合いを描いていた。
浅田次郎さんの小説は、難しい哲学を説くわけじゃなく、読んで面白ければ良い。
痛快活劇ではないけど、お武家さんのやりとりが、当時の様子を描いていて読み物として面白かった。
浅田次郎さんは武士や江戸時代の人々の心意気を書くのがうまい。
小説全体に前向きで社会を肯定的に書いている。
そこが安心して読めるところ。
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