これまでイザベラバードの日本紀行上下2巻、中国奥地紀行上下2巻を読んで、この朝鮮紀行をぜひ読みたくなった。
1890年前後の東アジアが動乱に巻き込まれていく時代を知りたかったからだ。
動乱の原因は、西欧諸国がアジアに進出して、同時期に日本が開国し急速に力をつけて、中国と朝鮮をめぐる利権の争いが、列強の間であったからだ。
朝鮮は2000年以上まえから中国の属国だった。
朝鮮は海を隔てた日本からの圧力を防ぐため中国に助けを求めていた古くからの歴史がある。
近代史に入ってから朝鮮をめぐっては、近隣3国が狙っていた。
日本、ロシア、中国です。
もっとも、中国は朝鮮に対しては領土を奪おうという野心はない。それは2000年の歴史を見ればわかる。だが、新興国の日本は朝鮮並びにその奥にある満州の広大な国土がほしくてたまらなかった。
ロシアはシベリアの港は冬には凍って使えなくなるので、年間を通して使える港が日本海、黄海に欲しかった。
世界が産業革命から急速に動き出した時代です。
その3国ではロシアが一番進んだ国だった。経済も社会もすべてにわたって先進国だった。
日本は文明開化の掛け声とともに、閉鎖的だった江戸幕府の時代から、近代化を目指す明治時代に入ったころだった。
中国の経済規模は日本の比ではないくらい活発で大きかったが、社会が、統治機構が、国民をリードしていく国の役人たちが腐敗していた。
その腐敗した中国の統治機構を模した朝鮮の政府も堕落の底にあったそうだ。
役人は民間人が少しでも儲けて豊かになると権力をかさに民間人にたかったそうだ。
それで朝鮮の民間人は働くのが馬鹿々々しくなり、何もしなくなったそうです。
国が国民を堕落させた例です。
堕落していたのは国民じゃなく、本当は朝鮮政府だったんですが。
働く者は役人からもうけを搾取されるじゃ、誰もまともに働こうとは思わなくなります。
朝鮮政府の権力から遠いアムール川流域の朝鮮族は、そりゃよく働きよい生活をしていたと書いてありました。
そんなわけで、首都ソウルでも、日本や中国で見られるまっとうな商店と言うものがなかった。
せいぜい、みすぼらしい売店と言ったレベルだった。
ソウルは首都として機能していなかったのだろう。
朝鮮は、さかのぼること2000年以上前から中国の属国で、日本に対しては良い感情を持っていなかった。
おそらく、2000年もさかのぼれば、日本には国家と言うものがなく、まだ弥生式の原住民がいただけです。
野蛮な国にもなっていなかった。
朝鮮にとっては日本は海を隔てた蛮族がばらばらに住んでいる未開の地だったんだろう。
中国は4000年の歴史などと言っていて、朝鮮は2000年以上の歴史がある。日本はせいぜい1800年ぐらいか、、、。人類の歴史は中国やメソポタミアから発したからだ。
それが時を経て、秀吉の時代になると朝鮮出兵して攻め込み、朝鮮は宗主中国に助けを求めた。
そんないきさつがあるので、近年までずーと日本に対しては優越感(清国という巨大国家の後ろ盾)をもっていながら、いち早く近代国家になった日本に対して嫉妬の気持ちを抱いたのだろう。
だから1890年頃は日本がもう一度朝鮮に出兵して統治機構を日本なりの近代化を進めようとしたところ、実際は良いことなんだが日本が進めていたことに対しては国民全体が反発を感じていた。おそらく、朝鮮の宗主中国とてそれは同じようだったのだろう。
古い統治機構と腐敗した役人、やる気を失ったのが朝鮮国民で、中国国民はしたたかで酷い役人に対しては、民衆が立ち上がって暴動になった。中国国民は自分の利益にたいして意識が高かったのだ。
おそらく、現代の中国、朝鮮にも通じるものがあるのだろう。
イザベラ・バードは日清戦争が勃発するときに、まさにその時に朝鮮に滞在していた。
日清戦争時の清国の兵隊さんの指揮は高かったが、いかんせん兵士の近代化ができていなかった。
イザベラは清国の立派な体の兵隊さんが、日本との戦地に殺されに送り出されている、、、と淡々と書いてあった。兵士個人の指揮が高くても、兵士に持たせる武器は、軍資金が政府の国庫から末端に行くまでに、途中で役人たちの中抜きに合い、ほんのビッチョしかその目的に使われなかったそうだ。
立派な清国兵士を腐敗しきった清国役人が殺したようなものだそうだ。
兵隊さんの部隊に鉄砲が配られても、その鉄砲に使える弾が、弾薬庫から数十種類もの中から自分で探がす必要があったそうです。鉄砲や武器が統一されていないので、兵士個人が使えるのが極めて限られていた。それじゃ近代化を進めていた日本の部隊には全くかなわなかっただろう。
朝鮮は昔から中国が宗主国だったので、中国には親近感を持っている。日本に対しては近親憎悪のような感情があるのじゃないかと想像します。大国、中国の後ろ盾で日本に対峙していた歴史なのだから。それが明治以来、日本の急速な近代化で朝鮮のみならず中国を超える文化を築いたのが気に入らないのでしょう。それが今日の朝鮮の日本蔑視の根源じゃないか。
この本を読んで面白かったのが、朝鮮の方たちの衣装が真っ白だったこと。白が朝鮮の色だったんですね。今の日本人の白好きに通じるものを感じます。朝鮮の感覚は日本にも反映されていると思う。それと、この本を読んだ限りだが、、、「ちょんまげ」文化は朝鮮から渡来した感じがします。
あと、朝鮮の気候がとてもよかったと書いてある。寒い地方では家の中にはオンドルという床暖房があって、寒いどころか暑くてたまらなかったそうだ。オンドルはわら束ひとつで部屋中が暖かくなる、エコな暖房装置です。
田畑の開墾は、作物が豊作になると役人が来て持って行ってしまうので、農民もやる気を失い荒れ地のようだった。耕しても自分のものにならないのは、人を怠け者にします。商売も同じで、どこの誰それが商売繁盛でお金をためたと噂になると、役人が来て根こそぎ持って行ってしまう。それで商業活動も栄えなかった。
ただ唯一、国民の夢は横暴なことが許される役人になることだけだった。
朝鮮には国王がいたが、1890年頃には日本が来て、国王を幽閉したようだった。日本が立ち去るとロシアの庇護の下に国王がいた。その時代に朝鮮国民に人気があった妃が暗殺にあった。その背後にいたのは日本だと信じられていて、その結果、日本嫌悪がますますひどくなった。天皇陛下の妃(皇后陛下)が外国勢力の手先に暗殺されたらどうでしょう。これらの歴史を見ても、朝鮮にとり日本は近くて嫌味な国でしかない。
歴史を知ると、、、朝鮮の気持ちがよく分かった。だからと言って現状の日本と韓国の間はまともとは思えない。朝鮮、韓国はけっして日本の分身(兄弟)じゃないということを知らなきゃいけない。むしろ朝鮮は昔から中国の子分だった、だから日本が朝鮮を中国から取り上げて自分の子分にしようとしても、国民感情から不可能なのだ。
イザベラの、日本、中国、韓国奥地紀行を読んで、極東3国の成り立ちが良く分かった。良い本です。ぜひこの3国の歴史を知りたかったら、イギリス人が偏見なく書いた、この本をお勧めします。何を昔のことを、、、というなかれ、国民や国情は文明が進んでも変わりません。
イザベラバードの日本紀行㊤
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9c4b8150096cccbbba33fbc2711c3c2e
イザベラバードの日本紀行㊦
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/119fb8e45d2c7563144f348f6c65d6bb
イザベラバードの中国奥地紀行㊤
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7c1d52aa204ccb6975824f020bdcc504
イザベラバードの中国奥地紀行㊦
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/96ac13d80f8fb7067ac229984ae53ce1
イザベラバードのハワイ旅行(ここが一番気に入った)
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7ac626dd5a29152ba319ad10d16b2ec3
イザベラバードの朝鮮紀行には2種類あるといううわさがある。訳が2冊なのか、元々の英語版が2冊あるのかわかりません。どちらかが朝鮮をかなり美化したものと言われている。私が読んだ図書出版のイザベラバード(ビショップ)の朝鮮紀行がどちらかわかりません。ただ朝鮮の気候が良かったと、朝鮮が気に入ったことは確かなようです。イザベラは日本のことも、中国のことも、朝鮮のことも悪くは書いていない。淡々とその時感じたことを紀行文にしているようだ。巻末にあるそれらの国々の国情を、貴重なデーターをもって紹介しているのが素晴らしい。そこに単なる紀行文以上の価値がある。
ホテルローヤル 桜木紫乃
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7336ab8978fa67681d133f096c2f2390
すばらしい新世界 バックスリー 1932年に発行された破壊的懐疑主義空想物語
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わたしを離さないで カズオ・イシグロ 代表作のひとつ 2017年ノーベル文学賞を受賞
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f171addb3dc788c75939e82d34be018
夜と霧 ヴィクトールEフランクル 第二次世界大戦時のアウシュビッツでの生活
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憑神 浅田次郎 貧乏神、疫病神、死神が次々にやってくる、ファンタジー小説
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漂流教室 楳図かずお 極限状態に設定した世界での人の本性を描く
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風の影 カルロス・ルイス・サフォン 舞台は第二次世界大戦直前のスペイン、フランコ政権時だった
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悪魔の飽食、野生の証明 森村誠一 731舞台の話と、東北を舞台にした殺人事件
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もの食う人びと 辺見庸 食らい、語らい、鮮やかに紡いだ、世紀末の食の黙示録
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