後世への最大遺物/デンマルク国の話, 内村鑑三, 岩波文庫 青119-4, 1946年
・『後世への最大遺物』。かなり前から読みたいとは思っていたのですが、『長大で難解な思想書』との勝手な思い込みがあって、後まわしにしていました。ところが先日、BOOK OFFで偶然発見。『こんなに薄いの!?(約100ページ)』 思い込みとは恐ろしい。 明治27年(1894年)箱根にて開かれた第六回夏期学校(キリスト教徒の修養会)での講演録。
・読んでみると、なぜもっと早く読まなかったのか、と悔いた。参りました。感動しました。特別なことをしゃべっているというわけでもないのだけれど、著者の人柄というかオーラが活字を通して伝わってくる、初めての感覚。なんだこれは! また数年後には読み返したい本。なにか行動をおこさずにはいられなくなるような気持ちになる本。読む人によっては、その人生の軌道を大きくひん曲げるほどの力を秘めた本。人の道を説く怪しげな本はたくさん見かけますが、この本を前にすると皆消し飛んでしまうでしょう。
・巻末解説の紹介文が的確 → 「これは単なる一場の講演でありましたが、プロテスタント・キリスト教によってつちかわれた講演者自身のきわめて健康な精神は、長い年月にわたって日本の人々に強い感銘を与え、この講演それ自身がその人にとってその題名にふさわしい役割を果たしたのであります。」p.106
・前出書(じぶん・この不思議な存在)にて、『2006年のベスト本はこれで決まり!』などと口走ってしまいましたが、強敵現る。うれしい誤算。
・「すなわち私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起こってくる。」p.16
・「それでこの次は遺物のことです。何を置いて逝こう、という問題です。何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。」p.19
・「それでわれわれの今日の実際問題は社会問題であろうと、教会問題であろうと、青年問題であろうと、教育問題であろうとも、それを煎じつめてみれば、やはり金銭問題です。」p.21
・「金を儲けることは己れのために儲けるのではない、神の正しい道によって、天地宇宙の正当なる法則にしたがって、富を国家のために使うのであるという実業の精神がわれわれのなかに起こらんことを私は願う。」p.25
・「それで私が金よりもよい遺物は何であるかと考えて見ますと、事業です。事業とは、すなわち金を使うことです。」p.28
・「私一個人にとっては聖書のほかに、私の生涯に大刺激を与えた本は二つあります。一つはカーライルの『クロムウェル伝』であります。(中略)それからその次にこのブレーキ氏の書いた、『デビッド・リビングストン』という本です。」p.32
・「それでもし私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。」p.35
・「文学というものはわれわれの心に常に抱いているところの思想を後世に伝える道具に相違ない。それが文学の実用だと思います。」p.36
・「文学はわれわれがこの世界に戦争するときの道具である。今日戦争することはできないから未来において戦争しようというのが文学であります。」p.41
・「すなわちわれわれが他人から聞いたつまらない説を伝えるのでなく、自分の拵った神学説を伝えるでなくして、私はこう感じた、私はこう苦しんだ、私はこう喜んだ、ということを書くならば、世間の人はドレだけ喜んでこれを読むか知れませぬ。」p.46
・「それならば最大遺物とは何であるか。私が考えてみますに人間が後世に残すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。」p.54
・「とにかく反対があればあるほど面白い。われわれに友達がない、われわれに金がない、われわれに学問がないというのが面白い。われわれが神の恩恵を享け、われわれの信仰によってこれらの不足に打ち勝つことができれば、われわれは非常な事業を遺すものである。」p.67
・「あたかも疾病の襲うところとなりて人の健康がわかると同然であります。平常のときには弱い人も強い人と違いません。疾病に罹って弱い人は斃れて強い人は存るのであります。」p.77
・「まことに詩人シラーのいいしがごとく、天然には永久の希望あり、壊敗はこれをただ人のあいだにおいてのみ見るのであります。」p.80
・「国人に嫌われながら彼らのために尽すは特別の名誉である、」p.110
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?ひえき【裨益】 (「裨」は、「おぎなう」または「たすける」意)おぎなって利益を与えること。たすけとなること。役に立つこと。補益。
?こうがい【慷慨】 1 (―する)世の中のことや自己の運命を、憤り嘆くこと。また、憤って、心を奮い起こすこと。あるいは、その心。「悲憤慷慨」 2 (形動)意気が盛んで物事に感じやすい性質。また、心を奮い起こし、意気盛んなさま。
?めいろん‐たくせつ【名論卓説】 すぐれた論説。
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なんと↓コチラで全文読めてしまいます。。。(とても読む気にはなれないけれど)
http://aozora.skr.jp/aozora/u/uchimura.html
・『後世への最大遺物』。かなり前から読みたいとは思っていたのですが、『長大で難解な思想書』との勝手な思い込みがあって、後まわしにしていました。ところが先日、BOOK OFFで偶然発見。『こんなに薄いの!?(約100ページ)』 思い込みとは恐ろしい。 明治27年(1894年)箱根にて開かれた第六回夏期学校(キリスト教徒の修養会)での講演録。
・読んでみると、なぜもっと早く読まなかったのか、と悔いた。参りました。感動しました。特別なことをしゃべっているというわけでもないのだけれど、著者の人柄というかオーラが活字を通して伝わってくる、初めての感覚。なんだこれは! また数年後には読み返したい本。なにか行動をおこさずにはいられなくなるような気持ちになる本。読む人によっては、その人生の軌道を大きくひん曲げるほどの力を秘めた本。人の道を説く怪しげな本はたくさん見かけますが、この本を前にすると皆消し飛んでしまうでしょう。
・巻末解説の紹介文が的確 → 「これは単なる一場の講演でありましたが、プロテスタント・キリスト教によってつちかわれた講演者自身のきわめて健康な精神は、長い年月にわたって日本の人々に強い感銘を与え、この講演それ自身がその人にとってその題名にふさわしい役割を果たしたのであります。」p.106
・前出書(じぶん・この不思議な存在)にて、『2006年のベスト本はこれで決まり!』などと口走ってしまいましたが、強敵現る。うれしい誤算。
・「すなわち私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起こってくる。」p.16
・「それでこの次は遺物のことです。何を置いて逝こう、という問題です。何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。」p.19
・「それでわれわれの今日の実際問題は社会問題であろうと、教会問題であろうと、青年問題であろうと、教育問題であろうとも、それを煎じつめてみれば、やはり金銭問題です。」p.21
・「金を儲けることは己れのために儲けるのではない、神の正しい道によって、天地宇宙の正当なる法則にしたがって、富を国家のために使うのであるという実業の精神がわれわれのなかに起こらんことを私は願う。」p.25
・「それで私が金よりもよい遺物は何であるかと考えて見ますと、事業です。事業とは、すなわち金を使うことです。」p.28
・「私一個人にとっては聖書のほかに、私の生涯に大刺激を与えた本は二つあります。一つはカーライルの『クロムウェル伝』であります。(中略)それからその次にこのブレーキ氏の書いた、『デビッド・リビングストン』という本です。」p.32
・「それでもし私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。」p.35
・「文学というものはわれわれの心に常に抱いているところの思想を後世に伝える道具に相違ない。それが文学の実用だと思います。」p.36
・「文学はわれわれがこの世界に戦争するときの道具である。今日戦争することはできないから未来において戦争しようというのが文学であります。」p.41
・「すなわちわれわれが他人から聞いたつまらない説を伝えるのでなく、自分の拵った神学説を伝えるでなくして、私はこう感じた、私はこう苦しんだ、私はこう喜んだ、ということを書くならば、世間の人はドレだけ喜んでこれを読むか知れませぬ。」p.46
・「それならば最大遺物とは何であるか。私が考えてみますに人間が後世に残すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。」p.54
・「とにかく反対があればあるほど面白い。われわれに友達がない、われわれに金がない、われわれに学問がないというのが面白い。われわれが神の恩恵を享け、われわれの信仰によってこれらの不足に打ち勝つことができれば、われわれは非常な事業を遺すものである。」p.67
・「あたかも疾病の襲うところとなりて人の健康がわかると同然であります。平常のときには弱い人も強い人と違いません。疾病に罹って弱い人は斃れて強い人は存るのであります。」p.77
・「まことに詩人シラーのいいしがごとく、天然には永久の希望あり、壊敗はこれをただ人のあいだにおいてのみ見るのであります。」p.80
・「国人に嫌われながら彼らのために尽すは特別の名誉である、」p.110
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?ひえき【裨益】 (「裨」は、「おぎなう」または「たすける」意)おぎなって利益を与えること。たすけとなること。役に立つこと。補益。
?こうがい【慷慨】 1 (―する)世の中のことや自己の運命を、憤り嘆くこと。また、憤って、心を奮い起こすこと。あるいは、その心。「悲憤慷慨」 2 (形動)意気が盛んで物事に感じやすい性質。また、心を奮い起こし、意気盛んなさま。
?めいろん‐たくせつ【名論卓説】 すぐれた論説。
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なんと↓コチラで全文読めてしまいます。。。(とても読む気にはなれないけれど)
http://aozora.skr.jp/aozora/u/uchimura.html