人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

GOOD BAD WEIRD ・・・・韓国版マカロニウエスタン

2009-09-03 17:04:00 | 映画


■ イ・ビョンホン、オマエは既に終わっている・・ ■

韓流ブームも下火になって久しいですが、
我が家には、未だイ・ビョンホンに夢中の女が居ます。
何を隠そう、私の家内です・・・。

イ・ビョンホン、確かにカッコイイです。
インタビューの受け答えも紳士的で知性も感じます。
それに、あのはにかんだ微笑は、確かに魅力的ではあります。

・・・しかし、私的にはソン・ヘギョと別れた時点で、
いいえ、付き合った時点でイ・ビョンホンは敵です!!
脳内的に抹殺されています。
「イ・ビュオンホン、オマエは既に終わっている・・・。」

さて、そのイ・ビョンホンの新作が「GOOD、BAD、WEIRD」。
「イイやつ、ワルイやつ、ヘンなやつ」というタイトルの韓国版西部劇。
普通なら、絶対見に行かないのですが、
サマーウォーズを観に行った際に見た予告編が、心に引っかかってしまった・・。

さらに、カミサンが奢ってくれるというから、心が動いてしまった・・。
さらに、ソン・ガンホが出ているので、実は観たかった・・・・。

■ 韓国版マカロニウエスタン ■

内容はナイヨ。・・・オシマイ。
でも、面白かった。
スカっとした。

清朝の財宝を狙う殺し屋のイ・ビョンホン(BAD)と、
イ・ビョンホンを狙う賞金稼ぎのチョ・ウソン(GOOD)と、
列車強盗を働いてたまたま宝の地図を手に入れた強盗のソン・ガンホ(WEIRD)。
宝の地図を巡る3人の争いに、馬賊と日本軍も絡んで、
もう、誰が敵で誰が味方かも分からない大乱戦。

そして、舞台は旧満州なのに、
舞台仕掛けは、何故か西部劇。
さらに言うならば、正統派西部劇では無く、完全にマカロニ・ウエスタン。

■ マカロニウエスタンの美学 ■

若い方はご存知無いと思いますが、
マカロニウエスタンはハリウッドで西部劇が廃れた後、
何故かイタリアで量産された西部劇です。

本家の西部劇は歴史的な重みもあって、名作も数多く生まれましたが、
日本でチャンバラが廃れたように、アメリカでも西部劇は凋落して行きます。
尤も、西部劇の伝統は、刑事物にしっかり受け継がれていて、
シェリフが刑事に、馬が車に、ゴロツキどもはマフィアに変わっただけです。

さて、一方のマカロニウエスタンは、1960年代から1970年代に量産されます。
経営不振のチネ・チッタをハリウッドが借りて撮影した事が始まりのようですが、
セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」で注目を集めます。

アメリカ産の西部劇よりも、残酷な描写が多く、派手なアクションが売りでした。
西部劇のガンマンは紳士で、助けられる女性もレディーですが、
マカロニウエスタンのガンマンは、何故かいつも汗まみれで汚らしく、
女性もアバズレというイメージがあります。

ここら辺は、日本の時代劇と同じ流れで、
鞍馬天狗などが、勧善懲悪のヒーローならば、
70年代の必殺シリーズは、アンチヒーローとして描かれています。
監督も深作欣司が担当していたりして、TVシリーズながらかなり過激な描写もありました。

マカロニウエスタンの美学といったら、
容赦なく撃ち殺す。
飛び散る血飛沫。
そして、エレキ・ギターのサウンド。

西部劇は「駅馬車」の様なジャン・ジャン・ジャ・ジャン・・・というオーケストラサウンドですが、
マカロニウエスタンはベン・ベーーン、ベベーーンといったエレキサウンド。
多くの曲はエンニオ・モリコーネの作によるものです。
これが、結構アバンギャルイドな音使いでカッコイイ。

■ アンチとしてのマカロニウエスタン ■

1970年代はアメリカにおいても、世界においても古い価値観が崩壊していく時代です。
若者達が文化の担い手となり、ヒッピーが生まれ、学生運動が激化した時代。
映画も当然、既成概念と闘う姿勢を明確にします。

「人を殺してはいけない」という束縛を振り払うかの様に、容赦なく敵に発砲する。
後ろからも、お構いなく撃つ!!
命乞いしても、撃つ!!
顔に返り血を浴びても、撃つ!!
何発も打ち込む!!
タランティーノ顔負けの残酷さで撃つ!!

■ キム・ジウン監督は素晴らしい ■

監督のキム・ジウンはマカロニウエスタンの美学を良く理解していて素晴らしい。
ビョンホンはヒドイ悪党で、とにかく殺す、刺す、撃つ、裏切る。
いつもの”はにかんだ”笑顔を捨てて、ふてぶてしく笑いながら殺しまくる。
それに対して、クールで何故か優しさを感じさせるチョ・ウソンも良い感じ。

そして、何よりも音楽が現代に蘇ったモリコーネの様で最高に楽しめます。
お決まりのギターサウンドに絡む、グランジテイストにゾクゾクします。

しかし、一番素晴らしいのが、ソン・ガンホ。
ビョンホンとウソンだけでは、単なるマカロニウエスタンのリメークの寒い映画なのに、
ソン・ガンホがカンフーアクションのテーストで映画を撹乱します。
とにかく、いい加減で、憎めなくて、弱いのに何故か死なない。
そして、とにかく上手い。
客を笑わせながら、グイグイ引きこんでしまいます。

■ 日本人にはつらい後半 ■

さて、話はドタバタしながらも清朝の宝を目指し、
登場人物全員が、馬で、バイクで、ジープで砂漠をひた走ります。

そして、日本軍に遭遇した彼らは、
オオオー何と、日本軍をメッタメタにやっつけてしまいます。
ビョンホンが無慈悲に撃ち殺し、
ウソンがクールに撃ち殺し、
ソン・ガンホも爆弾で蹴散らし・・・

これは、韓国人が見たら気持良すぎて失禁しそうなシーンです。
この日本人殲滅のシーンを見る為に映画館に行く人もいそうです。
しかし、日本人にはちょっと辛いシーンでもあります。
なかなか、配給先が決まらなかった事も納得出来ます。

■ ソン・ガンホ、最高!! ■

さて、どうにか宝に到達した3人。
しかし、宝そっちのけで、3人は決闘に突入。
ビョンホンは宝よりもソン・ガンホを倒したいらしい・・・・。
そして、ここで初めてソン・ガンホが素顔を見せます・・・
尤も、過去の回想シーンの1分程度・・・。
エエエエーーーー、怖すぎ、強すぎ、違いすぎ!!

イヤー、上手い俳優ですね。
この一瞬を見る為だけでもこの映画を観る価値がありそう。

韓国映画がキライな人こそ、見るべき一本です。
CGを使いまくった時代劇しか撮れない日本のヘボ監督達よ、
韓国のキム・ジウンの爪の垢を煎じて飲むが良い。
そして、映画史を勉強し直して来るが良い。

この映画を好きな人は変人かもしれませんが、
変人のあなたは、是非、映画館へGO