■ 国連の場で25%削減を発表 ■
鳩山総理大臣が国連総会の場で、
二酸化炭素の排出量を2020年までに1990年比で25%削減すると発表しました。
各国の反応は概ね好評の様です。
それはそうでしょう。
「日本は2020年までに、経済成長を犠牲にしても二酸化炭素を削減します。」
と宣言した様なもので、経済の競争相手が減ればどの国も喜びます。
さらに、途上国はアメリカを含め先進国に、日本並みの削減を求める口実が出来、
ヨーロッパ勢も、アメリカに一段と圧力を掛ける材料になります。
尤も、ヨーロパ勢の真の目的は、排出権市場の創設と、途上国経済の成長抑制ですし、
途上国の目的は、先進国のみに高い排出規制を強いる事です。
利害が全く相反する交渉は、進展するハズがありません。
現実的な危機が迫っていれば、真剣な討議もされるでしょうが、
現状、温暖化で被害などどの国でも出ていません。
■ 北極海の氷は減少していない ■
温暖化の象徴の様に報道されていた事があります。
2007年の北極海の海氷面積の減少です。
シロクマが絶滅してしまうのでは無いかという感情論的な報道がされました。
ところが、北極海の海氷の減少は、今年の夏は観測されていません。
インターネットとは便利なもので、googleで「北極海 海氷」で検索すれば
海氷の衛生写真を見る事も出来ます。
簡単な事ですが、メディアで洗脳された状態ですと、
簡単確認作業を怠ってしまうのが人間の常です。
http://www.ijis.iarc.uaf.edu/cgi-bin/seaice-monitor.cgi?lang=j
上が2007年、下が2009年です。
北極海の海氷の面積は、周期的に変動しており、
2007年以上の海氷面積の減退は、かつて何度も記録されています。
この事に限らず、温暖化の報道は現実からかけ離れています。
■ 排出権取引を導入するのか ■
民主党政権はどの様にして25%もの二酸化炭素を削減するのでしょうか?
てっとり早いのが炭素税の導入ですが、
経済状態が好ましく無い現状、増税は国民が納得しません。
税金を使わずに、企業に二酸化炭素を削減させる方法に、
二酸化炭素の排出権の取引があります。
キャップ・アンド・トレードと呼ばれていますが、
各企業に二酸化炭素の排出量の上限を割り振り(キャップ)、
排出上限を超えたら、排出上限を超えていない企業から排出権を購入する方法です。
国内だけで、排出権を売買する場合も考えられますし、
国際的に売買する方法も考えられます。
当然、流動性を高める為に、商品取引市場の様な方法を取らざるを得ないでしょうが、
ここに、排出権取引の大きな問題点が隠れています。
■ 投機化する排出権 ■
シカゴ商品取引市場は、何でも扱う事で有名です。
ここでは、穀物や石油を初め、天気までもが投機の対象となっています。
以前、アメリカで大気汚染物質に排出権取引を導入した際、
シカゴ商品取引市場で、排出権の売買に明け暮れたいたのが、
不正会計で有名なエネルギー企業のエンロンです。
大気汚染物質や二酸化炭素など、なんの経済的価値も無い物が、
商品取引市場で売買されれば、当然投機マネーが流入してきます。
何の価値も無い不良債権のサブプライムローンにマネーが群がった様に、
二酸化炭素の排出権が、あたかも価値のある様に投資の対象となります。
排出枠に余裕のある国がこれを見逃すはずはありません。
何の努力をしなくても、お金が沸いて来るのですから、
こんなに美味しい話はありません。
金融業界やファンドマネーも、利益を上げる機会が増えます。
高騰を誘い、売り抜ければ大もうけです。
私達も日々吐き出している二酸化炭素が売り買いされるなど、
これ程狂った話はありません。
■ 森林吸収という麻薬 ■
日本が1990年比マイナス25%の二酸化炭素を削減するには、
森林吸収を計算に入れる事は、ほぼ間違いの無い事でしょう。
「森林は二酸化炭素を吸収して成長し、二酸化炭素の削減に効果がある」
という一見、尤もらしい考え方ですが、
森林は枯れれば、腐敗と分解の過程で二酸化炭素を排出します。
森林は長い目で見れば、カーボン・ニュートラルであって、
二酸化炭素を一方的に吸収する存在ではありません。
まして、1990年も、2009年も同じ様に森林は日本に存在していた訳で、
2009年の森林吸収を二酸化炭素の削減量を「削減」と呼ぶ事は理解に苦しみます。
さらに、1990年より森林面積が減っていれば、むしろ森林吸収は「減少」しているはずです。
ところが、企業は森林を、文字通り「金の成る木」として見始めました。
後継者不足で手放される森林を、金融機関を初め企業が買い漁り始めました。
「日本興亜損保」などはコマーシャルで、森林の所有をECOとアピールする始末です。
・・・単に、将来的に排出権としてお金が生じる森林を安いうちに買っているだけです。
■ 森林吸収の運用は、地方の振興にすべき ■
私は、森林吸収を排出削減量に参入する事は、
科学的には大変抵抗を覚えますが、
地方の振興という意味では、悪い話では無いと考えています。
公共事業の減少から、都市部から地方のお金の流れは先細っていきます。
農業は、所得保障という形で、税金で補填する予定ですが、
林業もこれをやれば、財源はいくらあっても足りません。
そこで、森林の二酸化炭素吸収を排出権として売り、
製造業などが購入すれば、税金を使わずに、地域振興が可能です。
但し、東京の企業が森林を所有していたのでは、
製造業から金融業やサービス業に資金が移動するだけです。
そして、そのツケは、製品価格に上乗せされて消費者が支払う事になります。
森林を所有する企業が、林業に熱心で、山林を健全に管理しているのなら、
これもやぶさかではありあません。
しかし、所有するだけで、山を荒れ放題にして、
排出権だけを稼ぐ事は、絶対に許す事は出来ません。
本来、下草刈りや、間伐など森林の保全には手間が掛かります。
環境保全や、水源地保全、水害防止の観点からは重要な仕事ですが、
森林から上がる売り上げは、輸入材に押されて低迷しています。
そのような、国土保全の仕事の報酬として、
排出権は使用されるべきです。
当然、正しく管理されている森林の吸収量を大きく、
ズサンに管理されている森林の吸収量は小さく見積もって、
林業へのモチベーション向上の効果も持たせるべきです。
そうすれば、我々はたとえ商品価格に上乗せされたとしても、
国土保全の観点と、地域振興の観点から、
むしろ喜んで、その様な商品を購入するでしょう。