人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

LEDは有望な光源であるが・・・

2009-09-11 10:16:00 | 温暖化問題


■ 使わなければ省エネ ■

皆さんはどの様な省エネを実践されているでしょうか?
省エネの方法には二通りあります。

一つは「使わない事」

すぐ近くのコンビニなら歩いて行こう。
今日はちょっと涼しいから、エアコンを消して窓を開けよう。
この使わない事の省エネ効果は絶大です。
何故なら、エネルギーを全く消費しないからです。

尤も、その代わりにビールの量が増えたら、
LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的にエアコンの電気の方が
環境に優しかったりしますが・・、。

しかし、皆がこれを実践すると、経済は困った事になります。
車は手放して、自転車か歩きにしよう。
エアコンなんて無くても我慢出来るから、扇風機で充分。
自動車メーカーも家電メーカーも日本を支える重要な企業です。
その経営が成り立たなければ、私達の雇用も無くなる可能性があります。


■ 使いながら省エネ ■

第二の方法は、新技術を用いて「使いながら省エネ」を実現する方法です。
省エネ家電や、ハイブリット車、LED電球などがこれに当たります。

しかし、この使いながら省エネは、ハイブリット車を例に取るまでも無く、
省エネ効果が現れるまでに、時間が掛かります。
製造時に一時的に大量のエネルギーを使用し、
製品を使う過程で、直時間を掛けてエネルギーの負債を返済し、
5年とか10年後にやっとエネルギー収支がプラスになるという技術です。

■ LEDが実用域に達してきた ■

新世代の省エネ光源として期待の高まるLEDですが、
昨年あたりから、その明るさが実用域に達してきました。

昨年、シャープが安価なLED電球を発売し、
実売7000~8000円していたLED電球の価格が、
一気に4000円となりました。
かなり戦略的な価格ですが、この価格でスペック上、
従来の電球に対する優位性を主張出来るようになりました。

市場が活気付いたので、パナソニックも参入し、
東芝も従来品を半値に値下げして対抗しています。

■ プリウスよりも分かり易い省エネ比較 ■

電球というシンプルな物だけに、省エネ比較は実に容易です。

40W白熱電球
消費電力 ・・・・・・40W
寿命・・・・・・・・・1000時間
価格 ・・・・・・・・95円
ランプ代/40000時間・・3800円 
電気代/40000時間 ・・35200円 (22円/1Kwh)
TOTAL/40000時間・・・39000円

8W蛍光ランプ (40W型)
消費電力 ・・・・・・8W
寿命・・・・・・・・・6000時間
価格 ・・・・・・・・880円
ランプ代/40000時間・・5866円 
電気代/40000時間 ・・7040円 (22円/1Kwh)
TOTAL/40000時間・・・12906円


LED電球 (白熱電球 40W相当品)
消費電力・・・・・4.1W
寿命  ・・・・・40000時間
価格  ・・・・・4000円
電気料/4000時間・・3608円 (22円/1Kwh)
TOTAL/40000時間・・7608円

とまあ、40000時間使用すると、LED電球のコストは
白熱電球の約20%
電球型蛍光灯の60%となります。

従来の8000円の定価設定では、蛍光灯に対して優位性がありませんでしたので、
4000円になってLED電球は価格競争力を獲得しました。

■ LED電球は3世代100年経っても切れない ■

LED電球の魅力は、消費電力の低さと、長寿命です。
40000時間に1回交換するLEDと、40回交換する白熱電球では、差が歴然です。
40回分のランプ代を最初に支払う価格設定が、4000円の定価なのです。

しかし、一般家庭における40000時間とは一体何なのでしょう?
一般家庭で白熱電球が多く使われる場所は、
廊下と便所、そして風呂場くらいです。
後は、日本の家庭はリング型の蛍光灯で生活しているでしょう。

今回のLED電球は40Wの白熱電球と同等の明るさを売りにしていますが、
実は、光の量は40W電球の22%しかありません。
LEDの光は指向性が強く(懐中電灯の様なもの)、拡散しません。
ですから、1/5の程度の光を、集光させる事で、明るさを確保しています。
当然、使用用途も限られていて、ダウンライトの様に、
一定の方向にだけ光を出す器具にのみ使用出来ます。

さて、一般家庭でダウンライトを使用しえいるのは、
廊下とトイレと洗面所くらいです。
廊下の照明は一日何時間使用するでしょうか?
多分、1時間以下です。
トイレや洗面所も似たようなものです。
付けっぱなしにすれば、親に怒られます。

さて、1日1時間点灯して40000時間の寿命は40000日に相当します。
これは109年に相当します。
仮に2時間点灯でも50年を越えてしまいます。

LED電球を購入したら、3世代に渡って使い続ける程の寿命があります。
その前に家を建て替えなければならない時期がやって来ます。

■ 三世代目の孫は一生暗いまま ■

実は、LED電球の寿命は、LEDが点灯しなくなる時間では無く、
ランプの明るさが、およそ7割に減衰する時間です。
すると、廊下にLED電球を使用すると、
はじめは明るいのですが、寿命末期の30年間程は、7割の明るさでの生活となります。
そう、お爺ちゃんは良かったけれど、孫は30年間暗い生活を余儀なくされます。

ちょっとイジワルな想定でしたが、
スペック上では圧倒的にメリットがあるLED電球ですが、
実使用を想定すると、ネコに小判どころか、幼稚園児にフェラーリ状態です。

尤も、LEDの寿命の前に、点灯素子の寿命がやってきます。
コンデンサーのドライアップや、絶縁不良などが主な原因でしょうが、
8年から10年で不具合が派生する頻度が高まります。

LED電球の使用でメリットがあるのは、8年くらいで40000時間程度点灯させるケースです。
1日13時間程度、毎日点灯して、8年。
1日24時間点灯で4年半。

容易に用途が思い浮かびません。
多分、メンテナンスに足場を必要とするような高所の器具などですが、
4.1WのLEDでは明るさが全然足りません・・・。

■ 40Wの電球を4個、1日1時間点灯する電気代 ■

40Wの電球を1日1時間、4灯点灯した場合、(マンションの廊下や洗面所やトイレ)
一ヶ月の電気代は105.6円です。
1年で1272円。
この様な点灯方法では、ランプは理論上2.7年切れません。
実際には多分1.5年で切れます。
年間に95円のランプを2.6個交換する計算になります。

トータルのコストが1年間で、1519円。

これに対して、LED電球を4個購入する金額は、16000円。
約、10倍です。

・・・比較する事も無駄な事がお分かり頂けるでしょう。

■ 10年分のエネルギーと二酸化炭素を先払いしている ■

白熱電球はガラスと多少の金属で出来ています。
そのシンプルさ故に、製造コストも製造エンネルギーも低く、その結果が1個95円という価格です。

一方LED電球は、放熱の為にアルミの巨大な放熱板を持ち、
電子回路が無ければ点灯しません。
アルミは製造時に電気を大量に消費し、半導体も同様です。

言うなれば、LED電球は製造時に10年分のエネルギーと二酸化炭素を先払いしているのです。

■ 白熱電球の生産を止めようとする業界 ■

政府は2012年を目処に、白熱電球の生産を中止するよう業界に求めています。
メーカーも東芝が2010年に白熱電球の生産を中止します。

一足飛びにLED化する事は考えられませので、
電球型蛍光ランプに置き換わった後、
次世代LEDに代替されてゆく事でしょう。

しかし、1日1時間点灯であれば白熱電球こそが最適な光源です。

蛍光灯は水銀の廃棄の問題や、
蛍光体に用いる、希土類(レアメタル)のコバルトが今後高騰する事が予想されます。
LEDも点灯回路を含めれば、廃棄が容易な物ではありません。

省エネを名目に、白熱電球を製造中止にすれば、
メーカーは電球1個あたり、10倍から、40倍の売り上げが見込めます。
しかし、これは消費者である我々が負担せざるを得ません。

これが、エコビジネスの実体です。

■ LEDは将来主流になってゆく有望な技術 ■

実は、私はLED照明の推進論者ですし、
仕事の上でも、LED照明メーカーとお付き合いがあります。

LEDの発光効率は、数年で蛍光灯い追いつき、
価格さえ安くなれば、オフスの照明の何割かはLEDに代替されて行くと思っています。

しかし、それは容易な道のりではありません。
蛍光灯は優れた光源で、現状でも充分な省エネ性能を持っています。
現状のLEDは発光効率でも、蛍光灯の半分程度というのが実情です。
これを、いかに蛍光灯並みにするのか?
現状、蛍光灯の3倍のコストをいかに低く抑えるのか、課題は山積しています。

しかし、ガラス管の中に水銀蒸気を封入し、放電現象によって点灯させる蛍光灯の技術は、
100年前の技術で、ローテクです。

LEDの性能が向上すれば、デザインも寿命も効率も蛍光灯より優れた照明となります。
ブラウン管TVが液晶TVに変わったように、蛍光灯の多くはLEDに代替されます。
これは、経済的にも技術的にもメリットがある、正統な進化です。

しかし、それは白熱電球を製造中止にして駆逐するのとは意味が違います。
省エネの合言葉の裏で、無理がまかり通る社会は、真っ当な社会ではありません。

■ メリットの無い政策は失敗する ■

国内で電球製造を中止しても、中国から安価な電球が輸入され、
スーパーや100円ショップに並びます。
メーカーは、白熱電球という商品を一つ失う結果に終わります。

ドイツの太陽光発電も同じ問題をはらんでいます。
ドイツは非効率な太陽光発電のコスト負担にいつか耐えられなくなるでしょう。

ハイブリット車は、補助金や税制優遇処置でで問題を隠しています。
プラグイン化で活路が開けそうですが・・・
それとてコバルトやリチウム、ネオジウムが高騰すれば、メリットは吹き飛びます。
電気自動車に至っては、自治体や企業のオモチャ以上の道は開けないでしょう。

結局、経済的にメリットの無い政策は失敗します。
その点においては、資本主義の原理は、今も昔も変わらず作用し続けていくでしょう。