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アメリカの雇用統計に敏感に反応する米株・・・危機の本丸はヨーロッパでは無い

2012-06-04 10:18:00 | 時事/金融危機
 

■ NY市場暴落 ■

週末のNY市場は大きく下げました。
これはギリシャ問題でナーバスになっている市場が、
アメリカの5月の雇用統計に大きく反応して結果です。

最近のアメリカの経済指標は、
消費者物価指数などは、そこそこの伸びを示しすが、
これは、ドル安によるインフレと、
不景気によるデフレが拮抗した結果の数字です。

だから、消費者物価指数とか、
ミシガン大学消費者信頼感指数などは
経済の先行きをあまり正確に反映していないと私は考えます。

「5月米ミシガン大消費者信頼感は4年超ぶり高水準、雇用市場楽観」(ロイター 2012.05.26)
http://jp.reuters.com/article/idJPTJE84O00W20120525

<引用開始>

[ニューヨーク 25日 ロイター] ロイター/ミシガン大学の5月米消費者信頼感指数(確報値)は79.3と、エコノミスト予想や同月速報値の77.8を上回り、2007年10月以来4年超ぶりの高水準となった。
雇用市場を引き続き楽観視し、比較的高所得の世帯が一段の賃金上昇を見込んでいる。

ただ、調査を担当したリチャード・カーティン氏は「残念ながら、消費者信頼感は引き続き極めて悪化しやすい状況だ」と分析。「仮に最近の雇用成長の減速が向こう数カ月間続くとすれば、信頼感が三度低下するきっかけとなる可能性がある」と警告した。

内訳では、景気現況指数が87.2と2008年1月以来の高水準に上昇、消費者期待指数も74.3と2007年7月以来の水準に改善した。

1年インフレ期待は3.0%に低下、5─10年インフレ見通しも2.7%に低下した。

<引用終わり>

上の様な記事に直後に、雇用統計が出て
株価暴落ですから・・・・。

■ ボディーブローの様に効く隠れたインフレ ■

アメリカはインフレだと言うと、
多くの方が、むしろデフレ基調だろうと反論されます。

しかし、オバマはこう発言しています。

「米国の雇用の低迷、ガソリン価格高と欧州危機が原因=米大統領」 (ロイター2012.06.04)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE85300Z20120604

<引用開始>

ゴールデンバレー(米ミネソタ州) 1日 ロイター] オバマ米大統領は1日、米経済は依然として盤石な状態とは言えず、ガソリン価格高や欧州経済危機の悪影響が十分なペースでの雇用の創出を阻んでいる、との見解を示した。
ミネソタ州ゴールデンバレーにある米複合企業ハネウェル・インターナショナル(HON.N: 株価, 企業情報, レポート)の工場で演説した。

大統領は「経済は再び成長しているが、期待しているほどの速さではない。過去27カ月間に企業は約430万人の新規雇用を創出したが、きょう(1日)の雇用統計で、まだ望ましい速さで創出されてはいないことが分かった」と語った。

5月の雇用統計では、失業率が4月の8.1%から8.2%に上昇した。

大統領は、外的要因を雇用伸び悩みの主因に挙げ、「昨年の今ごろと同様、米経済は引き続き深刻な逆風にさらされている」と述べた。

オバマ大統領はガソリン価格について、このところの高値からは低下してきたものの、人々の財布を直撃したと指摘。ユーロ圏の問題については米国に「影を落とし始めた」と表現した。

また、議会の共和党に対し、雇用拡大、成長刺激につながる政策の立法化をあらためて求めた。

<引用終わり>


アメリカは雇用はなかなか回復していません。
政府は地方行政部門と、金融部門が大量の解雇を行っており、
民間の雇用者数は確かに増加していますが、
これは日本同様に、安い労働力への質的シフトが発生しています。

住宅価格の下落に歯止めが掛からず、
失業や好まざる就職によって国全体の購買力が低下しているのですから、
アメリカは完全にデフレ基調です。

しかし、アメリカのインフレ率は2%を目指しています。
これこそが、不景気と物価高が平行して起こるスタグフレーションです。
FRBが、QEでドルを増刷すればする程、
ドルは下落します。

上手い事に、ドルと産油国通貨がぺっくしていたり、
中国の元がドルに半ばペックしているので、
ドル安は、アメリカの輸入物価のに、
あまり影響を与えないように見えます。

しかし、FRBが金融緩和をするとその資金は原油や穀物市場にに流れ込み、
需給バランスを反映しない、原油高を引き起こします。
原油高は確実に物価に上昇圧力を加えます。

ガソリンをガブ飲みするアメリカ社会では、
ガソリンの高騰は消費を直撃します。
その結果、消費はさらに落ち込むので、
インフレとデフレが拮抗して、
消費者物価指数が結果的に安定か微増するのです。

要は経済指標がアメリカ経済の実情と乖離している。

■ ケース・シスラー住宅指数と雇用統計が一番実体を表している ■

「米住宅価格指数:3月は前年比2.6%低下、下落ペースやや鈍化」 (bloomberg 2012.05.29)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4SC9O6JTSEE01.html

<引用開始>

月29日(ブルームバーグ):3月の全米20都市の住宅価格は前年比で下落ペースが減速した。低水準にある住宅ローン金利が影響しているとみられる。

全米20都市を対象にした3月の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で2.6%低下。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の予想中央値と一致した。前月は3.5%の低下だった。

レイモンド・ジェームズ・アンド・アソシエーツのチーフエコノミスト、スコット・ブラウン氏は、「非常に緩やかな回復が続いてきた。住宅市場の急回復は誰も期待していなかった」と述べた。

全米20都市のうち13都市の住宅価格が前年比で下落。特にアトランタは18%下落した。一方フェニックスは6.1%上昇した。

前月比で見ると季節調整後ベースの住宅価格は0.1%上昇。前月は0.2%の上昇だった。季節調整前の住宅価格は前月比でほぼ変わらずだった。

<引用終わり>


実に微妙なタイトルの記事ですが、
要は、住宅価格の下落は未だに続いているのです。
リーマンショックの原因は住宅バブルの崩壊でしたから、
アメリカは住宅価格が下げ止まらなければ景気の回復はせず、
消費も雇用も伸び悩む事になります。


■ アメリカが大胆な量的緩和に踏み切れない理由 ■

ドルは基軸通貨なのだから、好きなだけ刷って景気を刺激すれば良いと思われますが、
雇用と住宅価格が低調な現状では、
増刷されたドルは、金融市場や商品市場を徘徊するだけで、
実体経済を回復させる事が出来ません。

一方で、過剰に流通するドルは、
商品市場に流れ込み、原油価格を不要に上昇させませす。
その結果、ガソリン高が発生して、
米国民の不満が高まると同時に、
ガソリン以外の消費を低下させるいう悪循環が発生します。

「生活苦」は国民の不満に直結します。
アメリカは大統領選挙を控え、
年末に向けての景気回復を演出したいはずです。

ここら辺が、市場とFRBの腹の探り合いなのでしょう。

■ ユーロ危機を上手く煽って、リスク資金をアメリカに誘導 ■

危機の本丸はアメリカですから、
ユーロ圏とて、アメリカ経済の突然死は望みません。

ですから、EUはギリシャ危機を煽って、
ある意味、アメリカを援護射撃しています。

実はギリシャは残存国債をどうにか処理してしまえば、
プライマリーバランスはそれ程悪くありません。

緊縮を先行させたヨーロッパは、イタリアの財政状態も
短期的に危機に陥るようなものではありません。

ただ、ギリシャ危機によってPIGS諸国の国債金利が不当に上昇し、
国債危機が発生している様に見えているだけです。

だから、ギリシャ危機を上手に乗り切れば、
スペインやイタリアの危機は落ち着きを取り戻します。
この時に、ユーロの財政の統合への道筋が付いていれば、
ヨーロッパの混乱ひと段落し、真の意味での「強いユーロ」が出現します。

■ ユーロの安定は、アメリカの衰退 ■

世界の通貨は「ブサイクコンテスト」の最中です。
ユーロが財政統合で見てくれが良くなれば、
ドルの醜さが際立ってきます。

アメリカからの資金逃避が始まれば、
アメリカ国債の危機が再燃します。
国債上限の引き上げの時期が重なれば、
またしても、アメリカ国債のデフォルト騒動が始まります。

現状では2013年一杯までは
債務上限を引き上げなくても問題ないと説明されています。

しかし、大規模な金融危機が発生した場合、
銀行の救済などでそれより以前に債務上限に達する可能性もあります。

真の危機はここから始まるのだと思われます。

それが、今年度中に発生するのか、
あるいは2013年以降となるのは不明ですが、
次の米国債危機に際しては、それなりの覚悟も必要なのかも知れません。