■ デフレから脱却出来ない世界 ■
リーマンショック以降、FRBもECBも大量の通貨供給を行っています。
しかし、世界は未だにデフレに喘いでおり、
ドイツ、アメリカ、日本の金利は低下する一方です。
市場に供給される資金は、実態経済への投資に向わず、
金融市場を彷徨った挙句に消えて行きます。
どこに消えて行くかと言えば、借金の返済に消えて行くのです。
債権金融システム(シャドーバンキング)は、
借金で借金を膨らめるシステムです。
ですから、借金の返済期限を迎えれば、
資金の流れは逆転して、無限に資金を吸収して行きます。
この資金の吸収規模を上回る資金需要を生み出している間は、
債権金融システムは機能しますが、
資金の吸収規模が拡大すれば、
中央銀行が通貨を供給して、これを補わなければ
いずれ金融機関は債務超過に陥り、破綻する事は明確です。
FRBやECBの資金供給は、破綻の先延ばしにはなりますが、
大きな資金需要が生まれない限り、
世界は自律的な成長軌道に乗る事はありません。
■ インフレとデフレが拮抗している ■
現在世界の実態経済はデフレです。
それでも、各国のインフレ率はプラスを指しています。
これは経済成長によるインフレと言うよりは、
過剰流動性による資源価格の高騰に負う所が大きいでしょう。
石油危機の様な極端な原油価格の高騰が起こっていないので、
石油ショック後に欧米を襲ったスタグフレーション程顕著ではありませんが、
現状世界は、緩やかなスタグフレーション状態にあると言えます。
■ 1920年以降の金融恐慌時のデフレ脱却 ■
現在世界が心配しているのは1920年代の世界恐慌に再来です。
世界恐慌がニューヨーク株式市場の暴落で始まった事は良く知られています。
そして、教科書ではニューディール政策などの財政出動により
景気が回復したと書かれています。
しかし、現在では多くの研究者が、
ケインズ的経済政策で景気は回復しなかったと考えています。
結果的には世界をデフレから救ったのは
戦争による需要の拡大というのが定説になりつつあります。
それでは、世界恐慌の発生から戦争までの期間、
各国は具体的にどのような政策を取っていたのでしょうか?
■ 金本位制の廃止がデフレ脱却を促した ■
興味深い資料を見つけたので紹介します。
「大恐慌期のデフレから世界経済はどのようにして脱却したのか?」
http://reflation-jp.net/?p=112
長いので要約してみます。
1) 世界恐慌で世界はデフレに突入した
2) 各国は金融緩和と国際買い入れ、財政出動などを行ったがデフレは止まらなかった
3) 金本位制体制化では通貨供給量に制約があった。
4) 金本位制を廃止して、通貨価値を切り下げ、物価が上昇に転じた
5) 物価上昇のタイミングではデフレギャップが埋まっていなかった
6) デフレ脱却に財政政策や輸出の拡大は寄与していない
<結論>
世界恐慌からのデフレ脱却に寄与したのは「金本位制の廃止」という通貨体性の
大きなレジームチェンジであり、従来の通貨体性の中での政策は効果を発揮しなかった。
色々異論はあるかと思われますが、
戦争がデフレ脱却の原因であるという通説は
これによれば否定されるかもしれません。
むしろ戦争は再び経済成長し始めた世界が、
新たな資源と、新たな需要を必要とした為に
発生したとも考えられます。
■ 現代におけるレジームチェンジとは? ■
金本位制の廃止に匹敵する現在におけるレジームチェンジとは何でしょうか?
現在の世界は「ドル本位制」です。
危機が深刻化する度にドルが買われ、米国債が買われます。
しかし、金に現物としての限界がある様に、
アメリカの信用も無限ではありません。
現に、アメリカはQE3を発動できずに、
ヨーロパの通貨危機と、日本の不況に助けられています。
アメリカの信用が飛躍的に拡大しない限り
信用の創造には限界が生じ、
世界経済の復活の足かせになります。
ではドルを捨て去ったらどうなるでしょうか?
世界の金融市場は一時混乱し、あらゆる通貨が減価します。
様は、世界で一斉にインフレが進行するのです。
これは「金本位制の廃止」と同じ意味あいを持ちます。
通貨の価値を故意に損なう事で、インフレを引き起こし、
摘みあがった負債を軽減する事で、世界は始めて成長軌道に乗れるのです。
■ 戦争を前提としない回復 ■
第二次世界大戦が、経済の回復期に発生したとすると、
今回も、ドル崩壊から後の、世界の回復期に戦争の危険性が高まります。
しかし人類もバカではありませんから、
戦争の危険性を事前に回避する努力が為されています。
それが、アメリカの中東からの撤退と、イスラエルの弱体化。
そして、TPPを枠組みにする中国、ロシアの大陸封じ込め政策です。
第二次世界大戦の原因は、回復期に帝国主義各国が市場をブロック化した事にあります。
対立するブロックの資源と需要を争奪する戦いが、第二次世界大戦でした。
しかし、核の時代に人類の存亡を掛けた戦争は起こりえません。
世界を幾つかのブロックに分け、
それぞれを大国の核の傘の下に入れる事で力の均衡を図ります。
その上で、各ブロックが経済的に独立しうる資源と、生産力と、需要を持ち得るならば、
世界は核の抑止力の上に再び均衡します。
要は第二の冷戦構造が確立されるのです。
この構造は米ソ対立という二強の対立では無く、
世界のいくつかのブロックの緩やかな対立になるはずです。
そして、ブロック間障壁は、関税と武器の禁輸くらいになるのでは無いでしょうか?
■ 世界の火薬庫としての中東 ■
アメリカは第二次世界大戦後、世界の警察の役割と世界の銀行の役割を担っていました。
その代償が、アメリカによる中東と石油の支配でした。
しかし、現在、アメリカは中東における影響力を大きく減退させています。
「イスラエルを守る為」という大儀も半ば放棄している様に見えます。
イランやシリアにおけるアメリカの干渉は、
むしろイランやシリアをロシアや中国側に押しやっています。
どうやら、湾岸を中心とする世界の火薬庫としての中東の管理は、
ロシアと中国に委ねられつつある様に見えます。
キリスト教国であるアメリカが中東を支配するよりも、
宗教色の薄い共産国家や、旧共産国家の方が
上手く中東を管理できるのかも知れません。
■ レジームチェンジは世界的規模で行われる ■
いずれにしても今回のレジームチェンジも世界的な規模で行われ、
その中心になるのが「ドル機軸体性の崩壊」だと私は考えます。
その荒波の中で日本がどうなるかは、非常に不安ではありますが、
世界同時インフレが進行するのであれば、
日本の財政もバランス化し、
同時に、預金の価値が無くなる事で、
世代間格差が一気に解消します。
このガラガラポンの後にどういう国家再生するのかが問題であって、
再び、製造業を中心に技術立国を再興するのか、
あるいは、税金に頼らない自立的な地方を創造するのか、
新たなビジョンを描ける政治家の登場が期待されます。
少なくとも政争に明け暮れる現在の年寄り政治家達では無く、
若い世代の自由な発想が求められるはずです。
橋本大阪市長は、大志を抱く多くの政治家志望の若者に
一種の希望を与えたという意味においては重要な存在です。
明治維新に多くの若者が活躍した様に、
これから始まる平成維新にも
多くの有能な若者が競い合って、
新たな日本の枠組みを作って行くことでしょう。
尤も、新たな日本や世界の国々は、
近代国家という概念を超越した存在になるはずです。
近代国家という枠組みが、限りなく不明確になる時代に、
国家や国民とは、どういう存在であり、
国家や国民の幸せとは、どの様に定義されるべきなのか?
バブル後以降、日本人は崩壊に怯えながら生きています。
しかし、一度腹を括ってしませば、
日本人は持ち前の団結力と忍耐力を発揮します。
こう考えると、来るべき未来を、そう悲観する事も無いのでは・・。
本日は、妄想の翼を思い切り広げてみました。