■ スペイン支援に1000億ユーロを決めたEU ■
ギリシャとスペインの扱いの違いと言ったら、
まさに「月とスッポン」です。
EU蔵相は電話会議で、スペインの銀行の救済の為に
1000億ユーロを拠出する事を、すんなりと合意しました。
「ユーロ圏財務相、スペインに最大1000億ユーロの支援で合意」 (2012.06.11 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE85900D20120610
<引用開始>
ユーロ圏財務相は9日、スペインの銀行の資金増強に向けて、同国に最大1000億ユーロ(1250億ドル)の支援を行うことで合意した。
ユーロ圏財務相は2時間半に及ぶ電話会議後に声明を発表し、「予想される必要額に加え、あらゆる資金需要に応えることのできる額として、総額1000億ユーロを見込んだ」と表明した。
声明によると、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)か、来月発足する欧州安定メカニズム(ESM)を通じて支援が実施される。スペインの銀行再編基金(FROB)を通じて実際に銀行への資金注入が行われるが、スペイン政府が金融支援に関するすべての責任を持つ。
声明は、支援に伴う条件は銀行セクターに限定されるとしており、すでにスペイン政府が取り組んでいる緊縮財政策や経済構造改革などにさらに厳しい条件が追加されることはない見込み
- 後略 -
<引用終わり>
■ ユーロ崩壊に繋がるスペイン危機は見逃せない ■
スペインの危機はイタリア、フランスに飛び火して、
ユーロ崩壊へと繋がります。
ですからEUはスペインは絶対防衛の構えを示し初めました。
銀行を直接支援して、スペイン財政に過度の負担を掛けない
ここがミソです。
欧州の危機を大きくしているのは「国債危機」です。
国債金利は中古国債の市場取引で決まる為、
危機が発覚すると、ヒステリックに反応して、
当該国の国債金利は10%、20%と跳ね上がってゆきます。
ところがヨーロッパの各国の財政は、
日本やアメリカなども比べれば余程健全です。
ヨーロッパの危機は、EU諸国の宣伝と、市場心理が生み出しているのです。
ですから危機の根本であるEUの対応が改善すれば、
市場はパニック状態を脱して平穏を取り戻します。
では、市場に平穏を与えるのは何か?
それは、単発の支援対策では無く、
ユーロ圏の財政統合と、ユーロ共通債の発行です。
■ 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)か、欧州安定メカニズム(ESM)の財源 ■
1000億ユーロでスペインが救えるかどうかは微妙です。
多分、通貨の資金が必要になるでしょう。
これをECBが賄うとなると、ECBのバランスシートが痛みます。
そこでEFSFやESMの財源としてユーロ共同債を発行するのでは無いでしょうか?
様は、危機対策として、用途を限定してユーロ共同債を発行する。
PIGSの信用を地に落ちていますが、
ユーロ圏全体としてはドイツを初め北部ヨーロッパの絶対の信用がる。
だから、ユーロ共同債には信用があります。
当然、金利はドイツ国債並みに低く抑えられます。
■ 財政統合は出来るところから ■
ギリシャやスペイオンの財政の穴埋めをユーロ共同債で行う事は
ドイツ国民には抵抗が大きいでしょう。
しかし「ヨーロッパの銀行の危機を救うファンド」に資金を出すならば、
それはヨーロッパの銀行不安の連鎖を断ち切る意味で、
ドイツ国民にも理解の得やすい政策です。
ギリシャやスペインの銀行に貸し付けているのは、
フランスやドイツの銀行ですから、
結局は、自分達の資金で、自分達を救済する事になります。
こうして、ユーロ共同債という枠組みを作ってしまえば、
後は経済が安定した後に、徐々に財政統合に進んで行けば良い。
■ ギリシャ危機は再燃する ■
スペインでは前向きな対応をするEU諸国ですが、
ギリシャに対しては、積極的な対策を打ちません。
ダラダラと救済を小出しにしながら、
ギリシャをさらなる窮地に追い込み、
怠惰なギリシャ国民が自ら危機を招いているという演出に余念がありません。
実はギリシャと同じくらいヤバヤバなポルトガルが
何故だか話題に上がりません・・・。
ギリシャは6月17日の再選挙の結果によっては、
ユーロ危機に油を注ぎます。
スペインの救済が上手く行く様に見えていただけに、
再び、スペイン危機がフューチャーされ、
1000億ユーロの支援金額は跳ね上がる事でしょう。
EFSF、ESMの財源が底を突く事態になって、
ユーロ共同債をこの財源に充てなければ
ユーロが崩壊するというアナウンスがされるでしょう。
後はユーロ圏の国民がどの位危機感を共有するかで、
ユーロは崩壊するのか、財政統合の一歩が踏み出されるのかが決まるはずです。
ユーロ共同債の発行が決まれば、
ギリシャもお役御免で、救済されるのでしょう。
はたして、この計画が上手く行くのか、
それともイギリスとアメリカが横槍を入れるのか、
世界の政治のドロドロの部分が観察できる格好の機会です。
そして、金融が市場原理に支配されているという幻想から
多くの人々が覚醒する機会ともなるのでしょう。