こk
2011年末
http://www.kane-kasi.com/blog/2012/05/001869.html より
■ 日本国債運用が75%の「ゆうちょ銀行」 ■
日本国債の最大の保有者と言えば「ゆうちょ銀行」です。
日本国債の20%近くを、「ゆうちょ銀行」が保有している事が分かります。
2011年3月末での、「ゆうちょ銀行」の日本国債保有残高は146.5兆円です。
ゆうちょ銀行の資産総額は195兆円ですから
ゆうちょ銀行は資産総額の75%を日本国債で運用しています。
2009年
2009年のデータで少し古いのですが、
「かんぽ」の保有高も少なくはありません。
■ 「金融商品」としての日本国債 ■
国内のメガバンクの日本国債の平均残存年数は3年を切っています。
これは、日本国債の継続性に懸念がある為に、
短期国債や残存年数の少ない国債中心に運用して、
リスクを低減する目的があります。
IMFが国内メガバンクに日本国債暴落時のリスク管理を提出させていますが、
各社、残存年数を短くすると答えており、実際にそれを実行しています。
メガバンクなどは、国債を金融商品の一つとしているので、
日々、大量の国債を売買しています。
日本国債は中古市場で大量に取引され、その額は月額300兆円あまり。
年額は11年度で約3700兆円。
http://www.nicmr.com/nicmr/data/market/debenture.pdf より
こちらのサイトに具体的な数字が出ています。
http://www.findai.com/kouza/307bond.html
これを株式市場と比べてみると東証一部の売買代金と年間比較すれば
10倍を超える巨大市場です。
http://www.investwalker.jp/i-statistics-info/touko-list/tse-jp-toukei/tse-annual-trading-value/ より
金融機関が保有する日本国債が、「時価会計」の対象になるのは、
国債が、「売買」を目的といした「金融商品」と定義されるからです。
新規に発行される日本国債の30倍程度の売買額があるのです。
ただ、上の日本国債の売買高の推移からも分かる様に、
金融機関の保有する国債の残存年数が圧縮されると同時に、
金融機関が短期国債を満期保有する率も増えている様で、
国債の売買代金は年々減少傾向を示しています。
■ 中古国債市場の価格が、新発国債の利率を決定する ■
国債は他の債券と同様に、中古市場が発達しています。
国債の中古市場では日々、大量の国債が売買されます。
金融機関は、この売買を通じて利益を稼いでいます。
国債の金利は、中古市場での国債の価格によって決定します。
仮に100円で満期保有の利率が3%の国債があったとします。
満期まで保有すれば、103円が手元に戻ってきます。
ところが、この国債を中古市場で95円で購入して満期まで保有すると、
103/95=1.084となり、8.4%の利率になります。
国債価格の下落=国債金利の上昇
国債価格の上昇=国債金利の下落
新規に発行される国債の金利は、中古国債の金利と同等でなければ売れません。
ですから、新発国債の金利を決定しているのは、中古市場の国債価格なのです。
■ 長期国債の金利は、短期国債よりも高い ■
一方で、長期国債や残存年数の長い国債の引き受け手は
「ゆうちょ」や「年金」そして「生命保険」などでしょう。
これらの機関は、国債を満期保有して安定した金利収益を得る事を目的としています。
長期国債は短期国債に比べて金利が高い事が特徴です。
短期国債市場の金利は、中古市場での国債の需給関係で決まります。
一方、10年を超える長期国債の金利は、将来的な景気の動向予測で決まります。
将来、景気が拡大して金利が上昇すると見込まれれば、長期国債の金利は上昇します。
逆に将来の景気が減速すると見込まれれば、金利は低下します。
しかし10年以上先に景気予測には不確実性があり、
将来、金利が予想以上に上昇するリスクがあります。
そこで、長期国債の金利はリスク分だけ高くなり、
短期国債よりも高い金利が付きます。
■ 長期金利の低下 = イールドカーブのフラット化 ■
先日の黒田日銀総裁の大規模緩和の発表では、
日銀は平均残存年数7年までの国債を大量に購入すると発表しています。
今までが平均残存年数3年だったので、長期国債を大量に購入できることになります。
日銀によって長期国債の需要が強引に増えたので(7割程度を日銀が購入?)
需要の増加に伴って、中古市場での長期国債の金利が急激に低下しています。
国債の年限と金利の関係をグラフ化したのが「イールドカーブ」です。
現在の金利が低くても将来金利が高くなる可能性がある場合、
イールドカーブは右肩上がりになります。(順イールド)
逆に、何らかの不安で短期金利が急上昇すると長短金利が逆転します。(逆イールド)
景気の転換点で将来予測が難しい時には、イールドカーブは平坦になります。(フラット化)
日本のイールドカーブの推移が下のサイトで動画で見れます。
http://d.hatena.ne.jp/teramonagi/20111110/1320936164
今回の日銀の緩和政策は、長期金利を強引に押し下げたので
イールドカーブが強引にフラット化されました。
国債市場に正常な市場原理が働いている時は、
イールドカーブはある程度、景気の将来動向を反映したものになります。
ところが、日銀が過度に市場に介入する事で、
イールドカーブがフラット化し、長期的な金利上昇リスクを低下させました。
長期金利の低下は日銀の長期国債の大量買入れに対する市場の正常な反応です。
しかし、イールドカーブを投資の指標にしている様な場合、
人為的なイールドカーブの操作は、市場参加者に混乱を招きます。
出口戦略とも絡むのですが、緩和政策の終了に伴い、
イールドカーブが急激に変化します。
この人為的なリスクを、市場がどうヘッジするかが問題となるでしょう。
■ 「長期国債の金利が下がる」=「ゆうちょ銀行の利益が無くなる」 ■
長期金利が強引に押し下げられた事で発生する問題がもう一つあります。
それは「ゆうちょ銀行」や「年金」、「生命保険」など、
長期国債を満期保有して安定した金利収益を確保する機関の収益が悪化する事です。
将来的に約束している金利よりも、運用金利が低下すれば、
これらの機関は経営が苦しくなります。
そこで、日本国債と同様に安定していて、
金利が確実に得られる投資先を探す事になります。
それは、ズバリ、米国債です。
円安が加速すれば、実質金利も高くなるので、
日本国内からの米国債投資は急増するはずです。
これらの機関が将来的に長期の米国債を買う事を予測して、
日銀の追加緩和直後から10年物、30年物の米国債の価格が上昇しています。
■ あれあれ、日銀によるアメリカへの迂回融資じゃないか ■
「市場は日銀によるイールドカーブのフラット化で・・・」なんて御託を並べていますが、
結局、日本の金融機関から長期国債を日銀が買い上げて、
或いは、長期の日本国債投資への機会を奪う事で、
間接的に日本の資金を米国債購入へと向わせています。
これって、日銀によるアメリカへの迂回融資みたいば物ではありませんか。
郵貯だけでも146兆円の資金の多くが、米国債に向うとすれば、
その影響力は少なくありません。
日本人はTPPのISD条項によって「ゆうちょ銀行」が狙われると騒いでいますが、
そんな回りくどい方法を取らずとも、金利差を利用して
「ゆうちょマネー」や「年金マネー」がアメリカへと流出しています。
まあ、米国債がきちんと償還されれば問題はありませんが、
ドル安が進んだりすれば、これらの投資は為替差損を発生させます。
日銀がイールドカーブに働き掛ける目的の一つに、
将来的な円安を約束する事で、為替リスクを低減する事にあるのでしょうが、
はたして、アメリカの経済は復活するでしょうか?
ジャブジャブ供給されるジャパンマネーが
アメリカのバブルをさらに拡大した場合、
それが崩壊した時の破壊力は、金融システム自身をも破壊するかも知れません。
悲観論かも知れませんが、
今後の「ゆうちょ銀行」の米国債の保有残高の推移が楽しみでもあります。
しかし、日銀って誰の味方なのでしょうか?
2011年末
http://www.kane-kasi.com/blog/2012/05/001869.html より
■ 日本国債運用が75%の「ゆうちょ銀行」 ■
日本国債の最大の保有者と言えば「ゆうちょ銀行」です。
日本国債の20%近くを、「ゆうちょ銀行」が保有している事が分かります。
2011年3月末での、「ゆうちょ銀行」の日本国債保有残高は146.5兆円です。
ゆうちょ銀行の資産総額は195兆円ですから
ゆうちょ銀行は資産総額の75%を日本国債で運用しています。
2009年
2009年のデータで少し古いのですが、
「かんぽ」の保有高も少なくはありません。
■ 「金融商品」としての日本国債 ■
国内のメガバンクの日本国債の平均残存年数は3年を切っています。
これは、日本国債の継続性に懸念がある為に、
短期国債や残存年数の少ない国債中心に運用して、
リスクを低減する目的があります。
IMFが国内メガバンクに日本国債暴落時のリスク管理を提出させていますが、
各社、残存年数を短くすると答えており、実際にそれを実行しています。
メガバンクなどは、国債を金融商品の一つとしているので、
日々、大量の国債を売買しています。
日本国債は中古市場で大量に取引され、その額は月額300兆円あまり。
年額は11年度で約3700兆円。
http://www.nicmr.com/nicmr/data/market/debenture.pdf より
こちらのサイトに具体的な数字が出ています。
http://www.findai.com/kouza/307bond.html
これを株式市場と比べてみると東証一部の売買代金と年間比較すれば
10倍を超える巨大市場です。
http://www.investwalker.jp/i-statistics-info/touko-list/tse-jp-toukei/tse-annual-trading-value/ より
金融機関が保有する日本国債が、「時価会計」の対象になるのは、
国債が、「売買」を目的といした「金融商品」と定義されるからです。
新規に発行される日本国債の30倍程度の売買額があるのです。
ただ、上の日本国債の売買高の推移からも分かる様に、
金融機関の保有する国債の残存年数が圧縮されると同時に、
金融機関が短期国債を満期保有する率も増えている様で、
国債の売買代金は年々減少傾向を示しています。
■ 中古国債市場の価格が、新発国債の利率を決定する ■
国債は他の債券と同様に、中古市場が発達しています。
国債の中古市場では日々、大量の国債が売買されます。
金融機関は、この売買を通じて利益を稼いでいます。
国債の金利は、中古市場での国債の価格によって決定します。
仮に100円で満期保有の利率が3%の国債があったとします。
満期まで保有すれば、103円が手元に戻ってきます。
ところが、この国債を中古市場で95円で購入して満期まで保有すると、
103/95=1.084となり、8.4%の利率になります。
国債価格の下落=国債金利の上昇
国債価格の上昇=国債金利の下落
新規に発行される国債の金利は、中古国債の金利と同等でなければ売れません。
ですから、新発国債の金利を決定しているのは、中古市場の国債価格なのです。
■ 長期国債の金利は、短期国債よりも高い ■
一方で、長期国債や残存年数の長い国債の引き受け手は
「ゆうちょ」や「年金」そして「生命保険」などでしょう。
これらの機関は、国債を満期保有して安定した金利収益を得る事を目的としています。
長期国債は短期国債に比べて金利が高い事が特徴です。
短期国債市場の金利は、中古市場での国債の需給関係で決まります。
一方、10年を超える長期国債の金利は、将来的な景気の動向予測で決まります。
将来、景気が拡大して金利が上昇すると見込まれれば、長期国債の金利は上昇します。
逆に将来の景気が減速すると見込まれれば、金利は低下します。
しかし10年以上先に景気予測には不確実性があり、
将来、金利が予想以上に上昇するリスクがあります。
そこで、長期国債の金利はリスク分だけ高くなり、
短期国債よりも高い金利が付きます。
■ 長期金利の低下 = イールドカーブのフラット化 ■
先日の黒田日銀総裁の大規模緩和の発表では、
日銀は平均残存年数7年までの国債を大量に購入すると発表しています。
今までが平均残存年数3年だったので、長期国債を大量に購入できることになります。
日銀によって長期国債の需要が強引に増えたので(7割程度を日銀が購入?)
需要の増加に伴って、中古市場での長期国債の金利が急激に低下しています。
国債の年限と金利の関係をグラフ化したのが「イールドカーブ」です。
現在の金利が低くても将来金利が高くなる可能性がある場合、
イールドカーブは右肩上がりになります。(順イールド)
逆に、何らかの不安で短期金利が急上昇すると長短金利が逆転します。(逆イールド)
景気の転換点で将来予測が難しい時には、イールドカーブは平坦になります。(フラット化)
日本のイールドカーブの推移が下のサイトで動画で見れます。
http://d.hatena.ne.jp/teramonagi/20111110/1320936164
今回の日銀の緩和政策は、長期金利を強引に押し下げたので
イールドカーブが強引にフラット化されました。
国債市場に正常な市場原理が働いている時は、
イールドカーブはある程度、景気の将来動向を反映したものになります。
ところが、日銀が過度に市場に介入する事で、
イールドカーブがフラット化し、長期的な金利上昇リスクを低下させました。
長期金利の低下は日銀の長期国債の大量買入れに対する市場の正常な反応です。
しかし、イールドカーブを投資の指標にしている様な場合、
人為的なイールドカーブの操作は、市場参加者に混乱を招きます。
出口戦略とも絡むのですが、緩和政策の終了に伴い、
イールドカーブが急激に変化します。
この人為的なリスクを、市場がどうヘッジするかが問題となるでしょう。
■ 「長期国債の金利が下がる」=「ゆうちょ銀行の利益が無くなる」 ■
長期金利が強引に押し下げられた事で発生する問題がもう一つあります。
それは「ゆうちょ銀行」や「年金」、「生命保険」など、
長期国債を満期保有して安定した金利収益を確保する機関の収益が悪化する事です。
将来的に約束している金利よりも、運用金利が低下すれば、
これらの機関は経営が苦しくなります。
そこで、日本国債と同様に安定していて、
金利が確実に得られる投資先を探す事になります。
それは、ズバリ、米国債です。
円安が加速すれば、実質金利も高くなるので、
日本国内からの米国債投資は急増するはずです。
これらの機関が将来的に長期の米国債を買う事を予測して、
日銀の追加緩和直後から10年物、30年物の米国債の価格が上昇しています。
■ あれあれ、日銀によるアメリカへの迂回融資じゃないか ■
「市場は日銀によるイールドカーブのフラット化で・・・」なんて御託を並べていますが、
結局、日本の金融機関から長期国債を日銀が買い上げて、
或いは、長期の日本国債投資への機会を奪う事で、
間接的に日本の資金を米国債購入へと向わせています。
これって、日銀によるアメリカへの迂回融資みたいば物ではありませんか。
郵貯だけでも146兆円の資金の多くが、米国債に向うとすれば、
その影響力は少なくありません。
日本人はTPPのISD条項によって「ゆうちょ銀行」が狙われると騒いでいますが、
そんな回りくどい方法を取らずとも、金利差を利用して
「ゆうちょマネー」や「年金マネー」がアメリカへと流出しています。
まあ、米国債がきちんと償還されれば問題はありませんが、
ドル安が進んだりすれば、これらの投資は為替差損を発生させます。
日銀がイールドカーブに働き掛ける目的の一つに、
将来的な円安を約束する事で、為替リスクを低減する事にあるのでしょうが、
はたして、アメリカの経済は復活するでしょうか?
ジャブジャブ供給されるジャパンマネーが
アメリカのバブルをさらに拡大した場合、
それが崩壊した時の破壊力は、金融システム自身をも破壊するかも知れません。
悲観論かも知れませんが、
今後の「ゆうちょ銀行」の米国債の保有残高の推移が楽しみでもあります。
しかし、日銀って誰の味方なのでしょうか?