昨日のエントリーにマンドランさんからご指摘を頂いたので、
通貨の価値の毀損について追記します。
■ 現代の通貨は「信用」で成り立っている ■
日銀の「日本国債の全量買取」がどういう事態を招くかと言えば、
それは「国家の信用」と「円の信用」の喪失です。
「円」は紙切れです。
しかし、「信用通貨」は「国家の信用」によって「紙切れ」に「価値」を与えています。
金兌換制が停止された現在において、「通貨」は「紙」以外の何物でもありませんが、
「政府」を国民や世界が信用している限り、これは「お金」として機能します。
ところが、政府が無節操に「お金」を増やしたらどうなるでしょう。
名目GDPは上昇します。
これを好景気と宣伝する事が出来ますし、庶民も賃金が上昇すればそう錯覚します。
中央銀行で無く、政府が発行する「政府通貨」が現在の世界で禁じ手なのは、
過剰発行によって通貨の信用を著しく損なう恐れがあるからです。
■ 通貨の価値を担保するのは、国家と国民の資産と、そして税を通した労働供与 ■
ですから中央銀行制度は、「資産と引き換え」に通貨を発行して、
「お金」と「実態経済」をリンクさせ、「紙のお金」に「価値」を付加しています。
「国債」で担保として機能するのは、「国家の資産」と「国民の生産力」です。
国家の日銀からの借金は、「徴税」という「国民の労働奉仕」によって支払われます。
このバランスが取れているうちは、多少国債を多く発行しても
国債の信用も、通貨の信用も失われません。
■ 預金は担保に取られている ■
しかし、国債を大量に発行し、これを中央銀行が全量引き受ける事になれば、
国債の信用も、通貨の信用も同時に失われます。
将来の税収を、国債の発行量が上回ってしまうからです。
「日本人の預金がある内は国債を発行出来る」というのも同様の理由です。
私達の「個人資産」の多くは「預金」です。
銀行が預金の運用として、日本国債を買っている場合、
「国債の担保」は私達の「預金」です。
仮に日本国債がデフォルトすれば、私達の預金が毀損します。
■ 自国建て国債はデフォルトしないが、通貨価値の下落で国民は資産を失う ■
日本は「自国建ての国債」を発行していますから、デフォルトはしません。
その代わり、日銀の全量買取によって、大量の通貨が市場に大放出される過程で
高率のインフレが発生し、2年で通貨価値が半減する様な事態が発生します。
銀行預金の価値が半減する一方で、日本の債務は事実上半減します。
これが「インフレ税」の実態で、同時に為替も調整されます。
日本の国と通貨の信用が失われれば、「円」は大暴落します。
200円、300円/1ドルで踏みとどまれれば良いですが、
ショックが大きければ、円はさらに下落します。
■ 国家の負債としての「国債」は、国民の資産 というウソ ■
三橋氏の最大のウソは「国家の負債は国民の資産」という発言です。
通貨価値が毀損すれば、バランスシートの両方が価値を失います。
国民は「資産」を失い、国家は「負債」を失います。
そう、国民の「資産」によって、国家の「負債」が支払われるのです。
「円の価値」という外側からの視点を無視して、
バランスシートの中だけのバランスで「国債」を説明するのは詐欺とも言えます。
・・・それでもあなたは三橋氏を信用しますか?