人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「自国建て国債は破綻しない」・・・これは永久機関詐欺と一緒の論法だ

2013-04-18 02:05:00 | 時事/金融危機
 

■ 「永久機関」と同様に詐欺臭い、破綻しない日本国債 ■

永久機関は、外部からエネルギーを供給しなくても動き続ける装置です。
しかし、そのような便利な装置は実際には存在しません。
科学的には、「熱力学の第一法則」と「熱力学の第二法則」により否定されます。

テスラーが発見ていたと言われる、所謂フリーエネルギーは、
地球の磁場をエネルギー源をしています。
フリーとは磁場のエネルギーがタダというだけの話です。

ところが、「自国建て国債はいくら発行しても破綻しない」と主張する人物も居ます。

私は「永久機関」同様に、「無制限に永遠に発行し続ける国債」は存在しないと思います。


■ ウソ? ホント? 「自国建国債は破綻しない」 ■

三橋貴明氏が良く言われる「自国建国債は破綻しない」という発言、
彼の主張は以下の通りかと思います。

■ 「日本国内の金融機関が90%保有しているから破綻しない」 ウソ? ホント? ■

1) 日本の国債は日本国内の金融機関が90%を保有している
2) ヘッジファンドが日本国債売りを仕掛けても、日銀と日本の銀行が買ってまう
3) 国内の金融機関が、ヘッジファンドの同調して、
   自分達が大量に保有している国債を無価値にする様な売り抜けは不合理で考え難い


従来、国際の危機は、ヘッジファンドなどの売り浴びせによる
金利の上昇によって発生すると考えらていました。

金利が上昇して、どうして損をするのでしょうか?

1) 外資の売り浴びせなどで国債価格が下がる(需給バランスの悪化)
2) 国債の価格が下がるので、償還時の金利は実質的に上昇する
3) 新発国債は中古市場の金利以下では売れないので、つられて金利が上昇する
4) 国債金利は市場金利の基礎になるので、つられて市場金利が上昇する
5) 金融機関の保有する既発国債の金利が、将来予測される市場金利を大きく下回る
6) 将来的に支払う金利を、手元の国債で賄えないので金融機関が含み損を抱える
7) 中古国債価格がさらに下落して含み損が拡大する前に、手持ちの国債を売却する
8) 国債市場が売り一色になり、さらに金利が上昇(価格は下落)する

複雑で良く分かりませんね。

簡単に言ってしまえば、国債は盛んに売買される金融商品なのです。
日本国債の市場規模は、年間3000兆円の売買が行なわれています。
銀行などは、国債を満期保有する目的で所有するのでは無く、
国債を売買する事で、利ざやを稼いでいるのです。

当然、国債価格が下落すれば、損が拡大する前に売りぬけようとします。
運用担当者が、国債価格の下落を見過ごせば、首が飛びますし、
銀行は巨大な損失を被ります。

ところが、三橋氏の主張の根幹は次の様なものでしょう。

「日本の銀行が日本国債の暴落を自ら誘う国債売抜けを行なうのは不合理だ」

これはゲーム理論にも繫がりますが、
理性的な判断をするならば、
日本の銀行は国債を売らない方が国債価格の下落を小さく抑えられます。

ところが、運用担当者からすれば、刻々と利益が縮小し、
場合によっては国債の購入価格を割り込んで評価損が拡大する訳ですから
ある限界を超えれば、国債を売却する行動に出ざるを得ません。

ところが、従来は日本国債市場が非常に安定していた為、
日本の金融機関は、国債金利の急変動など、数年以内は起こらないと安心していました。

しかし、日銀の大規模緩和により、
日本国債市場と言えども、一度バランスを崩せば、
容易に金利が乱高下する事が明らかになってしまいました。

■ 「満期まで保有すれば元利合計が得られるのだから売らなければ良い」ウソ、ホント? ■

三橋氏の主張にこういうもののあります。

「万が一国債価格が崩落(金利が暴騰)しても、満期まえ保有すれば元利が得られる」

この主張が間違っていた事は今回明らかになっています。

日銀は今回、長期国債を中心に大量の日本国債を市場から購入しました。
その結果、残存7年以上の国債の金利が大幅に低下しました。

日本のメガバンクなどは、現在リスクを軽減する為に
国債の平均残存年数を2.5年まで圧縮しています。
万が一、インフレが発生しても、
短期の金利上昇のリスクは長期よりも少ないからです。

一方、長期国債は、金利上昇の影響を大きく受けます。
ですから、長期国債の金利は短期国債よりも高く設定されています。
しかし、現在の10年ものの金利は0.5%程度、
30年物でも2%を下回っていました。

ここに日銀が大量の買い入れを行なったので、
長期金利はさらに低下しました。

現在長期国債を大量に保有しているのは、
ゆうちょ銀行や、生命保険会社、年金などです。
これらの機関は、比較的長期保有を前提に長期国債を保有しています。

しかし、あまり国債金利が低下してしまうと、
金利収益が、支払い金利や経費の合計を下回ってしまいます。
要は、金利が低下しすぎると損をするのです。

日銀の買い入れで大きく低下した長期国債の金利が、上昇に転じたのは、
これらの長期国債を大量に保有する金融機関が、
将来的な損失を嫌って、長期国債を売却して、
米国債などの乗り換えた事で発生しました。

今回の騒動で、リスクの大きな長期国債は、
リスクが高まれば、国内の金融機関ですら売却する事が明らかになっています。

■ 「いざとなったら日銀が全量を買い上げてば良い」 ウソ? ホント? ■

三橋氏の主張の最後は、次の様に続きます。

1) 国債が暴落したら日銀が全量買い入れれば良い
2) 日本国債は自国通貨建てなので、日銀は円を刷って国債を買えば良い
3) 政府が償還時に払う金利は、日銀の利益として政府に還付される
4) 政府も日銀も損はしていない


これを、マネタイズと言います。
あるいは、中央銀行による財政のファイナンスと言います。

これは、中央銀行制度の最大のタブーです。
現状、日銀は新発国債の7割を市場を通じて買い入れていますがから、
世界は既に、日本は中央銀行が財政のファイナンスをしていると見ています。

これら自国通貨建てで無ければ、とっくに日本国債は暴落しています。
この点においては、三橋氏の主張は正しいと言えます。

一方、国債の金利を決めるのが市場である以上、
限度を超えた日銀の買い入れで、日本国債が暴落する事があり得る事は、
今回の騒動で十部明らかになっています。

「日銀が7割も買っても大丈夫じゃないか」と言われそうですが、
市場はテクニカルと、そして思惑に左右されます。
今回の様に、テクニカルな危機に、ヘッジファンドの思惑が絡むと、
日本国債の暴落の可能性が高まります。

さて、日銀が市場の日本国債を全て買ったらどうなるでしょう。

1000兆円の資金が一斉に放出される事になります。
当然、高率のインフレが発生するので、
人々は預金を下ろして、現物資産で資産保全を図ろうとします。

すると、銀行から預金が流出して、メガバンクと言えども一瞬で破綻します。

その頃、為替相場は200円とか300円/1ドルを超えて円安が加速します。
要は円の信用が著しく損なわれるのです。

さて、輸入価格はどうなるでしょうか?
電気量は?ガソリンは?食費は?

こしてインフレが進行すると、貨幣価値は著しく低下します。
銀行預金は見る見るうちに、価値を減少してゆきます。
結局、資産価値が消滅する事で、国家が庶民の資産を召し上げるのです。

これを「インフレ税」と呼びます。
法律を必要としない「増税」だとも言えます。

「インフレ税」は昔から何度と無く実行されてきました。

■ 実は中央銀行を廃止して政府通貨を発行すれば良い? ■

ところで、こういう疑問も当然生じます。

「日本政府の財政赤字が溜まるのは、政府が国債を発行するからだ。
 国債など発行せずに、政府が直接お金を発行すればよいじゃないか?」

所謂政府通貨というシステムです。
経済に必要な量を政府の責任で発行出来ます。
国債を発行する必要も無いので、財政赤字も膨らみません。

確かにこのシステムは、過度に市場が介入しない分、
政府の裁量は格段に拡大します。

しかし、政治の人気取りで過剰に通貨を発行する危険性が常に伴います。
独裁国家ならば実行できるかも知れませんが、
政党が競い合う、民主主義国家では、結局通貨の必要以上の増刷により、
国民の資産を毀損する恐れが高くなります。

人も政治家も、聖人君主では無いのです。




<追記>

ご指摘を頂いたので追記します。

■ 現代の通貨は「信用」で成り立っている ■

日銀の「日本国債の全量買取」がどういう事態を招くかと言えば、
それは「国家の信用」と「円の信用」の喪失です。

「円」は紙切れです。
しかし、「信用通貨」は「国家の信用」によって「紙切れ」に「価値」を与えています。

金兌換制が停止された現在において、「通貨」は「紙」以外の何物でもありませんが、
「政府」を国民や世界が信用している限り、これは「お金」として機能します。

ところが、政府が無節操に「お金」を増やしたらどうなるでしょう。
名目GDPは上昇します。
これを好景気と宣伝する事が出来ますし、庶民も賃金が上昇すればそう錯覚します。

中央銀行で無く、政府が発行する「政府通貨」が現在の世界で禁じ手なのは、
過剰発行によって通貨の信用を著しく損なう恐れがあるからです。

■ 通貨の価値を担保するのは、国家と国民の資産と、そして税を通した労働供与 ■

ですから中央銀行制度は、「資産と引き換え」に通貨を発行して、
「お金」と「実態経済」をリンクさせ、「紙のお金」に「価値」を付加しています。

「国債」で担保として機能するのは、「国家の資産」と「国民の生産力」です。
国家の日銀からの借金は、「徴税」という「国民の労働奉仕」によって支払われます。

このバランスが取れているうちは、多少国債を多く発行しても
国債の信用も、通貨の信用も失われません。

■ 預金は担保に取られている ■

しかし、国債を大量に発行し、これを中央銀行が全量引き受ける事になれば、
国債の信用も、通貨の信用も同時に失われます。
将来の税収を、国債の発行量が上回ってしまうからです。

「日本人の預金がある内は国債を発行出来る」というのも同様の理由です。
私達の「個人資産」の多くは「預金」です。
銀行が預金の運用として、日本国債を買っている場合、
「国債の担保」は私達の「預金」です。

仮に日本国債がデフォルトすれば、私達の預金が毀損します。

■ 自国建て国債はデフォルトしないが、通貨価値の下落で国民は資産を失う ■

日本は「自国建ての国債」を発行していますから、デフォルトはしません。
その代わり、日銀の全量買取によって、大量の通貨が市場に大放出される過程で
高率のインフレが発生し、2年で通貨価値が半減する様な事態が発生します。

銀行預金の価値が半減する一方で、日本の債務は事実上半減します。

これが「インフレ税」の実態で、同時に為替も調整されます。
日本の国と通貨の信用が失われれば、「円」は大暴落します。

200円、300円/1ドルで踏みとどまれれば良いですが、
ショックが大きければ、円はさらに下落します。

■ 国家の負債としての「国債」は、国民の資産 というウソ ■

三橋氏の最大のウソは「国家の負債は国民の資産」という発言です。

通貨価値が毀損すれば、バランスシートの両方が価値を失います。
国民は「資産」を失い、国家は「負債」を失います。
そう、国民の「資産」によって、国家の「負債」が支払われるのです。


「円の価値」という外側からの視点を無視して、
バランスシートの中だけのバランスで「国債」を説明するのは詐欺とも言えます。


・・・それでもあなたは三橋氏を信用しますか?