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景気回復の定義・・・バブルは景気回復か?

2013-04-13 08:46:00 | 時事/金融危機
 

■ 金融緩和の影響 ■

金融緩和の影響について考えてみます。

A 株や不動産など、資産価格の上昇による景気が回復するケース

1) 中央銀行が金融緩和を行なう
2) 株や不動産市場に資金が流入して、相場が上昇
3) 富裕層の消費が増える
4) 商業施設などの設備投資が増える
5) 雇用が拡大し、賃金が上昇に転じる
6) 庶民の消費が回復する
7) 需要が拡大し、設備投資が増える
8) 正の循環が加速して、景気が拡大する

このケースを「景気回復」と呼ぶか、「資産バブル」と呼ぶか人それぞれです。

■ 富裕層のオコボレで景気を回復させる ■

1) 資産バブルによって富裕層が潤う
2) 富裕層の消費拡大効果のオコボレに庶民があずかる

単純に言ってしまえば、上の様な構造ですが、
これは、富裕層の減税を実施した、レーガノミクスの様な政策です。

アメリカでは減税が経済効果が協調されがちですが、
レーガノミクスの主体は強いドルの復活です。
ドル高政策によって、アメリカへの投資の実質金利が上昇し、
アメリカへの資金流入が発生した事が、レーガノミクスの最大の効果です。

これを、富裕層が「減税=景気拡大」と言い換えて、
自分達の負担を軽減しているだけの事です。

■ 日本の大バブルは、円高不況克服の為の金利低下によって膨らんだ ■

日本の大バブルは少々状況が異なります。
日本の銀行は保守的なので、不動産などの担保に大して融資するとも言えます。
円高不況から脱却する為に日銀は公定歩合を引き下げて経済を刺激します。
この頃の金利は高かたので、金利引き下げは大きな効果を発揮します。

金融機関は「不動産の価格は下がらない」という妄執に取り付かれていましたから、
金融機関の融資によって、不動産価格が上昇すると、
さらに融資額を増やすといった行為を繰り返しました。

結果は不動産大バブルが発生しましたが、
過熱感を抑える為に、日銀が「総量規制」を実施した事で、
資金が枯渇し、資金の流れが一気に逆転してます。
資産価格が下落に転じた瞬間、バブルは崩壊します。

■ 資産バブルを煽る日銀 ■

今回日銀は、国債を買い入れてマネタリーベースを拡大すると共に
日本株や不動産REITを買い入れています。

株や不動産REITは白川総裁の時も行われていましたが、
これは相場の下落幅が1%を超えた時にのみ買い入れが実行されています。
所謂PKO(price keeping operation)という非常時の相場の買い支えです。

ところが、現在の日銀は、株価や不動産REITのが上昇している時に
これらを購入しています。
これは明らかに、価格上昇を意図した介入です。

そう、日銀は株価や不動産REITの価格を故意に引き揚げて、
相場を吊り上げているのです。

これは、まともな中央銀行の所業ではありません。

■ 株や不動産相場が上昇する事は経済にプラス ■

株や不動産相場が上昇する事は経済にプラスに働きます。

1) 株や不動産で儲けた人が消費を増やす
2) 企業のバランスシートの資産が拡大して、バランスシートが改善する
3) バランスシートの改善により、企業の負債比率が相対的に少なくなる
4) バランスシートの改善により、企業の業績が改善する

5) 株式市場での資金調達が容易になる
6) 塩漬けにされた不動産に流動性が生まれる

バブル崩壊後、さらにはリーマンショック崩壊後に不当に下落した
日本の資産価格が、定期性水準に戻るだけなら、
日銀お今の政策は、全く間違ってはいません。

■ どこまでが適正価格で、どこからがバブルか ■

資産価格の上昇がバブルなのか、それとも適正価格への回復なのかは
普通は市場が判断します。
しかし、市場は判断をおうおうにして誤ります。

銀行が判断を誤る理由の一つが、豊富な資金供給です。
金利の安い資金が供給される間は、どんなに利益の薄い投資でも利益が出せます。
ですから、資産価格が天井に近づいても、相場は上昇を続けます。

ところが、資金供給が縮小に転じた時、
相場がバブルであったか、適正であったかが問われます。

相場が適正であったなら、価格の低下は限定的です。
価格がバブルであったばらば、一気に価格が低下してバブルがハジケます。

■ 金融緩和は出口で躓く ■

FRBがリーマンショック後に金融緩和を実施した際、
「出口戦略」という言葉がセットで語られました。

要は、景気が「金融緩和」は正常な状態では無いので、
どこかで終わらなければなりません。

しかし、金融緩和の終了は、「金利上昇」か「量的緩和の終了」を意味します。
いずれにしても、「低利の資金」の提供者が消えます。

先述した様に、資金の減少は、バブルの引き金になります。

結局、冒頭に挙げた、金融緩和の効果が5)ぐらいに達して
雇用が改善されると、金融緩和の縮小が検討されます。
これが「出口戦略」です。

日本も大バブル崩壊後、2度程、「出口を模索」した事があります。
しかし、その都度、回復していたと思われた景気はマイナスに転じています。

結局、一般の消費が回復して、
マネーサプライのサイクルが回り出すまで金融緩和を続ける必要がありますが、
景気回復の原動力が資産価格の上昇なのですから、
資産価格はバブル価格になっている可能性は高くなります。

そこで、「出口戦略」を実行すれば、バブルが一気に崩壊します。

■ 長期の低迷よりも、甚大な被害を及ぼすバブルの崩壊 ■

日本は先の大バブルの崩壊から25年経っても景気が回復していません。

大バブルで作った負債を、今でも企業や個人が払い続け、
バランスシートの改善をひたすら続けていあます。

結局、バブルの好景気は数年でしたが、
その後の不景気は25年以上続いています。

一方、バブルの崩壊で日本の経済は将来に渡る損失を被ります。

株主の外国人比率も格段に高まりました。
ヘッジファンドなどが日本の銀行や資産を買い叩きました。
終身雇用が崩壊し、不正規労働も殖えました。

■ 黒田日銀の「異次元緩和」の先にあるもの ■

黒田総裁の「異次元緩和」は、まさに異世界のお伽噺の様です。

マネタリーベースを拡大して景気を刺激する一方で、
新発国債の7割に当たる国債を、市場から日銀が買い入れて
国債金利を低く抑え、それによって、市中の金利を抑制しようとしています。

ところが、最初から矛盾を孕んでいます。
景気回復の兆しが見えれれば、金利は自然に上昇するからです。

黒田総裁の「異次元緩和」は、こういった経済の常識に真っ向から挑戦する
まさに、21世紀で最大の経済実験なのです。

失敗の代償は、バブルの崩壊と、日本国債の暴落。

■ 本当の景気回復は、イノベーションからしか生まれない ■

本当の景気回復はイノベーションからしか生まれません。

20世紀までのイノベーションとは、「生産性の向上」でした。
生産性が向上すれば、商品価格は下がり、価格競争力を武器に売り上げが延びました。

しかし、このイノベーションは勝者が居れば、必ず敗者が居ます。
20世紀後半は日本やドイツが勝ち組で、アメリカが敗者でした。

しかし、「安い労働力」と「割安な通貨」と「最新の製造設備」を備えた新たな競争者が現れます。
韓国や中国です。

日本はかつてのアメリカの様に、製造業のシェアを失います。

その頃、アメリカではITや金融という新たな産業を生み出します。
歯止めが掛かりにくい資本主義の悪癖で、
これらはバブルを生み出しハジケています。

しかし、これらの産業は、新しいニーズを生み出した事も確かで、
衰退した製造業の穴を埋めています。

■ 日銀の政策は、複合的である ■

日銀の金融緩和の効果は、バブル以外にも現れます。


B 円安による輸出企業の業績改善により経済が回復するケース

1) 中央銀行が金融緩和を行なう
2) マネタリーベースの増加により、日本円が安くなる(ソロスチャート)
3) 輸出企業の業績が改善する
4) 輸出企業が増産の為に雇用を拡大する

但し、韓国や中国の製造業が成長した現在、
日本の輸出量がどれだけ伸びるかには、疑問が残ります。

そして、小泉時代同様に、企業が利益を株主に還元したり、
内部保留を積み上げる様では、雇用回復も限定的です。


C 国債に集中していた金融機関の資金が国債以外に投資されて景気が回復するケース

1) 日銀が国債を積極的に買い入れる
2) 国債金利が低下して、金融機関の国債離れが起きる
3) 金融機関が国債以外の運用先として、民間への貸し出しを増加させる
4) 株価や不動産価格が上昇したり、設備投資が増える
5) 需要が回復し、雇用が拡大する


黒田総裁の異次元緩和以降、」、
国債に集中していた資金は、金利を求めて国外に流出しています。
アメリカ国債が買われているのです。

日銀の「異次元介入」は短期的に日本経済に明るい話題を振りまきますが、
どこかで、バブルの崩壊を生み出して、
今よりももっと苦しい生活を国民に強いるかもしれませn。

まあ、先の話は神のみぞ知る・・・ですが・・・。