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映画・演劇のレビュー

飛鳥井千砂『アシンメトリー』

2009-12-24 19:42:50 | その他
 なんだか気味の悪い恋愛小説だ。読んでいて少し胸糞が悪い。ラストのハッピーエンドのような、でもバッド・テイストも、作者の狙いなのだろうが、居心地の悪さ故、不快感が残る。  4人の男女の恋愛話だが、それぞれ不幸な過去を抱えていて、そのへんの事情は面白い、と言えば面白いかも知れない。粘つくようなタッチが、不安をあおる。他者に対する微妙な距離感が、4人の嘘くさいお互いの関係を形作る。この小説の描く悪意 . . . 本文を読む
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金蘭会高校演劇部『けろけろ』

2009-12-24 18:58:54 | 演劇
 久々に金蘭会の芝居を見て、元気をもらった気がする。毎年夏にはHPFで金蘭の芝居を見るのを楽しみにしてきたのに、2年連続仕事の関係で見ることが叶わなかっただけに、今回の「私学芸術文化祭」での公演はラッキーだった。  このメンバーでの芝居を見るのはたぶん初めてで、しかも、演出に山本篤先生の名前がクレジットされていない。今まで見た芝居はいずれも総演出というクレジットがなされていたのではないか。それは . . . 本文を読む
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『かいじゅうたちのいるところ』

2009-12-23 19:16:53 | 映画
 『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ監督の新作である。有名なモーリス・センダックの絵本を原作にして自由奔放にイメージを飛躍させた。スパイク・ジョーンズはメジャー大作でも、子どもたちをターゲットにした作品であろうとも、いつものインディペンデント感覚を忘れない。  子供たちはこのラフなタッチをいったいどう受け止めたのだろうか。手持ちカメラで揺れる画像とか、不気味なかいじゅうたちの造形とか。 . . . 本文を読む
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桃園会『ぐり、ぐりっと』

2009-12-21 19:31:52 | 演劇
 桃園会の新作は、深津さんの短編3作品を、ジャブジャブサーキットのはせひろいちさん、遊劇体のキタモトマサヤさん、そして深津さん自身の3人が演出するという夢のような企画だった。しかし、深津さんの病気によって演出ははせさんとキタモトさんの2人が担当することとなり、深津さんは監修という形で作品に携わることとなった。  だが、これはこれで夢のコラボレーションであることに変わりはない。だいたい上演中止にな . . . 本文を読む
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『マクロスF 虚空歌姫』

2009-12-17 22:35:27 | 映画
 『超時空要塞マクロス』に嵌まったのはいつの話だろうか。ヤマトやガンダムより、後であることは確かだろう。劇場版『愛、おぼえてますか』を見た時、いくらなんでもそれはないだろ、と思った。だが、そんなことわかった上で、それをやってるのだ。見上げたものだ、とも思った。歌が世界を救うなんて、本来なら、あほらしくてやってられない。でも、本気だ。  敵と味方が、宇宙を舞台に戦争をしていたのに、ミンメイ(だった . . . 本文を読む
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キャラメルボックス『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』

2009-12-17 21:52:15 | 映画
 昨年のキャラメルボックス・クリスマス・ツァーを映像化した作品。前作『嵐になるまで待って』以上に素晴らしい出来だ。これが舞台の記録映像だなんて、とても思えない。何より凄いのは、クローズ・アップだ。カットバックの多用も含めて、初期の映画の単純だけど、新鮮だった技術を、そのまま応用している。それが、舞台の映像化作品であるこの作品に於いて実に感動的なのである。映像監督を務めた佐藤克則監督は、前作を経て、 . . . 本文を読む
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いしいしんじ『トリツカレ男』

2009-12-16 20:58:44 | その他
 『ぶらんこ乗り』を読んだ時の衝撃は忘れない。あれがいしいしんじの初長編だった。デビューで最高傑作を生む。そして、生涯その作品を超える作品を作れない。そんな作家はたくさんいる。あんなに凄い本を読んだことはない。僕の生涯ベスト・ワンかもしれない。(でも、ベスト・ワンだ、と言いたい小説はきっと100冊はあるから、あまり深い意味はない)  あまり凄過ぎてその後、彼の小説を、しばらくは読めなかったほどだ . . . 本文を読む
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北村薫『鷺と雪』

2009-12-16 20:23:54 | その他
 北村薫は『スキップ』『ターン』『リセット』の3部作に尽きる。だからその他の膨大な作品はあまり読んでない。ミステリー作家として活躍する北村さんの読者としてはダメダメなのだが、仕方ない。青春小説である、あの3作のイメージが強すぎてどうにもこうにも仕方ないのだ。  それに僕はミステリーは好きではない。推理ものなんて読む気もしない、という人だから仕方ない。なのに、今回この小説を読んだのはただ単に読む本 . . . 本文を読む
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プラズマみかん『血と金魚』

2009-12-15 19:41:01 | 演劇
 惜しいなぁ、と思う。描こうとする世界は実に興味深い。劇構造も悪くはない。なのに、芝居は弾まない。残念だが観念的な世界が、頭の中で閉じてしまっている。世界は広がらない。作、演出の中嶋悠紀子さんの頭の中ではきれいにまとまった世界が完結しているのだろうが、それが芝居という形にはなってない。  これではイメージの羅列でしかないのだ。個々のイメージは悪くはないが、有機的な結合が為されてない。それらは、た . . . 本文を読む
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Ugly duckling 『照準Zero in』

2009-12-15 18:20:50 | 演劇
 思い切った作り方をした。こんなにもフラットな芝居をアグリーが作るだなんて驚きだ。ストーリーがわかりずらいことはいつものことだ。だが、ドラマにメリハリがあって勢いに乗ってしまうと、ラストまで感情だけで引っ張ってくれるのがいつもの彼女たちのやり方だ。今回もそうなるのだろうと思ったのだが、なぜか今回はそうはならない。  お話の方はいつも以上に単純だ。前半の母親が縮んでいく話がおもしろい。始まりはいつ . . . 本文を読む
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『フォース・カインド』

2009-12-15 17:46:54 | 映画
 正直言ってまるで何も期待してなかった。というか、1時間39分が苦痛なだけだろうと思いながら見始めた。この手の際物映画は今までもたくさんあった。安直で不快なだけのものが多い。今回もそんなものだと思っていた。  だいたいナビゲーター(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が出てきて、「信じられない現象です」とか、解説するような映画を誰が見たいと思う?安物のTVでも今時こんな企画はないのではないか。実際のビデオ映 . . . 本文を読む
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『チョコレートファイター』

2009-12-14 23:23:14 | 映画
 『マッハ』のスタッフがさらなる究極のアクションに挑んだ。華奢で小柄な満身創痍の美少女ファイターが、悪の組織と戦う。お話はもうどうでもいいよ、というレベルだが(阿部ちゃんのヤクザの父親がシリアス演技で参入)それで充分だ。これは全編アクションを見せるためだけにある映画である。まともなストーリーなんかいらない。彼女の凄まじいファイトシーンを固唾をのんで見守るだけで1時間半は過ぎていく。単純の極致をいく . . . 本文を読む
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『釣りバカ日誌20』

2009-12-14 22:42:49 | 映画
 22年間で22本。ハマちゃん、スーさんの釣りバカシリーズがついに完結する。ファイナルのタイトルが『釣りバカ日誌20』。とても切りがいい。22本なのに、『20』というのはなぜか、と思うのはマニアではない。スペシャル版が2本あり、(しかも、その1本は時代劇!)それを本家のシリーズにはカウントしていないからである。  寅さんシリーズの併映として、スタートし、その後1本立ちして、寅さん亡き後、日本映画 . . . 本文を読む
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『ホノカア・ボーイ』

2009-12-14 22:19:52 | 映画
 ハワイを舞台にして、ひとりの青年が日系人の暮らす小さな町で過ごす日々が描かれていく。偶然この町にやってきて、その時はここでのことがきっかけで彼女と別れてしまうことになったけど、なんだかこの町が気に入ってしまい、再びここを訪れ、そのままここに住み着いてしまう。  錆びれた映画館で働き、向かいに住む一人暮らしの老女と仲よくなり、毎日彼女のところに行き食事をご馳走になる。倍賞千恵子がそのおばあちゃん . . . 本文を読む
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エイチエムピー・シアターカンパニー『traveler』

2009-12-12 22:06:10 | 演劇
 13の風景が流れていくように描かれていく。旅行者たちの姿がそこにはある。タイトルである『traveler』(トラベラー)の「トラベル」とは、「(光、音などが)伝える。(心、目が)次々と移る」こと、って後で読んだ当日パンフには記載されていた。なるほどなぁ、と感心する。全く知らなかったし、ただ、「旅人」だとしか考えもしなかった。  僕はただ目の前を通り過ぎていく7人の旅人たちの見せてくれる風景(パ . . . 本文を読む
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