実に惜しい作品だ。ふたつのエピソードを並行して見せながら、ラストに突入していく。そこですべてが明確になる。作家と編集者。彼が書く小説。探偵と助手。彼らが巻き込まれた事件。入れ子型の構造。それがどこに行きつくのか。きっと作者の頭の中では見事に整合性のあるお話としてまとめてあるのだろうが、出来上がった作品はそうではない。
もう少し、わかりやすく整理してもよかったのではないか。決して難しい話だとは . . . 本文を読む
こういう昔ながらの高校演劇部の作りそうな芝居を見ると、なんだか安心させられる。大人に負けないような完成度の高い芝居を高校生が作る、というのも、悪くはないけど、別に超高校生級なんかじゃなくてもいい。高校生らしい、というのも立派なことではないかと思う。
でも、これは1時間20分に及ぶちょっとした大作だ。役者たちも達者で、ちゃんと笑わせてくれる。しっかり芝居を見せてくれる。
しかし、内容はたわ . . . 本文を読む
これだけのスケールの作品を作り上げる。今年の金蘭会は、2時間20分に及ぶ大作で、歌あり、踊りありの壮大なスケールの作品に挑んだ。10年前にも演じたこの作品に再び挑戦した。松尾スズキの毒を撒き散らしながら展開する壮大で恐ろしいお話を、高校生の少女たちが、堂々と演じる。
10年間監禁されていたケガレという女と、もうひとりの彼女であるミサという女のドラマがリンクしていく。そこは「もうひとつの日本」 . . . 本文を読む
素晴らしい芝居だ。1年生が中心になるキャストを、まとめて、これだけの完成度が高い作品に仕立てた手腕は只事ではない。主人公のカンパネルラを演じた3年生の中筋捺喜が演出を兼ねる。1年の役者たちが実に上手い。この静謐な空間を損なうことなく立たせることに成功した。
学校の教室と、銀河ステーションの駅を舞台にして、銀河に思いを馳せる子供たちの姿と、そこで銀河鉄道を待つ人たちのドラマが並行して描かれてい . . . 本文を読む
「このミッション、インポッシブルなんです」だなんていう時代劇にあるまじきコピーが宣伝に使われていた。どんだけアホか、と嘲笑う。こういう安っぽい映画は一瞬で消えてしまうに違いない、と思った僕の予想を覆して、なんと大ヒットを記録した。
公開からもう既に1カ月が過ぎたが、まだちゃんと上映されている。安いコピーをものともせず快進撃を繰り広げた映画をようやく見たのは、つい先日だ。ごめんなさい。予想に反 . . . 本文を読む
わざわざこの映画を見る前に、予習で前作『エイトレンジャー』をツタヤで借りてきてしまった。ある程度は想像していたから、ショックではないけど、それにしても、ここまでつまらない映画だとは思いたくなかった。堤幸彦監督作品なので、それなりには楽しめるはず、と予想したのに、これは酷い。『トリック』も大概だったけど、この映画のくだらなさは半端じゃない。
こういうSF的な設定を用意したにもかかわらず、あまり . . . 本文を読む
忙しくて見に行けなかった。気がつくと、その日(確か、7月の4週目だったのではないか?)が上映の最終日で、なんと一日1回上映で、朝だけしかしていない。やばいと思って、朝、時間給を取って見に行くことにした。たまたま、夏休み中で、補習もないし、懇談もその日はなく、さらにはクラブも昼からだったから、休みが可能だったということもある。でも、何より先ず、あのパク・チャヌクの傑作にスパイク・リーがどう挑んだの . . . 本文を読む
50分ほどのとてもコンパクトな作品だ。無理しないで等身大の高校生が大人の世界を創造(想像)して描く。
主人公の仁を演じた蓮田くんが上手い。オフィスを舞台にして、こういうサラリーマンを主人公にした作品を高校生が作るのはやはり無理があるけど、わからないなりに想像力を働かせて、かわいい世界を描いたのがいい。
これでいいのだ。リアルな世界やドラマなんかをここには期待しない。そうではなく、この設定 . . . 本文を読む
「HPF25周年記念公演」と、パンフにはある。今年限りで勇退される阪本先生への「はなむけ」として企画された作品でもある。ずっと追手門の芝居を見てきた。始めて見たのは、22年前の『千年の孤独』だ。これが同時に初めて見たHPF作品でもある。スペースゼロの古賀先生からぜひ、高校生の演劇も見てあげてください、と言われたからだ。
正直言って自分高校時代とか、時々見る自分の高校の演劇部の公演とかを見ていて . . . 本文を読む
今年もHPFが行われた。本当なら「開幕した」と書きたいところなのだが、既に昨日閉幕セレモニーも終了している。といくことで、ここからは事後報告になるけど、簡単に見た感想を書き始めよう。
まずは、最初に見た工芸高校『プロテクト』から。
このなんとも言い難い雰囲気が素晴らしい。冒頭の雨の中、傘を差す女がいい。彼女が何をしゃべっているのか、聞こえない。でも、そのたたずまいに魅了される。本編に入 . . . 本文を読む
学校の図書館にこの2冊を含む全3巻が入荷した。僕が買ってもらったのだが、この夏ぜひ、高校生に読んでもらいたかった。最初に1巻が出たときに読んで、とてもすがすがしい気分になれた。今までも高校の部活動を舞台にした小説は、多数あった。もちろん傑作も多い。そんな中、この作品は群を抜いている。
マイナースポーツを題材にするというのも、よくあるパターンで森絵都の『DIVE!』(もちろん、飛び込み)はその . . . 本文を読む