藤井道人監督の最新作で横浜流星が主演。渾身の力作である。藤井は新作ラッシュでこの後すぐに次の『最後まで行く』も公開される。待望の一作で公開初日の朝一番で見てきた。新しく出来た「ららぽーと門真」(オープン5日目)のTOHOシネマズは1階にワンフロアーで劇場がある。公開初日なので大きなスクリーンでの上映だ。
それにしても、今の時代にこんな映画が作られるなんて驚きである。内容は地味だし、とても観客 . . . 本文を読む
なんと2029年からお話は始まる。SF小説じゃん、と驚くが、もちろんSFじゃない。小学3年生の女の子が主人公で、亡くなった祖母の家の遺品整理に行く話みたいだ。人間関係があまりよくわからないから、少し困惑する。
2話はその10年前。2019年、コロナ直前の年。なんとクルーズ船の旅が描かれる。あのコロナの船か、なんて一瞬思ってしまうけど、まだ2019年だ。1話からのつながりは希薄。もちろん1話の女の . . . 本文を読む
M・ナイト・シャマラン監督が、ポール・トレンブレイの小説「終末の訪問者」を原作に描くホラータッチのスリラー映画。シャマランなのにオリジナルではないなんて初めてではないか。でも、お話自体はいかにもシャマランらしい映画で、彼がこの原作を手掛けようとしたのも頷ける。決してネタ切れというわけではないだろう。自分の世界がそこにあるからそれを映画にしただけ。そんな感じ。
今回は低予算のほぼ密室劇。(『ザ・ホ . . . 本文を読む
先月公開されたばかりのデビュー作『ひとりぼっちじゃない』に続く伊藤ちひろ監督の第2作だ。たまたまだろうけど、2作品が連続公開になる。しかも頑固にも同じパターンの映画だ。こんなわがままな映画を商業映画として作り続けることが何故許されるのか、信じられない。しかも完成度が高いというわけでもないし。これは頑なで自己満足ばかりの映画でしかない。だけど、なんだか心惹かれるものもある。だから嫌ではない。
それ . . . 本文を読む
帯には令和の『二十四の瞳』なんて書いてあるから離島での教師と子どもたちとの触れ合いを描く「感動もの」かとたかを括って読み始めたが、これはそんな甘いものではなかった。ラストまで極度の緊張感が持続する。だから一瞬も気が抜けない。これは『バッテリー』を凌ぐあさのあつこの最高傑作ではないか。
20年振りに島に戻ってきた男が主人公だ。島の学校の臨時教師として。彼はこの島で生まれ12歳まで育った。父の死後、 . . . 本文を読む
これは(巷では)ルキノ・ヴィスコンティ監督の傑作だ。そんな映画となんと約45年振りに再見する機会を得た。あれは高校1年の時だ。(たぶん) 昔心斎橋にあった名画座、戎橋劇場で見た。(はずだ) でも、もしかしたら大毎地下だったかもしれない。記憶はあいまいだ。覚えているのは実に退屈な映画だった、ということ。それだけ。当時はまだ子供だったから理解できなかったのかもしれない。だから、(もしかしたら)今見たな . . . 本文を読む
ダーレン・アロノフスキー監督作品。スタンダードサイズの室内劇。部屋からほとんど出ない。(まぁ彼は出たくても出られないのだけど)ブレンダン・フレイザーが200キロ越えの巨体を演じる。ほとんど身動きが取れない。この圧迫感は半端じゃない。そこに彼の心情は(この部屋の狭さに)象徴される。彼の巨体はタイトルの鯨と重なる。死に体の姿。生きる屍。惨めで悲惨。
月曜日から金曜日まで、亡くなるまでの5日間の日々が . . . 本文を読む
これは『ロストケア』と同じパターンの映画だ。目的は犯人探しではない。犯人はすぐに明らかになる。ただ彼の目的は明確にはならない。いや、明確すぎて、疑いたくなる。そんな正義はあるのか、と。映画は彼が逮捕されてからのお話がメインになる。
2000年代初頭、イランの聖地マシュハド市に蔓延る娼婦たちを16人殺した男は自分の行為は殺人ではなく粛正だと主張する。そんな彼をたくさんの大衆が支持する。ただ『ロスト . . . 本文を読む
この小説に描かれるのは1月に公開された成島出の『ファミリア』の舞台になったマンションだ。(たぶん) たくさんのブラジル人が住むアパート。第一章はそこで暮らす在日ブラジル人少年が描かれる。 さらにはひとりで認知症の祖母の世話をする少女の話を描く第二章。移民、ヤングケアラーという社会的弱者に焦点を当てて僕たちが向き合うべき現実を直視する。ここに描かれることは人ごとではなく、僕たちの問題だ。この国がこれ . . . 本文を読む
へんな小説。何がしたいのやら、よくわかりません。でも読んでいてワクワク、ドキドキする。こんなのありなの、とも思う。「あり」だから「ある」のだなとは思うけど。いずれもオッパイの話で4篇。だからタイトルはそういうこと。しかも、それはここにあるはずなのに、彼女たちにはない。
最初は小さな胸に悩む女の子の話。(いやもう30歳だけど。)今無職。仕事を探すわけではない。そんなことより今は、AカップなのにFカ . . . 本文を読む
イスラエル映画なんて珍しい。なかなか日本では公開されないからだ。珍しいからというわけではないけど、ついつい珍しいなと思い、これは特別な作品だから公開するのだろう、きっとかなり凄い映画だと勝手に過大な期待を抱いて見てしまった。だからかもしれないけど、思った以上に普通の映画でがっかりした。映画comの解説には「イスラエル・アカデミー賞で8部門にノミネートされ、父親役のドブ・グリックマンが助演男優賞を受 . . . 本文を読む
坂井さんの新作だから、必ず読む。毎回楽しみにしている。今回は専業主夫の話。社労士でバリバリ働く妻を支えるため仕事を辞めて主夫になった夫と妻のお話という設定自体は珍しくはない。展開もありきたり。だけど、見事にそんなお話なのにその中に引き込まれていく。相変わらず上手い。当然のように夫婦の破局と再生というお決まりの流れに身を任せていくのだが、それが嘘くさくなることなく気持ちよく読むことができる。上手いと . . . 本文を読む
映画評論家の切通理作の監督作品。キネマ旬報にピンク映画時評を長期連載している。僕はピンクは見ないけど、この連載はたまに読んでいるので、なんとなく気になり見ることにした。映画評論家の映画って自分で自分のハードルをあげてしまいそうで残念な映画が多い(というか、映画評論家監督なんてそんなにいない)けど、この作品も少しがっかり映画だった。
昔はピンク映画もそこそこ見ていた。友だちがその手の映画館で働いて . . . 本文を読む
なんだかつかみどころのない映画だ。『零落』の浅野いにおによる成人向け青年漫画(だからエロもある)の映画化作品。主人公の男女が中学生だという事に驚く。中2から中3にかけての時間が描かれている。もちろん演じているふたりは大人なのだが、違和感はない。最初感じた驚きは彼らの大胆な行動ゆえである。(要するにセックスですね)
早熟な男女というより幼すぎてあまり何も考えてないように見える。お互いの感情が見えて . . . 本文を読む
ある男と出会う。不思議な男だ。名前はリ・ジョンヒョク。たぶん。それって僕は見てないけど大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』のヒョンビンが演じた主人公の名前らしい。ふざけているのではない。この男は実在しない幻でその幻に出会う9人の男女のお話。井上荒野としては珍しい軽いタッチの短編連作である。たわいないエピソードの羅列で大した小説ではないけど、楽しく読めるし、時間つぶしには最適。通勤電車の中で読んだら . . . 本文を読む