湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第9番

2016年09月02日 | ヴォーン・ウィリアムズ
○サージェント指揮ロイヤル・フィル(PRSC)1958/4/2初演live(BBC放送AC)・CD

RVW好きには驚愕の初演記録である。pristineとしても懐疑的にならざるを得ないところがあったらしいが、よりよい録音記録を手を尽くして探しているうちにアナウンスメント含め本物と確信しレストア・配信に至った経緯があるようだ(最も音質のよい、再放送の海外エアチェック録音が使用されているとのこと)。実際併録のミトプー「ロンドン」と比べて格段に音がよく、音の一つ一つが明確に聴き取れる。輪郭のはっきりしたサージェントのわかりやすい音楽作りのせいもあると思うが、初演当初より「よくわからない」と評されてきた白鳥の歌が、実はこんなにも「歌」でなおかつ「合奏協奏曲」であったという、まさにRVWらしい曲だったということに改めて溜飲を下げる思いだった。わからない、という評は散文的な楽想の羅列、ベートーヴェン的展開を楽曲構成としては意識しつつも、内容的に拒否するRVW晩年の複雑な心象のあらわれに共感を得られなかったからだと私は解釈している。戦勝国としての英国に対する疑念・・・「輝かしい諦念」が「無」に帰するとき、RVW自身がその生涯の終わりを自覚していたかどうかは(奥さんにすら)わからないことだが、ふとこの演奏に返ると、単純かつ職人的なさばきが「憂い」を抑え、フランス的な柔らかい響きの揺らぎより民族的でもある独特のモードを強調して、この曲を聴きやすくはしながらも、RVWらしくは出来ていないようにも思った。初演を担えなかったボールトの演奏には、異例なほど感傷的な響きの美しさがある。ライヴという点、更にサージェント自身の「ダンディな」芸風がそうさせていたのだろう、ボールトより各楽器の役割がはっきりと聴こえオーケストレーションの長所や癖が立体的に面白く聴こえるのは確かだし、初演録音としてはきわめて高い完成度にあると思われるが、○にとどめておく。作曲家が亡くなったのはこの四ヵ月後である。

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