rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

香水との出会いは、すずらんの香水

2011-05-10 23:22:54 | 趣味たち
 摘んだばかりのすずらんの花

やっと、すずらんの花が柚子の木の根もとの回り半面に咲き出した。
その体の割には大きい葉の影から、恥ずかし気に白い鈴のような小花を行儀よくぶら下げた頭を覗かせている。
心待ちにしていたので、二・三十本咲き出したすずらんの様子を見て、小躍りしながら摘みだした。
かねてよりイメージしていたアクアブルーのガラスの小瓶に、そのすずらんの花を生けてみる。
そうして、甘く優しい花の香りを鼻腔いっぱいに吸い込んだ。
くどくない可憐な香りは、遠い昔の記憶を呼び起こす。

子供の頃、里帰りした札幌駅の土産物売り場で、すずらんの香水にであった。
小さな、本当に小さいガラスの小瓶に、そのすずらんの香水は詰められていた。
たくさん並べられた商品の前に、試供品があり、おずおずとその香りを確かめてみる。
紛れもないすずらんそのものの香り。
あたかも、すずらんの小さな花から零れ落ちた雫を、一滴一滴小瓶に集めたかのような、そのストレートさが、いっそう香水の価値を高めていた。
もちろん、雫を集めるのはコロポックルたちと決まっている。
その香水は、、大人になるまで大切に宝物として、時折小瓶を取り出しては慎重に蓋をはずし、すずらんの露の香りを嗅いで楽しんだ。

中学生の頃、背伸びをしてムスク系のオーデコロンを買い、ハンカチなどに香りを移して気取ってみた。
初めての海外旅行のお決まりとして、飛行機の中の免税販売で、ボトルのデザインと名称に惹き付けられてディオールのプワゾンを手に入れた。
今思えば、その香りを着こなせる年齢も色香も持ち合わせていなかった、恥ずかしい経験である。
それからは、バラの香りに忠実にしてパンチを効かせたオンブルローズ(ジャン-シャルル・ブロッソー)、甘くセクシーなデューン(ディオール)、凛とした強さを持ったクリスタル(シャネル)など、いろいろ楽しんだ。
今でも香水を身に纏いたい思いはある。
しかし、大自然の中で暮らすデメリットに、スズメバチの極々身近な脅威がある。
どうやら、香水に含まれる成分に、スズメバチを触発する攻撃フェロモンに似たものがあるとのことで、一年の半分以上スズメバチが飛び回る環境では、香水は大変危険をもたらすものとして、もうかれこれ10年以上、香水を断絶している。
ようやく、香水がしっくり来る年齢になったのに、大変残念至極。
その代わりに、香りとしては生きている花の香を楽しみ、香水の小瓶は目を楽しませるものとして、自分の大切な宝物であり続けるだろう。
キザだが、心の香水とでも言ってしまおうか・・・