「夜間飛行」と聞くと、切なさを孕んだロマンを感じる。
確か、香水の名前でゲランの「夜間飛行」があったはずだ。
調べてみると、ゲランの調香師ジャック・ゲランは、サン=テグジュペリの親友だ。
郵便飛行事業がまだ黎明期で、命がけの仕事に従事しているサン=テグジュペリの体験を下に創作された「夜間飛行」の出版と両面の功績を賞賛して、香水の調香と命名をしたという。
かつて、その香水を着けていたときがあったが、甘さだけではない清涼感と蠱惑的な香りが複雑に絡み合う、奥の深い香水だった。
サン=テグジュペリは、その生涯を飛行機と共に終えた。
「夜間飛行」に出てくる飛行士ファビアンも、夜の闇と四方を前代未聞のサイクロンに阻まれてその命を落とした。
見えないということは、それだけで人に恐怖をもたらす。
レーダーもなければ、今ほど通信技術も発達していないときに、夜の空を飛行することは狂気の沙汰であっただろう。
しかし、新しい時代を見越しての飛行機の活用法を模索のうちに、郵便飛行事業があった。
飛行機の性能と飛距離がそれほどない時代、中継基地を確保し燃料補給と飛行確認は重要だった。
そして何よりも、夜に飛び出していく強い意志が。
人は怠惰な偽善者だ。
不可能かと思える未来の目的の為には、この人の性質が一番の大敵である。
だから、冷徹な支配人リヴィエールは、人としての善な感情を包み隠して、全てを承知の上で目的遂行に邁進する。
でも、彼だけではなかったのだ。
命をかけて夜の闇に飛ぶ飛行士たちも、彼らを引き止める地上の安楽から抜け出し、大いなる目的を成す為に、超人的意志を持つことが重要なのだと理解していた。
ともすれば、非人道的ととられる個人の幸せや慰めを無視することを、あえて行わなければ成しえない物事が存在するのを、人は忘れている。
もちろん、悪用されればとんでもない結果を生みもするが、全てには相容れない両面、つまり諸刃の剣であって、善の為だけに使う人の道徳心にかかっているのは、言うまでもない。
この本を読んでいて、今の世界、とりわけ日本に、このリヴィエールと飛行士たちが必要とされていると、はたと思い至った。
先の未来を確保する為には、非常・非道とも思える手を打って行かなければならないのだろうかと。
小手先の誤魔化しで時勢を乗り切れるほど、今の事態は甘くはない。
そして、その痛みに耐えなければ、自分たちの子孫を滅ぼしかねないことを、はっきりと認識しなければならないだろう。
覚悟と選択は、全ての個人に委ねられている。
確か、香水の名前でゲランの「夜間飛行」があったはずだ。
調べてみると、ゲランの調香師ジャック・ゲランは、サン=テグジュペリの親友だ。
郵便飛行事業がまだ黎明期で、命がけの仕事に従事しているサン=テグジュペリの体験を下に創作された「夜間飛行」の出版と両面の功績を賞賛して、香水の調香と命名をしたという。
かつて、その香水を着けていたときがあったが、甘さだけではない清涼感と蠱惑的な香りが複雑に絡み合う、奥の深い香水だった。
サン=テグジュペリは、その生涯を飛行機と共に終えた。
「夜間飛行」に出てくる飛行士ファビアンも、夜の闇と四方を前代未聞のサイクロンに阻まれてその命を落とした。
見えないということは、それだけで人に恐怖をもたらす。
レーダーもなければ、今ほど通信技術も発達していないときに、夜の空を飛行することは狂気の沙汰であっただろう。
しかし、新しい時代を見越しての飛行機の活用法を模索のうちに、郵便飛行事業があった。
飛行機の性能と飛距離がそれほどない時代、中継基地を確保し燃料補給と飛行確認は重要だった。
そして何よりも、夜に飛び出していく強い意志が。
人は怠惰な偽善者だ。
不可能かと思える未来の目的の為には、この人の性質が一番の大敵である。
だから、冷徹な支配人リヴィエールは、人としての善な感情を包み隠して、全てを承知の上で目的遂行に邁進する。
でも、彼だけではなかったのだ。
命をかけて夜の闇に飛ぶ飛行士たちも、彼らを引き止める地上の安楽から抜け出し、大いなる目的を成す為に、超人的意志を持つことが重要なのだと理解していた。
ともすれば、非人道的ととられる個人の幸せや慰めを無視することを、あえて行わなければ成しえない物事が存在するのを、人は忘れている。
もちろん、悪用されればとんでもない結果を生みもするが、全てには相容れない両面、つまり諸刃の剣であって、善の為だけに使う人の道徳心にかかっているのは、言うまでもない。
この本を読んでいて、今の世界、とりわけ日本に、このリヴィエールと飛行士たちが必要とされていると、はたと思い至った。
先の未来を確保する為には、非常・非道とも思える手を打って行かなければならないのだろうかと。
小手先の誤魔化しで時勢を乗り切れるほど、今の事態は甘くはない。
そして、その痛みに耐えなければ、自分たちの子孫を滅ぼしかねないことを、はっきりと認識しなければならないだろう。
覚悟と選択は、全ての個人に委ねられている。