冬の水車小屋
今日の夜になって、雨から雪に変わった。
今、外はしんと静まりかえっている。
強い寒気が南下して、かなりの積雪が予想されているのだ。
冬の北海道に行くと、あまりの夜の静けさに驚く。
雪が、音をみな吸収してしまうのだろう。
日が昇り、窓を開けて見ると、眩いほどの銀世界。
見渡す限りどこもここも一面の雪だと、観念してしまうのか、つい外へ出て新雪を踏みしめたくなる。
さらさらの雪は、ポハッと舞い上がりながら、足跡を刻む。
自分の住むところで降る雪は、苦々しく思うのに。
ワイエスの描いた雪景色は、まさに無音の世界。
そこに住まう人の気配まで、吸い取って、生活の痕跡を消してしまう。
人という生き物が、地球に存在しなかったかのように。
生も死もない、永遠が居座る世界。
むかし、福島県立美術館に、ワイエスの”ヘルガ展”を見に行った。
この美術館は、ワイエスの作品を収蔵している。
”冬の水車小屋”は、そのうちの一枚。
水彩で、巧みに描かれた絵。
画面から、彼の息遣いを探ることはできない。
人が描いたのではなくて、白い紙面の中から浮き上がり、淡々と存在しているようだ。
さても、外は相変わらず雪が降っている。
森閑とする夜も、なかなかいいものだ。
自分の息遣いと、キーボードを叩く音だけがする。
でも、都会では、こんな雪の夜も音が消えることなどないのだろうな。