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St. Genevieve Watches Over the Sleeping City of Paris
19世紀フランスの画家ピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌは、不思議な画家だ。
アカデミックとも思える主題を扱いながらも、彼独特の色彩感覚で時代を超越したものにしてしまった。
そして、重力を感じさせない。
おそらく彼の描くものに、存在の重みを受け止めるべきはっきりとした影が存在しないことが、全ての鍵のように思われる。
始まりも終わりもない、停止しているかのような時空が、彼の絵を支配している。
今まで、意識していた画家ではなかったので、迂闊にも気に入っていた絵のいくつかがシャヴァンヌのものであったことに驚いた。
この浮世の対極ともいえるシャヴァンヌの絵の世界に一時でも逃避していよう。
ますます歪んでくるこの世界のあり方に辟易してしまった無力で小さい自分の空しい心に、美しい世界の澄んだ空気を当ててあげるのだ。
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Jeunes filles au bord de la mer
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Le Pigeon