大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・076『M資金・10 第七艦隊・2』

2019-09-22 15:34:49 | 小説

魔法少女マヂカ・076  

 
『M資金・11 第七艦隊・2』語り手:マヂカ 

 

 

 リアルの第七艦隊は横須賀にある。

 

 空母レーガンを中心にアメリカ海軍の精鋭艦艇が舷々相摩す極東最大の米海軍基地である。アメリカが本国以外に本社機能と言っていい艦隊基地を置き、空母を常駐させているのも横須賀だけであり、日本が空母の整備をできる高度な技術を持っていることを証明していると同時に、日米の緊密な同盟の象徴でもある。

 魔法少女の第七艦隊は霊雁島にある。

 司令部は、霊雁島のとあるビルの地下だ。むろん直接行けるわけではなく、ビルの横に緑地帯があって、その真ん中の遊歩道を魔法少女が歩くと、地下の司令部に転送されることになっている。

 ホワ~~~ン

 アニメのようなエフェクトがあって、地下の司令部に転送された。

 目の前に先着しているブリンダが立っている。

「ようこそ、極東最大の魔法少女基地へ」

「ブリンダ……」

 あれ?っと思った。 原隊というか本来の所属と言っていい米軍基地にいるというのに、機嫌が悪そうなのだ。

「分けわかんなくってさ……とりあえず、艦隊司令に会って。ここで待ってるから、挨拶終わったら、かならず、ここに来て」

「あ、うん……」

 なんのための出迎えなんだ……と思ったが、とりあえず、廊下を真直ぐに進む。

 

 突き当りのドアに『司令官室』とあるのでノックする。

 ――入れ――

「失礼します」

 正面のデスクに気配がする。敬礼すると提督の軍服が顔を上げた。短い答礼を返した人物にビックリした。

「艦隊司令のレーガンだ。マヂカ少佐だね」

「は、いえ、マヂカではありますが、階級は少尉待遇です」

「来栖司令から、本日付けを持って三佐、国際標準では少佐に進級したと連絡がきている。これが、書類だ」

「は、確認します」

 間違いなく防衛省の書式で、署名は、先日外務大臣から転任した防衛大臣と来栖司令の署名があった。

「わたしが、第七艦隊司令のロナルド・レーガンだ」

 そうなのだ。

 基地司令は、どう見ても存命中に現役空母の名前になり2004年に亡くなった第四十代合衆国大統領のロナルド・レーガンなのだ。

 ここは霊雁島、レーガン……なにかの洒落か冗談か?

「大塚台公園の基地と同じく、ここも亜世界だ。死者が司令をやっていてもおかしくないだろう」

「は、はあ……」

「わたしは認知症のまま死んでしまったので、生前のこだわりや癖や知識、経験に振り回されることが無い。常に、状況に最適な判断と指揮がとれる。よろしく頼むよ」

「承知いたしました」

 改めて敬礼すると、司令の顔が変わった。

「基地司令のニミッツだ。君は自衛隊からの出向だが、わが軍の将校として役割をはたしてもらう、いいね」

 この顔は忘れない、ミッドウェーでボコボコにしてくれたクソオヤジだ。

「わたしのモットーは、最速の艦体運動だ」

 クソオヤジの顔は、31ノットバーグで名をはせたアーレイ・バーク提督に変わった。

「我が全力を持って、敵の分力を叩く!」

 拳を上げた時はアイゼンハワーに変わっている。

「指揮官は英雄でなければならない!」

 胸をそらすとスキンヘッド……えと?

「ジョージ・パットン。君も英雄だろ、憶えておきたまえ。ところで……」

 机の書類を手に取ると、ニミッツに変化している。

 そのあとも、一言あるたびに、アメリカの大統領や提督や将軍に次々に変わっていって、さすがのわたしも混乱してしまう。

「ということで、少佐、明日から、この第七艦隊で励んでくれたまえ」

 最後を締めくくったのは、もとのレーガン司令だった。

 

 ウォルト・ディズニーは入っていなかったか?

 

 司令官室を出て、ブリンダに確認された。はて、どうだったか?

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音に聞く高師浜のあだ波は・1『天女の日』

2019-09-22 07:23:10 | ライトノベルベスト
音に聞く高師浜のあだ波は・1  
『天女の日』 

 
 10月24日は天女の日なんやねんて。

 10をテンと英語読み、24でニョと読ませて、合わせるとテンニョになる。
 せやから天女の日。
 うちの街が、こんな語呂合わせ丸出しの日を制定してるとは今日のNHKニュースを見るまでは知らんかった。

 先週の木曜日に激しい腹痛に襲われて学校を早退。薮中医院に行ったら「これは盲腸やなあ」と診断されて金曜日に入院「月曜日にオペしよう」ということになり、土日は痛み止めの注射で抑えて、月曜にめでたく手術。火曜日は安静にして、今日から学校に復帰。
 
 で、天女の日は安静でぼんやりテレビを観てて気ぃついた。

 なんともベタすぎる語呂合わせに思わず笑うたら、死ぬほど傷口が痛なってしもた。

「あんまり笑たらあかんよ」
 お祖母ちゃんのお言葉はありがたいねんけど、お言葉のあとで派手なクシャミ、で、入れ歯が飛び出してしもて、トドメの大爆笑! 
 グヘヘヘ……イダダダ……(涙 涙 涙 涙 涎)
 もう気絶寸前になってしまう。こんなに笑うのが苦痛になったんは生まれて初めて。

「ホッチ、もう学校きてええのん?」

 下足室ですみれが聞いてくる。
 すみれは中学校からのお友だちでクラスメート、弓道部のエースでもあって成績優秀の文字通り文武両道に秀でたベッピンさんやけど、うちみたいなもんにもわけ隔てなく付き合うてくれるできた子。
「いまどきの盲腸は、ほんのちょっと切るだけやし大丈夫。笑ろたら響くけどな」
「ざんねん、笑かしたらあかんとはな」
「笑かすのんはカンニン」
 すると、すみれは吉本のギャグをカマス。ちょっとも面白ない。
 すみれは、ようできた子やけど、ただ一つギャグの才能はない。無くてよかった、今度笑わされたら救急車や。

 すみれと教室への階段を上りはじめると、階上の生徒らが逆流してきた。

「なんや、臨時の朝礼らしいで」
 踊り場で出くわした染井(うちの委員長)が教えてくれる。
 回れ右して体育館へ。
「あ、せや……」
 すみれが何か言いかけたのは、もう体育館の入り口。
「早く並びなさい、男女一列ずつ、出席番号順!」
 生活指導の真田先生に急き立てられて自分の定位置に。
 あたしは天生(あもう)やから一番前、すみれは畑中で、もうちょっと後ろに分かれる。

 機嫌用よう定位置に着くと、グイっと押しのけて、あたしの前にシャンプーの匂いも香しく現れた見知らぬセミロング。

「ちょ、なにあんた!?」
「え? ああ、盲腸で休んでた天生さんね?」
 振り返った笑顔は、すみれの水準をツーランクは超えていようかというベッピンさん。
「わたし、阿田波姫乃(あだなみひめの)。月曜に転校してきて、出席番号は天生さんの一つ前、どうぞよろしく」
 悪気はないのだろうけど、握手しようとして出してきた手が、盲腸の傷口を触っていく。
「ウグッ!」
「あ、ごめんなさい!」
 阿田波さんは、ものすごく済まなさそうな表情をすると、なんと、傷口である下腹部にヒラっと手を当てた。
「え……」
 と思っていると、スーーっと痛みが引いていく。

 あたしと阿田波姫乃との出会いであった。
 
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真夏ダイアリー・17『エヴァンゲリオン・2』

2019-09-22 06:55:38 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・17
『エヴァンゲリオン・2』       




 柱の陰から、真っ赤な顔をして同じC組の春野うららが現れた……!

 うららは、柏木由香と同じく中学は同窓。一年と二年のときは同級だった。あのころ、わたしは、まだ鈴木真夏だった。冬野になっていたら、それこそ冷やかされまくっていただろう。
 うららって子は、見かけによらずソフトボール部なんかに入っていて、ファーストだかを守っていた。由香とは同じクラブで、ソフボのピッチャー。乃木坂にはソフボ部がないんで、今は野球部のマネージャーをやっているらしい。

「わたしは、やってないわよ」

 うららの、入試面接のような自己紹介の途中で由香が割り込んだ。
「わたしは、マネージャーみたいなカッタルイことはやらないの。ほら、うららもカッタルイ自己紹介なんか止めて、肝心なこと聞きなよ!」
「あ、あの……」
「大事な話するときは、ちゃんと相手の目を見る!」
「わ、わたし……」と、後が続かない。
「しっかりして!」
 由香が、うららの背中をドンと突いた。その勢いで、うららは省吾の胸にもろにぶつかった……無防備で。
 省吾は、胸の下あたりに当たった感触で、さすがに顔を赤くした。
「あ、ご、ごめんなさい!」
 うららは、サッと離れたが、無意識に省吾の体を押してしまった。もののはずみというのは怖いもので、ゴツンという鈍い音がして、省吾は、そのまま柱に後頭部をぶつけて気絶してしまった。

 それからは、ちょっと大事(おおごと)になった。省吾は、救急車で病院に運ばれてしまったのだ……。

 軽い脳震とうだったけど、打ち所が悪かったのだろう、意識が戻ったのは病院でCTを撮っている最中だった。
「動かないで」
 ナースのオネエサンに言われたけど、本人は、下足室で起こった事件の記憶がきれいにとんでいた。
「大丈夫、異常なし。タンコブができたのと、一時的な記憶喪失になってるだけ」
 お医者さんがそう言うと、うららは泣き出した。由香も責任を感じて目が赤い。
「ほんとうに、ごめんなさい」
「うららは悪くないよ。わたしが、うららのこと突き飛ばしたから」
「え……なんのこと?」
「だからあ……」
 けっきょく、わたしが一から説明することになった。

「まあ、真夏と同じ友だちってことだったら」
 頭のショックだろうか、省吾は変なこだわりもなく、うららをオトモダチの一人にした。

「くそ、やっぱ速えなあ!」

 由香の速球を空振りして、省吾がグチった。
「今のは、ほんのウォーミングアップよ。本格的な球は、これから!」
「タンマ、ソフトみたいにアンダーで投げられると調子狂うんだ。野球として投げてくれる」
「いいわよ」
「外野下がれ、当たるとでかいぞ!」
「そんなフェイント、わたしには効かないわよ」
 由香の心にも火がついた。星飛雄馬ほどじゃないけど、由香は足を上げて投球姿勢に入った。そのとき、野次馬で見ていた数名の男子生徒が反応した。どうやらスカートの中が見えてしまったようだ。
 そのために由香の球にはスピードがつかなかった。そして、省吾も変なスウィングになり、大きなフライになってしまった。
 白球は、高く打ち上げられて冬の青空に大きな弧を描いた。
 わたしたちの、三人野球は五人に増えて終業式を迎えたのだ。

 終業式を終えて成績表をもらった。

 化学が欠点じゃないかと心配した。だけど、お情けの40点。五人に増えたお仲間も欠点はだれもなし。
 え、危ないのはおまえだけだって……はい、その通りです!

 いろいろありそうな……でも、メデタイ冬休みが始まった!
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宇宙戦艦三笠・8[思い出エナジー・2]

2019-09-22 06:39:51 | 小説6
宇宙戦艦三笠・8
[思い出エナジー・2] 

 
 
 装甲機動車ラブの前方30メートルほどのところに、チャドル姿の女性が倒れこんだ。

 隊長は、すぐ全車両に停止を命じた。
「隊長、自分が見てきます」
 山本准尉は、隊長と目が合ったのを了解と介して、ラブを飛び出した。自爆テロの可能性があるので、うかつに大人数で救助に向かうわけには行かなかった。
 
「きみ、大丈夫か?」
 
 一メートルほど離れたところから、山本准尉は女に声を掛けた。爆発を警戒してのことでは無かった。そこここに現地住民の目がある。異民族の男が女性の体に触れるのははばかられた。
「ゲリラに捕まって、やっと逃げてきました。日本の兵隊さんですね……助けてください」
 チャドルから、そこだけ見せた顔は、まだ幼さが残っていた。
「……分かった。君の村まで送ってあげよう」
 山本は、優しく、でも決意の籠った声で少女に応えた。
 山本は、いったん装甲車に戻ると装具を解いて、隊長に一言二言声を掛け、様子を見ていた現地のオッサンから、ポンコツのトヨタをオッサンの収入半年分ほどの金を渡して借りた。オッサンは喜んだが、目で「気をつけろ」と言っていた。それには気づかないふりをして、少女に荷台に乗れと告げる。座席に座らせるわけにはいかない。イスラムの戒律では、男と女が同じ車に乗ることはできない。荷台に乗せるのが限界である。
「あたし、体の具合が悪い。日本のお医者さんに診てもらえませんか?」
「あいにくだが、男の医者しかいない。あとで国連のキャンプに連れて行ってあげよう。それまで我慢だ」
 山本が、目で合図すると、自衛隊の車列は作業現場へと移動し始めた。山本は長い敬礼で車列を見送った。少女に二本有る水筒の一本を渡して、トヨタを発進させた。

「どうして停まるの?」

 少女は、少しこわばった声で山本に聞いた。
「サラート(礼拝)の時間だ。専用の絨毯はないけど、これで我慢してくれ」
 山本は、毛布を渡してやり、コンパスでメッカの方角を探し、コンパスの針を少女に見せた。少女は毛布に跪きサラートを始めた。山本は異教徒なので、少女のうしろで跪いて畏敬の念を示した。

「どうもありがとう」

 サラートが終わると、少女は毛布を折りたたんで山本に返した。
「信心は大事にしなきゃな……よかったら、そのチャドルの下の物騒な物も渡してもらえるとありがたいんだけど」
 少女の目がこわばった。
「これを渡したら、村のみんなが殺される……」
 少女の手がわずかに動いた。
「ここで、オレを道連れにしても、日本の兵隊を殺したことにはならない。君を送る前に隊長に辞表をだしてある。オレを殺しても、ただの日本人のオッサンを一人殺したことにしかならないよ。後ろを向いているから、その間に外しなさい」
 山本は、無防備に背中を向けた。衣擦れの音と、なにか重いベルトのようなものを外す音がした。
「ありがとう。君も村の人も殺させやしないよ」

 それから、山本は、少女を村に届け、トーブとタギーヤ(イスラムの男性の衣装)を借りた。

 山本は、少女に地図を見せた時、二か所に目をやったことに気づいていた。一か所は自分の村で、もう一か所は、それまで彼女が居たところだろうと見当をつけた。
 案の定、少女が見ていたところは岩場が続く丘の裾野で、声がかかる前に銃弾が飛んできた。ゲリラの巣窟のようだ。車を降りると岩陰から「手を挙げて、こっちに来い」と声が掛かった。
「隊長、こいつ体に爆弾を巻き付けている!」身体検査をした手下が隊長に言った。
「スイッチは、この手の中だ。動くんじゃない! 血を流さずに話し合おうじゃないか」
 そのあと二言三言やり取りがあった後もみ合いになった。

 そして、もつれ合い倒れたショックで、自爆スイッチがオンになり、山本は30人あまりのゲリラを道ずれに死んでしまった。

 日本のメディアは、現地で自衛隊員が除隊したことと、山本が民間人として死んだことを別々に報道した。当然殉職とは認められなかった。
 そして、山本が日本に残した一人娘は、横須賀の海上自衛隊の親友に預けられた。

「だから、あたしの本当の苗字は山本っていうの……」

 長い物語を語り終え、美奈穂はため息をついた。三笠は速度を上げて遼寧とヴィクトリーを追い越した……。
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高安女子高生物語・95〔金の心〕

2019-09-22 06:31:06 | ノベル2
高安女子高生物語・95
〔金の心〕    


 こんな夢を見た。

 どういうわけか、学校のプールサイドをグルグル歩いてる。誰も居てへん、そやけど学校の水着着てるよってに授業なんかもしれへん。かすかにみんなの声やら宇賀先生の声が聞こえる。やっぱり授業中。
 うちが一人勝手にうろうろしてても、だれもなんにも言わへん。シカトとちゃう。みんなうちの存在に気ぃつこうともせえへん。
 そのうち、胸がモゾモゾ(ドキドキとちゃう)してきて、あろうことか、水着を通してうちの心が出てきて、受け止めた手の上でプルンプルン。プルンプルンやけど、金色に輝いてた。せやからうろたえながらも、なんか凄いと思てた。

「うちの心は金でできてる!」

 で、喜んでたら、その金の心が手を滑ってプールの中にポチャンと落ちてしもた。
 
 金の心はゆらゆらとプールの底に落ちていって見えへんようになっとしもた。なんでかプールのそこだけが深くなってて、暗く見える。
「先生、心を落としました!」
 そない言うても、先生はチラ見しただけでシカト。クラスのみんなは見向きもせえへん。
 いつもやったら平気で飛び込めるプールやねんけど、プールの穴が怖くて飛び込まれへん。心は、その穴の中に落ちてしもたみたい。

 オロオロしてるうちに、プールの穴の中からヴィーナスみたいな女神さまが現れた。

「明日香さん。いま、このプールに心を落としたでしょう? 明日香さんが落としたのは、鉄の心? 銀の心? それとも金……メッキの心?」
 これて、なんかに似てるけど、ちょっとちゃう。金は金で、金メッキやあらへん。せやから、うちは正直に言うた。
「三つとも違います。うちが落としたんは金の心です!」
「困ったわね。落ちてきたのは、この三つしかないのよ」
「せやけど、ちゃいます」
「でもね……」
「うち、自分で探します!」
 そない言うて、水に飛び込もうとしたら止められた。
「そのままの格好で飛び込んでも、ここは、ただのプールよ。あの底の穴にはたどりつけない」
「どないしたらええんですか?」
「裸になりなさい」
「……裸みたいなもんですけど」
「ダメ、水着を着ていてはたどり着けないわ。それ脱がなくっちゃ」
 そない言うたら、女神様は、スッポンポン。微妙なとこは、ごく自然に手で隠してる。

 ……うう、どうせみんなシカトしてるんや!

 そない思うて、うちは裸になった。
「いやあ、あすかスッポンポンや」
「ヘアヌードや!」
「佐藤さん、裸になったらあかんでしょ!」
 そんな声が聞こえてきたけど、うちは構わんと、プールに飛び込んだ。いったん顔を出して精一杯空気を肺に溜めると、うちは穴を目指して潜る。穴の中に入ろうとしたら、なんか怖なってきて、なかなか進まれへん。やっとの思いで穴に入ろうとすると、妙な抵抗感。それも、なんとか突き破って中に入ると、真っ暗で先が見えへん。だんだん息が苦しくなってくる。
――あかん、もう、もたへん!――
 そこで目が覚めた。

 ゆかりからメールが来てた。

――美枝のことは、心配いりません。なんとかまとまりつつあります。アスカは自分のことに集中して――

 カーテンを開けると、台風一過の上天気、ちょっと寂しい心は押し殺して、MNB47の鬼のレッスンに出かけた。
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小悪魔マユの魔法日記・41『フェアリーテール・15』

2019-09-22 06:21:13 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・41
『フェアリーテール・15』  


 
 レミが言う「急場の問題」がキューバのナゾであることに気がついた……。

「ついてきて」
 ミファは、そう言うと歩き出した。生まれながらの友だちに言うような気楽さだ。
 道を少し行くと、声がかかった。
「ミファ、今日は連れがいるんだね」
「うん、従姉妹のマユ。休暇で遊びにきてんの、昨日から」
「そりゃあ、気がつかなかった。こっち寄って、ジュースでも飲んでいきなよ」
「ありがとう、ベアおばちゃん」

 というわけで、ベアおばちゃんの飲み屋兼カフェに立ち寄ることになった。

 テラスのテーブルに収まると、港が一望だった。わりあい小型の漁船が多く、ゆったりと波に揺られている。マストの間を器用に海鳥たちが飛び回り、こぼれた小魚をとったりしている。
 マユは、不思議に思った。ミファは、なぜ自分のことを従姉妹なんて言ったんだろう。またベアおばちゃんも、簡単に信じ込んだんだろう……。
「はい、ベアおばさん特製のカリビアンソーダ」
「ありがとう。これにアルコールが入るとカリビアンリキュールになるんだよね」
「今日もサンチャゴのとこ行くんだろ」
 ソーダを勢いよく、かつ一滴もこぼさずにテーブルに置きながら、ベアおばちゃんが聞いた。
「うん。今日は、あたしの番だから」
「サンチャゴって?」
「ああ、ポンコツの漁師。若い頃は遠洋航路の貨物船なんか乗ってたんだけどね、近頃は飲んだくれては、寝たり起きたり。身の回りのこともできなくなっちまって、ミファみたいな子供たちが交代で世話してんだよ」
「このごろは、寝たり、寝たり、寝たり、寝たり、起きたり、寝たりだよ」
「いよいよかね……」
「よいよいだけど、まだまだ」
「大人は世話をしないんですか?」
 マユがソーダを一口飲んで聞いた。ため息をついて、ベアが続けた。
「サンチャゴは大人が嫌いでね。たまに正気になると大げんかになったりするから、ミファに頼んでんの。ま、マユもゆっくりしていきな」
「はい、ありがとう……勢いもいいけど、姿勢のいいおばちゃんね」
「昔は、踊り子やってたの。プリマだったんだよ。ほんとうはベアトリーチェって名前なんだけど、このお店開いてからはトリーチェを取っちゃったの」
「そうなんだ、女の人なのにベアなんて熊さんみたいな名前で変だと思ってたんだ」

 ビュン!

 感心しているマユの目の前を新聞が飛んでいった。

「びっくりするじゃないのよ!」
 ミファが怒鳴った。
「かわいい子といっしょだからよ。紹介してくれよ!」
 テラスの下で、日焼けした新聞少年が見上げている。 
「わたし、ミファの従姉妹で、マユ。あなたは?」
「おれ、ジョルジュ。今夜空いてる?」
「マユには、婚約者がいるの。あんたなんか足もとにも及ばないような!」
「今はバイトの途中だから、終わったら、そのテラスぐらいには、足は及ぶぜ」
「油売ってると、ボスに言いつけちゃうぞ!」
「ヘヘ、じゃ、またミファのいないときにね」
 口笛を吹いて、ジョルジュは行ってしまった。
「わたし、いつ婚約なんかしたの?」
 マユが、おどけて聞いた。
「そういうことにしておかないと、直ぐに虫が寄ってくるからね」
「……どうして、従姉妹なの、わたしたち?」
 マユがミファの耳に口を寄せて聞くと、奥で新聞を受け取ったおじさんが驚いた。
「白雪姫の国が内戦状態だってさ!」

 マユは、おじさんたちの輪の間に顔を入れて、新聞のおおよそを読んだ。そして……落ち込んだ。

 白雪姫の国は、王妃側と白雪姫側に分裂して内戦状態。そこにアニマのゲッチンゲン公国が絡み、眠れる森の美女の国が仲介に失敗。争いに巻き込まれてしまった。そして、マユが、この港町に一瞬で来たような気がしていたが、実際には一週間かかっていたことを知ってしまった。
 
 どうも、ファンタジーの世界のゆがみは広がっていくばかりのようだ……。
 
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