大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・072『ニャンコの正体・3・せやけどええねん!』

2019-09-29 13:53:29 | ノベル
せやさかい・072
『ニャンコの正体・3・せやけどええねん!』 

 

 

 ネットで地球の裏側のことまで分かる時代、あんがい近くの事は分からへん。

 あたしと留美ちゃんが、あやうく巻き込まれそうになった、ほら、ネコちゃんを救助した直後にトラックが突っ込んできた事故。学校に突っ込んできたいうのが珍しいから、テレビでも新聞でもやってた。

 運ちゃん以外に怪我人も出えへんかったんで、近所の人でも知らん人がいてるらしい。

 テイ兄ちゃんが檀家周りして「あの事故知ってはりますか?」と粉を振る。「ああ、知ってますぅ」いう人と「へえ、そんな事故がおましたんかいな!?」いう人に分かれる。勝手知ったる檀家とお寺やさかいに、ここから話が広がる。

「実は、ぼくの従妹が危うく巻き込まれるとこやったんですわ」

 お茶をすすりながらテイ兄ちゃん。

「いやあ、怖いわあ」

 檀家さんは眉を顰める。中には「さすが、お寺さん、阿弥陀さんが守ってくれはっやんやねえ」と感心する人も居てる。

「やっぱり、信心があるいうことは、ありがたいことですねえ」

 と、テイ兄ちゃんはかます。

 ここが坊主のやらしいとこ。阿弥陀さんのお蔭で助かったとは言わへん。

 浄土真宗では、阿弥陀さんは極楽往生を請け負うだけで、日常生活の安全を保証したりはせえへん。親鸞聖人に「交通安全にご利益おますやろか?」と聞いたら「それは、自分で気ぃつけなはれ」と返事する。

 それではつまらないので、こういう世間話をしたときに、やっぱり阿弥陀さんのお蔭やなあ……というとこへ話を持っていく。

 けして自分からは「阿弥陀さんのお蔭」とは言わへん。

 

 逆に、知らん話を聞いてくることもある。

 

「じつは、ごえんさん(浄土真宗では住職の事を『ごえんさん』とよぶ。テイ兄ちゃんは住職やないけど、二人称としては、こう呼ばれる)二丁目でお婆さんが刺されはりましてなあ」

 二丁目と言うと学校の近所……。

「身内のもめ事で、なんや刺されたて。まあ、その時は、怪我しはっただけやったんで、新聞には載りましたんでっけどね、中学校にトラックが突っ込んだ事故に隠れてしもて。お婆さん、相手が刃物出してくると、自分の事よりも飼い猫を逃がしてやりたいと、四匹飼うてたんを逃がしてやって……はあ、いや、お婆さん、軽傷やったんが、お歳ですやろなあ……夕べ亡くなってしもたんですわ」

 テイ兄ちゃんは、ピンときた。

「それでなあ、ネコちゃんの写真を見せたんや……」

 すまなさそうというか、覚悟せえよいう目ぇで、あたしの顔を覗き込むようにしよる。

「ええ、そんなあ……」

 思わずネコちゃんを抱きしめる。コトハちゃんも真剣な顔で「それでぇ……」と兄の膝に詰め寄る。

「こ、こわいなあ、二人とも」

「「それでえ!?」」

「檀家さんも分からへんから、お婆さんの家まで行ってな。娘さんらが居てはったから聞いたんや……ほんなら『……この猫とちゃいます』という返事やった」

「「よかったあ!」」

 コトハちゃんと胸をなでおろした。

 

 けど、思うねん。

 ほんまはお婆ちゃんが飼うてたネコやけど、娘さんらは、いまさら雑種のネコを返してもろてもしゃあないんで、ろくに確かめんともせんと「ちゃいます」言うたんちゃうやろか……?

 せやけどええねん!

 これで、めでたく、ネコちゃんはうちのネコになったんやから!

 

 せや、名前を決めならあかん。

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真夏ダイアリー・24『大洗母子旅行・2』

2019-09-29 06:34:00 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・24
『大洗母子旅行・2』       


 
 
「なぜ、結婚しようと思ったの?」
「したいと思ったから」
「じゃ、なぜ離婚しようと思ったの?」
「別れたいと思ったから」
「もう……!」

 案の定コンニャク問答になった。

「とりあえず、食べようよ。グズグズになったお鍋って、おいしくないから」
 で、ひとしきり食べた。
「親の結婚と離婚の理由なんか聞いても、なんの足しにもならないわよ……」
「そうやってごまかす」
「じゃ、聞くけどさ。真夏は、どうして、そんなこと聞きたいのよ?」
「納得いかなからよ」
「ハハハハ……」
「なにが可笑しいのよ。ひとが真剣に聞いてるのに!」
「ごめんごめん。お母さんの答えも同じだからよ」
「結婚して、離婚したことに納得してないってこと?」
「逆だなあ。納得できないから、結婚して。納得できないから離婚したの……まあ、その結果として真夏が生まれて、その真夏に迷惑かけちゃったけどね。ゴメンで済めば簡単なんだろうけど、真夏の心の中は、そんなに簡単じゃないでしょ」
「そういう分かったような物言いでごまかさないでよね」
「分かってなんかいないわよ。言ったでしょ、納得できないからだって……すごく無責任に聞こえるかもしれないけど、もう、離婚してしまったわたしがいて、その娘の真夏がいる。で、いま心臓マヒにでもならないかぎり、お互いに、まだ人生の先がある。そっちのを考える方が生産的だと思う。真夏が芸名を鈴木にしたのは、いいことだと思うわよ。冬野でもなく小野寺でもなく……ね、いっしょにお風呂入ろうか!?」
「さっき入ったわよ」
「いいじゃん、もっかい暖まって寝ることにしようよ」

 半ば、強引に大浴場に連れて行かれた。

 連れて行かれながら思った。お母さんといっしょにお風呂に入るなんて十年ぶりぐらいだ。
 わが母親ながら、驚くほど体の線は崩れていなかった。知らない人がみたら姉妹に見えたかもしれない。この人は人生の納得いかない苦悩をどこにしまい込んでいるのか不思議なくらい若やいでいる。



「背中流してあげよう」
「いいよ、さっき洗ったから」
「いいから、いいから」
 そう言って、お母さんは、わたしの背中にまわって洗い始めた。
「……い、痛いよ」
「ちゃんと洗ったの、こんなに垢が出る」
「垢じゃないわよ。それ、皮膚を削ってんのよ……痛いよう!」
 お湯を流されると、背中がヒリヒリした。そして、あろうことか……。
「ん……!」
 お母さんは、後ろから手を回し、わたしのオッパイをムンズと掴んだ。
「カタチはイッチョマエだけど、まだまだ固いわね」
「お母さん、ちょっとヘンタイだよ……」
 そのあと、湯船に漬かったとき逆襲してやろうとしたけど、ヘンタイ母は少女のような嬌声をあげてかわしてしまう。

 部屋にもどって、布団にもぐると、削られた背中がホコホコと暖かかった。
「お母さん……」
 ヘンタイ母は、歯ぎしりもイビキもかくことなく、静かな寝息をたてていた。

 朝は、久々にパチッと目が覚めた。いつもなら、泥沼の底から浮き上がるように、夢のカケラや昨日やり残したことなんかの思いがまとわりついて、まるでゴキブリホイホイにへばりついた体を寝床から引きはがすようにして起きる。こんな目覚めは久しぶりだった。

 昼からは、本格的にお天気が崩れる予報だったので、水族館だけ見て家に帰ることにした。夕べ、あれだけ寝たのに、帰りの電車の中ではウツラウツラだった。時折意識が戻ると、向かいの席で、お母さんはスマホで記事をまとめ、ビデオを編集していた。やっぱ、ダテにシングルマザーをやっていない。やるときゃ、きちんと仕事に集中しているのはアッパレと感心しつつ、ウツラウツラ……。

 家に帰って、ショックだった。昨日まで満開だったエリカが花を散らして萎びかけていた。あらかじめ用意しておいた鉢植え用の栄養剤を、グサリと注入。なんとか生き延びて欲しい。
 スマホをチェック。
 事務所から、明日のテレビ番組の打ち合わせと練習をしたいので、すぐに来いとメールが入っていた……。
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宇宙戦艦三笠・15[ボイジャーとの遭遇]

2019-09-29 06:26:01 | 小説6
宇宙戦艦三笠・15
[ボイジャーとの遭遇]   

 
 
 修一が三回目のアクビをしたら、いっしょにオナラが出てしまった。

 最初トシがクスっと笑い、ややあって美奈穂、樟葉へと伝染するころには爆笑になってしまった。ただ船霊のみかさんはニコっとしただけである。
 ヘラクレアを出てから一週間がたっていた。その間、三笠は、ただ星たちがきらめく宇宙を走っているだけだ。
 要するに退屈なのである。
 三笠は21世紀の概念では、そんなに大きな船ではないが、たった四人(みかさんを入れて五人)の乗組員には広すぎた。各自自分のキャビンは持っているが、ブリッジに集まることが多くなった。ほとんど真っ暗な星空とはいえ、やっぱり外の景色が見えることは、単調な宇宙旅行の慰めであるようだ。

「……東郷先輩のオナラ、初めて聞きました」
 やっと笑いの収まったトシが言った。
「そうね、あたしも小学校以来だな。保育所の頃はしょっちゅうだったけど」
「みんな退屈そうだから、一発かましたんだ!」
「ハハハ、でもオナラ一つで、ここまで笑えるんだ!」
 美奈穂が、収まらない笑い声のままで言った。
「みかさん、ヘラクレアを出てから亜光速でしか走ってないけど、みんなに先越されないないかなあ」
「早いだけが取り柄じゃないの。ゲームで言えばRPG、経験値を積んでおかないと、ゲームはクリアーできないわ」
「例えば、ヘラクレアみたいな?」
「そう、あそこでテキサスに出会えて、ヘラクレアさんに会えたことは大きいわ」
「どんな意味で?」

 みかさんは、しばらく考えた。みかさんは神さまだから、考えている姿もさまになる。こういうことでは自信のある樟葉でも見とれてしまった。

「……悲しい思い出も、大事に守っていれば、美しいものになって、その人の精神を高めてくれる」
「え、あのヘラクレアのオッサンが?」
「娘さんの魂を悲しませずに記憶し続けるのには、あんなオッサンの姿がいいのよ。辛い思い出も大事にしていれば、良い光になるわ」
「みかさんが言うと、なんだかとても良いことのように思えるわ」
「修一君のようにはいかないけどね」
 みんなが笑った。
「どうせ、オレは屁をかますぐらいしか能がないよ!」
 みんなが、いっそう笑う。みかさんは、いいクルーだと思った。少し何かを足せば……みかさんも、そこまでは分からない。

 光子レーダーが、なにか発見したアラームを発した。
 
 ブリッジが活気づいた。

「焦点を合わせて、解像度をあげて」
 修一が言うと、樟葉がレーダーを操作した。ボンヤリした画面がくっきりしてきた。
「あ、ボイジャー……!」
 みかさんが感動の声を上げた。
「ボイジャーって?」
 美奈穂が素朴な質問をした。
「1977年に打ち上げられた人工衛星です。太陽系を飛び出した、たった二つの人工物の一つです」
 トシが、意外な知識を披歴した。
 ボイジャーは、三本のアンテナとテレビの衛星放送用のアンテナのようなものでできていた。
「あれは、一号ね。二号は……近くにはいないようね……」
「あ、解像度が落ちてきた」
 樟葉が慌ててレーダーを操作しはじめた。
「……違うわ、変態し始めてる」
「変態!?」
「メタモルフォーゼ……変身することよ」

 ボイジャーは5分ほどかけて変態した……その姿は、栗色のショ-トヘアーの女の子だった。
「ちょっと男子は向こう向いてて」
 みかさんが優しく言った。トシと修一は、すぐに理解した。女の子は裸だった。
「……いいわよ」
 男子二人が振り返ると女の子は、黒字に赤い花柄のワンピに黒のスパッツ姿になっていた。意識はないようだ。
「面舵二十度、ボイジャーの回収に向かう」
 修一が、そう言うと、樟葉はレーダーを睨みながら、ゆっくりと舵を切った。
 
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音に聞く高師浜のあだ波は・8『誉も高き』

2019-09-29 06:16:57 | ライトノベルベスト
音に聞く高師浜のあだ波は・8
『誉も高き』     高師浜駅


 渡り廊下の四階部分には屋根が無い。

 建築費節減のために一階は素通し、四階は手摺だけの青天井。
 午前中に雨が上がって、青空が見えてきたんで、教室移動に四階の渡り廊下を三人で歩いてた。
「やっぱり晴れてんのがいいね!」
「やっぱ、お日様浴びてセロトニン増やさなきゃね!」
「ほんまやね!」
 スミレヒメノホッチの三人は、スキップでもしそうな勢い。

 そこに、木枯らしの予告編のような突風が吹きあがって来た。

 キャーーー!

 三人仲良く悲鳴を上げて、ガードしたのはスカート。
 勉強道具を抱えていたけれど、女子の一大事。派手に捲れ上がることだけは防いだ。
 そやけど、弛んだ両腕の間から、授業で使うコクヨのファイルが吹き飛ばされてしまった!
「危なかったーー」
 さすがは弓道部。すみれ一人だけは吹き飛ばされずに済んだ。
「どないしょ、次の授業でいるで!」
 次の現代社会はプリント授業で、ファイルがないと話になれへん。万一無くなってしもたら、来るべき期末テストの勉強もでけへん!

「あ、拾ってくれたみたいよ!」

「あー、それ、あたしの!」
 
 叫んだ声に振り仰いだのはマッタイラ。あたしらに気が付いた感じやけど、なんか(しもた!)いう顔してるのが、四階からでも分かった。

「ここに置いとくから、取りに来い!」

 それだけ言うと、ファイルをベンチの上にオキッパにして行ってしまいよった。
「なんのイケズや!」
 そない吠えながらも、三人で地上の中庭にまで下りる。

 あ、あれや!

 ベンチの上にファイルを見つけて……あれぇ!?

 あたしのんはあったけど、姫乃のファイルが見当たらへん。
「おかしいなあ……」
 すみれが率先して探してくれた。
 ベンチの下から植え込みの中まで探したけど見つからへん。
「マッタイラは、二人分置いてたわよね?」
「そう見えたんやけど、やっぱりイケズかなあ……」
「どうしよう……」

「俺は、二冊とも置いた!」

 マッタイラに確認すると、マッタイラには珍しく、胸を張って言い張った。
「そやかて」
「もう授業始まるわ。姫乃はあたしのん見せたげるから」
 現社の移動教室では、すみれと姫乃は隣り合わせなんで、机を引っ付けて一時間をしのいだ。
 六列ある席で、二人だけが席を引っ付けてるので、姫乃は居心地悪そうにしてた。
 横目でマッタイラをジト目で見てみる。

 パチコーン!

 木村に、頭をシバカレて、立場なさげなマッタイラ。
 イタズラやったら、こっち見てニヤニヤしてるか、不自然に無関心を装うか。
 あの感じでは、マッタイラはほんまに知らんような感じや。

「阿田波さん」

 落ち込んでる姫乃を真ん中にして教室に戻る途中、後ろから声を掛けられた。
「これ、阿田波さんのでしょ?」
 振り返ると、ミス高師浜と誉も高き、二年生の立花優花先輩が、ファイルを差し出しながら立っていたのだった。

 
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高安女子高生物語・102〔The Summer Vacation・5〕

2019-09-29 06:07:55 | ノベル2
高安女子高生物語・102
〔The Summer Vacation・5〕            


 
 サブイボが立ってしもた!

 長崎県のS市で、友達殺して、その死体の手首と首を切った女子高生のニュース!
「ゲー……!」
 こういうときには、かいらしい「キャー」は出てけえへん。我ながらオバハンのリアクションやと思う。
 そやけど、反応してる心は17歳。殺した子も殺された子も15歳の高校一年生。うちと一学年しか変わらへん。

「またか……」

 沸きたての麦茶に氷入れながらお父さんがポツンと言うた。それほどショックやないみたい。テレビのコメンテーターは、なんでかスマホのせいにしてしたり顔。
――やっぱ、コミニケーションの取り方が、この年齢では未熟なところにもってきて、今は、みんなスマホでしょ。分からないんでしょうね、距離の取り方。やっぱ、スマホというのは……――
「オレが高校生やったころもあった……」
 何十年前や?
「友達と喋ってたら、知らんオッサンが来て因縁つけよるんで怖なって一人で逃げた。心配になって戻ってみたら、友達は殺されてて首を切り落とされてたいうのがあったけど、結局殺して首落としたんは、そいつやった……」
 うちも、スマホに罪は無いと思う。サブイボ立ったんは、心のどこかで同じような鬼が住んでる気がしたから。

――鬼て、わいのことか?――

 正成のオッサンが言う。正成のオッサンは、ちゃう意味で鬼や。
 人を殺して首まで落とすいうのは、ある意味心理的エネルギーの爆発やと思う。みんな、このエネルギーは持ってるけど、適度に火ぃ点けて燃やしてる。それが、ちょっと火の点き方の違いで爆発してしまう。持ってるエネルギーはいっしょや。せやからサブイボが立つ。エネルギーは鬼にもなるし、神業をおこすこともある。

 神業に成れ! 

 そない思うて、お母さんがUSJのハリポタで買うてきたバタービールのジョッキに氷をしこたま入れた麦茶を一気飲み。そのままお風呂に行ってシャワー浴びてたら、お腹が夏祭りになってしもた!
 急いで体拭いて、タオルを頭に巻き付けて、パンツ穿くのももどかしくトイレに駆け込む。日本三大祭り(祇園祭、天神祭、神田祭)に岸和田のダンジリいっしょにしたみたいな夏祭り。
「エアコン点けっぱなしで、お腹出して寝てるからよ」
 トイレ出たとこでお母さんに怒られた。

 陀羅尼助を二人前飲んで、スタジオへ。難波からスタジオまで歩いて汗流したら、お腹も治ってきた。

「今日は、ちちんぷいぷいに選抜が出て顔売りにいきます。暫定的にリーダーは明日香。他のゲストはベテランの人ばっかりやから心配いらんけど、生やから気いつけて放送事故なんかにならんように。他のメンバーは勉強のために見学。終わったら戻ってレッスンと夜のステージ。よろしく!」
 市川ディレクターの説明で行動開始。

 番組では、やっぱり長崎の殺人事件が話題になってた。
 フッてこられたんで、朝思た心の鬼説を語る。メンバーも出演者も感心して聞いてくれた……とこまではよかった。
 調子に乗って、お腹の夏祭りの話までしてしまう。

「ほんなら、明日香さん、パンツも穿かんとトイレに……!?」

 スタジオ大爆笑。この時、うちはMNBの『お祭り女王』という称号をいただく、その原因の半分はこれですわ。
 
 アハハハハ(*´∀`)
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小悪魔マユの魔法日記・48『フェアリーテール・22』

2019-09-29 05:57:17 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・48
『フェアリーテール・22』    


 
 
「そこまでだ……!」

 合体した二人の後ろで声がした……。

 立っていたのは町長だった。

「気になってサンチャゴの家を覗いたら、ベアが倒れていた。君たち二人の姿はないし、サンチャゴは夢を見続けていた。サンチャゴの瞳の中に、君たちの気配を感じてね、心配になってここまで来たんだ」
「町長さん、夢の中に入ってこれるんだ」
「めったに使わんが、この程度の魔法はね……しかし、二人合体してZ指定の結界をこえるとは……マユちゃん、なかなかの魔法使いだ」
「いいえ、わたしは、そんなアマチュアじゃないわ。こう見えても悪魔のハシクレ、魔法では、わたしには勝てないわよ」
「……そうだったのかい」
 町長は、ため息一つついて、岩の上に腰を下ろした。

「もう、こうなったら、お願いするしかないね……ライオンが目覚める前に、この夢から出て行ってくれないかい。ミファ、マユ……」
「どうして、起きているライオンを見ちゃいけないの」
「……手に負えないんだよ、ライオンは。昔は……といっても、わたしなんかが生まれる前だけどね。ライオンのことは小学校でも教えていた。みんなライオンを信じていた……そして、そのために大きな戦争までやってしまった……大勢の人が死んで、島は、さびれてしまった。だから、わしたちは、もうライオンを見ないことにした、考えることもやめた。いま、島でライオンを見続けているのはサンチャゴただ一人。だから起こすわけにはいかない。君たちに、起きているライオンを見せるわけにもいかないんだ」
「……でもね町長さん。そんなこと言ってたら、あたし達の島は、いつまでたっても今のままよ。あたし達、まだ子どもだけど、任せてくれないかな。ライオンをどう受け止めるか……それは見てみなくちゃ分からないから、感じてみなくちゃわからないから」

 その時、ライオンが目を覚ました……。
 うわああああああああ!!!
 気がつくと、サンチャゴじいちゃんの小屋にもどっていた。
 ライオンが目覚めたとき、それは気配で分かった。空気が強い力でみなぎったから。サンチャゴ軍曹は、少し遅れて歓声をあげた。そして、ゆっくりとライオンといっしょにこちらを向いた。

 サンチャゴの目も、ライオンの目も……暗い井戸の底のように真っ暗だった。ただ深い闇の広がりが予感されるだけだった。町長も合体したマユとミファもその底知れない闇に悲鳴をあげることしかできなかった。
 そして、気がつくと三人は、この小屋にもどってきてしまっていた。

「わしが、もどしたわけじゃない」
 町長が、震えの残った声で言った。
「わかってるよ、町長さん。わたし、ただ怖ろしかった」
 合体が解けて、本来の姿に戻ったミファが言った。
 
 ガタンと音がして、町長とミファが驚いて音のした方を向いた。

「ごめん、おどかして……たぶん、もどしたのは、わたし」
 音がしたのは、マユが立ち上がろうとして、ふらついたからだった。
「ライオンの目を見るのには、町長さんは歳をとりすぎていた。ミファは、まだ幼すぎる。そして……二人を守るには、わたしの魔力は弱すぎた。だから……たぶん、わたしが反射的に二人を連れて夢から飛び出したんだと思う」
「サンチャゴじいちゃんは!?」
 ミファの声で三人は、サンチャゴのロッキングチェアーに寄った。サンチャゴは安らかな寝息を立てて眠っている。
「こんな安らかな寝顔を見たのは、初めてだな」
「うん……サンチャゴじいちゃんは、ライオンを見ることができたんだもんね」

 そうじゃない……二人には言わなかったけれど、マユには見えた。

 ライオンとサンチャゴの目の底にあるものを。ミファは怖さのあまり記憶からとんでしまっているけど、もう少し大人になれば無意識にでも思い出すだろう。マユは、そう思って言わなかった。
 その思いは、サンチャゴじいちゃんの小屋を出て坂道を町へもどるころには確信になっていた。ミファの肩から力みが消えていたから。

「ミ、ミファ……!」

 ミファを呼ぶ声が坂道を駆け上がってきた……。

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