大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・115『学校見学』

2020-01-19 11:58:08 | ノベル

せやさかい・115

『学校見学』 

 

 

 とっくにオープンキャンパスは終わってたけど、見学は快く承諾された。

 

 少子化のこの時代、ちょっとでもええ生徒を確保したいということやと思う。

 そんで頼子さんだけと違て、あたしと留美ちゃんも付いて行ってええということになった!

 えと、真理愛女学院(マリアじょがくいん)の見学。

 

 頼子さんは通学ルートも見ておきたいので電車で行くつもりやったけど、詩(ことは)ちゃんに聞いたら分かることなんで、例によってテイ兄ちゃんの車で向かう。

 テイ兄ちゃんは午後から檀家周りがあるんで坊主のコス。

「テイ兄さんお願いします」

 頼子さんが手渡したんは、頼子さんの親の委任状。

 つまり、見学に関しては保護者と同じ資格ということや。テイ兄ちゃんが喜ばんはずがない!

 坊主のコスでミッションスクールってどうよ? とも思うねんけどね。

 

 校門の前でテイ兄ちゃんは合掌、うちらも行儀よく頭を下げる。

「よくいらっしゃいました」

 グレーのシスター服のおばさん……いや、校長先生(詩ちゃんに教えてもろてた)がお出迎え!

「他の先生方は授業中なもので、わたくしがご案内させていただきます」

 他に、副校長とか教頭先生とか居てるやろに……頼子さんがヤマセンブルグの王女様(正式やないけど)やいう情報が伝わってのことやと思う。

 テイ兄ちゃんは、保護者の代理ということを委任状を渡しながら説明し、もう一度ピロティー脇にあるマリア像に合掌。あたしらも頭を下げる。

 応接室に通されて、学校の概要と入試のあれこれについて説明を受ける。

 頼子さんは、パンフレット半分、校長先生の顔半分いう感じで、時折美しく微笑んで頷いてる。さすがは王女様の気品。でもって、二度ほど軽く質問。いくら上品でもコミニケーションは双方向でないと礼を失するいう、行き届いた気配りやねんわ!

 そやけど、後半になってオーラを感じたんは留美ちゃんや!

 コクコク頷いてはメモをとったり、パンフにアンダーラインを引いたり、頼子さんよりも入る気満々いう感じ。

 校長先生がモニターに学校案内を流して、校歌が流れるとこになったら涙まで流してる。

「榊原さんね、しっかり聞いてくださってありがとう」

 校長先生は、付き添いの名前まで憶えてくれてはったよ!

「正直に申しますが、学年途中でエディンバラの高校に編入する可能性があります……」

 いちばん大事なことを頼子さんは包み隠さへんかった。

「はい、それは、その時にお考えになったらよいことだと思います」

 間接的表現やけど、学校としては気にしませんという意思表示やと思う。これからは自分の事も自分の意思だけでは決められんようになる頼子さんには嬉しいことやと思う。

「ありがとうございます(#^―^#)」

 お礼を言う頼子さんの言葉にも歳相応の嬉しさが滲んでた。

 

 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 

 ちょうど終業のチャイム。うちの中学と違てチャラ~ンポラ~ン チャラ~ンポラ~ンとは聞こえへん。

「では、校内案内を……」

 校長先生が言いだすと同時に、ドアがノックされた。

「どうぞ」

 校長先生の言葉に「失礼します」と入って来たのは……なんと詩ちゃん!

「二年A組の酒井詩です、見学の方のご案内を申し付かってまいりました」

「ピッタリね、じゃ、ここからは酒井さん。よろしくね」

「はい、では、みなさん、こちらにお進みください」

 家でもしっかりした詩ちゃんやけど、なんかもうすっかり総理大臣の秘書でも務まるんちゃうかいう大人びた感じ!

 

 次の時間は『校内奉仕』とかいう時間で、ようは大掃除。

 

 頼子さんが注目されてるのがよう分かる。

 なんせ、ブロンドのセーラー服。先月は来日したヤマセンブルグ女王陛下に付き添ってマスコミへの露出も多かった。高校生とは言え、そのへんの事情を知ってる人も居てる。

 せやけど露骨にジロジロ見たりはせえへん。キャーキャー言うこともない。

 視界に入る生徒さんたちは、みんな、それぞれに校内奉仕のお掃除に勤しんでる。一人だけ、窓ふきの雑巾を落とした子がおったけど。

 高校生になったら落ち着くんか、学校の躾が行き届いてるんやろか……たぶん、その両方。

 で、あきらかにうちらは刺し身のツマというか空気ですわ、空気。

 廊下ですれ違た女生徒。

 きちんと会釈するんはさすがやけどね……そのまま、頼子さんに目を奪われてしまいよった。

 ごつん! 

 後ろ歩いてたあたしにぶつかって、もろ大阪弁で「アイタア!!」とカマシテくれはりました。

 でや、空気でもぶつかったら痛いねんぞ。

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不思議の国のアリス・6『OH MY POOR 千代子!』

2020-01-19 06:17:37 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス・6
『OH MY POOR 千代子!』      
 
 

 日本で、笑っちゃうもの(アリスの日記より抜粋)
 
 NHKのアナウンサーの顔(証明写真の動画版みたい。民放でもたまにいる)
 キンタローのAKBのモノマネ(彼女六頭身はあるのに、どうして四頭身と言うのかな。立派なダンサーだ)
 選挙の演説(ムツカシイ日本語で、半分は意味分からないけど、きっと分かっても分からないだろう)
 選挙演説を聴いてる人(エキストラかと思った。大人に聞いたらサクラがいるとか。サクラって何?)
 大阪の整列乗車(電車が来たとたんに列が崩れる。千代子は「なんちゃって整列」と言ってた)
 ママチャリの3人乗り(ほとんどアクロバット。でも、ホンワカして笑っちゃうんだよね)
 ケイオンというポップスのクラブ(なんで、演奏中に観客見ないでノレるのかなあ?)
 赤ん坊の笑顔(世界共通。でも、赤ん坊みたいな大人は、別の意味笑える)
 テレビのコメンテーター(言ってることが、わたしが聞いても小学生レベル)
 地球温暖化を信じてる人が多い(アメリカ人は「どうでもいい」と思ってる。大きな声じゃ言えないけど)
 アメリカが日本を守ってくれると思ってる(自分の国をヤバクしてまで、外国のこと守ると思う?)
 コメディアン志望多すぎ(みんな笑わす側のコメディアンになったら、だれが笑うの?)
 核とロケット技術あるのに、なんで核兵器持たないのか(一発で、日本のポテンシャル上がるのに)
 パチンコへのハンパじゃない熱中(あの小さな箱、ほとんどエンタテイメント!)
 学校の面接練習(プレゼンテーション能力ない先生に教えてもらってもねえ)
 わたしの無責任な感想にうなづく人(しょせんは、わたしの思いつきだからね)
 
 日本で、笑えないもの(アリスの日記より抜粋)
 
 コメディアンのギャグ(日本語にだいぶ慣れてきたけど、やっぱ笑えない。千代子の婆ちゃんも笑わない)
 コメディアンみたいな政治家(最初はギャグで真似してんのかと思ったら、本物の政治家だった)
 いくら勉強できても、飛び級させない(これって、若者のモチベーション下げてると思う)
 日本の地震(一度、震度3を経験。地球最後の日かと思った。わたしのリアクションにみんな笑った)
 イジメの認識(bullyingとviolenceは、全然違う。アメリカのイジメもたいがいだけど)
 授業で、反対意見ってか、質問できない(社会科でちょっと質問したら、怖い顔で黙殺された)
 世界最高齢のオジイチャンがミイラだった(親の年金が欲しいためだとか)
 アイドルの子が坊主頭になった(なんかルール違反らしいけど、最初はテロで拉致されたのかと思った)
 証明写真撮るとき(なんで、証明写真に自分のブスっとした顔? あ、ブスじゃないから。念のため)
 わたしの英語のギャグが通じない(シカゴじゃ、3歳の子でも笑う。6年も英語習ってんのになんで!?)
 千代子ママの高校時代の体育祭の写真(スカート穿くの忘れてんのかと思った。ブルマというらしい)
 わたしの日記を公表するやつ(作者だからって、なんでもありは無し。登場人物のプライバシーを守れ!)
 

 ハーーーーーーーー
 
「元気ないやんか、どないしたん?」
「どないもせえへん……」
 学校に着くまでに、千代子はもう十回以上ため息をついている。
「そんな顔されてたら、うちまで切のうなるわ」
「ごめん、アリス」
 あまりにも心配してくれるアリスに、千代子も黙っているのは悪い気がして、教室に着くと、サッとメモをして見せてくれた。
「読んだら、すぐに破って……」
 そう言うと、千代子は机に突っ伏してしまった。
 
――バレンタイン、ちよこのわたしかた――
 
 メモには、そう書いてあった。
 最初のバレンタインが、わたしのファミリーネームでないことは分かった。でも、その後が問題だ。
 千代子の渡し方というのは、ただ事ではない。アリスは自分の手をシュレッダーにしながら考えた。日本には卒業式の後のプロム(パーティーみたいな)がない。アメリカじゃ、プロムを大事にしているところがかなりある。いわば大人への第一歩で、アルコールもありだし、なんとなくのボーイフレンドが正式な恋人になるチャンスでもあり……つまり、身も心もくっつくということ。
 バレンタインデーは、シカゴではお気楽な遊びみたいなもの。でも、日本では意味が大きい。本命とか義理とかの区別もあるらしい。
 そこまで、考えて、アリスは千代子の気持ちを大きく、重く考えた。
――バレンタインで、千代子は愛する彼に、女の子の大事な○○を捧げようとしてるんだ。
 バレンタインまで、あと一週間あまり。
 親友として、アリスは千代子の力になろうと決心した。
 
 窓の外は、早春の曇り空が広がっていた……。
 
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巷説志忠屋繁盛記・11『写真集・1 大和川の海水浴』

2020-01-19 06:06:34 | 志忠屋繁盛記
  
巷説志忠屋繁盛記・11
 
『写真集・1 大和川の海水浴』    
 
 
 
 大和川の海水浴や! 
 
 タキさんは写真集を見て感動した。
 川で海水浴というのは変なのだが、タキさんのガキ時代はプールと風呂屋以外での水泳は全て海水浴と呼んでいた。
 
 海外旅行には一度も行ったことのないタキさんだが、ガキ時代の行動半径は広かった。
 並の子どもなら町内か、せいぜい校区内がテリトリーなのだが、河内の朝吉をヒーローとするタキさんは八尾柏原が行動半径の内だ。
 そんなタキさんは、市民プールなんぞというナマッチロイところには、あまり行かず、自転車をかっ飛ばして大和川まで泳ぎに行ったものだ。
 子分のガキたちが「コウちゃん、連れてってやー」というのをホッタラカシにして海パンを穿いたまま自転車に跨った。
 子分を連れて行かないのには理由があった。
 小学校で、国鉄の線路内に入って遊ぶことと、市内の川で遊ぶことを禁じられていたからだ。
 自分の危険はハナクソほども気にしないが、子分たちが危険な目に遭うことは極力避けた。
 大和川は八尾ではないが、ガキのタキさんにとっては自分のテリトリーは全て八尾であった。
 
 堤防の上、無造作に自転車を放り出すと「うりゃーーーー!!」と奇声を発して駆け下り、一気に川に飛び込む。
 奇声は一種の掛け声なのだが、地元のガキどもをビビらすためでもある。
「また。あのガタロ(かっぱ)や」
 おおかたの地元のガキは、そう言ってタキさんとの無用ないさかいを避けた。
 もっとも大和川の河川敷は広々としていて、タキさん一人ぐらいのがたろを気にすることもなく遊ぶことが出来た。
 しかし、そんなタキさんを快く思わないガキは当然いるわけで、一度タキさんは自転車を川に放り込まれたことがある。
 すぐに気づいたタキさんは「おんどりゃーー!」と追い掛け回し首謀者のガキ大将を組み伏せた。
 一発どついてから「オラ、子分といっしょにとってこいやあ!」と締め上げた。
 五人ほどいた子分で親分の窮地を救うべく戻って来たのは十円禿げのガキ一人だけだった。
 で、親分子分の二人に自転車を回収させると十円禿げを「おまえは偉い!」と褒めたたえた。
 「みんな逃げよったけど、おまえだけが戻って来た。なあおまえ(ガキ大将)これからは、こいつ可愛がったれよ」
 と、ガキ大将に説諭した。
 縁あって十円禿げは八尾に引っ越して、タキさんと同じ学校になったので無二の子分になり、前出の写真のようにタキさんのカバン持ちになった。
 
 この日も雄たけびあげて川に飛び込もうとしたら悲鳴が聞こえた。
 
――だれか助けてーーーー!――
 
 上流の方で、スク水を着た女の子たちが川面を指さして泣き叫んでいる。
 川面に目をやると、女の子がアップアップしながら浮き沈みしている。
 
 溺れてるんや!
 
 これが男の子なら、タキさんはなんの躊躇もなく川に飛び込んだ。
 だが女の子だ。
 ガキの頃のタキさんは、女はめんどくさいものと思って、なるべく関わらないでいるというのが信条だった。
 放っておいてもどこかの大人が助けるだろうと思った。
 その時、河原で助けを呼んでいる子と目が合ってしまった。
 ここで逃げたらカイショナシと思われる。
 
「まかしとけーーーー!」
 
 一声叫んで、タキさんは川に飛び込んだ。
 日ごろから「浩一は昔やったら甲種合格やな!」と祖父さんに言われてるほど体格と運動能力に秀でていた。
 あっという間に女の子のところまで泳ぎ着いた。
「あ、抱きついたらあかん!」
 恐怖のあまり女の子はしがみ付いてくる。このままでは二人とも溺れてしまう。
 立ち泳ぎしながらタキさんは、女の子を裏がえした。
 裏がえすと、頭の下から手を回して呼吸が出来るようにしてやって、結論を言うと無事に救助に成功した。
 
 女いうのは、こんなにやらかいもんか!?
 
 これがタキさん最大の感想であった。
 期せずして、タキさんは最適な溺者救助をやったのだが、最大の関心事はそこであった。
 あとで分かったことであるが、女の子は小学6年生で、当時のタキさんにとってはじゅうぶん女であった。
 
 タキさんは人命救助で表彰された。
 同時に、学校からは禁止されている川での水泳をやったことで目いっぱいオコラレタ。
 
「マスター、ディナータイムだっせ」
 
 Kチーフに言われ、やっと写真集から目を上げたタキさんであった。
 
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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・14・「1つだけ影響があった」

2020-01-19 05:53:47 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)14
「1つだけ影響があった」                      


 
 予感はしていたが校長室に呼ばれた。

「沢村千歳さんのチャレンジ精神と、それを受け入れた小山内啓介君の前向きな心に拍手を送りたいと思います」
 校長のお祝いの言葉はテイク3でOKが出た。
 千歳と啓介は恭しく、校長の励ましの言葉がしたためられた色紙を受け取った。
 
 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 すかさずフラッシュが光り、連写のシャッター音が続く。

「なんとか夕刊に間に合います」
 A新聞の記者が――嬉しいでしょう!――と言わんばかりの笑顔で言った。
「3人並んだところの写真なんかいりませんかね?」
 理髪店の匂いをプンプンさせながら校長が言う。A新聞の取材を聞いて、校長は1時間の時間休をとって散髪に行ってきたばかりである。
「連写した中から選びます、自然な感じなのがいいですから。動画も撮っていますので、それはネットで流れますから」
 天下のA新聞だ、どうだ嬉しいだろう! というマスコミ笑顔で記者はとどめを刺した。

 千歳は身障者対応の自販機の前で撮った『乾杯の写メ』を付けてブログに載せると共に、主要四大紙に送った。

 予想通りA新聞が食いついてきた。完全バリアフリーモデル校である空堀高校の演劇部に車いすの女生徒が入部したのである。こういうことが大好きなA新聞の地方欄にはうってつけだった。
 こうして、千歳の演劇部への入部は空堀高校のエポックになった。
 エポックというのは、それ以上でもそれ以下でもない。
 だから、校長が予定よりも2週間早く散髪に行った以外には、世間も学校も、取り立てて何もしてはくれない。

 そんなこと、千歳は百も承知だ。
 
 千歳は「千歳は頑張っているんだ」という熱意の発信ができればいい。この発信のポテンシャルが高ければ高いほど学校を辞める時は「仕方が無かった」ということになる。
「大丈夫よ、新聞の地方欄なんてほとんど注目なんかされないから」
 隠れ家としての部室が欲しいだけの啓介は新聞社なんかが来て、少し不安になっていた。まっとうな演劇部活動をやろうという気持ちは毛ほどもない。ないから不安になる。しかし、千歳の見透かしたような物言いには、どこかカックンとなってしまう。

 だが、1つだけ影響があった。

「部員の充足、もう一週間待ってあげるわ」
 生徒会副会長の瀬戸内美晴がポーカーフェイスで伝えに来た。
「え、どういう風の吹き回しやねん?」
「校長の申し入れよ。あたしもうかつだった、校長が居るのにも気づかなくて生徒会顧問に確認したのよ『演劇部の部室明け渡し、今日確認します』て、そーしたら『もうちょっと待ってやってくれへんやろか』て言われたのよ。むろん、校長とはいえ素直に聞く気はないけどね、クラブ部長会議やる視聴覚教室の許可願の不備を突かれてね。ま、それで一週間延期。一週間延ばしてもなんにも変わらないだろけど、フェアにやりたいからね。ほんじゃ……」

 千歳は、もう一工夫やってみる気になってきた……。
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乃木坂学院高校演劇部物語・101『本番はこんな具合』

2020-01-19 05:44:56 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・101   

 

『本番はこんな具合』


 ロケのだんどりは、こんなだった。

 クシャミを合図のようにして、役者の人たちが、笑いながらロケバスから出てきた。完全なティーンに化けたマリ……上野百合さんは、クシャミまでは化けきれず、そのギャップに大笑い。特に事情を知っている高橋さんと、はるかちゃんは笑い死に寸前。
 監督さんから、いろいろと指示が出されている様子。そして何度かのカメラテストとリハーサルに一時間ほどかけて本番。
 
 女の子はみんな女子高の制服。高橋さんは、いかにもありげな先生のかっこうで、自転車に乗って土手道をやってくる。土手の下では、堀西真希さんと、われらが上野百合さんが、三年生の設定で、ポテチをかじりながら、二年間の高校生活を嘆いている。
 つまり設定は四月で、新学年の始まり。あちこちに造花のスミレやレンゲが何百本。美術さんが忙しそう。お気楽に見てるテレビだけど、頭が下がります。
 そこを本を読みながら、はるかちゃんが土手道を歩いてくる。前から自転車でやってきた高橋さんの先生が、よけそこなって、自転車ごと土手を転げ落ちてしまう(もちろん、落ちるのは人形の吹き替え)。
「大丈夫ですか!?」
 と、大阪弁で、はるかちゃんが駆け寄る。
「アイテテ……」
 と、うなる先生。
「ごめんなさい、ついボンヤリしてしもて」
「きみは……転校生の春野……お?」
 先生は、春野さんのバッグからはみ出しているポテチに気づく。同時に春野さんは、先生の自転車の前かごから飛び出したポテチに気づく。見交わす目と目、吹き出す二人。そして、その親密さに気づいて、草むらから立ち上がる堀西真希と上野百合。その二人の手にも同じポテチが……。

 で、二回目のテストのとき、監督さんがわたしたちに目をつけた……。

 わたしたちは同じ制服を着て、はるかちゃんの後ろを歩いてくる、文字通り通行人。で、先生が転げ落ちたあとは、土手から心配げに見ている背景の女学生。
むろん顔なんかロングなんで分からないんだけど、思わぬテレビ初出演! でも、病み上がりとはいえ、やっぱ、潤香先輩って映える。また、カメラ回っている間平然としている根性もやっぱ、潤香先輩ではありました。
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