せやさかい・111
ニッポンブソン?
アハハハハハハハ
銅板に浮き彫りになってる銅像の名前を読むと笑われた。
「ヤマトタケルノミコトって読むのよ」
笑いの収まった詩(コトハ)ちゃんが涙を拭いながら教えてくれる。
「どこを指したらヤマトタケルになるのんよ!?」
いきなり笑われたんで、聞き返す言葉がプンプン丸になってしまう。
「検索したら一発よ」
頼子さんが言うので、スマホで調べる。
やまとたけると打ち込んで、ポチッとやると……
ほんまや!
日本武尊と銅板と同じ漢字が出てきた。
「すごい、詩ちゃんも頼子さんも知ってたん!?」
「まあ、さくらはずっと大阪市内だったから、知らなくても無理ないよ」
「あ、そうなん? 留美ちゃんは知ってた?」
「まだ中一なんだから、知らないことが多くって当たり前よ」
留美ちゃんは答えをぼかしながら、穏やかに慰めてくれる。ほんまにええ子や。
わたしらは初詣に堺市で一番の大鳥神社に来てる。
例によって、アッシーはテイ兄ちゃん。
うちからやと、鉄道にしろバスにしろ、けっこう不便なんで車が一番。
あちこち案内してくれて、帰りには甘いもんでも奢ってくれると、わたしもテイ兄ちゃんも期待してた。
テイ兄ちゃんは、とにかく頼子さんの大ファン。
せやけど、新年早々檀家さんにご不幸ができたんで、そっちにも行かなあかんので、文字通りのアッシー君。
初詣が済んだころに大鳥居の前まで迎えに来てくれることになってる。
大鳥神社は和泉の国の一の宮で、堺で初詣いうと、三人に二人は来るやろという人気の神社。
なんと三が日で五十万人が初詣に来るそうで、この人数は伊勢神宮の六十万人に迫ろうかという全国でも有数の賑わいになるらしい。
「コミケもそれくらい来るよ」
「え? コミケてなに?」
留美ちゃんの呟きに、またしても素朴な質問のわたし。
「あ、コミックマーケット。全国的な同人誌の頒布会で、東京で年二回あるの。夏が夏コミ、冬を冬コミって言うんだよ。三日間あってね、五十万人以上の人が集まって、ゲームとか、コスプレとかも、とっても凄いんだよ!」
「留美ちゃんは、行ったことあんの?」
「行きたいとは思うんだけどね……」
「あ、東京やしねえ」
すぐにフォローしたんやけど、留美ちゃんが行ってへんのは、きっと健康上の理由。すぐに分かってフォーローできるほどに、うちらは友だちになれた。
留美ちゃんにも伝わったんか、小さく照れ笑い。
「いつか行けるといいね」
頼子さんもフォロー。三人だけやけど、文芸部はええクラブになった。
長い列に並んで初詣を済ませる。
「ちょっと待ってね」
頼子さんは授与所でなにやらお買い物。あたしらもおみくじを引きに行く。
「「「アハハハ」」」
三人そろって中吉を引いて明るく笑えた。頼子さんは絵馬を買って、なにやら書きつけてる。
「なに書いてるんですか?」
「あ、合格祈願」
そう言って、ちょっとためらってから、希望校の名前を書いた。
大阪真理愛女学院
うそ!? 詩ちゃんと同じ学校や!
「「頼子さん!!」」
嬉しさのあまり叫び出しそうになったら、頼子さんはお守りを突き出した。
「ほれ、あなたたちには決心のおすそ分け!」
学業お守りをありがたくいただきました。
詩ちゃんのは……恋愛成就!? え? ええ!?
詩ちゃんが真っ赤になった!