大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・111『初詣は大鳥神社』

2020-01-05 14:44:30 | ノベル

せやさかい・111

『初詣は大鳥神社』 

 

 

 ニッポンブソン?

 アハハハハハハハ

 

 銅板に浮き彫りになってる銅像の名前を読むと笑われた。

「ヤマトタケルノミコトって読むのよ」

 笑いの収まった詩(コトハ)ちゃんが涙を拭いながら教えてくれる。

「どこを指したらヤマトタケルになるのんよ!?」

 いきなり笑われたんで、聞き返す言葉がプンプン丸になってしまう。

「検索したら一発よ」

 頼子さんが言うので、スマホで調べる。

 やまとたけると打ち込んで、ポチッとやると……

 ほんまや!

 日本武尊と銅板と同じ漢字が出てきた。

「すごい、詩ちゃんも頼子さんも知ってたん!?」

「まあ、さくらはずっと大阪市内だったから、知らなくても無理ないよ」

「あ、そうなん? 留美ちゃんは知ってた?」

「まだ中一なんだから、知らないことが多くって当たり前よ」

 留美ちゃんは答えをぼかしながら、穏やかに慰めてくれる。ほんまにええ子や。

 

 わたしらは初詣に堺市で一番の大鳥神社に来てる。

 

 例によって、アッシーはテイ兄ちゃん。

 うちからやと、鉄道にしろバスにしろ、けっこう不便なんで車が一番。

 あちこち案内してくれて、帰りには甘いもんでも奢ってくれると、わたしもテイ兄ちゃんも期待してた。

 テイ兄ちゃんは、とにかく頼子さんの大ファン。

 せやけど、新年早々檀家さんにご不幸ができたんで、そっちにも行かなあかんので、文字通りのアッシー君。

 初詣が済んだころに大鳥居の前まで迎えに来てくれることになってる。

 

 大鳥神社は和泉の国の一の宮で、堺で初詣いうと、三人に二人は来るやろという人気の神社。

 

 なんと三が日で五十万人が初詣に来るそうで、この人数は伊勢神宮の六十万人に迫ろうかという全国でも有数の賑わいになるらしい。

「コミケもそれくらい来るよ」

「え? コミケてなに?」

 留美ちゃんの呟きに、またしても素朴な質問のわたし。

「あ、コミックマーケット。全国的な同人誌の頒布会で、東京で年二回あるの。夏が夏コミ、冬を冬コミって言うんだよ。三日間あってね、五十万人以上の人が集まって、ゲームとか、コスプレとかも、とっても凄いんだよ!」

「留美ちゃんは、行ったことあんの?」

「行きたいとは思うんだけどね……」

「あ、東京やしねえ」

 すぐにフォローしたんやけど、留美ちゃんが行ってへんのは、きっと健康上の理由。すぐに分かってフォーローできるほどに、うちらは友だちになれた。

 留美ちゃんにも伝わったんか、小さく照れ笑い。

「いつか行けるといいね」

 頼子さんもフォロー。三人だけやけど、文芸部はええクラブになった。

 

 長い列に並んで初詣を済ませる。

 

「ちょっと待ってね」

 頼子さんは授与所でなにやらお買い物。あたしらもおみくじを引きに行く。

「「「アハハハ」」」

 三人そろって中吉を引いて明るく笑えた。頼子さんは絵馬を買って、なにやら書きつけてる。

「なに書いてるんですか?」

「あ、合格祈願」

 そう言って、ちょっとためらってから、希望校の名前を書いた。

 

 大阪真理愛女学院

 

 うそ!? 詩ちゃんと同じ学校や!

「「頼子さん!!」」

 嬉しさのあまり叫び出しそうになったら、頼子さんはお守りを突き出した。

「ほれ、あなたたちには決心のおすそ分け!」

 学業お守りをありがたくいただきました。

 詩ちゃんのは……恋愛成就!? え? ええ!?

 

 詩ちゃんが真っ赤になった!

 

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となりの宇宙人・20『エジプトの王女さま・1』

2020-01-05 06:43:53 | 小説4
となりの宇宙人・20
 『エジプトの王女さま・1』
          
 
 
 
 
 
  チクワブを買ってスーパーの表に出ると声をかけられた。

「渡辺愛華さん」
「はい……」

 振り返ると、同じ杉之森の制服を着たツインテールが立っていた。

「ちょっとお話ししたいの、いいかしら?」
「え、えーと……」
 ツインテールは親し気に話しかけてきたけど、違和感。
 同じ制服なんだけど、オーラが杉之森ではない……杉之森も、ここらへんの高校では品のいい方。だけどツインテールのオーラは、もっと品がいい。例えて言うなら昔の学習院。と言っても学習院を知ってるわけじゃないけど、それほどの感じということ。
「そこに知り合いのお店があるの、落ち着けるとこだから、ね?」
 最後の「ね?」のところにえも言えない優しさと親しみがあって、あたしの「おや?」という気持ちはどこかにいってしまった。

 ルクソールという店も意外だったけど、店が面している通りにはびっくり。

――こんな通り、あったのかな……――

「さ、真ん中の席に」
 入って驚いた。表から見えた間口は三メートルほどしかないのに、店の中は体育館ほどの広さがあった。
 広いんだけど、店内のあちこちに観葉植物というには立派過ぎる木や草花があって、お香が焚かれているのか、とてもエキゾチックな香りがした。
「冷めないうちに、どうぞ」
「え……」
 いつのまにか、テーブルに紅茶が置かれていた。
「どうも慣れないんで、違和感たっぷりのようね……もう隠さないわ……」
 隠さないと言いながら、ツインテールはユルユルと紅茶をたしなみ(飲むって動詞が合わないくらいみやびやか)大事なことを言わない。
「うちの生徒じゃない……で、普通の人……でもないですよね」

 いつのまにか敬語になっている。

「やっぱり、普通には無理かな……わたしエジプトの王女です。時空を超えてやってきました。名前は……ツィンテール……長いな……ツィンと呼んでください」
 王女様は、気品に溢れながらも可愛く手を合わせた。
「王女様……なるほど」
 あたしってば、この怪異現象を一発で受け入れてしまった。
「お願いがあるんです」
「お願い……ですか?」
 お願いという割には、済まなさそうな感じも無く、胸の前で合わせた手を開けば幸せの鳩が飛び出しそうな雰囲気。
「実は、この造りかけのピラミッドなんだけど……」
 そう言われると、頭の中に南先生のところで見た何十倍も大きなピラミッドの下半分が浮かんだ。
「じつは、このピラミッド、造りかけで二年もほったらかしなんですの」
「玄室の屋根を付けるところで止まってる……」
「そうなの、屋根の石が重すぎて載せられないんです」
「玄室の中に砂を詰めて載せるんじゃないんですか?」
「普通のピラミッドなら、そうするんですけど、このピラミッドは大きすぎて、並の工法じゃ造れないんです……もっとも、この作業の段階になって分かったことなんですけど」
「……で、このピラミッドを?」
「造るのを手伝ってもらいたいの」
「あ、あたしが!?」
「そう、おとなりの宇宙人といっしょに」

 話は核心部分に入っていった……。 
  
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Regenerate(再生)・32≪第一次総力戦・3≫

2020-01-05 06:29:35 | 小説・2
Regenerate(再生)・32
≪第一次総力戦・3≫  



 なんと大石クララが二人いる……。

 むろん一人はベラスコののアンドロイドが入れ替わった偽もので、もう一人は詩織が擬態したものである。
 ここで戦うわけにはいかないので、センターのクララが二人になって、にこやかにデュエット。観客も視聴者も、スタッフでさえ、サプライズ演出であると思った。

 ベラスコのクララは焦ったが、詩織のクララも驚いた。

 なんと、メンバーの全員がベラスコのアンドロイドに入れ替わっていた。一体ずつの能力は詩織を超える者はいなかったが、パフォーマンスに紛れていっせいにパルス攻撃などされたら、一瞬のスパークで消滅させられるだろう。ただ、ベラスコのアンドロイド達はプログラムされた行動以外は、指令されなければできない。今どこかにあるベラスコの指令所では、急いでプログラムの変更をやりはじめているに違いない。

 この紅白を見ている視聴者に変化が表れ始めた。

 少しずつ興奮していき、体をゆすり始めた。寝たきりの老人がむっくり身を起こした。引き籠っていた若者が部屋から出て家族がいる茶の間やリビングに移動した。手足が不自由だった老若男女の不自由な手足が、少しずつ動きはじめ、中には車いすから立ち上がり踊りだした介護付き老人ホームの老人もいた。
「いかん、ベラスコの計画が最終段階に入った。この曲が終わるころには、ベラスコに操られた人間たちが行動をおこす!」
 教授は爪を噛んだ。
「行動って、なんだすか?」
「たぶん、全国的な暴動になって、自衛隊に初めての治安出動命令が出るんとちゃうかしら」
 沙織の想像は当たっているだろうと教授は思った。壮烈な内乱の正月になるだろう。長引けば近隣諸国が乗じて行動を起こし、南西方面で、紛争……いや、戦争になるだろう。
 AKRの曲は、間もなく一番が終わって二番になる。その間に詩織は始末されるだろう。

 万事休す!

 詩織も焦った。逃げ出して、捲土重来を謀ろうかと思った。すると体が反応して観客席の上に飛び出した。ベラスコのクララもあとに続く。観客はワイヤーアクションだと思った。他のメンバーも次々に空中に舞い上がってきた。
――二階席からダクトに抜けるか――
 一か八かの突破策を考え付いたところで、舞台そでから現れた……なんと、他のAKRの46人にそっくりなメンバーが。ベラスコの擬態アンドロイドたちは、急いでステージに降り、彼女たちに混じった。
「今年のAKR、すげーなー!」
 教授たちM機関とベラスコの指令者以外の視聴者たちは、一様に、その派手な「演出」に驚き、喜んだ。

 二番の曲の間に舞台ではいくつものスパークが閃いた。閃くたびに二人のそっくりが一人になっていった。それは勝利の一瞬だった。送り込まれた46人は、M機関が秘密裡に育成した擬態したサイボーグたちであった。
 サイボーグたちは強力なパルスレーザーをゼロ距離射撃で、自分ソックリなベラスコたちのアンドロイドを消滅させていった。

 そして、曲のサビに入ったところで、ベラスコはクララに擬態した一体のアンドロイドだけになった。アンドロイドのCPUは生き残る可能性がゼロだと判断。せめて、NHKホールを道連れに自爆しようとしたが、寸前に47人のパルスレーザーの攻撃を受け、派手なスパークとともに消滅した。

 こうして、ベラスコとM機関の第一次総力戦はM機関の勝利で終わった。

 副産物として、はんぱなベラスコの影響を受けた数千万の人たちが活性化したままになった。老人たちは背を伸ばして立ち上がり、日本国じゅうから寝たきり老人がいなくなった。体が不自由だった者たちも、その機能を回復した。
 本物のAKRのメンバーたちは、縮小されて冬眠状態で軟禁されていたが、松が取れる頃には、M機関のソックリたちと入れ替わり、全てがまるく収まった。

 だが、これは、あくまで第一次の総力戦でしかなかった……。


 Regenerate(再生)第一期 完
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乃木坂学院高校演劇部物語・87『我らが助教大空真央』

2020-01-05 06:18:59 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・87   
『我らが助教大空真央』         

 

 突き当たりの部屋は、稽古場にしている談話室ぐらいの大きさで、なんだか健康診断の時のように机と椅子が並んでいた……実際、血圧と問診の健康診断。それから、制服が配られた。大空さんは一瞬でわたし達の体格を見極め、ピッタリのを渡してくれた。

「では、これから誓約書に署名捺印をしてもらいます。未成年の人は保護者の承諾書を提出してください」
 中隊長さんが言った……え……マリ先生が承諾書を出してる!
 夏鈴が吹きだしかけて、中隊長さんに睨まれた。
「では、それぞれの部屋に戻って、着替え。十五分後に先ほどの営庭に集合。かかれ!」
 で、着替えて入り口のところに行くと。わたし達のはあったけど、企業グループさん達の靴が一つもない。一瞬先を越されたかと思ったら、少し遅れてやってきた企業グル-プさんが慌てていた。

「おれ達の靴がない!」

 さっさと外へ出たわたし達は笑っちゃった。企業グループさん達の靴がみんな外に放り出されていた。一瞬乃木坂さんのイタズラかと思ったら、乃木坂さん、笑ってチガウチガウをしていた。
「最初のハッタリ。ちゃんと脱いでいないやつをああしておいて娑婆っ気を抜く」
 西田さんが、そう言ったんだけど、西田さんの服装は、前のまま。
「助教のやつがサイズを間違えやがった。どうせ、体験者用の六五式。同じやつだからね、これで助教に貸し一つ」
「あの、マリ先生、承諾書出してましたけど……」
「ここじゃ、十七歳ってことになってんだ、君たちもそのつもりでね。それから歩きながら喋れるのは、この先の営庭までだからね」

 西田さんは、ウィンクすると、駆け足で行っちゃった。

 営庭に出ると、西田さんが中隊長さんと話しをしていた。敬礼を交わして別れたけど、ここから見ると西田さんのほうが偉く見えてしまう。
「西田さんのトラックが珍しいんで、夕方まで見せて欲しいんだって。で、西田さんが、分解しないことを条件に承諾したとこ」
 乃木坂さんが教えてくれた。西田さんが得意そうに鼻の下をこすった。
「やだー、マリのこの靴マメができそう」
 後ろで、マリ先生がブリッコをしておりました……ウフフ。

 それから、基本動作の訓練に入った。

 基本動作って、ほんと基本。気をつけ! 休め! 右向け右! 左向け左! 敬礼!
 敬礼ってば、こんなことがあった。
「教官。貴官の敬礼は二度浅いように思われる。正対して親指が見えてはいかんと礼式にあったと思うのですが。それとも昭和三十九年に定められた自衛隊礼式に変更でもありましたかな……いや、除隊して三十余年、この世界にも疎くなりましたからな」
 と、西田のおじさんは……またもカマシました。
 
 それから、行進の練習。自衛隊では歩くとき、必ず一列。左足から出て、手はグーにして、真っ直ぐに伸ばして肩の高さまで上げる。
 で、かけ声は、一、二、一、二、ソーレッ! でね、一は「オッチ」って発音する。
「前に進め! オッチ、ニ、オッチ、ニ!」
 でもね、我らが助教大空真央さんのは、こう聞こえる。
「エッチネ、エッチネ!」
 思わず笑いそうになったけど、こういう場合でも自衛隊は笑ってはいけないのであります……はい。
 それから行進練習。駆け足練習をやって、昼休み。
 カツ丼におみそ汁。カツ丼は普通のお店の特盛りにワラジみたいなトンカツ。
 食事は、大きな食堂に分隊ごとに集まる。うちは大空助教が話しの中心になった。
「こんな言い方、なんですけど、大空さんはなんで自衛隊に志願したんですか?」
「そうですよ、こんなにカワイイのに」
 里沙と夏鈴が遠慮の無い質問をした……他の女性隊員がいたら怒られそうだ(汗)
「わたしの家は、おじいちゃんの代から自衛隊だったから、ごく自然にね」
 特盛りのカツ丼をペロリと平らげて、大空さんが答えた。
「大空さん。あんた、ひょっとしてカラーガードじゃないかい?」
「あ、はい。分かりました……?」
「うん。動きがキビキビしているだけじゃなくて、イカシテおる。あれは儀仗隊かカラーガードだど思った」
「さすが、大先輩。二年前からカラーガードをやってます。よかったら今夜記録のDVDお見せしましょうか」
 カラーガードって……?
「ぜひ、お願いします。われわれが現役だったころは、まだ無かったもんでね。一度見たいと思っておりました」
「西田さんは、どうして、除隊されたんですか。自己紹介の時、八年の勤務で曹長までなられたと伺いましたが?」
「演習中に、米軍機を撃墜してしまいましてね」
「え……!?」
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