大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

不思議の国のアリス・7『アリスのミッション・立志編』

2020-01-20 06:34:52 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス・7
『アリスのミッション・立志編』     
 
 
 
 日本でモヤっとしたこと(アリスの日記より抜粋)
 
 ☆紅白歌合戦が空白歌合戦に聞こえる(聞こえるってだけで、中味についてはコメントしません)
 ☆パレス(皇居)の写真見たら、橋だった(パレスそのものは、お城全部。でもパレスの建物は検索しても出てこない。国家機密?)
 ☆ダライラマが来たことを、どこも報道しなかった(you tubeで見たら、日本のこと誉めてたのにね)
 ☆北方領土が日本領……知らなかった(千代子は名前は知ってたけど、地図見せても分からなかった)
 ☆きれい好きの日本人の放置自転車(千代子パパは、お花見のあとは、もっとスゴイと言っていた)
 ☆日本にまで届く中国の大気汚染(アメリカだったら、損害補償とか、絶対裁判になってる)
 ☆ファミレスとか電車の中の子ども(とにかく、うるさい! なんで叱らないの!?)
 ☆丸腰のガードマン(銀行の現金輸送でさえ、ピストルも持ってない。シカゴじゃ自動小銃持ってる)
 ☆パパラッチがおとなしい(そのわりにスクープは多い。やっぱり忍術使ってるの!?)
 ☆なんで、枝豆がおいしいの!?(ただの未熟な大豆で、青臭いだけ。なんでビールに欠かせないの?)
 ☆日本人は虫の声が、美しく聞こえる(わたしには、ただの騒音なんだけど!)
 ☆生きてる人間が国宝になる(検索したら、定員が決まってるって、知ってた?)
 ☆教室に国旗がない(まあ、毎朝敬礼や宣誓しなくていいのは、いいかも)
 ☆『幸福の黄色いハンカチ』の原作はアメリカ!(ミスター山田洋次じゃなくて、ピート・ハミル。まあ、流行らなかったけど)
 ☆ウォシュレットのアイデア(もともとは、アメリカ人の発案だって、吉田先生が教えてくれた!)
 ☆トランプは弾劾裁判に掛けられるほど悪い大統領だと思ってる。あれって民主党の悪あがき。
 
 千代子のバレンタイン計画を成功させることに、アリスは熱中した。
 
 むずかしいのは、あくまで、アリスはアドバイザーで、決定するのは千代子自身でなきゃだめ。シカゴの友だちに相談したら、こんなメールが返ってきた。
 
――アリスのチヨコを思う気持ちは、友情に溢れた立派なことだと思う。でも、アリスは行動力ありすぎだから、あんたがプロディユースしちゃだめ。あくまで、それとないアドバイスで、チヨコ自身が決心し、行動できるように気をつけてね。去年のボール(学内パーティー)仕切っちゃって、生徒会長のコワルスキーを自信喪失させたようなことにはならないように――
 
  アリスの最大の友人にして理解者であり被害者  ミリー・オウエン
 
 
 アリスは、まず千代子のターゲットが誰なのか探ることから始めた。
 
 アリスのミッション開始!
 
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巷説志忠屋繁盛記・12『写真集・2 タキさんの学校選び』

2020-01-20 06:20:33 | 志忠屋繁盛記
巷説志忠屋繁盛記・12
『写真集・2 タキさんの学校選び』  
 
 
 
 
 なんでY高校なんだ?
 
 担任が不思議そうな顔をした。
 
 タキさんの強いため息に、机の上の進路調査票が飛んで行きそうになり、担任は慌てて手で押さえた。
 
「YM高がええんですわ」
 今どきの高校生とちがって、タキさんは教師には敬語で通す。
 別に、教師を尊敬してのことではなく、不要な摩擦を避けたいからだ。
「だけど、進路を考えたら、ぜったいY高校の方が有利だぞ」
 自身Y高校の出身である担任は、タキさんの学力ならY高に行くべしと、はなから決めてかかっている。
「もう決めたことですから、これでお願いしますわ」
「……ご両親は承知しておられるのか」
「書類にハンコついたんは親父ですよって」
「……ま、来週もう一度聞くから」
 無駄なことをと思ったが、軽く頭を下げて職員室を出た。
 中三とは思えない貫録に、出入り口近くの先生たちは盗み見するような視線を投げた。
 
――そういう目つきは、闘鶏場の軍鶏(しゃも)にこそ向けなはれ――
 
「コウちゃん、どないでした?」
 
 最近ようやく「あにき」と呼ばなくなった十円ハゲがイッチョマエの心配顔で聞いてくる。
「どないもこないも、俺は初手からY高校に決めとる」
「せやかて、Y高行けるのにもったいない!」
「おまえなー、高校ごときで人生決まるもんとちゃうぞ」
「そやろけども……」
「うちの担任でもY高や、ほんで京都大学進んで、いまはワイらの学校のセンテキや。俺は学校のセンテキなんぞにはならん」
「せやけど、えらそーに言うて共済年金もらえるし」
「志が低い、男は太う短う生きならあかんのんじゃ」
「それに、芳子ねえちゃんもY高に決めたて言うてましたよ」
 
 ちょっと心が動いた。
 
 芳子とは、数年前に大和川で溺れていたのを助けてやった女の子だ。
 芳子は一つ年上だが、身体を壊して学年が遅れ、タキさんと同学年になっているのだ。
 助けた時の柔らかさは、いまでも衝撃として皮膚感覚に残っている。
「先週、芳子ねえの写真もろたんですわ」
 ズック鞄から硫酸紙に包んだ写真を大事そうに出した。
 十円ハゲの姉は芳子の友だちで、彼はときどき姉にせがんで写真を撮ってもらっている。
「まあ、見せてみいや」
 こういうとき、タキさんは人の好意を無にしない。相手が子分格であっても同じだ。
 タキさんの生まれ持った優しさである。
 
「なるほど……磨きがかかってきたなあ」
 
「大原麗子に似てまっしゃろ」
「というよりは……言うといたげ、Y高校は水泳の授業に遅刻したら水着のまんまグラウンド走らされるねんぞ」
「え、女子でも?」
「女子でもや」
 タキさんなりに子分を教育している。
 水着ランニングに象徴されるように、Y高校は体育科を始めとする教師がうるさい学校だ。元々が府立の旧制中学だったので、男子校のころの気風が残っていて、そんな窮屈さはごめんだと言うのが第一の理由だ。
 それに比べてYM高校は旧制女学校が新制高校になったもので、「生徒の自主性を尊重する」ということで、なにかにつけて緩い。これが第二の理由。
 
「慶太(十円ハゲの本名)、ちょっと付いてこい」
 
 学校を出るとカバンだけ家に置き、自転車に乗ってYM高校を目指した。
 途中、Y高前を通り、近鉄八尾駅を中継点に喫茶店やらレコード屋やらハンバーガー屋やら本屋などを周る。
「なるほど、この通学路は楽しいなあ!」
 自由人タキさんは、Y高へ行っては味わえない道草が大事なのである。これが第三の理由。
 そして、YM高校の玉櫛川を挟んだ向かいで下校風景を眺め、Y高にはくらぶべくもない自由さを慶太に知らしめた。
「ま、こういうこっちゃ」
「自分の目で見るいうのは大事やねんなあ」
「ま、たこ焼でもおごったるわ」
 
 山本駅方面にチャリを漕いでいると、玉櫛川遊歩道に意外な後姿を発見した。
 
「「オ……」」
 向こうも気配を察した。
「あら、コウちゃん!?」
「百合子、なにしてんねん?」
「ちょっと偵察」
「偵察て、学校のか?」
 自分が行ってきたばかりなので、偵察でピンとくる。でも、これから行くとしたら方角が逆だ。
「あたしはS高やさかい、なんやったらいっしょに来る?」
「あほぬかせ、S高は女子校やないか」
「より取り見取りやでー、どや、慶太も」
 慶太もブンブン首を振る。
「アハハ、ほんならね!」
 スキップしそうな軽やかさで百合子が去っていく。
 ちょっと残念そうなタキさんは、それをおくびにも出さず慶太を引き連れたこ焼き屋を目指したのであった。
 
「このたこ焼き屋は、もうないなあ……」
 
 写真本を閉じると、Kチーフに言われる前にディナータイムの準備にかかるタキさんであった。
 
 
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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・15・「ダメもとで……」

2020-01-20 06:07:39 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)15
「ダメもとで……」            


 
 
 
 演劇部の部室は旧校舎一階の東端にある。

 創立以来の蔦の絡まる木造校舎は、それだけでも歴史と文化を感じさせ、ブログや新聞に載った佇まいは、いかにも伝統校の伝統演劇部である。
 特に夕方、茜色の夕陽に晒されると、ギロチン窓の窓越しに見える啓介と千歳の姿は、映画の中の演劇部員が秋の公演に向けて資料や戯曲を読み漁っているようにうかがえる。
 時おり見せるため息や吐息をつくさまは、青春の真中(まなか)で呻吟する若人の姿そのものであり、昭和の日活青春映画かジブリアニメの主人公を彷彿とさせた。

 千歳がチェ-ホフ短編戯曲集第二巻から目を上げて、なにやら問いかける。啓介は顔を上げてひとしきり、千歳の問いに真剣に答える。麗しくも頼もしい、あるべき青春の一コマである。

「……お説は分かったから、その聴覚的受容の在り方についてだけ考察しなおしてくれないかしら?」
「二次元的視覚効果を補完するための聴覚効果は妥協したらあかんと思うし、互いに尊重し合うべきやと思う」
「しかしね、同じ空間を共用する者としては、相手の感性への共感と尊重の意識が重要なファクターになると思うのよ、間違ってる?」
「我々は、江戸の昔には3千万人に過ぎなかった列島に1億3千万人で生活しているんや。都市の生活環境の中で生きることを内発的に是認して、いや、所与の条件として見据えていかなければ、二十一世紀中葉の喧騒に耐えられる文化の担い手にはなられへん!」
「あのね……簡単なことなのよ。モンハンやるならヘッドホンとかしてって話よ! ちっとも集中できないでしょ!」
「そういう自分かて、チェ-ホフの短編に挟んで読んでるのは『ワンピース』やねんやろが!」
「あ、そいうこと言う!? コミックは低俗って、昭和も30年代の感覚じゃないの! 信じられない!」
「そんなこと言う前に、オレが言うたサブカルチャー論、なんにも分かってへんやんけ!」

 二人は、放課後の部室で思い思いの時間を過ごしていたのである。

 啓介は、自由になる隠れ家を。千歳は、精一杯学校生活を営んだというアリバイが欲しい。そのためにNHK朝の連ドラも真っ青というほどのロケーションとして、演劇部の皮を被っている。
 
「……て、こんな場合じゃないのよ! 今週中に部員を5人にしないと、部室取り上げられんでしょ!?」
「あ、つい安心してしもてた!」
「なんか手立てはないの?」
「宣伝はしまくったし、個別に一本釣りもしてみたけど」
「ブログにも書いて、新聞社にまで来てもらったけど」
 そう、千歳の機転で、先週一週間、演劇部の露出度はなかなかのものであった。だが「がんばってるのね!」という評判はたっても「じゃ、自分も参加しよう!」ということにはならない。もっとも、真剣に演劇部をやろうという気持ちはハナクソほどにも無いので、間違って「演劇命!」という生徒に来られても困るのである。

「せやけど、そんな都合のええもんて居るやろか?」

「めったにはね。でも、せめて一学期一杯くらいは続いてくれなくっちゃね」
「人のこと言えんけど、千歳もたいがいやと思うで」
「ねえ……思うんだけど。幽霊部員とかいないの?」
「幽霊部員?」
「入部だけして来なくなっちゃって、はっきり退部の意思表示していないようなの?」
「ここ二年ほどは、オレだけやさかいなあ」
「じゃ、それ以前は?」
「え、3年生? さすがに3年生には……」

 そう言いながらも、啓介は古い演劇部の資料を当たってみた。

「え~~~と……」
「あ、この人!」
 2人の目は、4年前に入部届を出した松井須磨という女生徒を発見した。
「でも、4年前ってことは、卒業してるよなあ……」
「ひょっとしたら留年とかして……ダメもとで……」
「どこ行くんや、千歳?」

 千歳は、生徒会室に行って3年生のクラス別名簿を確認した。サラサラと流し見ただけだが発見した。

「3年6組に居るよ!」

 松井須磨、留年した本人か、はたまた同姓同名の別人か?

 
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乃木坂学院高校演劇部物語・102『変なものが写ってます!』

2020-01-20 05:51:14 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・102   




『変なものが写ってます!』


 それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。

 監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。
 すると、ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!
 
――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――
 
「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」
 驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていたんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なし、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
 白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
 と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。

 で、まだ、サプライズがある。

「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
 このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのだ。
「周り中偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」

 というわけで、その場でカメラテスト。
 
 笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたBKB47の音源で盛り上がったり。上野百合さんが――あんたたち、やりすぎ!――って顔してたので、BKB47は一曲の一番だけで終わりました。

「監督、変なものが写ってます!」

 編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
 それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
 と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
 と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
 と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
 と、監督。
 わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
 潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。
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