大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・122『聖メイド服の秘密』

2020-01-18 12:43:20 | 小説

魔法少女マヂカ・122  

 
『聖メイド服の秘密』語り手:安倍晴美 

 

 

 あの頃は怖いものなしだった。

 

 窮屈だったミッションスクール系の女子高生時代が終わって、来春に成人式を控えた二十歳になったばかりの女子大生。類まれな(当時は思った)スタイルとルックスと才覚で、将来は在京大手の女子アナまっしぐらだと自他ともに認めていた。局アナを五年も務めたあとはフリーアナを経由して美貌のジャーナリスト兼ニュース番組のキャスターとかね!

 そのためには、経験と冒険よ!

 いろんなバイトをやったけど、全部将来への訓練! 勉強! 投資!

 それで、いちばん萌えたのが、ちが! 燃えたのが妻籠電気のメイド喫茶だ!

 アキバにキャンギャルの仕事で何度か行くうち、まだ中学一年だった妻籠電気店主の娘と知り合った。そのころのことが走馬灯のように頭を巡って心を貫く。その子とのあれこれは、それだけで一ぺんのドラマになりそう。

「ソフマップとかヨドバシとかに押されて、個人営業の電気店なんて先が見えてるしさ、一人娘だからってあと継ぎたくなんかないし……」

 中一ながら伸び悩んでる父と家業を呪いながらも心配していたのだ。じつに面白い女子中学生だった。

 で、キミは何をやりたいのさ?

 メイド喫茶がやりたい!

 そう答えた時の彼女は目をキラキラ輝かせてさ、老舗だけど先細りの電気店がメイド喫茶に変身するのに手を貸すのも面白いって思ったわけさ。

 それで、彼女の親父を説き伏せて、店の後ろ半分をメイド喫茶に改築。

 たった一年でアキバのメイド喫茶のヒエラルキーを書き換えてやったさ。

 その一年間、アキバのメイドたちから『セントメイド』の二つ名で呼ばれ、わたしのコスは『聖メイド服』として、アキバでは聖遺物として聖杯と同列に扱われたものさ。

 

 その聖メイド服をミケニャンが、市井に隠遁した姫騎士に聖騎士の衣を捧げるようにして復活を懇請しているのだ。

 

「それだけでは無いのニャ、バジーナ・ミカエル・フォン・グルゼンシュタイン一世である貴女には封印された記憶があるニャ、それを呼び覚まし、いま再びアキバの為に力を貸してほしいというのがバジーナ・ミカエル・フォン・グルゼンシュタイン三世陛下の思し召しニャ。可及的速やかに着替えて王国に行くニャ!」

「ちょ、ちょっと待て、今帰って来たばかりなのだ。風呂に入って晩御飯くらい食べさせてほしいぞ」

「なにをまどろっこしいことを! では、ミケニャンが失礼するニャ!」

 ニャニャニャニャニャ~~~~~~~ン!

 ミケニャンがネコ語で詠唱すると、わたしは、瞬間で聖メイド服姿になってしまった!

 

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不思議の国のアリス・5『アリスの好きな日本』

2020-01-18 06:52:53 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス・5
『アリスの好きな日本』        
 
 
 
 

 日本で、わけの分からないもの(アリスの日記より抜粋)
 
 プレゼントをもらっても、その場では開けないこと(ただ、一部のテレビドラマでは別)
 プレゼントをあげるときに「つまらないものですが」(つまらないものなら持ってくるな!)
 トーストをくわえながら駅まで走っている高校生(ドラマやコミック見てたらいると思った)
 マッキー・デイズのことを、マックと略すこと(アメリカで習ったフランス語ではとんでもない意味)
 証明写真を笑顔で撮っちゃいけないこと(もっとも、日本人の無理な笑顔は歯痛をガマンしてるみたい)
 授業で先生が、教えようという気持ちがないこと(アメリカだったら、即クビ!)
 授業で黙っていてもなにも言われないこと(シカゴなら「アリス、具合悪いのか?」と聞かれる)
 70年間も憲法を変えていないことを、先生が自慢する(70年前のご先祖の遺言みたいなのに)
 なんで、軍人さんに敬意を払わないのか(小林イッサ=カーネル小林で実感)
 SEXコードはきついのに、バイオレンスコードが緩いのか(ゲームは、おかげで楽しいけど)
 なんで、結婚式専用の教会があるのか(宗教への冒涜……考えすぎ?)
 エスカレーターを駆け上がるオッサン(脚鍛えたいなら、ジムへいくか、階段でやって!)
 カフェで、話もしないでコミック読んでる人たち(向かい同士、携帯でチャットしてんのもいた!)
 写真でピースサインをする(裏表逆にしてアゴにもってくるの、中指たてるぐらいにヤバイんだけど)
 卒業式のあとプロムがないこと(本気で恋人つくる絶好のチャンスなのに!)
 なんで、高校生が車の運転ができないのか(できないのに、免許は取れる。矛盾!?)
 あとは、話の中で読み取って(書いたら忍者に殺されそう!)
 日本で、いいと思うもの(アリスの日記より抜粋)
 
 どこの学校にもプールがある(アメリカじゃ、よっぽどのセレブ学校にもない。水泳が全米レベルの大学とかね)
 電車とかの時間が正確なとこ(2分遅れただけで、ゴメンナサイアナウンスやってる)
 ママチャリで子ども乗っけてるママ(これって、スキンシップだと思う)
 マッキー・デイズのことをマクドという(かなり、ウチの個人感情。でもマックよりは絶対いい)
 ティッシュをタダで配ってること(密かにコレクションしている。でも、かさばってきた!)
 タクシーのドアが自動で開閉(でも、その分、料金下げてくれたほうがいい)
 学校に掃除当番があること(TANAKAさんのオバアチャンが言うほどテイネイにはしないけど)
 自動車のバックブザー(自動車に人間的な感情があるのかと、感激。ディズニーの『カーズ』思い出す)
 自動車が喋る(「バックします」最初は親切な女性ドライバーだと思った。オッサンなんでびっくり!)
 スモウレスラーがフェアなこと(リング(土俵)から出たら、相手が怪我しないように、かばう)
 アイドルグル-プ(これはマジック、一人一人はフツーなのに、集合するとかわいい)
 AKBのタカミナ(148センチ、かわいいんだけど、時々キリリ。でもソーカントクってなに?)
 ゴミのパッカー車のかわいい歌(これは、シカゴに帰ったら市役所に提案してみよう)
 ツバや、タンを吐く人がほとんどいない(TANAKAさんのオバアチャンは多いって言ってたのでビックリ)
 レストランで、お茶やオシボリがタダなこと(でも、やっぱ、麺類すする音には慣れない)
 宗教に関係なくクリスマスができること(アメリカじゃ、宗教の違いで案外ムツカシイのよね)
 つまらないものです。と言って、ステキなものをくれる(その場で、開けた。結果的には喜んでもらえた)
 テレビゲームがクール!(ファイナルファンタジーが日本製なの、初めて知った)
 授業中静かにしていたら叱られないこと(だから、こんなこと書けてる)
 
「ワオ!」
 
 思わず、アリスは声をあげた。別にハートのクイーンと出くわしたわけではない。ただバスを見つけただけである。
 バスのボディーには、Abeno Swiming School……で、イニシャルのASSがでっかく書いてあった。思わずスマホを出して、シャメった。
「なんで、あんなんがおもしろいのん?」
 千代子が、笑いの止まらないアリスに聞いた。
「そやかて、ASSて、オイドのことやねんもん」
「オイド……?」
「え、大阪の子やのに『オイド』分からへんのん?」
「分からへん」
 千代子は、ポニーテールを振った。ときどき、TANAKAさんのオバアチャンが教えてくれた日本語は、かなり古いのではないかと思うことがある。一人称である「ウチ」は通じたが、二人称である「オウチ」は通じなかった。
 帰ってから、千代子は、お婆ちゃんに聞いた。アリスが意地悪で「オバアチャンに聞いてみいや」と言ったから。オバアチャンは、いつになく上品に笑って答えた。
「そら、千代子。お尻のことや。いやあ、久しぶりに懐かしい言葉聞いたなあ」
「オバアチャン、オイド冷えませんか?」
 アリスが、うまいタイミングで聞いてきた。
「アリスちゃん、千代子も、ちょっと寄ってきて」
「え?」
 不思議に思いながら、アリスは、お婆ちゃんに近づいた。
「ああ、あんたら春の香りがするで」
 そう言って、お婆ちゃんは、障子を開けて庭を見た。
「おやまあ、梅が一輪……」
 庭の早咲きの梅が一輪咲いていた。英語で言えば、ただのワンブロッサムだけど、日本語で言うとなんだか、春の前触れのチャイムのように聞こえる。
 
 アリスの「日本でいいと思うもの」が一つ増えた……。
 
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巷説志忠屋繁盛記・10『写真集を出窓に』

2020-01-18 06:42:15 | 志忠屋繁盛記
巷説志忠屋繁盛記・10
『写真集を出窓に』    
 
 
 
 面白いことはみんなで楽しもう!
 
 トモちゃんのモットーだ。
 お客さんにも楽しんでもらおうと、写真集を志忠屋の出窓にオキッパにした。   
「こんなとこ置いたら陽に焼けるで……」
 大の読書家であるタキさんは山賊の親玉みたいな顔をしているが、本の扱いは女学生のように丁寧で優しい。
 去年、南森町の交番にゴブラン織りのブックカバーが付いた新刊本が落とし物として届けられた。
 ゴブラン織りは花柄にムーミンのキャラが散りばめてあり、新刊本は少女漫画の表紙や挿絵の豪華本であった。
「これは、三十代くらいの女性の落とし物やなあ」
 交番の大滝巡査部長は頷いた。
「自分は女学生……ひょっとしたら女子高生だと思量します」
 秋元巡査は真面目な顔で異を唱える。
「こんなに豪華な本ではありませんが、妹が同じようなものを持っておりました。それに……クンカクンカ……そこはかとなく良い匂いがいたします」
 数時間後、青い顔をして「本の落とし物……」とやってきたのがタキさんであった。
「え、マスターの落とし物でしたんか!?」
「え、クンカクンカしてしまった……」
 タキさんは、表紙に指紋が付くのを嫌って、あらかじめ文具売り場で見つけた特製ブックカバーを購入直後に付けたのだ。
 南森町の改札を出たところで、常連客のモデルの女の子たちに出くわした。一人の女の子タキさんの本に目を留めて「かっわいいーー、ちょっと見せてもらえます?」
 改札を出たところで十分ほど愉快に立ち話、そこへ列車がやって来たので慌てて別れた。
 別れ間際の数秒間でも山賊ギャグをかまし、メアドを交換したり……しているうちに、定期券売り場のライティングテーブルの上に置かれた豪華本を置き忘れてしまった。
「ほんなら、この香りは……?」
「モデルの子ぉが読んでたからなあ」
「あ、そ、そでありますか」
 
 タキさんはアイドルタイムの間、伝票整理も忘れて写真本に見入った。
 八尾・柏原の昭和を記録した写真ばかりである、八尾のネイティブとしては懐かしいに違いない。
 そんなマスターを微笑ましく見ていたKチーフだが、ぽつり零したタキさんの一言にむせ返った。
 
「どこも殺し合いしたとこばっかりやなあ……」
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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・13・「かんぱーい!」

2020-01-18 06:32:42 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)13
「かんぱーい!」                     


 
 
 忌々しくはあったが入部を認めざるを得なかった。

 なんせ今週中に部員を5人にしなくては部室を取り上げられる。
「せやけど、なんでそこまで正直やねん!?」
 お互いのいろいろを言い合っているうちに、啓介の声は大きくなってしまった。
「きれいな嘘をついて、あとでグチャグチャになりたくないもん」
「もっぺん聞くけど、学校辞めたいんやったら退学届け書いて学校に出したらしまいやろがな」

「だ~か~らあ、入学して1か月で辞めたら親とか心配するでしょ? 心配されるってウットーシイものなのよ。ただでもこの年頃ってさ『多感な年ごろだからそっとしておこう』なんて思われちゃうの。高校生の自殺って9月の第一週と春の連休明けが多いの。ため息一つついただけで『あ、自殺考えてる!?』とかになっちゃって腫れ物に触るような目で見られるのよ。学校だって放っておかないわ。カウンセリングだ事情聴取だとかで家まで押しかけてくるわよ」

「ええやんか、心配させといたら」

「あのね、あたしは足が不自由なの、車いすなのよ、そんな子が『辞めたい』って言ったら普通の子の10倍くらいネチネチ干渉されるのよ。この学校ってバリアフリーのモデル校だけど、それってハードだけだからね。実の有る関わり方って誰もしないわ。そんな人間オンチに口先だけの言葉かけてもらいたくない」
 啓介はイラついていたが「口先だけの」という言葉には共感してしまった。
「それにね、あたしの足がこうなったのは事故のせいなんだけど、その事故の責任は自分たちにあるって、お父さんもお母さんも思ってる。そんな親に思いっきり心配されるのって絶対やだ!」
「しかしなあ、演劇部つぶれるのを確信して入部するて、オチョクッてへんか?」
「だってそうなるわよ。あなただって隠れ家としての部室が欲しいだけじゃない。放っておいたら、今週の金曜日に演劇部は無くなるわ。でも、あたしが入ったらもうちょっと持つわよ。車いすの子が入ったクラブを簡単には潰せない。そうね~、まあ今学期いっぱいぐらいは持つんじゃないかなあ。金曜日に潰れるのと、夏まで持つのとどっちがいい?」
「ムムム……………」
 どこか釈然としない啓介だったが、利害関係という点では了解していることなので沈黙せざるを得なかった。
「よし、じゃ新生演劇部の出発! 乾杯でもしよう!」
「乾杯って……ここなんにもないで」
「なきゃ、買いに行けばいいじゃないの」
「わざわざ……」
 そう言ったときには、千歳は廊下に出ていた。車いすとは思えない素早さだ。

「これって、うちの学校の象徴だと思わない?」
「え?」

 空堀高校はバリアフリーが徹底していて、ジュースの自販機もバリアフリー仕様。お金の投入口も商品の取り出し口も車いすで買える高さになっている。
「いくら手が届いても、物言わぬ自販機じゃねえ……」
「そやけど自販機がしゃべってもなあ」
「あなたもいっしょなんだ」
「え、なにが?」
「ううん、なんでも……じゃ、あそこで」
「え、部室に戻らへんのんか?」
「いいから……」

 千歳は啓介をリードして中庭の真ん中に来た。

「え、こんなとこで?」
「うん、みんなが見てる……あ、すみません、今から乾杯するんで写真撮ってもらえません?」
 通りがかりの女生徒に声を掛け、スマホを預けた。
「じゃ、新生演劇部に……かんぱーい!」
 女生徒は、乾杯の瞬間を写してくれた。

 ホログラムの発声練習では見向きもされなかったが、この乾杯の瞬間は、ほんの一瞬だけど数十人の生徒と数人の先生が見ていた。

 五月晴れの中庭で、やっとインチキ演劇部が動き始めた。
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乃木坂学院高校演劇部物語・100『その日がやってきた!』

2020-01-18 06:18:06 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・100   

 

『その日がやってきた!』


 いよいよロケの日がやってきた。

 ロケ先の荒川の土手に朝の九時ごろから、タヨリナ三人組で行ったら、もうロケバスが来ていて、ADさんやスタッフの人たちが忙しそうに動き回っていた。
 梅の蕾も、まだ硬い二月の末日だけれど、まるで春の体験版のような暖かさだった。
 はるかちゃんは、まだロケバスの中なんだろう、姿が見えない。
 そのかわりロケバスや、撮影機材が珍しいのか、乃木坂さんがウロウロ。わたしたちに気づいても、軽く手を振るだけ。
 やがて、一段下の土手道を黒塗りのセダンが登ってきた。
「あ、あの運転手さん、西田さんだよ!」
 夏鈴が手を振ると『オッス』って感じで、西田さんが手を振った。
 手前の土手道で車が停まると、運転席から西田さん。助手席から若い男の人が出てきて、それぞれ後部座席のドアを開けた。
 左のドアからは、高橋誠司……さん。
 右のドアからは、キャピキャピの女の子が出てきて、目ざとくわたし達を見つけて駆け寄ってきた。
「初めまして、まどかに夏鈴に里沙!」
「あ……ども」
 だれだろ……と、考えるヒマもなく、その子はロケバスの方へ。途中で気づいたように振り返って、戻ってきて挨拶した。
「NOZOMIプロの上野百合で~す。よろしくね!」
「上野百合って……?」
「まどかが言ってた新人さん……だよね?」
 里沙が首をひねった。男の人は、荷物を抱えて追いかけていった。
「おはよう、乃木坂の諸君。あの子の正体は分かっても内緒にね」
 高橋さんがすれ違いに、そう言って行った。
「……あ、マリ先生!?」
「うそ……!?」
「もう芸名変えたんだ……」
 体験入隊の時よりもさらに化けっぷりには磨きがかかっていた。赤いミッキーのチュニックにチェックのカボチャパンツにムートンのブーツ。髪はかる-くフェミニンボブ……で、あのキャピキャピ。どうかすると、わたし達より年下に見える。

 そうして、驚くことがもう一つ。

「あ、潤香先輩!」
 潤香先輩が、紀香さんに手をとられながらやってきた。
「マリ先生から連絡もらって」
「上野百合さんだよ」
 さすがに立っているのは辛そうで、折りたたみの椅子が出された。
「ありがとう和子さん」
 それは、西田さんのお孫さんだった。
「お互いの、再出発の記念にしようって。お嬢……上野百合さんの発案なんです」
「わたし、あなたたちに発表したいことがあるの。お姉ちゃん、ちょっと手をかして」
「大丈夫、潤香?」
「うん。この宣言は立ってやっときたいの」
 潤香先輩の真剣さに、わたし達は思わず寄り添ってしまった。
「わたし、この四月から、もう一度二年生をやりなおす」
「それって……」
「出席日数が足りなくて……つまり落第」
「学校は、補講をやって、進級させてやろうって言ってくださるんだけどね、潤香ったら……」
「そんなお情けにすがんのは、趣味じゃないの」
「一学期の欠席がなければ、いけたんだけどね……」
「怒るよ、お姉ちゃん。これは、全部わたしがしでかしたことなんだからね」
「先輩……」
 わたしも胸がつまってきた。
「ほらほら、まどかまで。わたしはラッキーだったと思ってんのよ。だってさ、あんたたちと、もう二年いっしょにクラブができるじゃない。ね、それもこれも、まどかや先生のお陰……なんだよ」

 ハーーックション!

 ロケバスの方で、聞き慣れた大きなクシャミがした。
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