大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・125『脱いではいけない聖メイド服』

2020-01-28 15:15:02 | 小説

魔法少女マヂカ・125  

『脱いではいけない聖メイド服』語り手:安倍晴美 

 

 

 じろじろ見るんじゃないッ!!

 

 ダークメイド討伐のために魔法少女たちを集めたのだが、この視線には耐えられない。

「だったら、いつもの格好にしとけばいいのに……」

 ノンコの言葉に他の魔法少女たちもジト目になっている。

 

 ダークメイドを封印するため、大塚台公園の秘密基地にみんなを集めたのだが、ノッケからバイ菌を見るような目つき。

 理由は分かってる。

 わたしが聖メイド・バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世のコスで現れたからだ。

 ここまでのいきさつを知っている読者には分かっているだろうが、この聖メイド・バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン……長い! 略して聖メイド服は、十四年前、アキバでメイドクィーンとして活躍していたころのコス。今ではアキバの聖遺物とされる、いわば神の衣なのだ。

 いや、神の衣とかはいいんだけども、なんたって十四年前だ……つまり、サイズが合わない。

 腕や腹、太ももからはみ出ているのは見た目通りのハミ肉。背中のジッパーは閉まらないのでゴムひもをかけ、ベストを着ることでごまかしている。むろん、ベストの前も閉まるわけはなく、飾りのチェーンをかけて帳尻を合わせている。

 では、なぜ、そんなに無理して聖メイド服を着ているかと言うと、ミケニャンがこう言うからだ。

「聖メイド服を着ていないと、聖メイドの力が発揮できないばかりか、聖メイドの自覚も忘れるニャ」

「でも、アキバではサイズピッタリだったぞ」

「それはニャ、ダークメイドの危機を目前にして聖メードパワーがマックスになって体形まで昔に戻したからニャ。黄泉平坂まで行って緊張したら、十四年前のスタイルに戻るニャ」

「そ、そうなのか(;'∀')」

 

「おう、みんな、戦闘配食ができたぞ!」

 ブリンダがトレーに載せたハンバーガーのバリューセットみたいなのを運んできた。ブリンダの後ろにはテディ―たちが、同じものを人数分持って運んでくれている。

「隊長も食ってくれ、黄泉平坂に着いたら、すぐ戦闘の可能性が高いからな」

「うん、ありがたいんだが……」

「あ、ああ……」

「よせ、そんな憐れみで見るような眼差しは……」

 

『出発準備よーし! 各員出航配置に着けえ!』

 

 チーフテディ―の指示があって、メンバーは配られたばかり戦闘配食を持ったり口にくわえたまま配置に着く。

 ヨッコラショっと……ビリ。

 ウ……スパッツが破れてしまった(;゚Д゚)

「見セパンだけなら、脱いで繕えばいいニャ」

「そ、そうか……」

 

 動き始めた高機動車北斗のコマンダーシートで裁縫することが、最初のミッションになってしまった。

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ライトノベルセレクト・『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』

2020-01-28 07:08:52 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・193
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』  


 
 従妹の由香里はブサイクだった。

 だった……に力が籠もる。過去形なんだ。いや、過去完了だ。ベテランのMCに質問される由香里は、まっすぐにMCに顔を向け、笑顔を絶やさず、考えるときは少し首をかしげる。まったくもって可愛い。

 俺の知っている由香里は、下ぶくれの不細工な輪郭に目だけが大きく、その目は、いつも怯えて涙で潤んでいた。ちょっと失敗すると大泣きになり、涙の他に水ばなとヨダレがいっしょになり、俺は、いつもタオルで拭いてやったもんだ。そして話をするときにも人の顔が見られず、いつも俯いてばかりいた。
「いいか由香里、そんなんじゃ学校行っても友達もできないでいじめられっ子になっちまうよ。人と話すときは、キチンと相手の顔を見て、少しニッコリするぐらいでやるの。いいか、こんなふうにね」
 俺は、そのころ好きだったMを想像し、Mに話しかけるように言った。

「お早う、どう、昨日の宿題できた? ボク、最後の問題がとけなくってさ。出来てるんだったら……あ、答を教えてほしいんじゃないの。ヒント聞かせてもらったら自分でやるから……あ、そう。どうもありがとう。そうか、これは距離から考えちゃダメなんだ。時間なんだね。うん考える!」

 てな感じで、想像のMをエアー友達にして、由香里に見せてやった。
「すごい、薫ねえちゃん、ほんとに人がいるみたいに話すんだ。由香里もやってみた~い!」
 で、由香里はやってみるんだけど、目の前に人がいると思っただけで、顔が真っ赤になり、声がしょぼくなってしまう。
 
 ま、そんな子だった。

「由香里さんは、子どもの頃はとてもはにかみやさんだったってうかがいましたけど」
 MCが聞く。
「はい。自分に自信のない子だったんで、あ、今も自信なんてないんですけどね」
「やっぱ、AKRできたえられたんですか?」
「それもありますけど、従姉のお姉ちゃんに鍛えられたってか、憧れてて、真似してばかりいたんです。とってもマニッシュでかっこいい美人のお姉ちゃんで、あ、今度の撮影H県のホール使ってやるんで、久方ぶりにお姉ちゃんのところに泊まって現場に通おうかと思ってるんです」

 ゲ……由香里のやつがうちに泊まるって!

「で、今度は初の映画出演で張り切ってるのよね?」
「ええ、まだ研究生に毛の生えたようなものなんですけど、プロディユーさんが『由香里クンみたいなのが、ひねくれたら、どんな感じになるか。そのイメチェンぶりに期待』とおっしゃって。あたしも芸の幅をひろげるためにアタックです!」

 と、いうわけで、由香里が家に泊まることになった。

「すごい。由香里ちゃんが来るんだ!」
 オカンは舞い上がって叔母さんちに電話。

 俺は悩んだ。いったいどんな風に接したらいいんだ!?

 とりあえず由香里が出る映画が『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』というタイトルで、由香里の役は、ラスト寸前まで主人公のはるかをいじめる東亜美という役ということを知り、駅前の書店に原作本を買いにいった……。
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巷説志忠屋繁盛記・20『13人の予約』

2020-01-28 06:55:36 | 志忠屋繁盛記
巷説志忠屋繁盛記・20
『13人の予約』     
 
 
 
 
 マスターは外国人の友だちや知り合いが多い。
 
 国別で言うとフランスが多いが、アメリカや韓国の他十か国余りになる。
 
 そのくせ自分は外国に行ったことが無い。
 
「ひょっとして、パスポートを取得できない理由があるのかい?」
 馴染みのフランス人が、客が居なくなるのを見計らってカウンター越しに聞いたことがある。
「ヤバイパスポートやったら持ってんねんけどね、(ΦωΦ)ふふふ・・・・」
 とケムに巻いた。
 
 そのケムが本当ではないかと思ってしまうことがある。
 
 めずらしく客ハケの早かったランチタイム。
 トモちゃんが早手回しにカウンターとテーブルの拭き掃除にかかろうとすると、お客さんが入って来た。
 
「いらっしゃいま……」まで言うと。
「えと、ディナータイムの予約に来ました」にこやかに返答が返って来た。
「マスター」と首を振ると、それまで居眠りしていたマスターがガバっと顔を上げる。
「お、これは湯田さん、めっちゃお久しぶりで」
 そこから湯田さんというお客さんはペラペラと外国語で喋り出した。
 
――え?――
 
 トモちゃんは英語とフランス語が喋れて、聞いて凡その意味が分かる程度ならドイツ語・韓国語・北京語もOKだ。
 他の言語も、意味は分からずとも、ああ~語で喋ってるんだ。ということは分かる。
 ところが湯田さんの言葉は分からない。
 自分には日本語で話しかけてきたので日本人と決めてかかっていたが、その横顔を見ると、小柄ではあるが欧米系だ。
 だが、その発する言語は聞いたことが無い。
「そうでっか……湯田さんも苦労しまんなあ」
 マスターは、もろ河内訛の日本語で会話が成立している。
「……OK、ま、あのお方も来られることやったら大丈夫でっしゃろ、ほな、今夜19時から十三名様でリザーブさせてもらいます」
 湯田さんは、嬉しそうに頷くと「お邪魔しました」とトモちゃんにも笑顔を振りまいて帰って行った。
「十三人も来られるんだったら、ヘルプで入りましょうか?」
「ありがとう、でも、オレ一人で間に合うから、トモちゃんは定時でええよ。今夜ははるかも帰ってくる日やろし。食材の買い出しだけ頼めるかなあ」
「はい、もちろん」
 買い出しをしながらもトモちゃんは不思議だった、あの言語は何だったんだろう?
 こだわる性質ではないので、買い出しの帰りには気にしなくなった。
「はるかが帰ってくるんだ、わたしもオデンの仕込みしなくちゃね」
 トモちゃんは娘の好物のオデンの材料も併せて買った。
 はるかは慣れない大阪で文句も言わずに適応してくれたが、ことオデンのレシピにだけは関東風こだわった。
 関東風はちくわぶを使うこととスジ肉の使い方が違う。厳密には、それに合わせて出汁も違うのだが、今夜の出汁は、マスターが前もって用意してくれている。東京と大阪の二重生活をしているはるかには、こういうことが憩いになるだろうと力が入るのだ。
 さすがに十三人分の仕込みは大変そう、チーフも法事で休みなので、トモちゃんは仕込みだけ手伝うことにした。
 
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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・23「押すんやない!!」

2020-01-28 06:48:33 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)23
「押すんやない!!」                   


 
「殺虫スプレーだけでは、どもならんやろなあ」

 薬局のおばちゃんは、首にかけたタオルで汗を拭きながら言った。
 商店街の薬局は冷房が効いていない。半分開け放したドアのせいか、エアコンそのものの効きが悪いのか、その両方のせいなのかは分からない。
「ちょっと、見せてみい」
 調剤室に居たおっちゃんが、体のあちこちをボリボリ掻いている須磨と千歳に言う。
 庶民的な空堀商店街の薬局ではあるが、部室ではない。いちばん被害の多いマタグラや胸などを見せるわけにはいかないので、腕の裏側を見せた。
「あ~~~これは虱とダニの混成部隊にやられとるなあ……あんたは3か所、こっちのお嬢ちゃんは4か所……腕でこれだけやから、服で隠れてるとこはもっとやろなあ」
 おっちゃんの一言で、ムヒでおさまっていたあちこちの痒みが蘇ってくる。
「ああ、カユカユ……」
 痒みは広がって、2人は頭まで掻き始めた。
「ちょっと、頭かしてみい」
 2人は、おっちゃんおばちゃんにヌソーっと頭を差し出す。
「毛虱やなあ……ほれ」
 おばちゃんは、櫛ですくったそれを見せた。

「「ギョエー!!」」

 赤い芥子粒のようなのを見て、2人は店の外まで逃げ出した。
 
「まあ、とりあえず、これだけのもんがあったらええやろ!」
 おばちゃんが渡してくれたレジ袋には12畳用のバルサン2個、そしてアタマジラミ専用のシャンプーにアタマジラミ専用の梳き櫛まで入っていた。そして、ダニ・虱駆除のダンドリもていねいに教えてもらい、学校に帰った。

「来週、事務所と技能員さんが入って調査してくれるて」

 部室に帰ると、学校に掛け合ってくれた啓介が戻ってきて報告してくれた。
「来週まで待ってたら、血を吸いつくされちゃうわよ」
 演劇部の3人は、即応対処組と学校掛け合い組に分かれて対応していた。どちらかが無駄でも効果が出るように心掛けたのだ。カイカイ被害が出てから30分のことである。状況判断力と行動力が高いといえるのだけれど、まだ3人に自覚は無い。

「よーし、もう部室に残したもんはないなあ!?」

 敵陣地に爆薬を仕掛けるヒーローのように啓介が台詞をきめた。
「ラジャー!」
 ダニ用シャンプーで髪を洗い、ジャージ姿でスタンバイしている須磨と千歳が返事する。なぜジャージ姿かというと、制服にもダニが付いている可能性があるので、脱いで部室の中に置いてある。
「ほんならいくぞ!」
 啓介は、規定量の水を入れた専用の外缶に薬剤の入った内缶をセット、直ぐに煙が噴き出した。
「退避! 退避!」
 3人は、直ぐに部室を出て、ドアを閉めた。
「スゴイ煙だねえ!」
 窓から見える室内を見て感嘆の声が上がる。
「これで、ミッションコンプリートやなあ……」
 自分の後ろをエンドロールが流れていくような気がした啓介。

 しかし、演劇部ダイハードは終わっていなかった。

「啓介せんぱい……なんで制服のままなんですか?」
「え?」
「やだ、制服もバルサンするって言ったじゃない!」
「いや、ついウッカリ……」
「もう、ダメじゃん! 千歳、いくわよ!」
「ええ、須磨ちゃん先輩!」
「「いっけー!!」」
「うわー、やめろって! 押すんやない!!」

 2人は、声を揃えて啓介を部室に放り込み、鍵をかけた上でドアをパックテープで目張りした。

 10秒たらずの早業であった。
 
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不思議の国のアリス・15『カーネル・サンダースの謎々』

2020-01-28 06:35:57 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス・15
『カーネル・サンダースの謎々』
    


 
 帝都ホテルのスィートでシンミリと女子会をやったあと、フカフカのベッドで眠ってしまった。
 
 お風呂に入ったのは、ほとんど日付が変わるころだった。
 
 明くる朝、メインダイニングのビュッフェでしこたま朝食を食べた後チェックアウト。大阪城を見学した。大阪に来てすぐの頃に、一度見学に来たが、あれからいろいろ調べたので、アリスには新鮮だった。

 アメリカには、お城がない。カリフォルニアに新聞成金のオッサンが建てたマガイモノとディズニーランドのシンデレラ城があるくらい。
 
 今の大阪城は、ヒデヨシ政権が1615年に滅亡したあとに、トクガワ政権が立て直したものだけど、それでも歴史的には400年で、アメリカの国としての歴史のほぼ倍である。それだけでアリスには興味深かった。天守閣タワーは、1931年に大阪市民の寄付金によって再現されたコンクリート製だけど、迫力はあった。『プリンセス・トヨトミ』という映画では、この城のホンマルエリアの真下に大阪国の国会議事堂があることになっていた。あの時大阪国の総理大臣役をやった中井貴一を、この映画でアリスはファンになった。
 表の顔は、空堀商店街のお好み焼き屋のオッチャンで、裏が大阪国のプライムミニスター「カッコええわあ!」とアリスはシビレた。今でもヒデヨシの子孫であるプリンセスは、自分がプリンセスであるという自覚もなく普通の中学生として生きている。それを大阪国のオッサンたちは密やかに見守っている。なんともクールな話だと思った。
 
 日本人は、ファンタスティックだ。
 
 フィギュアスケートの選手に織田信成(アリスが必死で覚えた漢字)という選手がいて、彼が織田信長の本当の子孫であることを知って、アリスはタマゲタ。
「鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス」
 ご先祖の信長はぶっそうなことを俳句というカタチで残しているが。プリンス信成は、こうである。
「鳴かぬなら、それでいいじゃん、ホトトギス」
 これでファンになり、ネットオークションでサインを競り落とした。アリスの二番目の宝物。一番は近所のお葬式でもらった数珠である。あれは、ただ日本の伝説的な霊柩車が見たくて、待っていたら、アメリカと変わらない霊柩車だったのでガッカリしていたら、それが、とても悲しそうな顔に見え、感心した近所のオバチャンがくれたものである。
 
 天守閣の、すぐ南に西洋のお城のような建物がある。最初来たときは分からなかったが、今は分かる。
 
「あれは、天守閣建てるときに、陸軍との交渉で建てた師団司令部やねんで」
「ほんま……?」
 千代子が気の抜けた返事をする。
「集まった寄付金の2/3は、これ建てるのにつこてんで」
「え、なんで軍隊に、そんなんしたげたん?」
「え、知らんのん。大阪城は軍隊が管理してたんやで。その一部を公園にして天守閣建てる見返りやで」
「それ、エゲツナイなあ」
「ウチは、そこまでやって、天守閣建てた大阪のオッチャン、オバチャンらがエライと思う」
 アリスは、戦前の軍隊の力の強さと折り合いをつけた大阪の人間を賞賛する演説をした。
「ここに、万博の年に埋めたタイムカプセルがあるねんよ!」
 千代子も負けずに言う。
「むかし、ここに紀州御殿いうのんがあってんよ」
 アリスは、その上をいく。
「紀州御殿?」
「明治時代に、和歌山城から移築した、立派な五点……ちゃう、御殿」
「戦争で焼けたん?」
「ううん、戦後、進駐軍……て、ウチとこのアメリカ軍やけどな。タバコの火の不始末で焼けてしもてん。大阪の消防車が大手門まで来たんやけど、中に入れてもらえへんで、丸焼け……アメリカにもしょうもないオッサンらがおるわ」
 ウンチクにかけてはアリスの勝利って、アリスは別に千代子と勝負したわけではない。何事にも好奇心の強いタチなのである。

 それから二人は梅林に行った。
 
 まだ五分咲きだったけど、アリスは満足だった。密かに、大学に入ったら、また留学生で日本に来ようと決心していた。アリスは、この不思議の国が大好きだ。
 比較的花を多く付けている梅の前でシャメを撮った。二枚目を撮ろうとしたら、着メロがした。

「サンダースのオッチャンからやわ」

 そのメールには、かなり手の込んだ謎々が添付されていた……。
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