大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)・1・府立空堀高校は4時間目

2020-01-06 06:40:43 | 小説・2
オフステージ (こちら空堀高校演劇部) 1
ただ今四時間目   「高校旧校舎」の画像検索結果                 

 
 
 世の中で一番だるいものは四時間目の授業だ。

 三時間目まででなけなしの集中力は弛み切っているし、空っぽの胃は昼食を欲して何を見ても食べ物をイメージしてしまう。
 小山内啓介は窓側の一番後ろに座っているので、並み居るクラスメートがコンビニの棚に整然と並ぶお握りの列に見えた。
 姫ちゃんこと姫田先生が板書の左端に注釈を書いたので、二つ前に座っている勉強熱心なミリーが身を乗り出した。ミリーはブロンドの留学生だけど優秀で日本語の読み書きは平均的な高校生以上だ。
――ああ、冷やし中華食いたいなあ…………――
 啓介には魅力的なブロンドもコンビニの冷やし中華の黄色い麺に見えてくる。

「4時間目て、お腹空いて眠たくなって、板書のトレースだけになってしまうよね」

 姫ちゃんがチョークを置いて語り始めた。語ると言っても姫ちゃん先生はお説教などはしない。程よく脱線してみんなの脳みそを覚醒させようとする。
「あたしも高校生のころは眠たかった……」
 そこから始まって、姫ちゃん先生は自分の高校時代を語り始める。高校の先生というのは妙なプライドがあって出身校の話は、あまりしない。しないからこそ効果的だろうと姫ちゃん先生は語る。教師としてツボを心得ているというよりは、いまだに高校生の気分が抜けないからだろう。
「北浜高校は校舎を建て替えたばっかりでね、食堂がメッチャきれいやねんやんか。きれいになると味もようなるようで、唐マヨ丼がワンランクほどグレードが上がってね」
「唐マヨ丼て、どんなんですか?」
 丼もの大好きなトラやんが聞く。
「丼ご飯の上に唐揚げが載っててね、出汁とマヨネーズがかかってんのん」
「美味そう!」と「キモイ!」の声が等量で起こった。
「ヌハハ、それで、それをテイクアウトのパックにしてもろて中庭とかで食べるのん! キモそうやけど、あたしら三年生には一押しのメニュ-やったなあ! 数量限定やったけど、あたしらの教室は食堂に一番近かったから食いぱぐれはなかった!」
 昼ご飯前に美味しいものの話をするのは反則だ。これは姫ちゃん先生の憎めない人柄だ。お腹の虫の鳴き声に閉口しながらも啓介は思い至った。
 世界史の隅田先生も似たような話をしていた「丼ものはパックに入れて食堂の外でも食べられた。府立高校ではうちだけで、ゴミの始末が問題になって一年で廃止になってしもたけどな。ぼくら3年生は嬉しかった」
 
……隅田先生は学校名は言わなかったが、同じ北浜高校だと考えられた。
 
「ひょっとして、姫田先生……」
「なに、小山内くん?」

 そのとき廊下を歩く隅田先生が目に入った。廊下側のセーヤンも同じことを考えていたようで、廊下の隅田先生に声をかけた。

「……ということは、姫田先生と隅田先生は北浜高校のクラスメートとちゃいますのん!?」
「「え……ええ!!」」
 
 二人の若い先生は教室と廊下で同時に驚いた。

 姫田先生は現代社会、隅田先生は世界史、共に社会科だから同じ部屋に居る。それも二人そろって去年の春に新任でやってきた。それが今の今まで同級生であることに気づかなかったのだ。空堀高校二年三組の教室は暖かい笑いに満ちた。

「そやけどなあ……」
 
 啓介はコンビニの袋をぶら下げながら思った。

――なんや一幕の喜劇を観るようやったけど、同級生やったいうことにも気づかへんいうのは、ちょっとコミニケーション不足なんとちゃうのかなあ――

 空堀高校は府立高校の中でも老舗で、レベルもそこそこだ。春の海のように波風がたたない。生徒も教師もぬるま湯につかっているように平和だ。イジメや校内暴力とも無縁で穏やか。生徒の自主性を重んじるという伝統の下に、実質は放任されて、少々の無茶やはみ出しは見過ごされる。
 
――大丈夫なんかい?――
 
 チラとは思ったが、昼食のため演劇部の部室に入ったとたんに忘れてしまった……。
 
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となりの宇宙人・21『エジプトの王女さま・2』

2020-01-06 06:09:19 | 小説4
となりの宇宙人・21
『エジプトの王女さま・2』            

 


 聖也へのエネルギー補充は夜に行われる。

 あたしが熟睡している間に宇宙エネルギーを変換。それを聖也がワイヤレスで受け取る。
 だから、あたしはエネルギーを送っているという自覚がない。
 自覚がないから平気。
 緊急時には多めのエネルギーがいる。それも急速充電になるので、ワイヤレスじゃなくてダイレクト……。

 ここまで読んでくれた人には分かると思うんだけど、ダイレクトはキスの形で行われる。

 ダイレクトは、今まで二回あった。二回とも聖也の突然のキスだった。
 突然だからYESもNOもない。あ!!と思ったときには唇が重なっている。
 事前に緊急補充と言われたら、ためらってしまうだろう。

 エジプトのツイン王女が時空を超えてピラミッドの完成のために聖也の力を借りたいと言ってきた。

「いつもの緊急補充よりも多めのエネルギーがいります」

 ツイン王女は、飲んでいた紅茶に、もう少し砂糖を入れるくらいの気楽さで言った。
――ということは……キス以上のことをしなくちゃいけないの!?――
 ということで保留にしてある。

 何千年も前のピラミッドのために……そういうことをいたす義務はない。

「食堂の工事、来週には終わるらしいな」

 小学校前で出会って、あいさつ代わりに聖也が言った。
 聖也とは隣同士だけど、いっしょに学校に行ったりはしない。たまにいっしょに玄関出たときは別だけど、普段はそれぞれのサイクルでやっている。駅までの道も違っていて、あたしは途中ななめになったショ-トカットを通る。
「駅前のパン屋さんに馴染んだから、ちょっと寂しいかな」
「みんないっしょにさ、食堂でにぎやかに食べる方がいいじゃん。ずっと、そうやってきたんだから」
「ずっと?……ついこないだ杉之森にやってきたくせに」
「やりにくいなあ、愛華の記憶は上書きできないから」
 調子を合わせてやればいいんだろうけど、つい意地悪な物言いになってしまう。
「……ピラミッド」
「ん……南先生のか?」
「あ……うん、先生は砂抜きの他にも工法があるみたいに言ってたけど、どんなのかな?」
「あれは先生の謙遜じゃないかな、オレは、砂抜き工法で十分説明がつくと思う」

 ツイン王女は礼儀と順序をわきまえているようで、聖也には話していないようだ。
 
 ちょっと好感は持てたけど、聖也とキス以上のことをする気はないの。

 絶対に!  


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乃木坂学院高校演劇部物語・88『障害走路・1』

2020-01-06 06:00:25 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・88   
『障害走路・1』       

 
 え……!?

 同じテーブルにいた隊員の人達がいっせいに西田さんに注目した。わたしたちもゲキツイの意味くらい分かるので手にしたお箸が止まってしまった。
「自分は、北海道の機甲科におりましてな。ある時、アメさんと共同訓練になりました。その日は、対空射撃訓練……機甲科じゃ珍しいことなんですけどね。幹部の偉いさんのそのまた上で決まったらしい」
「高射特科じゃないんですよね?」
 大空さんの質問は、タヨリナ三人組にはチンプンカンプン。
「六一式の車長をやっておりました。イントルーダーが吹き流しの標的を引っ張って飛んでくるんですがね……むろん最初は普通にやっとりました。車載機銃で吹き流しを撃つんでですわ」
「車載機銃で当たるものなんですか?」
「あのころは、自動追尾なんか、ありませんので、目視でやっとりました。みんな良い腕をしとりました。八割方は当たりましたな。で、アメさんも本気になってきたんでしょうなあ。それまで水平に部隊の前を横断するように飛んでおったのですが。本式に真正面から実戦と同じ攻撃姿勢でやってきおりました。ほとんどの機銃が沈黙しました。だって、真正面からだと、曳航機のイントルーダーと吹き流しが重なって、危なくて撃てない。間違って曳航機に当たれば大事ですからな」
「誤射したんですか?」
「そんなヘマはしませんよ。真っ直ぐわたしの六一に低空で向かってきおりました。距離一千で、微かに吹き流しが十一時の方向に流れたのを見過ごさずに射撃しました。アメさんは、まさか撃ってくるとは思わんかったんでしょう、ビックリして機首を右に降りましてな。直ぐに射撃を中止しましたが、右のエンジンをぶっとばしてしまいました」
「それじゃ、事故の原因は米軍の方じゃないんですか?」
「そのころは、ビデオもない時代ですからな。部隊のみんなは証言してくれましたが。泣く子とアメさんには勝てません。今も昔もね」

 昼からは、障害走路というのをやった、要は障害物競走。
 飛び越え障害、ロープ登り、柵越え、鉄条網くぐりなんかが十一種類ある。
「かかれ!」
 教官の号令で二人一組で始める。西田さんは峰岸先輩とペアであっという間にゴールに着いたみたい。遠くで「完了!」って声がした。
 忠クンは、企業グル-プの先発の人といっしょ。丸太橋のところでモタツイテるんで、わたしとマリちゃん(マリ先生)が待ちきれずに出発。後に里沙と夏鈴、次に企業グループの残りが続いた。
 ロ-プ登りで、忠クンのペアを抜かしちゃった……って、わたしの運動神経がいいわけじゃない。ペアはお互い助け合っていいことになっていて、わたしたちのペアが、制限時間内で完了できたのでは、ひとえに「マリちゃん」のお陰ではありました。
 企業グル-プが、忠クンたちといっしょにゴールしたのは。なんと一時間後。里沙と夏鈴はさらに、その五分後だった。
 なんと、西田峰岸ペアの記録は、駐屯地記録歴代一位だった!
「自分と、もう一度やっていただけませんか?」
 企業グル-プの教官が、顔はにこやかに、でも目は闘争心向き出しで言ってきた。
「バディー(ペアの自衛隊用語)ではなく、競技としてですな?」
 西田さんは、闘争心をみなぎらせて……る。わりには目は笑ってた。
「用意……かかれ!」
 先任教官の合図がかかったとき、西田のおじさんは、こう叫んだ。
「レンジャー!!」
 この言葉に、あきらかに相手の教官は、ギクっとした。
 勝負はあっけなかった。西田のおじさんが、十秒の差を付けてゴール。ついさっき、自分で作った新記録もあっさり塗り替えてしまった。

 それから、自衛隊体操。人の動きを見て真似るのは得意だったのであっさりクリアー。
 忠クンと企業グル-プは少し時間がかかった。
 そして……恐怖の5000メートル走。これはコタエました。
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