大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・195『練馬のゴルフ練習場』

2021-02-03 09:45:24 | 小説

魔法少女マヂカ・195

『練馬のゴルフ練習場』語り手:マヂカ  

 

 

 ずいぶん走ったようだが、練馬の西のようだった。

 なんせ、車も道路事情も大正時代だ。

 練馬の名物は大根……だけではない。戦後、多くのマンガ家が住み着き、その流れからかアニメの発祥の地になり、令和の時代では日本で一番アニメスタジオが多い地域になっている。

 いわば、アニメとマンガの聖地で、そういうサブカルチャーのエネルギーが奇跡を起こすのではないかと妄想しかける。

 ウ……千年の魔法少女ともあろうものがサブカルに毒されかけているぞ、自戒。

「ここでございます」

 パッカードが停まったのは、田んぼや畑が広がるところで、目の前はほんとうに大根畑だった。

 大根畑を抜けると、簡単な柵で囲われた広い空き地が見えてきた。

『米国大使館付属ゴルフ倶楽部練習場』

 英語と日本語の看板が掛かっている。

 案内板を見ると、三ホールしかない。パー3 パー4 パー5の基本的なコースが整っている。

「大使館も震災の後始末でゴルフどころではないので、好きに使ってよいとのことです。わたしどもは、あの支度小屋におりますので、存分になさってください」

「頑張ってください! 井戸があるようなのでラムネを冷やして待っています!」

 松本とクマちゃんに見送られ、我々はパー3ショートホールの芝生に立った。

「じゃ、行くわよ!」

 準備運動もそこそこに走り出す。

 三コースを走るのに10分、三周して40分ほどになるか、まあ、こっちは魔法少女だ。ペースは霧子任せ。

「自分の調子で走ってね、わたしに遠慮することはないから」

「一週目は合わせるよ、あとは自分のペースでやらせてもらう」

「ペース?」

「あ、調子という意味の英語だ」

「真智香さん、ハイカラ~(^▽^)/」

 霧子は、三人で走ることが楽しくて仕方がない感じだ。結果が出なくても、こういう気持ちになってくれるだけで成功だろう。

 霧子は、体操の時間に習った通りの掛け声で走る。

 文字に書けば、一! 二! 一! 二!なんだが、オッチニ オッチニと聞こえる。

 そうなんだ、こういう掛け声一つにしても、この百年間に少なからず変化している。

 昔は、学校でも軍隊でも、掛け声はオッチニ、オッチニだった。

 片やノンコは、エッチネ エッチネと発音している。

 片やオッサン臭く、片や舌足らずのJKで、間を走るわたしは可笑しくてしかたがないのだが、本人たちは真面目なので、その違いを面白がる風もない。

 二周目に入って、わたしは先頭に出る。

 千年の魔法少女だ、その気になれば世界新記録だって出せる。

 五十メートルも引き離しただろうか、パー4ミドルホールの薮を過ぎて、わたしの前を走っている者を見てビックリした。

「お、おまえ!?」

「そのまま走って」

 横に並んだ、そいつはブリンダ・マクギャバン!?

「やっと、こっちに来られた」

 ブリンダは千駄木女学院に通うアメリカの魔法少女で、特務師団の準隊員でもある。

「どうやら、おまえらの手には余る仕事のようでな。オレにも出動命令が出たんだ」

「どっちの命令だ?」

「どっちでもない、しいて言えばアメリカだが、政府じゃない。今の政府はディープステイトに握られてしまったからな」

「そうか、で、どんな手伝いをしてくれるんだ」

「まだ、分からん。とりあえずは、霧子に紹介してくれ」

「紹介? どういう肩書でだ? まさか魔法少女とは言えんだろ」

「そうだな……」

「なんだ、設定していないのか?」

「……大使の娘だ、いま設定した」

「フ、いいかげんだなあ」

My feet hurt! My feet are killing me!」

 英語で叫びながら大げさにブリンダはひっくり返った。

 背後に霧子とノンコの驚く気配。

 やれやれ、こいつはかえって邪魔になるかもな……。

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・21『八雲たつ出雲八重垣』

2021-02-03 06:56:26 | 評論

訳日本の神話・21

『八雲たつ出雲八重垣』   

 

 八岐大蛇を退治したあと、スサノオは――オレ、生まれて初めていいことしたんだ……なんちゅう清々しさであることよ……目の前の景色も嫁のクシナダヒメも、なんとも愛おしく仕方ねえよなあ――

 なんだか、涙が出て仕方がありません。

 スサノオは、これまでもよく泣きました。ガキの頃は、カアチャンが居ないよおと言ってはジタバタ泣いて、父のイザナギを困らせ、高天原では「少しは、オレに構ってくれよおお!」と泣いて、お姉ちゃんのアマテラスにこっぴどく怒られては泣いて、高天原を追放されてきました。

 それが、ここへきて、テナヅチ・アシナヅチの老夫婦に同情し、一世一代の計略を練って、体を張ってクシナダヒメを助けました。初めて人のために働き、今までに感じたことのない充足感、人と喜びを分かち合う嬉しさから涙が止まりません。

 ヘタレがレベル100ぐらいの勇者にキャラ変してしまったのです。

 なんでもありのラノベでも、こんな設定をしたら企画書の段階でアウトです。

 日本神話には、こういう強引さがあちこちにあるのです。この強引さは、どこかで触れたいと思うのですが、今は『みごとなキャラ変』と楽しんでいてもいいかと思います。

「オレは、これからも、この土地とクシナダヒメを護っていくぞ!」

 そう、スサノオはエピソードoneをコンプリートしたのです!

 そこでスサノオは日本で初めての和歌を歌いあげます。

 

 夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁微爾 夜幣賀岐都久流 曾能夜幣賀岐袁……これは古事記の記述

 夜句茂多菟 伊弩毛夜覇餓岐 菟磨語昧爾 夜覇餓枳都倶盧 贈廼夜覇餓岐廻……こっちは日本書紀の記述

 両方とも万葉仮名という、漢字の読みだけを利用して日本語を表現したもので、ちょっと意味不です。

 今風にすると、以下のようになります。

 八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に 八重垣作る その八重垣を幾重にも雲が湧き出でる出雲の国をメッチャ気に入った! この出雲の国とオレの嫁を護るために垣根……つまり我が家をつくってだな、その護りをしっかりやるってことだ! オレは、この出雲に住み着くからなああああ! 文句あっか!

 

 スサノオの土着宣言であります。

 記憶に間違いがなければ、スサノオは神の身でありながら初めて人間(クシナダヒメ)と結婚した神さまであります。

 こののち、アマテラスの子孫も九州は高千穂の峰に降臨して、しだいに人との関りや婚姻が進んでいきます。その先駆けを表現しているのかもしれません。

 

 落ち着いたスサノオは、ここいらは木が少なくていけないなあと思います。

 前回でも述べた通り、山陰地方は古くからのたたら製鉄のため山が禿になるほど木を切られてきました。復元能力の高い日本の山々でも、やっぱり目立つんでしょうねえ、スサノオは体中の毛を抜いて、娘や息子たちに植えさせます。つまり、山陰地方だけでなく、日本中の山々の木はスサノオの体毛が変化したもので……そう思って山を見ると、ちょっと複雑な気持ちになりますなあ……あそこの木は、いったいどの部分の体毛なんじゃ?

 

 その後、スサノオの六代目の子孫が二代目の娘と結婚します。

 なんで六代目と二代目が? 時間的にメチャクチャ……次回に考えます。

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・50『ねねちゃんとの同期』

2021-02-03 06:38:10 | 小説3

たらしいのにはがある・50
『ねねちゃんとの同期』
         

  

 


 股間からドレーンをそっと引き抜き「ディスチャージオーバー」と呟いた。

 いつもなら、これで憎たらしいニュートラルモードになるのだが、どうも様子がおかしい……。
 幸子は、脚こそ閉じたが、裸のままベッドに横になっている。表情もなく、呼吸のギミックも始まらない。

「幸子、どうした……?」
 幸子の体内から抜き出した洗浄剤は、時間のたった血液のようにどす黒かった。
「……もう一度メンテナンスやり直そうか?」

「その必要は無い」

 幸子は、無機質に答えた。でもニクソクはなかった。なにか、とても大きな心のうねりを必死でおさえ、平静さを保とうとしているように思えた。
「幸子……」
「わたし……ニュートラルよ」
「でも、様子がおかしいよ」
「耐えているから……」
 幸子の目から、一筋の涙がこぼれた。そして、堰を切ったように溢れ出した。
「幸子!」
 ボクは、慌ててタオルで拭いてやろうとした。すると急に幸子は、ボクの胸にすがりつき、嗚咽しはじめた。

  う う う うっ うぐ うぐ ぐぐぐぐぐぐ……
 
 幸子の涙は、ちゃんと涙の味がした。

「わたしがわたしを取り戻したら、二つの世界が壊れてしまう!」
「それは、ただの仮説だろ。それに、世界が壊れる気配なんか、これっぽちもしないぞ」
「違うの、これは違うの!」
「違わない、やっと幸子は自分を取り戻したんだよ。だから、こうして……」
「これは、優奈の前頭葉を取り込んだから……」
「優奈の……」
「わたし、優奈が狙撃されてバラバラになった直後、無意識に優奈の脳組織の断片を探したの。二秒で、ほとんど傷ついていない前頭葉と扁桃体の一部を発見して、わたしの体に取り込んだ」
「優奈を取り込んだ?」
「わたしのここ」
 幸子は、自分のオデコを指した。
「ここに、わたしの脳組織といっしょに保存してある。最初は、なんのためだか分からなかった。今は、はっきり分かる。優奈の義体が用意されれば、そこに移植して優奈を復元できる。その可能性のために、わたしは優奈の前頭葉を保存したの」
「そんな能力が幸子にあるのか!?」
「まだ、わたし自身気づいていない能力があるかもしれない……その一つが、今のわたしよ。今のわたし、憎たらしくないでしょう」
「ああ、こんな人間的な幸子を見るのは初めてだ……」
「どうやら、優奈の脳で取り戻した人間性では、世界は破滅しないみたい…………そうだ!」
 幸子は、ベッドから飛び出して、テーブルの上のテレビを点けて、チャンネルをいろいろ切り替えた。
「スニーカーエイジのニュースはやってるけど、他に変わったことは無さそう。パソコン見てみよう」
「幸子、ほんとにニュートラルなのか?」
「そうよ、嬉しいでしょ?」
「ああ、だったら、服を着た方が……」
「……あ、お兄ちゃんのエッチ!」
 ボクは、部屋を放り出されてしまった……。

「水元中尉を紹介しておく」

 晩ご飯のときに、里中副長が女性将校を紹介した。軍人らしからぬ気さくなオネエサンだ。
「みなさんのお世話をさせていただきます。場所柄軍服を着用していますが、気軽にマドカって呼んでください」
「お父さん、他にも、なにか大事なことがあるわね」
 ねねちゃんが見抜いた。
「今から言うところだ。これを見てくれ……」
 モニターにはマッチョな戦闘ロボットが映っていた。
「味方のグノーシスから得た資料だ。義体ではなくロボットだという点に注目してほしい。戦闘機能と情報収集、総合指令機能も持っている。なりふり構わぬ高機能だ。攻撃能力は優奈クンを狙撃したイゾーの能力がベースになっている。そして、全体の管制機能は、ここにある」
 アップされたモニターには、ロボットに同化された祐介が写っていた。
「これは……」
「ケイオンのメンバーの倉持祐介クンだ。彼は隠していたが、優奈クンが好きだった。その優奈クンが目の前で爆殺されて、彼の心は怒りで一杯だ。それを奴らは利用した。この戦闘ロボットの本体は、こっちの世界で作られたものだ。義体では、向こうの世界が進んでいるが、こういうロボットは、こっちの方が進んでいる」

 そんな

 愕然とした。優奈に続いて祐介が……。

「祐介が、敵に回るんですか?」
「今は、祐介クンとの同期に時間がかかっているが、戦力化は時間の問題だ。そこで、我々も手を打つことにした。太一、もう一度ねねに同期して、こいつを撃破してもらいたい」
「え、これで三度目ですよ」
「いいや、今までは単なるインストールだったが、今度は同期だ。意識の主体は完全なねねと太一の同化したものになる。やってくれるね?」
「あの、わたしも参加しちゃダメなんですか?」
 幸子が手をあげた。
「幸子クンは、こっちと向こうの世界を繋ぐ大事な鍵だ。危険に晒すわけにはいかない」

 俺が、ねねちゃんに同期する寸前に、幸子は余計なことを言った。

「優奈さん、お兄ちゃんのこと愛してるよ……」

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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