大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・030『アクトマインとは地雷のこと』

2021-02-12 09:08:44 | 小説4

・030

『アクトマインとは地雷のこと』ミク   

 

 

 ウワッ(#*0*#)!

 

 キャビンに向かう途中で躓いてしまった。

 船(宇宙船)の通路やキャビンはバリアフリーが当たり前なのに、このファルコンZは、あちこちに凸凹や段差がある。

「あ、ごめんなさい!」

 ミナホがすっ飛んできた。

「いや、案内も待たずに動き出したのが悪いんだから(^_^;)」

「テルがせかせるからだぞ」

「だって、船内案内もらってりゅしい」

「ごめんなさい、わたしの不手際です。案内図インストールしたら動きたくなりますよねえ(^#0#^)」

 やっぱ、宮さまと元帥への案内が先になるよね、わたしたち高校生だし。案内ももらったし、トモヅルはデッキも三層しかないし、テルが「行こう!」と先に進んだのも無理はない。

 トモヅルの汚さは掃除ができていないという意味の汚さなんじゃないんだ。スクラップ同然の退役船をあちこち手を加えて体裁を整えている。

 ほら、ジャンク屋で『ニコイチ』って用語があるじゃない。二つのジャンク品のいいところを寄せ集めて使えるデバイスを一個作るみたいな。それを、船一隻分の規模でやったのがファルコンZ。

「いえ、98隻分なんですけどね(-_-;)」

「「「「98隻!?」」」」

 みんな驚いた。

「ジャンクにかけては、銀河一の腕なんですよ、船長(#^▽^#)。性能第一主義なもんで、居住区とかは二の次三の次で、デコボコだらけなんですよぉ」

 済まなさそうに頭を掻くミナホ。くやしいけど、可愛い。

「通路のここからは、先代の『みょうこう』のジャンクで……」

「え、巡洋艦のパーツを駆潜艇に!?」

 均衡とか正確さを大事にするヒコらしく驚く。

「あ、その分、キャビンの前は『じゅんよう』の……」

「え、航空母艦の?」

「でも『じゅんよう』は、元は客船でしたし(^_^;)」

 とにかく、艦種の違うパーツのつぎはぎで、通路の幅も天井や床の高さもまちまちな様子。

「「アハハハハ」」

 ヒコとダッシュは面白がって朗らかに笑うけど、ミナホは顔を赤くして恐縮している。

「男性用キャビンは、あっちですので……」

 笑ったことへの意趣返しじゃないんだろうけど、ミナホは通路の分岐を指さして促した。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ、俺たち火星の野生児だから」

 分岐を楽しそうに曲がって、数秒後に悲鳴が聞こえて、ミナホはハッとしたけど、女子の案内が任務と、前を歩きだした。

 キャビンがいびつだったらどうしようかと思ったんだけど、ちゃんとしていたのでホッとする。

「あのう、ミナホが言っていたアクトマインって?」

「あ、地雷のことですよ。国際的な用語ではマインて言うんです」

 キャビンのインタフェイスをチェックしながら説明してくれる。

「じ、地雷!?」

「はい、対人用のアクト地雷だったんです」

 アクト地雷は国際条約で禁止されている兵器だ。

 要は、ロボットの中に爆薬が仕込んであって、人間のふりをして敵に近づいたり待ち伏せしたりして自爆して敵をやっつける兵器で、ロボットの人権が認められるにしたがって、使用が制限されて、何年か前に完全に禁止になったはず。

「それは表向きなんです、わたしみたいに擬態能力が高いものや隠密性が優れているものは、密かに使われているんですよ」

「ミナホさんは……」

「ミナホでけっこうですよ。わたしは、条約前の最後のプロトタイプだったんです。最終審査が終わったところで、条約が批准されて、批准の象徴として廃棄が決まっていました」

「そうなんだ」

「むろん、爆薬とかは外してありますから、安心してお付き合いください(^▽^)」

「う、うん、それはもちろん!」

「元帥はすごいですね、元帥のボディーは今世紀最高と言われた敷島博士会心の作のダンサーロボットのJQです。擬態には自信がありますけど、あの方に擬態するのだけは無理です」

「そうにゃの?」

「あの湧き出てくるような魅力と力は、JQが元帥のソウルをパーフェクトインストールしたからこそ出てくるもので、とても擬態の力で真似のできるものじゃありません」

「そうなの?」

「そうにゃのか」

 テルと二人感心していると、通風孔から『クシュン』とクシャミが聞こえた。

「「え?」」

「あ、こないだの改装でダクトが変になってるんだ!」

「あの、くしゃみ?」

「すぐに直してもらいます!」

 ミナホがすっ飛んで行って、あたしはテルと顔を見かわした。

「あれ、元帥のクシャミだったよね……」

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)

 ※ 事項

  • 扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

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らいと古典 わたしの徒然草・4『女は髪のめでたからんこそ』

2021-02-12 06:09:50 | 自己紹介

わたしの     

のめでたからんこそ    



 泣いているのか~ 笑っているのか~ 後ろ姿の~ というシャンプーのコマーシャルソングを覚えておいでの読者は、おおむね五十代以上の人でしょう。

 年末に、大原麗子がマドンナ役の『男はつらいよ』を観ました。山田洋次監督の演出の腕も確かで、役者の呼吸も絶妙で。確実な昭和の世界がそこにはありました。

 昭和がなぜに、かくもいとおしいのか……。

「おっさん、そら、歳やでぇ~」 
 ごもっとも。アラ還の身としては返す言葉もありません。

 しかし、この昭和への憧憬には、兼好法師の「女の髪のめでたからんこそ」が潜んでいるように思います。

 昭和の御代は、その最末期をのぞいて、女性の髪は自然でありました。ゆでかけのインスタントラーメンのごときソバージュのパーマもなければ、パッ金や枯れ葉色の茶パツなどもありませんでした。ほとんどが天然の黒髪。パーマもごくひかえめで、個人々々の自然らしさをそこなうものは少なかったように思います。もちろん水泳部などで髪がやけたり、もともと褐色じみた髪の女性もいましたが、それはそれで自然のよさがあって、すれちがった女性の髪の残り香に思わずホワ~っとした、若い日の記憶をもっておられるオジサマも多いのではないでしょうか。

 イスラムでは、女性は人前で女性らしさをひけらかしてはいけないことになっています。きびしい地域ではブルカといって、女性は全身を隠す衣装を着ています。ゆるい地域でも。女性は人前で髪をさらすべきではないと、スカーフをつけていますね。事ほどさように、髪は女性の「女性らしさ」のシンボルでありました。
 わたしが、現職であったころ、入学時はすなおな地毛であった女子が五月の連休明けのころから、髪をいじりだします。軽い茶パツになる者から、キンキンのパッ金にメッシュまで。座り方まで、まっすぐな前向きから、足を組んだ斜め座り、中にはミニスカートのまま、イスの上で大あぐらをかくやつまでいます。
「なんで、そんなんすんねん?」
 と聞いてみた。
「わし(本人は、わたし、と言っているつもり。ほかにも、あし、うち、という一人称もある)のかってやろ」
と、いうこたえが返ってくると思いきや……。
「みんなやってんねんもん」
 と、いう応えが多い。これは女性、とくにハイティーン女子の平均的感覚が「わたしは清楚な女の子です♪」から、「わしは、みんなキライやねん。ウザイよってこっちよってくんなよなあ!」に変わってきたシルシではないかと思うのですが、どうでしょう? 
 グラビアモデルの女の子の表情も、昭和の御代ではにっこり微笑んでいるものが多数派でしたが、新世紀の現在は「わし、おもんないねん」風のブッチョウヅラ。女性は昔にくらべて解放されてきたし、解放されるべきであると思います。しかし、解放してどこへ行くのか。どんな女性像をお持ちなのか、オッサンにはよく分かりません。
 
 とにかく、昔のように、思わず振り返りたくなるような女性より、むこうから来た時点で「目ぇ合わさんとこ」という女性が増えてきたように感じられます。そう言えば、アメリカでは理由もなく女性を十秒以上見つめたらセクハラというのがあったように思います。

 兼好法師は、こうも言っています。

「女の髪を撚って作った綱は象さんをもつなげ。女の履いた足駄(鼻緒のある履き物)で作った笛を吹くと雄鹿がよってくる」 
 兼好のおっさんも、若いころには、かなり女性に悩み苦しんだのでしょう。「嗚呼、ご同輩!」であります。
 
「萌え」というがあります。
「萌え」とは、ヤ行下二段活用の動詞である「萌える」の連用形……などと古典の授業的なお話ではありません。
 古くは「おにゃんこクラブ」にはじまり、アキバ系のコスプレ、メイド喫茶、AKB48にいたる東系文化……これでもちょいムズイ。『セーラームーン』『カードキャプターさくら』から始まる、現実ばなれした、超カワユイキャラに対する熱烈な男の子たちの、なかばバーチャルな女の子へのアコガレの文化現象。
 これについては、いずれ章を改めて考えてみたいと思います。
 
 保母さんのことを「保育士」 婦警さんのことを「女性警官」 看護婦さんのことを「看護師」といいます。しかし現場では、多くの場合「保母さん」「婦警さん」「看護婦さん」で通っていのではないでしょうか。
 それに気づかれたでしょうか「保育士」と「看護師」では「し」の字が違います。聞くところによると「士」という字は「男」を指すので、「看護し」の場合は「師」を使うらしいです。「婦」という字はツクリが箒(ほうき)を表していて、いけないのだそうです。しかし「主婦」「家政婦の三田」の「家政婦」という言葉は現役です。厳密には竹カンムリの無い方は、古代において神殿や廟を清める時に使う特別なもので、転じて、それを使う神聖な女官を表したもので、卑し気な意味は無いのだそうですが、世間一般の認識は違いますので、深堀りは控えます。

 このように女性の、兼好法師の時代の言葉でいうと「あらまほしき女のすがた」が見えてきません。こう申しあげると「女性に画一的な印象を押しつけるな!」と、いわれそうです。

 女性にかかわらず、この国から、いろんな面で「あらまほしきすがた」が消えて久しいように思います。

 現役のころ、なにかにつけて「教師は労働者」あるいは「教育職の公務員」であるといわれました。両方とも、重要な何かが抜け落ちているように感じます。一番しっくりきたのは、子供たちが言う「センセ(大阪弁では先生の、末尾の、イの音がハサミでちょんぎったようになくなる)」でありました。前回でてきたヤクルトネエチャンなどは、その代表選手であり、こういうイケイケネエチャンがいるかぎり、まだまだ救いはあると思うのです。

 兼好法師ののたまうように「~のめでたからんこそ」と言える時代がくればと渇望するのでありますが、やっぱ、アラ還のタワゴトであろうかしらん……。

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妹が憎たらしいのには訳がある・59『古戦場のピクニック』

2021-02-12 05:26:29 | 小説3

たらしいのにはがある・59
『古戦場のピクニック』
         


     


「あ~ たまに来る田舎もいいもんだなあ~」
「命の洗濯だあ~」

 男二人がランチのバスケットを持ったままノビをして、女子大生三人がコロコロ笑う。

 わたしたちは、ひょんなことで友だちになり、みんなでお好み焼きパーティーをやったあと、今日のピクニックの話になった。
 で、木下クンの提案で、多摩の自然公園のピクニックに来ている。

 自然公園といっても奥多摩のような完全な自然公園ではない。今世紀の初頭まで団地が林立していた多摩市、八王子市、町田市にまたがるニュータウンの北西部である。
 人口の減少、高齢化にともないニュータウンの過疎化が進み、先の極東戦争では首都圏内で唯一戦場になったこともあり、1/3にあたる1000ヘクタールあまりが、戦後自然に戻され、多摩自然公園……のようにされた。
 戦場跡であったので、そのままの状態で保存しようという声も高かったが、「平和を希求する日本の象徴」として、自然公園のように作り替えられ、昭和の昔には多くの人の営みがあったことなど、痕跡も留めていない。
 コンクリートやアスファルトなどは、クラスター砲(物質を分子の次ぎに大きいクラスターのレベルまで分解するショックガン。その威力は、一発で10000平米ほどに展開した戦車部隊を、鉄とセラミックのクラスターに分解し、核とは無関係なのに極地核兵器とまで恐れられ。戦後は国際法で使用が禁止された。なぜなら、人間さえタンパク質やカルシウムのクラスターに分解してしまう。今では対クラスターの技術も進んでいるのだが、象徴的に禁止兵器とされている)を民生用に転用したクラスター破砕機で素材にまで分解され、自然の岩のようにされて、十数年たった今では苔むして、見かけは完全な自然に戻っている。

 わたしは無意識に、その「自然な姿」をCPの中で元の形に復元して見ていた。

――ここは、ジブリの『耳をすませば』のモデルになった公団住宅のあたりだ――

「なに思い出にふけってんのよ」

 優子にたしなめられた。義体の能力を使えば、パッシブセンサーに捉えられる可能性がある。
「優子だって、こないだ宗司クン助けたじゃん」
「あれは、一瞬の出来心。真由、もう10分もサイトシーングしてるよ」
「ああ、やっぱ、あれは出来心だったのか!」
 意外なところで、宗司クンが傷ついた。
「あたりまえでしょ、あんなのほっといたら、事故になって、みんなが迷惑するんだからね」
「ねえ、ここらへんでお昼にしようよ!」
 宗司クンの気を引き立てるように、春奈が明るく言った。

「うわー、豪華なランチパックじゃないの!」
「夕べから、川口さんといっしょに作ったんです」
 宗司クンが際どいことを言う。
「それって、原因、結果?」
 木下クンが、意地悪な質問をする。
「いやあ、作っているうちにアイデアが膨らんで、あれも、これもって……」
 宗司クンが頭を掻く。
「あ、結果ですからね、結果。宗司クンには下心なんかありません!」
「そういう言い方って、想像力をかきたてんのよね」
 真由まで調子にのりだした。

「ここに、カントリーロードが走っていた」

 ちっこいPCを出して、木下クンが言った。
 覗いてみると、PCには今の風景と、ニュータウンがあったころの風景が、重なって映し出されていた。
「この道を挟んで、杉本が雫を呼び止めるんだ」
「知ってる、で、神社ですれ違いの告白になるんだよね!」
 と、わたしが言おうとしたことを春奈が先を越した。
「しかし、木下クンのPC技術はすごいね」
「実は、他にも使い道が……」
 地図にグリーンのドットが現れた。
「なにこれ?」
「多摩奇襲作戦で、敵のロボットが破壊された場所」
「今でも残ってんの!?」
 優子がすっとんきょうな声を上げ、驚いた小鳥が二三羽飛び立っていった。
「本体は回収されたけどね、部品が地中に埋まってる……こいつを掘り出して、オークションにかければいい値段になるんだけどね」
「ひょっとして、木下クン、そのために、わたしたちを連れてきたとか?」
「少しはあるけどね、みんな地中深くだ。大がかりな重機でもなきゃ無理さ。たとえできても採算が合わない…………ん、これは?」

 モニターに赤いドットが現れた。

「こいつ、生きてるよ!」

「え、何が?」
 みんなが寄ってきた。
「これは国防軍のレベルCの機密なんだけど。奥多摩奇襲作戦で補足した敵のロボットと撃破したロボットの数が一つ合わないんだ。カウントミスということになっているけど、こいつはスリーパーだったんだ……」
「寝てたの?」
 春奈が、あどけない質問をする。
「今までは、グリーンの残骸と認識されていたんだ……」
「なあ、このドット動いてないか?」
 宗司が、信号機が変わったぐらいの関心で言った。
「ヤベエ、こっちに近づいている!」
 その時、地響きがして、やがて地震のような揺れになった。
「みんな、逃げよう!」


 ボーーーーーーン!


 鈍い爆発音のようなのがして、現れた……そいつが。

 C国の戦時中の出来損ないのガンダムのようなロボットが……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
  • 木下くん       ねねと優奈が女子大生に擬態生活しているマンションの隣の住人
  • 川口 春奈      N女の女子大生 真由(ねねちゃんと俺の融合)の友だち 
  • 高橋 宗司      W大の二年生   
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