大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・25『因幡の白兎・3』

2021-02-14 09:47:49 | 評論

訳日本の神話・25
『因幡の白兎・3』    

 

 カチカチ山の兎にも因幡の白兎にも底意地の悪さを感じるのはわたしの経験によるものなのかもしれません。

 心貧しい青春時代でも、青息吐息の教師時代にもハイティーンの女子には振り回されてきました。

 この年頃の女子というのは理屈ではありません、好きか嫌いかで生きているようなところがあります。

 いったん嫌ってしまうと、全てを『嫌い』というフィルターを通してしか見てくれません。

 そして嫌いな相手には何をしてもいいという感覚になります。

 白兎がサメを騙したことや、カチカチ山の兎が、執拗にタヌキをイジメたことに現れているように思うのです。

 白兎はサメを騙しただけじゃないかと言われるかもしれませんが、白兎は、その後のオオナムチ(後の大国主)の人生を過酷なものにして行きます。

 

 オオナムチの親切なアドバイスで傷が癒えた白兎は、こう言います。

「お兄さんたち八十神は気多の岬に住むヤガミヒメのところに行ったよ、ヤガミヒメを嫁にするんだって。でもね、ヤガミヒメと結ばれるのはオオナムチ、あなたなのよ。あなたこそが相応しいの、さあ、今なら間に合う、行って、ヤガミヒメと結ばれなさい!」

「え、ぼ、ぼくが?」

 ずっと兄たちの荷物持ちだったオオナムチは驚くよりも兄たちを乗り越えてしまうことに尻込みしますが、白兎の熱いまなざしに、なけなしの男性力を振るいたてられヤガミヒメの住む気多の岬に向かいます。

 ここで考えるのです。

 白兎はオオナムチを優しく親切な男と慕わしく思っています。

 それならば、自分がオオナムチの嫁になればいいと思うのですが、そうはしません。

 それはね!

 白兎は指を突き付け、ズイっと顔を近づけて、わたしに抗議します。

「恩人のオオナムチには幸せになってもらいたいの! ヤガミヒメと結ばれたら、わたしなんかを嫁にするよりも、もっともっと幸せになるんだから! あえて身を引く白兎の心意気なのよ! 乙女の真情なのよ! 下衆な勘ぐりなんかすんじゃないわよ!」

「でもさ、白兎」

「なによ!?」

「オオナムチに幸せになって欲しいっていうよりも、八十神のアニキたちがフラれるために言ってない?」

「そ、そんなことないわよ(^_^;)!」

「だったら、白兎が嫁さんになってあげる方が、話としては素直だと思うんだけどなあ……」

「グ、そ、そんなこと思ってっから、捻りのないプアな小説しか書けないんじゃん!」

「キミってさ、サメを騙くらかして、こっちに渡ってきたところでしょ。こっちに来たってことは、なにか面白いことないかなあとかって気持ちでしょ。オオナムチはいい男だけど、なんか地味だし、こいつで手を打つにはちょっととか……」

「うっさい! だいいちね、古事記とか日本書紀のどこ読んでも因幡の白兎が女の子だってとか書いてないし!」

「え、白兎ってBLだったっけ?」

「んなわけないし! もう! うっさいうっさい! あっち行けヽ(`#Д#´)ノ!」

 

 ちょっと絡み過ぎました。

 しかし、そう絡んでみたくなるほど、それからのオオナムチの運命は過酷であったりするのです……

 

 

 

 

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ライトノベル・ベスト『オーマイガー!?』

2021-02-14 06:56:26 | ライトノベルベスト

イトベルスト
『オーマイガー!?』
    

 

 オーマイガー!?

 と、叫んだらしい……。

「Oh my Car!?」
 
 と、あたしは叫んだつもり。

「……無理にでもとは言わねえからな」
 気を悪くした伯父さんが間を空け、腕組みして言った。

 工場の天窓から、夏の日差しが、そのマイカーのお尻を照らしていた。
 あたしには、その日差しが、マイカーのお尻を溶かしてしまったように思えた。
「ううん、いいよ。気に入った!」
「それじゃ、これで、よく練習してからホンマモンのマイカー買えよ」
「うん、しっかり練習させてもらいます」
「じゃ、一応免許証の確認だけさせてもらおうか」
「はい、どーぞ」
 あたしはピカピカの免許証を伯父さんに見せた。
 伯父さんは、お祖父ちゃんの代からの自動車修理工場。半ば趣味で工場の片隅にポンコツともクラッシックともつかない、車が何台か並んでいる。昨日シャメを見せてもらって、これに決めた。
「円(マドカ)おまえセーラー服着て写真撮ったのか!?」
「だって、これ着てたんだもん。しかたないでしょ」
 あたしは、自動車学校の最終試験の日は学校帰りだった。で、その日に免許が交付されるなんて分かってなかったので、制服姿で免許の写真を撮るハメになったのだ……文句ある?

 で、あたしはお尻の欠けたようなホンダN360Zを運転して我が家に帰った。お尻が欠けている分、浄化槽上のネコのオデコほどの駐車スペースに、簡単にバックで入れることができた。
「あんた、前から見たらカッコいいのにねえ……」そう呟いて、家に入った。
「マドカ、あんな骨董品借りてきたのか!?」
 窓から見ていたんだろう、お父さんが目を剥いた。
「だって、前の方から見たらカッコ良さげなんだもん」
「あれも、純正だったら値打ちあるんだろうけど、兄貴がいじり倒したあとだもんなあ」
「いいの、かわいいから!」

 それから、夏休みの残りを、Zに乗って運転慣れした。
 乗り慣れて分かった事がある。確かにエンジンは換装されていたし、フロントライトは右と左で微妙に色が違ったり、ミッション系や足回り、内装など、あちこちいじり倒して、印象としてはフランケンシュタイン。
 
 あたしは、ファルコン・Zと名付けた。『スターウォーズ』に出てくる銀河系最速のガラクタと言われる宇宙船の名前。さしずめ、わたしは、それを操縦するレイア姫。
 慣れたとは言え、幹線道路を走っていると、車の小ささから、周りの車がジェダイの宇宙船や戦闘機のように思えてくる。また、道行くドライバーの人たちも。ファルコン・Zを驚嘆の目で見ていく。交差点で停まっていたりすると、シャメを撮られることもあった。
 ある交差点で停まっていると、アナキンが立っていた。正確にはアナキンに雰囲気そっくりな、うちの学校のEATのジョ-ジ先生。当然わたしは声をかける。
「ハーイ、ジョ-ジ!」
「……マドカ!?」
 というわけで、アナキンのジョ-ジが、光栄なるファルコン・Zの最初のゲストになった。
「かわいい、マンボウみたいな車だね……」
 アナキンは、そう評価した。実際のファルコン号も、ジョージルーカスが、ピザを食べているときにデザインを思いつき、「マンボウのようなフォルムにしよう」ということになったらしく、あながち的は外していない。
 アナキンのジョ-ジ先生は、学校でも憧れのマト。それを偶然とは言え助手席に乗っけた。こんな至近距離で、ジョ-ジといっしょになるのは初めて~♪
「マドカ、ライセンス取ったんだ!?」
「イエス、オフコース! で、この車ファルコン・Z!」
「ファルコン……?」
「正式には、ホンダN360Z。三十年前のクラシック」
「ワオ、ほんとだ」
 ジョージは、スマホで検索して喜んだ。
「ほんとに、お尻が無いんだ」
「でも、キュ-トでしょ?」
「うん、ク-ル。お礼にコーラあげるね」
 自販機で買ったばかりなんだろう、キンキンに冷えた500ミッリットルのコーラを、プルトップを開けてドリンクホルダーに置いてくれた。わたしが1/3飲んで、ゲップしてホルダーにもどすと、ジョージは平気で残りを飲んだ。
――ワア、間接キスだ!
「ジョ-ジ、どこまで?」
「ああ、今日は大学。自分の勉強ね」
 ジョ-ジは、ウチらの学校で英語のEATをやりながら、大学で勉強しているのは知っていた。でも、その大学までいっしょに行けるとは思ってもいなかった。うまくいけば、いっしょにランチぐらい食べられるかなあ……と妄想したりした。

 それは、いきなりだった。

 大学の駐車場に入ろうとしたら、学生の車が前から突っこんできた! ドライバーの学生はスマホで話ながら運転していて、こちらに気が付いていないことは、あたしたちの方からもよく分かった。
「ブレーキ、ターンレフト! オーマイガー!」
 ジョ-ジが、そう叫んで、わたしに覆い被さってきた。

 キーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 二台の車のブレーキ音……そして静寂……。
「マドカ、アー ユー オールライト?」
「……イエス、パーハップス……」
 ジョージに抱きかかえられるようにしてファルコン・Zから降りた。
 相手の車は、ファルコン・Zのお尻から、5センチぐらいのところで停まっていた……。
 お尻が無くてよかった。で、ジョージは、震えるわたしをずっとハグしていてくれた。
 なんだか、恋人のような感じさえしてきた。
「オールライト、オールライト……」
 ジョ-ジは、そう言いながらオデコにキスまでしてくれた。
 もう、あたしは心臓バックンバックン! ジョ-ジのバックンバックンも伝わってくる。まるで映画のワンシーンなのよね!

 ちょうど、事故の音を聞きつけて、ジョージの先生がやってきてくれた。
「いや、この車でよかったね。普通の車だったら、後ろを確実にぶつけて、ふっとばされてるとこだ……それから」
 あとの話が余計だった。
「こういう状況で、相手を好きになったら、そりゃ誤解だからね。そろそろ、二人とも離れた方がいいよ」
 それから、この先生は『吊り橋理論』を説明し始めた。
 吊り橋のように互いにドキドキを共有すると、恋愛感情と誤解することが多いらしい。
 あたしは、心の中でファルコン・Zに感謝すると同時に、この大学の先生を呪った。

 

 オーマイガー!!
 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・61『春奈の秘密・1』

2021-02-14 06:29:53 | 小説3

たらしいのにはがある・61
『春奈の秘密・1』
         


         

「春奈はどうして長崎から東京に来たの? N女程度の大学なら、九州にでもあるだろ?」

 バカな質問をする奴だと、二つ隔てたテーブルで、わたしと優子は思った。

 多摩自然公園で、スリープしていたC国のチンタオ型ロボットと戦って以来、美しい誤解でW大の宗司とN女子の春奈は急速に仲がが良くなった。
 池の中で溺れかけた春奈は、マウスツーマウスで人工呼吸をしてくれたのは宗司だと思っている。ほんの五秒ほどだけども、わたしは宗司にも人工呼吸をしてやった。で、めでたく宗司も春奈に人工呼吸したのは自分だと思いこんでいるというわけ。
――たしかに、宗司に人工呼吸してやったとき、宗司はなけなしの肺の空気を、春奈と勘違いしたわたしに送り込もうとした。その善良さにわたしは、倍の酸素を送ってやったけど、ロボットの目をかわすために、すぐその場を離れた――

 そして、意識の戻った二人に美しい誤解が生まれた。

「春奈ちゃんの東京弁聞いても分かるジャン。長崎の匂いはあるけど、あの子は、昨日今日東京に来た子じゃないよ」
「ワケありで長崎に行っていたことぐらい想像つかないのかなあ……」
 優子もため息をついた。
「宗司クンなら、話してもいいかな……」
「うん、なんでも相談に乗るよ!」

 宗司は身を乗り出した。その拍子に、テーブルの下で自分の膝が、いっしゅん春奈の膝の間に割り込んだ。慌てて二人は身を引いて、カップやグラスがガチャガチャ音を立てる。アイスコーヒーのグラスは落ちて粉みじんになるところだったけど、優子が反射的にテレキネビームで防いでやった。

 このあと、とても大事な話が出る予感がしたのだ。

「わたし、去年の夏までは東京にいたの。親の都合で田舎の長崎に……宗司クン。いっしょに付いてきてくれる?」
「う、うん」
 
 全然説明不足な春奈の説明に宗司は二つ返事でOKした。

 駅を降りると、春奈と宗司は成城の中心に向かって歩き出した。
 さすがに、春奈もポツリポツリと事情を説明する。

「お父さんとお母さんは別居してるの……お母さんの実家がある長崎に。わたしは生まれも育ちも東京だから……」
「やっぱり、慣れたところがいいもんな。それで東京のN女に?」
「……うん、まあ、そんなとこ」
「そいで、今日は久々にお父さんに会うって?」
「うん……」

「スーパーと料理に関しては大したオタクだけども、こと女心については、小学生並みだね」
「イケてるミニスカートとチュニックの組み合わせ、ありゃ、元気に明るく女子大生やってますって背伸びだよ。無理してんね。それぐらい分かれよな、ボクネンジン!」
 優子も辛辣だ。
「せめて、デートってか、彼氏らしく決めてこいよな。ジーンズにスニーカー……春奈の気持ちぐらい分かってやれよ」
 二百メートル遅れて歩きながら、わたしと優子はぼやきっぱなしだった。
「ここ……」
「す、すっげー……!」

 さすがのボクネンジンでも、それが、並のマンションでないことぐらいは分かった。大スターか、一部上場企業のエライサンでなければ手の届かないシロモノだ。春奈は慣れた手つきで、エントランスの暗証番号を押して監視カメラに向かって手をふった。
――はい、川口ですが。どちらさまでしょう?――
 知らない女の声がして、春奈はうろたえた。
――あ、あ、春奈か(;'∀')。今エントランスを開けるから、ロビーで待っていてくれ――

 しばらくすると、五十代前半のオッサンが、つまり春奈の父親が降りてきた。

「春奈。言ってくれたら迎えにいったのに。リニア東京からだとくたびれただろう」
「ううん、わたし東京のN女子に通ってんの。あ、彼、BFの高橋宗司クンW大の二年」
「高橋です。どうも、こんなナリで失礼します」
「わたしが気まぐれで、付き合わせたから、仕方ないのよ」
「W大か、なかなかだね。専攻はなんだね」
「あ、一応理工です」
「ハハ、一応ね」

 五十メートル離れた道の角で、優子とわたしは怒っている。ポケットの名刺のIDをチェックすると、M重工のエライサンだということが分かった。国防軍用のロボットの大半を請け負っている大企業だ。

「わたし、自分の部屋が見たい」
「あ、ああ、上がんなさい。君はここで少し待っていてくれたまえ」

 わたしも優子も悪い予感がした……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
  • 木下くん       ねねと優奈が女子大生に擬態生活しているマンションの隣の住人
  • 川口 春奈      N女の女子大生 真由(ねねちゃんと俺の融合)の友だち 
  • 高橋 宗司      W大の二年生   


 

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