大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・190『留美ちゃんが「うん」と言わないわけ』

2021-02-05 09:48:54 | ノベル

・190

留美ちゃんが「うん」と言わないわけヨリコ  

 

 近くに駐車場があるから!

 御料車は一般の駐車場には停められません。 

 わたしの願いはジョン・スミスの涼しい顔に一蹴された。

 領事館の公用車はトヨタのワンボックスなんだけど、わたしが乗るのはお婆さまの命令で去年の暮れからロールスロイスのファントムになっている。レクサスよりも縦100センチ、横50センチも大きくて並みの駐車場では収まらないらしいことと、車がセレブ過ぎて断られるかららしい。

「どうして?」

 と聞いたら。

「王族がお乗りになるのは、正式には御料車と申します。公用車は殿下が常にお乗りになるには相応しく無いのです」

 総領事が涼しい顔で答える。

 要は、わたしがホイホイ出歩かないための策略。御料車を使う時は、あらかじめ目的地の警察署にも届ける。これ、最悪のルール。事前に警察が配備されるし、関係機関への連絡も行われる。

 そんなわけで、単に図体が大きいという理由だけでなく、一般の駐車場は使いにくい。

 しかたなく、如来寺の山門脇から入る。

 並の車なら三台は停められるスペースを独占してドアを開けると、如来寺の人たちだけでなく、檀家やご近所の人たち、振り返ると山門の外にはお巡りさんまで交通整理をし始めている。ほとんど嫌がらせ(^_^;)

「留美ちゃん、良かったあ!」

 さくらと並んでいる留美ちゃんを見つけると、人目も構わずにハグしかけるんだけど、あと50十センチというところで、磁石の同極同士が反発するように距離を取った。

 ソーシャルディスタンスの取り方も、御料車で来ると、めちゃくちゃ気を使う。

 いつもなら、部室とかリビングで話すんだけど、ソーシャルディスタンスのために本堂の外陣に収まる。

「いっしょに住むのをためらってやるんです……」

「……………」

 如来寺のみなさんは、善意と勢いで留美ちゃんを連れ出すことには成功したけど、ここにきて留美ちゃんの気持ちを覆せないでいる。

「だって……そこまで甘えるのは……」

「甘えるんとちゃう、困った時は助け合うのがお寺やねんで」

「でも、わたし檀家じゃありませんし……」

「阿弥陀さんは、そんな区別はせえへん。いらん遠慮はせんとき」

 テイ兄ちゃんがお坊さんらしく諭している。

 さくらと詩(ことは)さんが優しく、でも、ちょっと疲れた顔で、それでも姿勢を正して座っているのは、アミダさまの前だからかもしれない。

「わ、わたし、寝言とか歯ぎしりとかひどいですから」

「部屋は別にするから平気よ」

「えと、たまに夢遊病の発作が……」

 ウソだ、エディンバラやヤマセンブルグ、国内でも泊まり込みで除夜の鐘を撞いたり、留美ちゃんに、そんな癖がないことは、みんな知っている。

 悪い子じゃないから、不愛想に黙りこくってしまうことはしない。でも、それだと、同じ繰り言を言葉を変えて繰り返すだけになり、なんとも空気が重い。

「あの、文芸部だけで話していいですか?」

 卒業したわたしが文芸部を名乗るのはおこがましいんだけど、わたしは三人で話すのが一番だと思った。

「うん、せやね。ちょっと空気を変えた方がええかもしれへんね」

 テイ兄ちゃんが同意してくれて、さくらと三人、本堂裏の部室に移動する。

 キャ!

 コタツに足を突っ込むと、グニュっと何かに当って声が出る。

「あ、ダミア」

 さくらが引っ張り出したダミアは、記憶の中のそれより倍の大きさになっている。

 フニャ~

 一声あげて、三人の顔を順繰りに見て、なぜかわたしの膝に乗って再びコタツに潜る。ヨイショっと顔だけ出して、哲学者みたいに目をつぶる。

「わたし、お母さん以外の人と住んだことないから……その、プレッシャーなんです」

「そんなの、すぐに慣れるわよ。如来寺のみなさん、文芸部は身内みたいに思ってくださってるし」

「それは、みたいなわけで……」

「留美ちゃん……」

「そんな他人行儀なこと言われると、寂しいやんか」

「ごめん、でも、えと……起き抜けの顔って、わたしひどくて……」

「それは、さくらの方がひどいってか、おもしろいよ。何度も、いっしょに寝泊まりしたし」

「はい、あの……お洗濯ものとか、とっても気になって……」

「そんなん、気になれへんよ。うちは、女もんは別に洗ってるし、なんやったら、洗濯べつに……」

「あ、いや、そんなことじゃなくて(-_-;)、えと……えと……」

 留美ちゃん、断る理由を探してるんだ、これだと、どこまでいってもいっしょだ。

 いったい、なににこだわってるんだろうか?

 さくらも似たような気持ちなんだ、ちょっと俯いてしまった。

 親友に、そんな気持ちにさせることがたまらないんだろう、留美ちゃんもまつ毛の先に涙の粒を宿らせて黙ってしまう。

 フニャ~

 間抜けた声をあげっると、再びダミアはコタツに潜ってゴソゴソしたかと思うと、今度は留美ちゃんのところに顔を出した。

 ノソノソと這い上がって、まつ毛を伝って頬っぺたに下りてきた涙をペロペロ舐め始める。

「わたし、わたし一人……わたし一人が、楽したら、楽になったら……お母さんが死んじゃうんじゃないかって、恐ろしくて、怖くって……」

「留美ちゃん?」

「そうだったんだ……」

 留美ちゃんは、お母さんといっしょに苦しまなければバチが当たるような気になっていたんだ。それでも、一人で暮らすことへの不安とか心配とかがあって身動きが取れなくなって、意味不明の遠慮ばかりしていたんだ。

 わたしとさくらが分かってしまうと、留美ちゃんはダミアをダッコしたまま顔をうずめて嗚咽した。

「今夜は、わたしも泊めて」

「先輩……」

「久しぶりに文芸部の合宿しよう」

 ニャ~

 さて、どうやってジョン・スミスと御料車を返すか?

 

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誤訳怪訳日本の神話・23『因幡の白兎・1』

2021-02-05 06:33:00 | 評論

訳日本の神話・23
『因幡の白兎・1』    

 

 八十神(やそがみ)と言っても八十人の神さまというわけではありません。たくさんの神さまという意味です。

 で、八十神はオオナムチ(オオクニヌシ)の兄たちです。

 悪い神さまたちで、末っ子のオオナムチに大きな袋(自分たちの荷物)を持たせて因幡の海岸を急いでおりました。

 なんで急いでいたかと言うと、因幡のヤガミヒメという女の子を口説きにいくためです。

 

「アニキ、因幡にヤガミって可愛い子がいるってさ、いっちょ突撃してみねーか?」

「お、まぶい女の話か! よし、そーいうのは機会均等の精神だぜ、兄弟くり出して行こうじゃねーか!」

「じゃ、手荷物はオオナムチに持たせてやろーぜ!」

 こんな感じですなあ、

 

 八十神たちが因幡の海岸にさしかかると、皮を剥かれて赤裸になった兎がウンウン唸って転がっておりました。

 

「なんで、こいつ赤裸?」

「いっちょ、からかってやろーぜ」

「おい、ウサギ、その赤裸は辛いだろ。俺たちゃ心優しい八十神さまたちだ。治療法を教えてやるぜ」

「あ、ありがとう、このままじゃ身動きもできず、この海岸で衰弱死するところでした。その、治療法とは?」

「それは簡単なことだ」

「「「「「「「「「「「「「「「「そーそー」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「海水に浸かってな、寝っ転がってお日様で乾かせば元にもどるぜ」

「「「「「「「「「「「「「「「「そーだそーだ」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 ウサギは言われた通りに海に浸かって、八十神たちは笑いをこらえながらヤガミヒメの家を目指します。

「こ。これは……図られたか!?」

 海水に浸かってお日様で乾かしたウサギは地獄の苦しみです。

 日光で乾いた皮はツッパラかって、あちこちで裂けてしまいます。そこに海水の塩分が浸みこみます。

「く、くそー! い、痛い~痛いよー! いっそ殺せえええ!」

 そこにオオクニヌシが大きな袋を背負って現れます。

「いったい、どうしたんだ!?」

「は、はい……じつはかくかくしかじか……なんですよ~(´;ω;`)」

「……それは可哀そうに、わたしが、本当の治し方を教えてあげよう」

「そういう、あなたは?」

「オオナムチっていうんだ」

「オオナムチ…………」

「あ、おまえ、いま漢字に変換しただろ!?」

「え、あ、いえいえ、とんでもない!」

 ウサギの顔には「大な無知」の四文字が点滅している。

「まあ、いい。いいかい、急いできれいな水で洗って蒲の穂を敷き散らした上でゴロゴロ転がって花粉を身にまぶすんだ」

「えと……なんか、そのまま油で揚げたらウサギのフライになりそうな(^_^;)」

「大丈夫だって。おまえ……やっぱり漢字に変換しただろ?」

「いえいえ」

「仕方のない奴だ、治るまで付き合ってやるから、それでいいか?」

「あ、ま、それなら(〃´∪`〃)」

  かくして、オオナムチ付き添いのもとで言われた通りにやってみると、完全に元の白兎に回復したのでした!

「ありがとうございます、やっぱ、オオナムチさんの言うことは正しかったです! 感謝感激ですううう!!」

「それは、よかった。じゃ、そろそろ行くよ」

「あ、いましばらくお待ちください!」

 

 オオナムチを引き留めたウサギは、ある予言をするのでした……。

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妹が憎たらしいのには訳がある・52『拓磨!?』

2021-02-05 06:21:22 | 小説3

たらしいのにはがある・52
『拓磨!?』
         

 


 事件は、その日の放課後におこった……。

「……道が違わない、拓磨クン?」
「下水道工事で、いつもの道は通られへんみたいや。外環に出て、ちょっと大回りするわ」

 たしかに、カーナビには工事中通行止めのサインが出ていた。回覧板の記録と照合したが、隣の町内のことなので記録がない。半信半疑のまま助手席に座り続ける。
 交差点を左折して妙な振動を感じた。道路は平坦なのに、体の感触は僅かに車が乗り上げた感触。 そして緩い坂になり、すぐに車は停車した。
 窓から見える景色は外環を外れた国道〇号線のそれだ。左側にはコンビニ、右側は回転寿司と焼き肉チェーン店。ときどきパパと来る店だ。

 拓磨がドアを開けて車から転がり出た。わたしはシートベルトを外すのに0・5秒遅れた。

 車から出て驚いた……そこは大きな倉庫の中だったのだ。

「窓ガラスに、ダミーの映像をかましたのね」
 倉庫の割に声が響かない。高度な吸音処理が施されているようだ。
「おまえが、こっち側のねねちゃんかどうか、確かめたかったんでな」
「……拓磨……義体なの?」
 拓磨が、あいまいに笑うと、後ろのフォークリフトがガシャガシャ動きだし、三秒ほどでロボットに変身した……おそらく、祐介を取り込んだロボットだ。わたしは、程よく驚いておいた。
「ユースケ?」
『ああ、潜入させておいたねねかどうか確認したいんでな』
「リンクすれば済む話でしょ」
『普通ならな。だけど、敵も味方も技術が向上している。現に、おまえは拓磨が義体だとは見抜けなかっただろう』
「それくらいは言ってくれてもいいんじゃない。CPがバグりそうよ」
『そんなタマか、もし、おまえがこちら側のねねならな。それに……』
「なによ」
『里中のところで上手くいきすぎている。あの里中が全く気づかないのが不自然だ。じゃ、確認しようか』

 拓磨の義体が迫ってきた。

「ちょっと乱暴だが、辛抱してくれよ……!」
 拓磨とは思えない敏捷さで襲いかかってきた。その時点で、この義体のスペックは分かったけど、知らないふりをした。二度跳躍したところで、右手首のグレネード銃を解放し、至近距離で拓磨の頭を粉砕した。拓磨は首のないまま、二三歩前進し、ドオっと倒れた。
「義体のスペックは高いようだけど、戦闘能力はスタンダードね。さ、早いとこ情報交換しましょう。ケーブルを寄こして」
 すると、後ろから急に羽交い締めにされた。首のない拓磨が、わたしを締め上げてきたのだ。
『そいつのCPは、胸にある。タクマ、うちのねねなら、胸骨の鳩尾のところが本物のコネクターだ』
 首無しタクマは、下着ごと制服の前を引きちぎり、わたしの胸を顕わにした。ケ-ブルが伸びてきて、鳩尾のところでコンタクトされた。

 一瞬意識が飛んだ。

『間違いない、うちのねねだ。里中は入れ違っていることには気づいていないようだな』
「それを確認するためだけに、こんなことしたの?」
『ああ、これがオレのやり方だ』
 わたしは、解放したままの右手首のグレネード銃で、タクマの胸に風穴を開けた。タクマは仰向けに倒れ、完全に……クラッシュした。
「これが、わたしのやり方。義体でもセクハラは死刑よ!」
『その右手首の傷の言い訳を、考えなきゃな』
 内蔵のグレネード銃を使うときは、手首を270度曲げ、銃口を出す。そのために生体組織である皮膚は、破れて傷になる。現にブラウスの袖口は血に染まっている。
「恋に破れてリストカット……笑うことないでしょ。正直に言うわよ。あんたたち不貞グノーシスと出会って、遭遇戦になったって……なにすんのよ!」
 一瞬バレたかと思った。ユースケのレーザーがスカートごと、わたしの太ももをかすめた。
『遭遇戦をやっていたら、これぐらいの傷はあったほうが自然だろう……』

 それからユースケとは、ケーブルをつないで情報をやりとりした。

 反乱組のグノーシスの全容が分かった。
 そして、ユースケの攻撃方法も。
 合理的ではあるが、残酷な方法であった。どうも、優奈を、あんな形で失ったことのショックが反映されているような気がする。数秒で三百回ほどシュミレーションをやって、一番人を殺さずに済む方法を二人で考えた。むろん、わたしの作戦はユースケを信用させるためのダミープラン。だが、ある線までは、ユースケと行動を共にしなければならないことも覚悟した……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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