大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・11『滅鬼 メッキ』

2021-02-06 09:55:38 | エッセー

 エッセーノベル    

11・『滅鬼 メッキ』   

 

 

 滅鬼の刃とは、流行りのアニメに便乗した安直なオヤジギャグのようなタイトルですなあ。

 始めるにあたっては、パクリのそしりを受けるだろうと思いながら、あえてそのままにしました。

 わたしの人生そのものが、どこかパクリでうさん臭くて、それなら第一印象パクリの『滅鬼の刃』で上等とした次第です。

 滅鬼とはメッキと読みます。

 わたしが、あれこれ考えたり考えの結果としての駄文はメッキであります。本を読んだり人の話を聞いたりして、自分の考えとか感性だとか思い込んでいるものがほとんどであります。

 なんだかいいことめいたことを書いても、ああ、こいつの書いていることは所詮メッキなんだと思っていただいたほうが気楽だという、あらかじめの言い訳であります。

 もう一つの意味は、自分の中に住み着いた鬼を、人目に晒すことで滅ぼす……まではいかなくても、弱らせることができたらという意味があります。

『山月記』という小説があります。戦前、中島敦という人が書いた小説で、自分の中の虎(鬼と同義だと思います)の始末に困って、本当の虎に変身してしまい、あやうく旧友を食い殺しそうになるというお話です。

 中島敦ほどの学識も知恵も無いのですが、まあ、そういうベクトルなのだと思っていただければ幸いです。

 

 第三回で日の丸について書きました。

 

 昭和四十年くらいまでは、正月とか祝祭日に日の丸を掲揚する家が多かったように思いますと書きました。日の丸の掲揚をしなくなったのは、日の丸はファシズム大日本帝国の象徴であって、国の内外に及ぼした戦争の災禍の反省をしないままに大日本帝国の象徴を掲げるのは間違っているという風潮というか空気が社会に蔓延したからであります。

 当時の大人たちは(MT世代)は日の丸を目の敵にするバカバカしさを肌感覚で知っていましたが、戦後20年。戦後生まれが成人し、戦時中にひどい思いをさせられた軍国少年少女たちは三十歳を超え、日本社会の正面に立つようになってきました。この若者たちが、ザックリ言って、コミンテルン(当時はコミンフォルム)やリベラルの影響で、戦前の日本を丸ごと悪者と断じて、その象徴としての日の丸をまさに親の仇にした観念の現れでした。

 戦後の十年で江戸時代の百姓一揆の数を上回る労働争議がありました。労働争議の場では必ず赤旗が林立しました。組合旗やスローガンの横断幕も、大方は赤地であったように記憶しています。

 通っていた小学校の向かいが府立高校で、年に一二度校門の両脇に赤旗が掲げられ、高校というのは赤組しかおらへんねやろかと、赤と言えば体育の時の赤白帽しか知らない小学生は思いました。

 こういう社会環境の中では、なかなか日の丸は揚げられません。

 でも、日の丸を厭う気持ちは、どこかメッキめいていると感じます。

 職場の学校で卒業式・入学式の日の丸掲揚が問題になった職員会議で、掲揚に反対する意見に反対して、わたしは、こう発言しました。

「沖縄が復帰する前、当時琉球政府の主席であった屋良朝苗(やらちょうびょう)氏が復帰のことで本土に渡られた時、沖縄には本土復帰に向けて掲げる日章旗が足りなくて困っていると言われ、日本中から日の丸が集まったことがあります。屋良氏は本土で日の丸が粗末に扱われているので驚いたという話もなさっています」

 そう述べますと「屋良さんは、復帰闘争の道具として日章旗を求めておられるのであって、日の丸と、それに象徴される日本を許しているわけではない」と組合の先生から反論をくらいました。

 ちょっと唖然としました。

 わたしの理屈も元はメッキなのですが、組合の先生のはわたしの百倍もありそうなメッキでした。

 天皇制というのは、元来は共産党用語なのですが、当時は普通名詞だと思って使っていましたので、当時の空気感で語りたいので天皇制と書きます。

 天皇制を無くして共和制にしなければ、日本の真の民主化は成し遂げられないという、分厚いメッキでありました。

 日本史を教えていた割には日本史の授業は嫌いでした。授業中は寝ているかノートに落書きをしているかでしたので。テストも欠点ギリギリしか点がとれません。

 日本史は独学でした。

 中央公論の『日本の歴史』から始まって、司馬遼太郎を始めとする歴史小説ばかり読んでいました。岩波歴史講座も全巻持っていましたが、面白くないので、ほとんど読んでいません。

 二千年の歴史の中には、並の国家なら分裂したり消滅したりする恐れのある危機が何度もありました。

 出雲や九州勢力との対立 平将門の乱 摂関政治末期 鎌倉幕府の滅亡 室町幕府の滅亡 戦国時代 明治維新 大東亜戦争敗戦……などなど。

 この時、日本が滅んだり分裂しなかったのは天皇制があったからです。世俗の権力(幕府や政府)が力を失ったり滅亡した時、我が国は天皇の元にまとまって、新しく世の支持を受けた権力に正統性を与えます。

 日本史を冷静に見て振り返るなら天皇制、正しくは皇室の存在と皇室にたいする日本人の畏敬が柱だと言えます。

 司馬遼太郎氏だったと思うのですが『日本史の思い出し現象』と述べておられます。新しい権力が生まれる時に『天皇』という古い権威を思い出し、それを立てることによって、権力の正当性を保証するのです。思い出し現象というおとぎ話めいた言葉を使っておられますが、要は天皇制でなければ日本は成り立たないということをおっしゃったのだと思います。

 つまらないメッキが戦後の長きにわたって、この日本人の冷静さを覆ってきましたが、メッキはメッキ、ようやく剥げてきたかと感じる今日この頃です。

 すみません、なんだか硬い話になってしまいました(^_^;)。

 次は、もっと柔らかいメッキの話をしたいと思います。

  

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誤訳怪訳日本の神話・24『因幡の白兎・2』

2021-02-06 06:31:40 | 評論

訳日本の神話・24
『因幡の白兎・2』    

 

 

 

 腹いせで言うんじゃないけど、八十神たちは全員ヤガミヒメにふられっちまうよ。

 

 傷の癒えたウサギは真顔で言いました。

「そうなのか?」

「そうだよ、通りすがりウサギをこんな目にあわせるなんて根性が歪んでる証拠だよ。そんな根性悪にヤガミヒメが『うん』と言うわけないじゃないか」

「じゃ、ヤガミヒメは誰とだったら『うん』と言うんだい?」

「それは、オオナムチ、あんただよ」

「え、ぼくが(^_^;)!?」

「さあ、あたしはもう大丈夫だから、ヤガミヒメのところに行きなよ!」

 ウサギに背中を押され、先を急ぎ、総スカンをくった兄たちを尻目に告白して、目出度くオオナムチはヤガミヒメと結ばれました。

 めでたしめでたし……。

 これが記紀神話の『因幡の白兎』に関わる凡その記述です。

 

 ここから筆者の妄想であります。

 

 白兎は、ちょっと小悪魔的なツンデレ美少女に違いありません。

 そもそもウサギがサメたちに赤裸にされたのには理由があります。

 元は隠岐の島にいたウサギなのですが、対岸の島根鳥取の方に行きたくて仕方がなかったのです。

 そこで、サメたちに提案します。

「あたし、身内ってか親類がすっごく多いのよ。親類の多い動物って優秀だって言うわよね。あんたたちサメはどうなのよ?」

「俺たちだって、親類は多いぜ! 優秀なんだぜ! ウサギの何倍も優秀なんだぜ!」

「へー、そうなんだ。だったら、いつか比べっこしようじゃないか」

「そうだ、いつでも立ちあってやるぞ」

 サメたちは口々にサメ族の優位を主張します。

「いつなんて言ってちゃダメよ。本当に多いんなら、いま集めてみなさいよ」

「い、今からか?」

「おう。じゃ集合かけてやらあ。みんな集まれえ!」

 呼びかけに応じて、隠岐の海辺にたくさんのサメが集まります。

「おお、たくさん集まったわね!」

「どうだ、おどろいたか?」

「う~ん、でもさ、国会前に集まるデモも『主催者発表』で何万人とか言うけど、実際は三千人ほどだったりするのよね……」

「だったら数えてみろよ!」

「そっか、だよね。だったら、向こう岸の因幡の方に向かって並んでみてよ、数えてあげるから」

「よし分かった!」

 サメたちは横一列に並んで、ウサギが、その上をピョンピョン跳んで数えます。

 あと何匹かで因幡の岸に着くところで、ウサギは呟いてしまいます。

「サメってバカだよね。あたしは、向こう岸の因幡に行きたかっただけなんだよね。それをまんまと騙されてやんの」 

「テメー、俺たちのこと騙しやがったなあ!」

 うっかり呟いたのが聞こえてしまい。ウサギは怒りまくったサメたちによって皮を剥がれて赤裸になってしまったのです。

 

 この部分を前説に書いておくと、八十神たちの意地悪は因果応報ということになって、納得のおとぎ話になります。

 たぶん、それぞれ独立した教訓的な話だったのでしょう。

 そんな小悪魔的なウサギでも治療法を教えてオオナムチは助けてやり、その優しさがあるのでヤガミヒメを獲得することに読者はめでたしめでたしと頷くのでしょう。

 

 高校生になって太宰治の『カチカチ山』を読みました。

 ウサギは、月の女神アルテミスにも比肩される美少女で。中年のオッサンタヌキが無謀にも惚れてしまいます。

 ウサギは、タヌキごときが自分に惚れるのが許せなくて、さんざん意地悪をします。

 タヌキに薪を背負わせてカチカチ山に差しかかったところで、タヌキの薪に火をつけて大やけどを負わせます。

 洞穴の巣でウンウン唸っているタヌキに薬売りに化けて「火傷によく効くから」ということでカラシを渡します。

 カラシを火傷に刷り込まれたタヌキは、再び死ぬような苦痛を味わいます。

 そして、最後はタヌキを騙して泥の船に乗せて川に沈めて殺してしまいます。

 泥が溶けて水中に投げ出されたタヌキは泳げません。「た、助けてくれえ!」 溺れるタヌキをウサギは櫂を何度も振り下ろしてブチ殺してしまうのです。

 断末魔のタヌキは叫びます。

「惚れたが悪いかあ!」

 最後の一撃でタヌキが沈んでしまうと、ウサギは額の汗を拭って一言呟きます。

「ほ、ひどい汗……」

 このウサギと共通する小悪魔性というか底意地の悪さを感じるのは、過去に何度もタヌキと同類の経験があるからかもしれませんなあ(^_^;)。

 太宰の『カチカチ山』を読んだ後、久しぶりに『因幡の白兎』を読んで溜飲が下がった昔を懐かしく思い出すのでありました。

 

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妹が憎たらしいのは訳がある・53『ねね 家に帰る』

2021-02-06 06:11:24 | 小説3

たらしいのにはがある・53
『ねね 家に帰る』
         

 

     

 

 ユースケは国防軍の戦闘指揮車に変態して送ってくれた。

「先ほど連絡した国防軍の者です。お嬢さんをお連れしました」
 インタホン越しにロボット兵が申告する。ついさっき、ねねが破壊した拓磨の義体からでっちあげたリモコンの兵士だ。むろん操作をしているのはユースケである。
「世話になった、そこからは娘一人で来させてくれ」
「は!」

「一応スキャニングする」
「はい」
 里中副長は、スキャニングのボタンを押した。玄関そのものが、スキャナーになっている。
「オールグリーン。本物のねねだな」
「今日は疑われっぱなし」
「だいぶビビットなコミュニケーションだったようだな」
「おかげで……」
 ねねは、首筋のコネクターと、父のブレスレットアナライザーとをケーブルで結んだ。
「……国防省の中枢に100人ほどか。AGRとは別の動きだな」
「こっちのグノーシスでヘゲモニーを握りたいみたい。最終的にはサッチャンが完全に起動する前に破壊して、向こうの世界との連結を切断、何十年か独自の発展を図るつもりみたい。なんせ、向こうは極東戦争を相当こじらせているみたいだから、向こうのグノーシスにも、かなりシンパがいるみたいよ」
「厄介だな。とりあえずは、そいつらを潰さなきゃならんか……辛いだろうが、しばらくは味方のフリをしなくちゃいけないんだな」
「鳩尾にコネクターがあるとは思わなかった。幸いディフェンサーが、ここにあるから、出力を押さえてコネクターの代用にしたけど。その間、わたしは完全に無防備。トンカチの一発でおだぶつだった」
「じゃ、急いで、コネクターを付けよう」
「えー、また体を切り刻むの。わたし一応女の子なんだけど」
「なあに、ほんの5ミリほど切るだけだよ。ねねの体なら三日で快復する。さあ、胸を見せて……」
「ついでにさ、胸のサイズDカップにしてくれないかなあ。Cでもいいわよ。体育の着替えのときなんか肩身がが狭くってさ」
「う~ん。ねねの体格とDNAなら、このサイズだ」
「でもさあ!」
「どうも、太一の心をインストールしてから変だぞ」
「あ、それって太一のこと変態って言ってるようなもんだよ。今のわたしの心の半分は太一なんだからね」
「悪い意味じゃない。オレも、こういうねねは嫌いじゃないからな」
「もう、ごまかして!」
「ハハハ、若いころのママそっくりだ」
「懐かしむのはいいけど、胸揉むの止めた方がいいよ。なんだか変態オヤジみたい……」

 バカみたいな会話だったけど、あとの戦闘で振り返ると、とても懐かしい思い出になった。サッチャンだって、こういう機能……いいえ、心を持っているんだから解放すればいいんだろうけど、あの子の回復には、二つのパラレルワールドの運命がかかっている。今のサッチャンの頭には優奈って子の脳細胞が入っている。それで、サッチャン自身が心を解放しなくても、人間らしい感情を表現できる。でも、その表現は優奈の心なんだよね。優奈も太一のことが……いけない、わたしの心の半分は太一だ。考えただけでドキドキする(^_^;)。

 それにユースケもかわいそう。

 だって、優奈が太一のこと好きだって分かってたから、自分の気持ちは殺したまま目の前で優奈が酷い殺されかたして、その悲しさと恨みを抱えたままイゾーってロボットにとりこまれて。だから、せめて、あのロボットのことはユースケって呼ぼう。そして、みんなが救われるような道を必ずさぐるんだ。

「ねね、なに泣いてるんだ?」

 気がつくと、パパは、鳩尾のコネクターの取り付けも傷の縫合も……メンテナンスまでやってくれていた。パパにしてもらったのは久しぶり。頬が赤くなる。パパはきまり悪そうにドレーンを巻きながら部屋を出て行った。手にした使用済みの洗浄液は真っ黒だった。ここまで痛めつけていたことを、自分でも知らなかった。

「おやすみ、パパ」
「あ、ああ」

 人間になりたい。

 そんな気持ちが湧き上がってきて、頭から布団を被った……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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