大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・199『堀越を救う』

2021-02-26 09:19:05 | 小説

魔法少女マヂカ・199

『堀越を救う』語り手:マヂカ    

 

 ドコン!!

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……!!

 

 突き上げるような衝撃がきたかと思うと、車両は左に傾き振動したまま金属を捩るような音をさせて走った!

 キャーーー! ウワーーー!

 悲鳴と衝撃は永遠に続くのかと思ったが、実際には十秒そこそこのものだろう。

 車両は進行方向左側に傾いて停まった。

 わたしは手すりやフックに掴まって耐えた。

 ブリンダは正面の堀越に覆いかぶさるようになっていて、自分の上半身、主に胸でもって堀越と堀越の膝の上に倒れ込んできた霧子を庇っていた。

 ブリンダ……!?

 すまん、抜いてくれ。

 思念で会話した。

 後ろの網棚から飛び出したんだろう、植木鋏が二本突きたって、足もとには口の開いた鞄が、他の散乱物と一緒に転がっている。

「あ、商売道具が……」

 職人の親方風が鞄を拾って、わたしが抜いたばかりの植木鋏を仕舞っている。ブリンダが庇わなければ、堀越の胸に突き刺さっていただろう。

「ダイジョウブですか?」

「あ、ああ、これはすみませんでした! だ、大丈夫のようです」

「あ、わたしこそ……」

 ブリンダが声をかけると、堀越は状況を理解して、頬を赤らめて礼を言う。霧子は堀越に助けてもらったと思って、これはこれで赤くなっている。

「大丈夫?」

「気を付けろ、これだけじゃ済まない」

 小さく聞くと、恐ろしい返事を返す。気が付くと、禍々しい空気が密度を増している。地震による気の乱れ……だけではない剣呑なざらつきがある。

「地震の事じゃないな」

 小さく頷くと、ブリンダは進行方向の右側を目で示した。左側には出るなということだろう。

 通路を通ってデッキから外に出る。

「いやあ、これは……」

 堀越に、後の言葉は無かった。

 あちこちで家が倒れ、時間が昼前であったこともあって、数か所から火と煙が上がり始めている。

 ゲシュタルト崩壊だろう、軌道上に出た乗客たちは、呆然と震災直後の惨状に目を奪われるばかりだ。

「おい、手を貸してくれ!」

 車両の中から声が上がる。取り残された負傷者がいるようだ。

「おーーい、こっちにも来てくれ!」

 前の方からも声がかかる。

「機関士が閉じ込められてしまったぞ!」

 堀越は、瞬間悩んで機関車の方に向かおうとする。

「そっちは、向こう側に任せましょう」

「あ、ああ」

 ブリンダは、車内を促した。機関車の方には事情がありそうだ。

「医者か看護婦はいないか!?」

 車内から声がかかる。動かせないケガ人がいるようだ。

「わたしたち、心得があります」

 ブリンダが手を挙げる。魔法少女は白魔法だけでなく医療の心得もあるのだ。

「堀越さん、ここで救助の指揮を」

「心得た、とにかく怪我人を搬出して避難することだね」

「霧子さんも手伝って、真智香さんは堀越さんといっしょにいらして」

「了解」

 ブリンダが戻り、堀越が搬送の指揮を執ると、他の乗客も正気を取り戻して救助や避難が進んで行く。

 グワァッシャーン! 

 ウワアア!

 前方で衝撃と悲鳴が起こる。

 微妙な傾斜で停まっていた機関車が転覆したんだ。堀越が向かっていたら危なかったかもしれない。

 視界の端を、さっきの親方風、一瞥をくれたかと思うと、数人の男女と共に築堤の高架を下りていく。

 空気のざらつきが消えて、震災直後の疲弊と慄きに震える空気だけが残った。

 

 一通りの救助と避難を済ませると、わたしたちは凌雲閣の地下にテレポした。

 

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

 

 

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真凡プレジデント・5《コロッケで乾杯》

2021-02-26 06:43:16 | 小説3

プレジデント・5

コロッケで乾杯》       

 

 

 ジャージ姿でコロッケを買いに来るようなお姉ちゃんじゃなかった。

 

 女子アナというのは半分タレントみたいまもので、いつもパリッとして、颯爽としていた。

 月に二度は美容院に通って磨きをかけ、そのグレードを維持していた。

 もともと磨きなんか掛けなくても――美姫ちゃんは違うねえ!――と、子供のころから評判だった。

 美姫って名前が凄いでしょ!?

 だって、美しい姫ですよ!

 栴檀は双葉より芳しの例えどおり、生まれた時からすごかったらしい。初孫というアドバンテージもあったんだろうけど、お爺ちゃんが新生児室での初対面で――この子は絶世の美人になる!――ことを見抜いて『美姫にせい!』と決めてしまった。

 所帯を持つにあたって経済的に絶大な支援を受けていた両親は、あっさりと承知した。

 結果的にお祖父ちゃんの予言通りの才色兼備が当たり前の女子アナになったので文句の有ろうはずもない。

 

 その十年後に、同じ新生児室で、わたしを見たお祖父ちゃんは、しばしの沈黙の後に、こう言った。

「人生平凡が何より、平凡の内に身を立てられる子になればいい」

 そうのたまわって真凡とつけた。

 まあ、事実だから仕様が無いんだけども、折に触れて言われるのは、ちょっと凹みますよ。

 読みこそ『まひろ』だけども、たいていの人は読めやしない。『マホ』とか『マフ』とかに読まれてしまう。

 でも、名前はともかく、事実その通りなんだから、わたしはお姉ちゃんを応援してきましたよ。ミテクレはともかく、人との接し方や、ものの考え方とかはお姉ちゃんの真似をしてきた。

 生徒会長に立候補したのも『キャパシティーの中なら人の為になる道を選ぶ』というお姉ちゃんのスタイル。

 じっさい、お姉ちゃんも生徒会長をやっていた。それも、女子高が共学になった年だったから注目もされたし、注目された分の仕事もしてきた。

 ワイドショー番組の学校訪問に名乗りを上げて注目された評判で特集番組を組まれ、学校の評判を上げるとともに、自分自身マスメディアで働く道を切り開いた。

 人のためにやることが自分を磨くことになる。

 むろん、わたしの場合、見た目の平凡さはどうにもならないでしょうけどね。

 

 そのお姉ちゃんの劣化ぶりは、ほんとうにムカつく!

 

「なんか無性にコロッケ食べたくなってさあ……ハムハム」

 玄関に入るなりマスクをとって食べ始める。

「もう、やめてよね!」

「あ、こら……」

 コロッケの袋をふんだくって、ズイズイリビングに向かう。

「ちょっと、そこに座って!」

「なんか怖いよ真凡~」

「たまには美容院行きなさいよヽ(`Д´)ノ」

 正面に座った自堕落オーラは凄まじく、一番目についた髪の毛を糾弾してやる。

 姉は学生時代からショートヘアだったけど、さっき言った通り、月に二回の美容院でベストの状態をキープしていた。

 それが三か月以上のホッタラカシ。

 毛先は肩に届いているのも見苦しく、元々の髪の豊かさが裏目に出て金太郎のごとき爆発頭。

「気は使ってんだよ、ちゃんとシャンプーしてフケなんか……ないよね?」

「あったらたまんないわよ」

「わたしはね、昔からお姉ちゃんの劣化コピー版て言われてきたけど平気だった。平気だって思えるくらいにお姉ちゃんは凄かったし、お姉ちゃんと血のつながりがあるってだけで、わたしにはアドバンテージだったよ」

「そんな大げさなあ……」

「貧乏臭く髪かき上げたりしないでよ!」

「あ、ああ……ハハハ」

 手を下ろすと気弱に愛想笑いする姉が、ひどく不潔なものに思えてきた。

 こういう時に不用意に発言すると取り返しのつかないことを言ってしまいそうで、わたしは息を呑んだ。

 呑んだ息というのは、なにか言葉にしないと、これはこれで空気を悪くする。

 

「わ……わたし、生徒会長に立候補するんだ!」

 

 考えも無しに言葉が出てしまった。

 対立候補が出ない限り当選は間違いないんだけど、それでも当選もしないうちに言うのは、とても浅はかな気がする。

 頑張れよお姉ちゃん! という気持ちが屈折して出てきたのかもしれない。けど、やっぱ自己嫌悪。

「凄いよ真凡! わたし、ぜったい応援するからね! そうだ乾杯しよ乾杯!」

 お姉ちゃんはイソイソと冷蔵庫を開けビールとジンジャエールを持ち出しグラスになみなみと注ぎ、ジンジャエールの方を私の前に置いた。

「真凡の生徒会長就任を祝って……」

「ちょ、立候補だって!」

「通ったようなもんでしょ、対立候補出なきゃ」

「ま、まあ」

「ほんじゃカンパーイ(´∀`)!!」

 すかさずコロッケに飛びつくお姉ちゃん。

 ひょっとしたら、コロッケ食べたさだけだったのかも……でもいいや、あれ以上言っても実りがあるようには思えなかったし。

 それにしても、おいしそうに食べるわよね……。

 

☆ 主な登場人物

  •   田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •   田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •   橘 なつき    入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •   橘 健二      なつきの弟
  •   藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •   中谷先生     若い生徒会顧問
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