大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・196『ブリンダ!!』

2021-02-08 09:34:53 | 小説

魔法少女マヂカ・196

『ブリンダ!!』語り手:マヂカ    

 

 

 光栄です、大使のお嬢様にお会いできるなんて。

 

 霧子は痛む足を庇っている(演技なんだけど)ブリンダに手を貸してやりながら外交辞令を言う。

 とっさに、こういう判断と言葉が出てくるのは、さすがに高坂霧子、並みの華族令嬢ではない。普通なら、支度小屋で控えている松本を呼びに行くだろう。

 実際は、わたしも肩を貸してやり、ブリンダの2/3の体重を引き受けってやってるんだけどな。

 気持ちを読んだブリンダがウィンクする。

「あ、目にゴミが入りましたか?」

 ノンコも甲斐甲斐しくハンカチを出す。

 どうやら、ノンコの記憶をブロックしたようだ。ノンコはブリンダの正体を知っている。ノンコに下手に協力されたら足手まといと判断したんだろう。

 しかし、ブリンダの気持ちはありがたいが、こいつは、常に自分がリーダーでなければ気が済まない、良くも悪くもヤンキー娘だ。

 ハーー

 思わず小さなため息が漏れる。

「オウ、真智香は疲れてる?」

 ばか、名前呼ぶな!

「あら、渡辺さんの事は御存じなの?」

 ほら、霧子が突っ込んでくる。

「アハ、わたし魔法使いだからね(^▽^)/」

「え、魔法使い?」

 きわどいこと言うなあ!

「あ、イタイ」

「大丈夫ですか?」

「あ、足の痛みがわき腹に……」

 さすがに、わたしが抓ったとは言わない。

 

 松本とクマちゃんが応急の手当てをして、大使館まで送ってやる。

 さすがはブリンダで、大使館では、大使以下が本物の娘、大使令嬢として扱って……というか、思い込んで対応している。

 はてさて、この先なにが起こるんだと心配になりながら女子学習院に登校する。

 

「起立! 礼!」

 級長の徳川さんが号令をかける。

 ごきげんよう!

 クラス全員が「おはようございます」ではなくて、御所言葉が元と言われる「ごきげんよう」と挨拶するのは、やっぱり慣れない。ノンコなどは、挨拶のたびに舌を噛みそうになって、それはそれで面白いんだけどね。

「今日は、転校生がありますので、まず、その紹介をいたします。お入りになってください」

 担任が促して、ソロリと転校生が入って来る。

 クラス四十人分の目玉の向いた先に立っていたのは……ブリンダだ(^_^;)。

 やっぱりな。おまえは期待を裏切らないよ。

「レイディース、トゥデイ……本日から、ごいっしょに勉強いたします、ブリンダ・ウッズです。よろしくお願いいたします」

 おや、ファミリーネームはマクギャバンのはず……そうか、大使の娘……だったな。

「ブリンダさんは、駐日米国大使の御令嬢であられます、父君の大使の御在任中、ご一緒にお勉強為さいます。お席は……渡辺さんの横に……」

 今の今まで伊達さんが座っていた席が空席になる。

 こいつ、伊達さんを消した!?

 身構えたら、伊達さんはいっこ後ろに下がって空席ができたんだ。

 はてさて、今後の展開が、ちょっと……いや、かなり心配だ。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

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シニアライトノベル『蜘蛛の糸』

2021-02-08 06:32:01 | ライトノベルベスト

シニアライトノベル
『蜘蛛の糸』
          


 ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでゴシゴシ掃除なさっていました。
 
 極楽も、経費節減のため、人件費を削らざるをえなくなりました。お釈迦様は率先垂範(そっせんすいはん)のため、ご自分の散歩道は、ご自分で掃除されることになったのです。
 昨日は、沙羅双樹(さらそうじゅ)の林の落ち葉を掃き集め須弥山(しゅみせん)のふもとでお焼きになられました。そのとき、須弥山の荒れようも気になられたのですが、須弥山はとてつもなく大きな山だったので、こう呟かれました。

「まあ、あれは趣味の問題だから、後回しにしよう……ちと、おやじギャグであったか……」

 クチュン!

 寒いギャグに、お仕えの天人がクシャミをしました。
 そこで、今日は、おやじギャグをとばしても、誰の迷惑にもならぬように、独り極楽の蓮池のふちを掃除なさっていたのです。
 池のふちを掃除し終えると、ワッサカと茂りすぎた蓮を間引きにかかられました。
「うんしょ……!」
 一抱えの蓮の葉の固まりを取り除くと、そこに開いた水面から地獄の様子が見えます。
「そうだ、この池は、地獄に通じていたんだった……」
 お釈迦様は、百年ほど前にカンダタという男を蜘蛛の糸で救おうとしたことを思い出されました。
「あの時は、意地悪をして、助けてやらなかったなあ……」
 そうお思いになって、百年ぶりに池の底を覗いてごらんになられました。

 極楽の池は、今では教員地獄というところに繋がっておりました。

 教員地獄には、現役の教師であったころ、ろくな事をしなかった者達が、地獄の年季が明けるまで出ることができない学校に閉じこめられています。
 地獄そのものも、廃校になった学校が使われています。その地獄の学校は、夜になることも、昼になることもなく、永遠のたそがれ時でした。
 チャラ~ンポラ~ン、チャランポラ~ン……と、チャイムが鳴るたびに、教師の亡者たちは、教室に行っては授業をします。
 教室は様々ですが、鬼の子達が生徒に化けて授業を受けています。その教室の様子は筆舌に尽くせません。お読みになっている貴方が、ご自身の学校を思い出して想像してみてください。
 授業が終わると、教師の亡者たちは職員室にもどり、吹き出した汗のような血や、血のような涙で、えんま帳の整理をやります。席に戻れば、パソコンに終わりのない書類の打ち込みをやりながら、聞き取れないような声で、だれに言うでもない不満を呟き、他の亡者たちは、みんな自分の悪口を言われているのではないかと思い、疑心暗鬼地獄になります。
 少し離れた会議室では、職員会議地獄があります。そこは、主に管理職だった亡者が、永遠に終わらない職員会議に出ています。平の亡者たちが、ときどき、ここに来ては、喧噪の中、しかめっ面をして息を抜いています。
 でも、本当に息を抜くと、議長に指名され、発言を求められ、質問地獄になります。
 そして、チャランポラ~ン……と、チャイムが鳴ると、授業地獄に行かなければなりません。
 そして、管理職だった亡者は、永遠に職員会議地獄からは抜けられません。

 神田という亡者が、職員会議を終えて、授業地獄にいくところが、お釈迦様の目に留まりました。
「ああ、これも何かの縁だろう……」
 お釈迦様は、思い出されました。
 この神田という亡者は、現職のころ「蜘蛛の糸」と呼ばれていました。神田は困難校ばかり渡り歩いてきた教師で、退学の名人でした。担任になると、めぼしい生徒に目を付けます。
 めぼしいとは、成績や出席状況から進級、卒業ができそうにないもの。問題行動が多く、懲戒を繰り返し、いずれは辞めさせなければならない者。
 そういう生徒には、四月から家庭訪問や面談をくりかえし、生徒や保護者と人間関係を作り、その「信頼関係」を作った上で、学年途中や、学年末に自主退学させていました。
 学校では、この退学のことを「進路変更」という言葉で呼んでいました。なんとなく美しい響きでしたが、要は首切りで、たいがいの教師は退学届をもらえば、それでしまいでした。
 多田は、本当に変更先の学校や、職場、ハローワークまで付いていってやりました。だから、大方の退学生は「ありがとうございました」と言って去っていきました。

 でも、神田は思っていました。これは学校のため……自分のためであることを。
 退学は、いざ、その場になればもめることが多くありました。こじれたときは弁護士が来ることも、裁判になったことさえありました。神田は、それが嫌だったのです。ただでも忙しい学年末に、そんなことに時間を取られることも、神経がささくれ立つのもごめんでした。
 でも、神田の蜘蛛の糸ぶりは徹底していました。
 保護者が来校したときは、玄関まで迎えに行って、スリッパを揃えました。退学が決まって、親子が学校を去るときは、玄関に立ち、親子が校門を出て、姿が見えなくなるまで見送りました。二分の一の確率で、校門を出るときに、親子は学校を振り返ります。その時には、深々と頭を下げてやります。そうすれば、親子が地元に戻ったとき、学校や担任の悪口を言いません。
 
 これは偽善です。だから神田は地獄に墜ちたのです。

「神田の心には、僅かだが、善意があった……」
 神田自身、高校生のとき、不登校になったり落第した経験があります。そして、何度か退学を勧められたことがあります。
「その孤独さは、分かっていたんだね……」
 そう呟くと、お釈迦様は、百年前と同じように蜘蛛の糸を一本垂らしてやりました。
「今度は、意地悪しないからね……」

「あ……これは?」
 神田は、一本の糸に気づきました。
 雲の先は、永遠のタソガレの空に、一点だけ青空になっていました。
「これは……蜘蛛の糸だ!」
 神田は、えんま帳も教材もみんな放り出して、蜘蛛の糸を昇り始めました。

「あの時といっしょだな……」
 
 お釈迦様は、呟きは続きました。
「わたしの悲願は……衆生済度なんだからね……」

 神田は、自分のあとから沢山の亡者たちが続いて糸をよじ登ってくるのが見え戦慄しました。

――来るな。これは、オレの糸だ。オレが救われるための糸だ――

 そう、思いましたが、国語の教師であった神田は思い直しました。
――カンダタはこれで失敗したんだ。みんな登ってくればいい。みんなで極楽に行こう……そうだ、おれんちは浄土真宗だ「善人なおもて往生す、いわんや悪人をおいてをや」だ……でも、組合の奴らが真っ先てのはムカツクなあ……まあ、いいか。
 神田が、目をこらして下の方を見ると、糸を登らずに、ぼんやり見上げている一群がいました。
「おーい、お前らも来いよ!……え、意味わかんねえだと……そうか、あんたら再任用で、定年超えてもやってたんだ……そこが地獄だってことも分からないか……いいようにしな……」
 そう言って、手を伸ばした先に糸がありません。
「え……うそだろ!?」
 極楽の池の水面は、もう、そこまで見えていました。あと五寸というところで、蜘蛛の糸は切れています。それでも、お釈迦様の悲願なのでしょう、糸は直立しています。
「なんで、五寸なんだ……そうか、オレって演劇部の顧問だったから尺貫法なんだ!」
 妙なところで納得しかけた神田でした。
「でも、なんで、あと五寸……!」
 神田の手は、虚しく空を掴むばかりでした。
 やがて、亡者たちは力尽き、ハラハラと学校地獄に墜ちていきます。
 神田は、最後までがんばりました。もう慈悲深いお釈迦様のお顔さえ見えます。

「残念だ……神田。お前は五年早く早期退職した。その分、糸の長さが足りないんだよ」
 
 お釈迦様は、涙を浮かべて、そうおっしゃいました。
「そうか……おれって、堪え性がないもんで……」
 神田は、悲しそうに……でも、納得して墜ちていきました。

「南無阿弥陀仏……」

 最後の、神田の一言が、お釈迦様の耳に残りました。
「これは、阿弥陀さんの仕事……だな」
 そう呟くと、お釈迦様は、たすきを外して、歩いていかれました。

 極楽には、何事もなかったように、かぐわしい風が吹き渡っていきました……。

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妹が憎たらしいのには訳がある・55『三ヶ日メタモルフォーゼ』

2021-02-08 06:19:24 | 小説3

たらしいのにはがある・55
『三ヶ日メタモルフォーゼ』
         


     


 アズマのセダンに変態させたハナちゃんを三ヶ日のインターチェンジに入れた。

 わたし(ねねちゃんと俺の合体)と、サッチャン(幸子=俺の妹)は、信太山駐屯地にあるシェルターを出発して東京を目指した。三ヶ日を過ぎると検問があるので、このインターチェンジで、これからの行動を考えながら当面の対策を練っている。

「ウナギの焼きお握りたまら~ん(^0^)」
 サッチャンが優奈の顔で、目をへの字にした。
「義体にしては、よく食べるのね」
 わたしは天蕎麦のエビ天の尻尾をポリポリ囓る。えびせんのような香りが口の中に広がる。サッチャンは、とっくにそれを食べて、三ヶ日名物のウナギの焼きお握りたまら~ん状態。
「優奈ちゃんに変態したところだから、生体組織に栄養がいるのよ。それに東京での生活の準備あれこれに頭使ったから。ほらこれが、ねねちゃんのID……」
 サッチャンが、スマホにケーブルを繋いで、情報を送ってきた。
「え、わたし渡辺真由!?」
「わたしは大島優子。二人とも親が熱烈なAKBファンだったってことになってる。N女子大のちょいワル女子学生……以下了解?」
「インスト-ル終わり。長期戦覚悟ね」
「そうならないように願ってるけど、いくよ真由」
「へいへい」

 浜松市の外れまで来たときに、検問にかかった。

「この先10キロのところで、ロボットが暴走して、軍と警察車両以外は通行止めです。一般道に降りて迂回願います」
 警官の誘導で一般道に降りた。要所要所に警官が立って複数の一般道に誘導していた。五カ所目からは、国防軍に替わった。どうやらロボット兵のようだ。
「この道を、まっすぐ行くと、東名にもどれます」
 ロボット兵は、そう言ったが、後続の車はしばらく停止させられ、見えなくなってから別の道に誘導されている。
『どうやら、ハメられたようですね♪』
 ハナちゃんが楽しそうにダッシュボードを光らせる。
「そのようね、でもハナちゃんは大人しくしていてね」
『えー、つまんないなあ』
「ハナちゃんは大事な隠し球なの」
『ええ、そうなんですか隠し玉なんですか。なんだか照れちゃう(*ノωノ)』

 そのとき、目の前にトラックに変態していたと思われるロボットが二体、地響きをさせて降下してきた。

 ズズシーーン!!

「真由(ねね)、こいつら情報とりながら仕掛けてくる。手の内は見せないで一気に倒す……最初に、通信回路をブレイクして」
「言うには及ばないわ」
 わたしたちは、同時にハナちゃんから飛び出した。ハナちゃんは普通のアズマのセダンのように、オートで退避した。いきなりスキャニングパルスを感じた。
「こいつら、義体を探してるんだ!」
 二人はロボットの股ぐらにしがみついた。衛星の映像で、こちらのスペックを知られないためだ。背中づたいに首筋まで上り、グレネードレーザーで首筋に穴をあけ、手を突っこんで、通信回路を基板ごと引きちぎった。これでこいつから情報を送られることはない。
 ロボットも大人しくはしていなかった。ジャンプすると背中から落ちて、わたしをペシャンコにしようとした。その時偶然に振り落とされたように見せかけ、うつ伏せに倒れた。気を失ったフリをしていると、足で踏みつぶされそうになり、横っ飛びに跳んで優子と入れ違って戦う相手を替えた。交差するときに手話で情報を伝えた。
 互いのロボットの首筋につかまると、グレネードレーザーで開けた穴にケーブルを突っこみ、バトルセンサーに細工した。エネミー認識をロボットにしたのだ。
 二人が離れると、二体のロボットは互いを敵と認識して戦い始めた。同じスペックのロボットだったので、勝負は、あっと言う間に相打ちに終わった。

 ハナちゃんが戻ってきて他の一般車両に混じった。

 東名の本線に戻ったところが検問所で、同じアズマのセダンが次々に止められていた。
「わたしたち、引っかからないわね」
『型番を型オチにして、シリアルを、同型のアズマにシャッフルしておきました♪』
「同型って、どのくらいあるの?」
『国内だけで45万台はありますう。そのユーザーと、その知り合い……ちょっと天文学的数字になりますね♪』
「アハハ、ハナちゃんやるう!」
『それよりも、お二人義体丸出しですから、その対策を』
「拓磨の義体が使ってたバージョンアップのコードがあるわ。これで誤魔化そう」
「そうね、ユースケに見つかるまでの偽装になればいいんだしね」

 そうして、東京につくころには、N女子大の大島優子(幸子と優奈の融合)と渡辺真由(ねねちゃんと俺の融合)になりおおせていた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん


 

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