魔法少女マヂカ・196
光栄です、大使のお嬢様にお会いできるなんて。
霧子は痛む足を庇っている(演技なんだけど)ブリンダに手を貸してやりながら外交辞令を言う。
とっさに、こういう判断と言葉が出てくるのは、さすがに高坂霧子、並みの華族令嬢ではない。普通なら、支度小屋で控えている松本を呼びに行くだろう。
実際は、わたしも肩を貸してやり、ブリンダの2/3の体重を引き受けってやってるんだけどな。
気持ちを読んだブリンダがウィンクする。
「あ、目にゴミが入りましたか?」
ノンコも甲斐甲斐しくハンカチを出す。
どうやら、ノンコの記憶をブロックしたようだ。ノンコはブリンダの正体を知っている。ノンコに下手に協力されたら足手まといと判断したんだろう。
しかし、ブリンダの気持ちはありがたいが、こいつは、常に自分がリーダーでなければ気が済まない、良くも悪くもヤンキー娘だ。
ハーー
思わず小さなため息が漏れる。
「オウ、真智香は疲れてる?」
ばか、名前呼ぶな!
「あら、渡辺さんの事は御存じなの?」
ほら、霧子が突っ込んでくる。
「アハ、わたし魔法使いだからね(^▽^)/」
「え、魔法使い?」
きわどいこと言うなあ!
「あ、イタイ」
「大丈夫ですか?」
「あ、足の痛みがわき腹に……」
さすがに、わたしが抓ったとは言わない。
松本とクマちゃんが応急の手当てをして、大使館まで送ってやる。
さすがはブリンダで、大使館では、大使以下が本物の娘、大使令嬢として扱って……というか、思い込んで対応している。
はてさて、この先なにが起こるんだと心配になりながら女子学習院に登校する。
「起立! 礼!」
級長の徳川さんが号令をかける。
ごきげんよう!
クラス全員が「おはようございます」ではなくて、御所言葉が元と言われる「ごきげんよう」と挨拶するのは、やっぱり慣れない。ノンコなどは、挨拶のたびに舌を噛みそうになって、それはそれで面白いんだけどね。
「今日は、転校生がありますので、まず、その紹介をいたします。お入りになってください」
担任が促して、ソロリと転校生が入って来る。
クラス四十人分の目玉の向いた先に立っていたのは……ブリンダだ(^_^;)。
やっぱりな。おまえは期待を裏切らないよ。
「レイディース、トゥデイ……本日から、ごいっしょに勉強いたします、ブリンダ・ウッズです。よろしくお願いいたします」
おや、ファミリーネームはマクギャバンのはず……そうか、大使の娘……だったな。
「ブリンダさんは、駐日米国大使の御令嬢であられます、父君の大使の御在任中、ご一緒にお勉強為さいます。お席は……渡辺さんの横に……」
今の今まで伊達さんが座っていた席が空席になる。
こいつ、伊達さんを消した!?
身構えたら、伊達さんはいっこ後ろに下がって空席ができたんだ。
はてさて、今後の展開が、ちょっと……いや、かなり心配だ。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手