大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・26『八十神と手間山の赤猪』

2021-02-21 09:10:53 | 評論

訳日本の神話・26
『八十神と手間山の赤猪』    

 

 

 末の弟のオオナムチに兄弟全部の荷物を背負わせた八十神たちは意気揚々とヤガミヒメの家に着きました。

 

 八十神たちの面白いところは、末の弟オオナムチを団結してイジメますが、自分たちは仲たがいはしません。

 というか、没個性的な神々で、一人一人の描写がありません。もし、マンガかアニメにすると顔がノッペラボーのモブキャラになるでしょう。

 八十神を目の前にしてヤガミヒメはにこやかに宣言します。

「……ということですので、わたくしヤガミヒメは、あなたたち八十神の荷物を背負ってやってくるオオナムチの妻になります。悪しからず(^▽^)/」

「「「「「「「「「「「「「そ、そんなあ(;゚Д゚)!」」」」」」」」」」」」」

 オオナムチをイジメたことに弁護の余地は無いのですが、八十人まとめてコケにされるのは、ちょっと気の毒。

 八十人も居るのですから、中には多少はオオナムチに同情的な者もいたのかもしれませんが、十把一絡げにされます。

 記紀神話にはモブキャラがいっぱい出てきますが、高天原の神たちは名前の付いている者が結構いて、天岩戸の下りは個性的な神々が一杯いて、描写が生き生きとしています。それに比べて、いくら悪役とは言え個性無さすぎな感じがします。

 いっそ八十という名前の一人の神であったほうがスッキリします。西條八十という古関裕而の相棒だった作詞家もいたではありませんか。

 とりあえず、八十神の十把一絡げにこだわります。

 世の中は、この十把一絡げに満ちております。

 たとえば『日本人』といいう十把一絡げ。昔は眼鏡をかけた反っ歯で、どこに行くにもカメラを首からぶら下げているオッサンというイメージでした。日本人を説得するには「みなさん、そうなさっています」と囁けばいいと言われておりました。

 オタクと言えば、自分の趣味やテリトリーのことは人の都合も考えずに口角泡飛ばすくせに、オタク以外の話には聞く耳を持たないキショク悪い奴らという括りで、たいていは運動オンチなブ男、たまに女子がいるとBL専門の腐女子なんぞと言われたり描写されたりします。

 学校の先生というと、みんな日教組で偏向教育ばかりやっていて、独身率が高くて、C国やK国の味方ばかりしていて朝日新聞の読者という括り方をされます。

 大阪人なら、みんな声が大きくて、吉本みたいなギャグをとばしてばかりで、阪神ファンでたこ焼きばかり食っているやつら。

 ……考えたら、このサンプルに挙げた属性に、わたしは全て含まれます(^_^;)。

 

 とにかく、ヤガミヒメは、そう言い放って、八十神全員を袖にしてオオナムチを婿に迎えることにします。

 

 プリプリ怒ってかシオシオとうな垂れてかは分かりませんが、八十神たちは帰り道に、やっと追いついたオオナムチに出会って、こんな意地悪を言います。

「よう、俺たち、これから帰るとこなんだけどよ、途中の伯耆の国の手間山(てまやま)ってとこによ、赤い猪が出てくるっていうんだわ。家の土産にしたいから、おまえ先に行って掴まえとけ」

 どこまでも兄たちに従順なオオナムチは、疑問にも思わず(こういう馬鹿正直なところに白兎はイラっとくるんでしょうねえ)手間山に向かいます。

 さて、赤猪はどこにいるんだろうと様子を窺っていますと、山の上から何かが駆け下りてくる音がします。

 ドドドドドドドドド!

「来た! 赤猪来たああああああああ!」

 オオナムチは健気にも両手を広げ、関取ががっぷりと四つに取り組む姿勢で赤猪を受け止めます。

 

 ジュウウウウウウウウウウウ!

 

 なんと、赤猪は真っ赤に焼けた大岩だったのです。

 というか、先回りした八十神たちが大岩を真っ赤に焼いて待ち受けていたのです。

 オオナムチは大岩を離すこともできずに、全身大やけどで焼け死んでしまいました(-_-;)。

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・68『もう妹は憎たらしくない!』

2021-02-21 06:43:43 | 小説3

たらしいのにはがある・68
『もう妹は憎たらしくない!』
         

 

 

 大阪に戻ったわたしたちにすることはなかった。

 度重なる戦闘で、わたしも優子も状態が悪く、もうメンテナンスの仕様もなかったのだ。
 二人とも生体組織が壊死し腐敗が進んできたので、亜硫酸のタンクに漬けられて生体組織を溶かし、スケルトンの状態にされた。この状態が裸になって股間にドレーンを挿入されてメンテナンスする何倍も恥ずかしいことであることを、わたしも優子も自覚した。
「わたしのスケルトンの方がキュートよ!」
「なによ、わたしの顔のスケルトンの方がかわいいもん!」
 最初はじゃれあいのようだったが、互いの機能が低下してくると、憎まれ口もきかなかくなってきた。
 見かけは上半身と下半身に裂かれてしまった優子がひどかったけど、わたしはPCに受けたダメージが意外にひどくて五日目には言語サーキットがいかれてしまい。CPにケーブルを接続しなければ意思表示も出来ない状態になった。

 わたしには、ユースケに取り込まれる前の義体が残っていたけど、それにCPの中身をインスト-ルすると、わたしの半分であるお兄ちゃんの人格が復元できないことが分かった。お兄ちゃんを殺すことはできない。東京で、あれだけの働きができたのは、お兄ちゃんとねねを融合したからこそのことでなんだから。
 優子のCPは、比較的安定していたけど、CP内に収容していた脳組織が弱ってきた。一度は取り出そうとしたけど、そのオペレーションに優奈の脳組織が耐えられる確率は30%もなかった。それに、取りだしたとしても、寿命は半年がいいところ。

 最初に崩れたのはお母さん。

 娘と息子を同時に失おうとしているのだ、無理もない。羊水に漬けられたお兄ちゃんを見ては涙になり、モニターを通じての幸子との会話も、CPの寿命を延ばすため最小限度におさえられていたため、ある日、緊急事態用の手榴弾を持ち出したところを、アラームに気づいた水元中尉に、爆発寸前に助けられた。お父さんは、そんなお母さんをただ抱きしめることしかできなかった。

 東京は、あれからしばらく平穏なように見えたけど、グノーシス同士の争いが激しくなり、国防省のCPは事実上ダウンしていた。
 市民生活は平穏そのものに戻ったんだけど、毎日グノーシス戦士の遺体や破壊されたロボットが発見される。彼らは最後の瞬間に、一般人や、普通の車に擬態するので、身元不明の遺体や、事故車が増えた程度にしか、一般には認識されていなかった。国防省のCPは甲殻機動隊が肩代わりして、日常の業務に差し支えないようにしていたが、それがC国やK国に見破られるのは時間の問題だ。

 そんなある日、T物産のトラックが真田山駐屯地へやってきた。

「厨房機器の納品です」
 初老の運転手が窓越しに書類を渡した。
「話は聞いています。念のためスキャナーにかけますので、トラックごとそのセンサーの間に入ってください」
 門衛の下士官に言われ、初老のオッサンは、ゆるりとハンドルを切った。
「ああ、T物産の高橋さんですか。T物産の総務の神さまですね。調達品の取引じゃ、下手な営業さんより話がしやすいって、親父も言ってましたよ」
「あ、あなた営繕課にいた牛島准尉さん……の息子さん!? いやあ、時代ですなあ」
「今日は、総務が配達ですか?」
「来月で定年なもんですからね、ちょっとわがまま言って、若い頃に回ったところを一つ一つ回らせてもらってるんです」
「メカニックの方は女性なんですね」
「身元や経歴はスキャン済みでしょうが、厨房関係は女性の方が分かりがいい。それに……」
「チーフの方は、陸軍の予備役なんですね」
「そうよ。ずっと給養員のボスやってたから、ここの給養装備もみんな見たげる」

 そうして、この御一行は、地下のシェルターにやってきた。

「高橋課長!」
 お父さんが、すっとんきょうな声を上げた。
「いやあ、一別以来……と言いたいが、佐伯さん。あなたとは初対面です」
「え……」
「高橋さんの体を借りている。向こうのグノーシスのハンスと申します」
「グ、グノーシス!?」
「まあ、こっちにもいろいろありましてな。今日は里中副長の依頼で来ました」
「もう、恥も外聞もなく、お願いしました」
「一応、隊長にもごあいさつを……」
 そういうと、ハンスは、優子と同名の幼女に挨拶をした。
「困るなあ、ハンス。ずっとバレないできたのに」
「これからは、あなたの指揮が重要になりますから」
「ゆ、優子、どうしたの!?」
 佳子ちゃんがうろたえた。
「潜在能力が優れてるんで、二年前からやってるの。甲殻機動隊の隊長としてのアビリティーだけは高いけど、あとはお姉ちゃんの妹だから、これまで通りよろしく。じゃ、あとは副長よろしく」
「承知しました」
 里中副長が、上官に敬礼するところを初めて見た。
「じゃ、かかろうか」
 三人の女性スタッフのオーラには、なにか懐かしさを感じた……あ、ビシリ三姉妹!

 大げさな作業になるのかと思ったら、わたしたちと持ち込みのCPをケーブルで繋いだだけである。
 ミーと思われるビシリが、すごい早さでキーボードを操作した。とたんに、わたしの意識が飛んだ。

「お、溺れる!」 

 そう思ったら、急速に羊水が抜かれ、俺は久々に太一に戻った。

 気づくと空のアクリルの水槽の中で、俺はひっくり返っていた。で……みんなの視線が俺に集まった。
「キャー!」
 佳子ちゃんとチサちゃんは同じような悲鳴をあげて、それでもしっかり裸の俺を見ていた。
 ビシリのミルが目隠しに立ってくれ、ミデットが、取りあえずの服を一式を、タオルとともに投げ入れてくれた。
 水槽から出たとき、優子と真由のスケルトンは死んでいるように見えた。
「移植急ぐぞ」
 ハンスが、高橋さんの姿で命じた。ビシリ三姉妹が、厨房機器の箱を開けると、中から優奈が現れた……!?
「義体だけどね、脳を移植すれば本物になる」
 ビシリ三姉妹は、優子のスケルトンの口を開けると、大きめの注射器のようなものを取りだし、優奈の前頭葉と脳幹の一部を保護液といっしょに取りだし、優奈の義体の喉の奥からCPに挿入した。
「だいぶ弱っているな……」
「はい、なにか刺激がいります」
 ミーが答えた。
「仕方がない、祐介がユースケになった今までの記録をダウンロ-ドしよう」
 微かな起動音がして、優奈がピクリとした。それから、血の気がさして、閉じた目から涙がこぼれ落ちた。
「これで、祐介のことは愛情を持って理解した。残念ながら、太一への愛情を超えてしまったけどな」
「それはいいんです。祐介の気持ちは分かっていたし、こうあるのが自然です」

 優奈が意識を取り戻し、起きられるのに一時間ほどかかった。そして優奈が元に戻った頃、幸子とねねちゃんが戻ってきた。

「お兄ちゃん、みんな!」
「お父さん!」

 幸子は、ユースケが使っていた義体に、優子から分離した幸子のパーソナリティーをインストールしたのである。
 完全な幸子に戻っていた。プログラムモードではなくニュートラルで、幸子は憎たらしくなかった。

「わたし、自然にしていても世界は壊れないのね!」
「ああ、半分賭けだったけどね。これで僕たちも希望を持って前に進める」
 ハンスが、珍しく嬉しそうに言った。
 ねねちゃんも義体で、ここまで自然になれるのかと思うほど人間らしかった。
「これは、太一、キミのおかげだよ」
 里中副長が言ったとき、急に空間が歪み、全員がショックを受けた。

 目の前に、傷つき果てたユースケが現れた。

「もう空間移動の技術も覚えたんだね」
「そうしなきゃ、生き延びられないんでね……優奈!?」
「祐介、ごめんね。いままで祐介の気持ちに気づいてあげられなくて。こんなに苦労して、こんなに傷つき果てて」
「で、でも、どうして……」
「舞洲で殺されたとき、わたしの脳の一部をサッチャンが保存してくれていたの。体は義体だけど、心は優奈だよ。祐介の優奈だよ!」
「そんな……でも、オレは幸子を殺さなきゃならないんだ!」
「もう、その必要はない。グノーシスの間でも休戦協定が結ばれた。君も、いつまでも、そんなロボットに取り込まれていなくてもいいんだよ」
「そうよ、祐介!」
「オ、オレは……ウワー!」
 ユースケは悶え苦しんだ。危ないので優奈を引きはがそうとした。
「このままで……祐介! 祐介!!」

 やがて、ユースケは動きを止め、静かにボディーが開くと祐介がこぼれ出てきた。

 
 そして、妹の幸子はニクソクはなくなった……。


『妹が憎たらしいのには訳がある』  シリーズ・1 完

 

 

 

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