大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・028『カルデラの陰』

2021-02-02 14:32:24 | 小説4

・028

『カルデラの陰』 ダッシュ       

 

 

 二十三世紀の今日、月は地球にとって同じ敷地にある別棟の作業小屋のようなところだ。

 

 火星のように大気を作ることができない(大気を留めておけるほどの引力が無い)ので、人間が活動できる空間は、地上にせよ地下にせよカプセルで覆わざるを得ない。また、引力の弱さは長期滞在者の骨を弱らせてしまい、地球に戻った時に回復するのに三か月を要し、その間、月の滞在者は使い物にならない。

 二百年前に武漢ウイルスによって、世界各国は鎖国のようなことをしなければならなかった。多少見通しがついて、ビジネスなどの往来は復活したが、外国に行っても二週間の隔離が義務付けられ、用事が済んで帰国しても、自国で二週間の隔離観察が義務付けられて、たった一日の用事でも四週間が無駄になるので、三年後に克服されるまでは、実質行き来出来ない状況だった。

 そのために、同じ敷地にありながら、火星に比べると作業小屋程度の発展に留まっている。

 それでも、地球の姿が拝める表側はゴールドラッシュごろのカリフォルニア程度の賑わいはあって、地球との往来も頻繁で、大きな宇宙港が十二も開かれている。

 俺たちを乗せた13号艇は、その十二ある宇宙港をパスして、月の裏側にある第十三宇宙港を目指している。

 正確には、第十三宇宙港の外れにあるヴェスビオクレーターの中だ。

「え、宇宙港には行かないのかニャ?」

 最初に気付いたテルがキャノピーにとりついた。

「再生たこ焼は流通ルートが違うんだよ」

 宮さまは楽し気におっしゃるけど、すみれ先生、元帥、ヨイチの三人は、周囲の警戒に余念がない。先生の肩越しにダッシュボードを見ると、オートが切られてマニュアルの操作になっている。

「先生、マニュアルになってゆよ」

 テルが、正直な心配顔で囁く。

「うるさい、黙って座ってろ」

「怒られたあ~」

 体に似合わないデリケートな操作で、13号艇はカルデラの中で首を巡らせる。

 キャノピーの四角い枠の中を左から右に闇が迫って来る。まるでスクリーンに真っ黒な幕が広がっていくようだ。13号艇がカルデラの陰の方向を向いているのだ。

 キャノピーの2/3が真っ黒になって、ようやく、闇の中でうずくもっているものが見えてきた。

 それは、つぎはぎだらけの船だ。

「退役した軍艦か……」

「千鳥級の駆潜艇か……」

 俺よりもヒコのほうが詳しい。テルとミクは、その薄汚さに眉をひそめている。

「ひょっとして……」

 これに乗るのか!? 

 思っても口に出さないのは、宮さまや大人たちがいるからだろう。

「元の艦名が読める……」

 はげっちょろげの塗装の下に読めたのは『トモヅル』であった。

「え、トモヅル!?」

 ヒコが息をのんだ……。

 闇に慣れてきたのと、ごく間近まで接近したので元の艦名がほのかに読めた。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官

 ※ 事項

  • 扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・滅鬼の刃・10『街とスキンシップ』

2021-02-02 08:47:02 | エッセー

RE滅 エッセーノベル    

10・『街とスキンシップ』   

 

 自然と言うものは、海や山や堤防なので囲っていない川のことだと思っていました。

 お祖父ちゃんの書いたものを読むと、街の中に『自然』と言ってもいい風景が広がっていたんだと感心します。

 土がむき出しの、お祖父ちゃんが言う『地道』は十分に自然です。

 デコボコしていて、雨が降ったら、それこそ海のようになってしまった地道を長靴履いて、時には上級生のお兄さんお姉さんにオンブしてもらって登校なんて、ちょっと牧歌的です。

 近ごろはセクハラとかがうるさくって、それは大人が子どもに対してのことだけじゃなくて、子ども(高校生のわたしも含めて)の間でもセクハラの問題は大きいのです。

 お祖父ちゃんに聞くと、昔の男の子は平気でスカートめくりしていたとか。信じられません。

 中学のころ「用もないのに威勢の顔を五秒以上見たらセクハラ」とか先生が言っていました。五秒ルールとか言ってました。保育所のころ、床とか地面に食べ物を落としても三秒以内ならセーフって三秒ルールがありました。「四秒、セーフ!」なんて遊んでいる男子は居ましたけどね。

 お祖父ちゃんの時代は、そういう自然なスキンシップがあったんですね。

 水たまりを渡るためのスキンシップ。不便なことにもいいことってあったんですね。

 話を聞くと、友だちが「ちょっとしんどいよ」と言ったらオデコを合わせたり、手をオデコに当てたりして熱を計り。擦りむいたと言っては傷口に唾を付けたり。遊ぶにしても『おしくらまんじゅう』とか『おすもう』とか『プロレスごっこ』とか、スキンシップが当たり前の遊びが多かったとか。

 舗装のない地道とか、雨が降ったら出現する水たまりとか、それは街の素肌だって思うんです。お祖父ちゃんたち、昔の子どもは、街の素肌と触れ合って、街とスキンシップで育ってきたんですね。

 ちょっと羨ましいかもしれません。

 

http://wwc:sumire:shiori○○//do.com

 Sのドクロブログ!

 

 暗い……

 暗いよね! 水たまりだよ? 

 浮かんでくるよ、60年前のクソジジイ!

 あ、クソジジイが水死体で浮かんでくるってことじゃねえから。

 そんな連想するほどヒトデナシじゃねえし。

 水かさに怯んでオタオタしてたら、「オンブしたげよう」って六年生のオネエサンが背中を貸してくれてさ、「う、うん……」とか卑屈にうなづいて、オンブされたオネエサンの温もりに劣情かき立ててるやらしいクソジジイ!

 え、まだ子どもだろうって?

 あいつはね、生まれた時からのゲスなのよ。

「どんな上級生がオンブしてくれたの?」って聞いたら。

 目線を避けてさ「ま、いろんな上級生がな……」ってさ。

 目線避けて頬っぺた染めてんじゃねえよ! 遠い目なんかすんなよ!

 水たまりをピチャピチャ歩いたり、自転車でビシャーって走ったり、それ、きっと一人でやったんだ。

 今でも、健康のためって、クソジジイは散歩にいくんだけどね、散歩っていっても自転車がほとんど。で、いっつも一人だよ。

「栞もどうだい?」

 なんて聞かれてもソッコー断るけどさ。

 あ、雨降ってきたから、洗濯物取り込むんで、ここまでな。

 栞も律儀?

 んなんじゃねえよ! 自慢じゃねえけど、小6の時から洗濯物は別々だってこと!

 じゃあな。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

誤訳怪訳日本の神話・20『八岐大蛇(やまたのおろち)』

2021-02-02 06:24:02 | 評論

訳日本の神話・20

『八岐大蛇(やまたのおろち)』   

 

 目(め)は丹波酸漿(たんばほおずき)のように眞赤(まつか)で、一つの体にに頭と尾がが八つずつあります。その体には蘿(こけ)や檜(ひのき)杉などが生え、その長さは谷(たに)八(や)つ峰(みね)八(や)つをわたつて、その腹を見ればいつも血(ち)が垂れて爛(ただ)れています。

 アシナズチ・テナズチの二人は狭い家の中で体全体を使って八岐大蛇の説明をします。

「いやあ、たいへんな化け物だなあ、モンハンでも、そんなのはめったに居ねえよ」

「やっぱり、八岐大蛇を退治するとなるとハイレベルなプレイヤーでタッグを組んで、課金しまくって装備を整えなきゃなりませんでしょうねえ」

「お爺さん、でも、わたしたちには、そんなお金ありませんよう」

「いや、大丈夫だ。この家にあるもんでやっつけられるから、ちょっと用意してくれっかなあ」

「この家にあるもので?」

「いったい、なにを使うんでございますか!?」

 膝元ににじり寄って来る老夫婦に、スサノオは深々と頷いて、こう言います。

「大きな甕八つに並々と酒を満たしてくれ。そいつを並べたら垣根で囲ってさ、八つの入り口をこさえるんだ。でもって、オレはクシナダの着物引っかぶって座ってるんだ。オロチが酔っぱらったら……あとは観てのお楽しみ!」

 八つの大甕を満たすほどの酒が置いてある家などあるわけないのですが、そこは神さまの世界なので目をつぶって頂いて。

 スサノオの計画通り、八岐大蛇は「娘を頂く前に、酒をゴチになっちまおうぜ!」

 八つの雁首並べてグビグビと酒を飲み干します。

 やがて、グデングデンに酔っぱらって八つの頭が絡まりながら寝てしまいます。東映のアニメで作られた『わんぱく王子の大蛇退治』では、スサノオは十歳くらいの少年で埴輪みたいなアメノフチコマに跨り、まるでキングギドラみたいなオロチを激戦の末に倒します。

 しかし、記紀神話では、酔っぱらったオロチは瀕死のウナギのように簡単にやっつけられます。やっつけたオロチの腹を裂きますと一振りの刀。これが滅法スグレモノの刀で草薙の剣と名付けられ、今でも皇居の奥つ城に安置されている三種の神器の一つになります。

 さて、八岐大蛇です。

 こいつは、朝鮮半島から伝わった製鉄を生業とする人たちではないかと言われています。

 当時の製鉄は鉄穴流し(かんなながし)と言いまして、粉砕した岩石や土に含まれている砂鉄を川に流すことによって笊などで掬い取ります。それを集めて溶かして鉄にするわけです。『もののけ姫』でエボシが女たちを使って生業にしていた製鉄法です。

 この製鉄法には弊害があります。

 砂鉄が川を流れるので、下流の方では赤さびた砂鉄の為に川が赤く染まります。こんな水が稲作に良いわけはなく、下流の農民たちは困ってしまいます。また、一回製鉄するのに山一つを丸裸にするほどの薪が必要なのです。丸裸にされた山は保水能力が落ちて、ちょっとした大雨でも鉄砲水や山崩れを起こしてしまい、これも農民たちには大迷惑です。

 そのために、中国地方では製鉄民と農民の間ではいさかいが絶えませんでした。そういう事情が神話の背景にあるのではないかと思われます。オロチの体内から草薙の剣が出てきたのも示唆的です。『もののけ姫』では山を荒らされた山犬と山犬に育てられたもののけ姫が人間たちに立ち向かっていきます。モチーフが同じなんですね。

 さて、製鉄の民は朝鮮半島から渡ってきたと申しました。

 四五世紀は、製鉄に関しては半島の方が優れていたと思われます。ただ朝鮮半島は日本ほどの降水量が無いため、製鉄の為に山を丸裸にしてしまうと容易に回復しません。ところが、日本では山を丸裸にしても二十年もするともとに復元します。製鉄民は二十年を目途に山を渡り歩けば、いつまでも(農民との確執は別として)平穏に製鉄が出来ます。

 ちなみに、こういう製鉄を『たたら製鉄』と言います。

 六人ほどで大きなふいごを踏んで空気を溶解炉に送ります。この仕掛けをたたらと言います。ここから、よろめいたり勢い余って一歩を踏み出すことを「タタラを踏む」と表現するようになりました。

 

 次回は、オロチを退治したあと、この地が気に入って住み着いたスサノオの子孫のお話をしたいと思います。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妹が憎たらしいのには訳がある・49『憎たらしさの原因』

2021-02-02 06:09:58 | 小説3

たらしいのにはがある・49
『憎たらしさの原因』
         



      

 里中副隊長は黙り込んだままだ。

 スニーカーエイジ、本番の真っ最中に優奈が殺された。まるで蚊を叩き潰すようにして。
 直後の甲殻機動隊の動きは早かった。
 ハナちゃんを始め高機動車が何台もやってきて、会場の捜索をやるとともに、俺たち関係者をすぐに会場から連れ去った。顧問の蟹江先生には一枚の保護令状が示されただけだった。同じ物が、フェリペ、お父さんの職場、お母さんが仕事を請け負っている出版社にも送られたことを、移送中の高機動車の中で伝えられた。

 つまり、俺たちは当分世間から隔離されて生きていかなければならなくなった。

 俺たちを乗せた十台あまりの高機動車は、会場を出ると、すぐに別々の道を走り出し、目立たないトンネルや脇道に入るとステルスモードになって数秒後には国防軍仕様の高機動車に変身。バラバラのコースで時間差をつけて信太山の国防軍駐屯地に入っていった。
 駐屯地内の二カ所の格納庫が地下基地への入り口になっており、俺たちは高機動車ごと地下基地に入っていった。時間を置いて、格納庫からは国防軍の同型の高機動車が現れ、国防軍の日常業務に就いた。これで、たとえ衛星で追尾していても、俺たちの行方は分からないだろう。

 俺たちは、居住スペースに案内され、しばらくその共用ラウンジのようなところに留め置かれた。

 そのスペースの片隅……里中副隊長は、さっきから黙ったままだ。


 一度、ねねちゃんが自分と里中副隊長のリストバンドを繋いで情報を伝えていた。そのとき、ねねちゃんは、我々一人一人の顔も見た。ねねちゃんに同化したことがある俺には、それが全員の健康状態や精神状態をチェックしているのだと分かった。

 やがて、壁の一角にスクリーンが現れ、女性隊員が映った。

『副長、解析が終わりました』
「どっちのグノーシスだ?」
『これをご覧下さい』
 スクリーンが、もう一面現れた。大阪府内の地図に、十数カ所のドットが点滅している。
「これが、やつらの喪失ポイントだな……レッドが二つ……向こうのグノーシスだな」
『はい、断定はできませんが、双方のグノーシスの共同作戦の可能性があります』
「全員。喪失ポイントで向こうの世界に行ってるな……」
『こちらをご覧下さい。十分前のものです。三カ所向こうからこちらに来た痕跡です。すぐにステルス化したので、現在位置は不明です』
「こちら同様、オフラインで行動しているんだな……」
『新しい動きです』
 画面が切り替わった。俺たちの家が映し出され、たった今、そこに二台のタクシーが到着したところだ。

 そして、あろうことか、タクシーからは俺と幸子、それにチサちゃん。もう一台には親父とお袋が降りてきた。


「全員義体だな。保護令状はキャンセルされたな……」
『これからボスが全員のマーキングをやりますので、一時画面を切ります』
「うん」
 幸子が、パッと喜びの表情になったところで、画面が消えた。
「いったい、何がおこったんですか?」
 親父が静に聞いた。
「佐伯さん、落ち着いて聞いて下さい。向こうとこちらのグノーシスの一部が連携して、幸子クンの抹殺にかかりはじめた」
「なんのために……」
「お父さんも、お母さんも薄々気づいておられるだろうが、十年前の事故は、仕掛けられたものです」
「やっぱり……」
「どういうことだよ、十年前って、幸子の交通事故だろ?」
「あ、ああ……」
「わたしが代わりに説明します。太一、君の妹はブリゾン病という難病に冒されていた……ということになっていた」
「なっていた?」
「ああ、本物なら十歳までの致死率は95%。貧血、白血球の減少、突発的な発熱。そういう初期症状は、全てグノーシスのでっち上げだ。信じ込んだご両親にグノーシスは持ちかけた。『娘さんを助ける方法があります』と」
「じゃ、幸子は?」
「この世界がパラレルワールドだということは知ってるね……パラレルワールドを結びつけ、自由に行き来するためには、コネクターという特殊な能力を持った人間が必要なんだ。だいたい五十年に一人、そういう人間が現れる。幸子クンは、その能力を持って生まれてきた。ただ、この力は、両方の世界を結びつけておくだけで、大量の情報や、人間、機材を送る力は無い。双方の歴史が互いに完全ではないのは、このパイプの細さに原因があると、やつらは考えた」
「新潟に原爆が落ちたり、極東戦争が遅れて起こったり……」
「他にも無数な違いがある。向こうの世界ではケネディー暗殺は食い止められている。だが人が思うほど大きく歴史は変わらない。だが、両世界のグノーシスは、幸子クンの能力を高めることで、両世界の交流をマックスにしようとした。そのためには、幸子クンを一度殺し、その能力をコンピューターに移し替え増幅する必要があった。それが幸子クンの義体化だよ」
「幸子……」
 
 幸子は、困ったような顔で俺を見つめていた。
 
「ただ、その能力を最大に引き出し、安定したものにするためには、皮肉なことに、幸子クンの人間的な感情を回復しなければならない。最初は仮説にすぎなかったが、念のため、幸子クンの脳細胞の一部を残しておいた。太一、君にも大きな力がある。君は、ねねのCPにさえ人間性を与えた。幸子クンの人間性がもどらないのは……」
「ちょっと待ってください……さ、幸子は、そんなことのために……」
 言葉を続けようとしたが、これまでに、幸子が被ったあれこれを表す言葉が出てこない。
 殺されただけでは言い尽くせない、体だけではなく心までズタズタに切り裂かれ、バラバラにされ、まるでゲーム機をバージョンアップするように書き換えられているんだ。
 こんなことをするくらいなら、世界なんて滅んでしまえばいい。

 だが、俺のわなないた口は言葉を紡がない。言葉にしたら僅かに残っているかもしれない幸子の心を傷つけるだけだ。

 そこで、里中副隊長も言葉を止めた。それに、俺は深呼吸で応えて、その後を幸子が引き取った。


「わたしの人間性が回復したら、二つの世界は重なって……おそらく、両方とも消滅する」


「それも仮説だけどね、可能性はある。グノーシスもそれに気づいて、もしくは、他の理由で、幸子クンの抹殺に乗り出した」
「じゃ、甲殻機動隊のやっていることは……」
「まどろっこしいだろうが、現状の維持。そして現状を維持しながら、幸子クンの人間性を回復させる」
『副長、ボスのマーキングが終わりました』
 画像の俺たちの義体の頭上には、義体であることを示すIDが点いていた。
「この映像を見たら、現物の義体を見ても見分けがつきますよ。国防軍全員のCPチップに、これをインストール」
『はい、ただちに』

 で、こちらもただちにやらなければならない事が起きた。
 
 幸子が久々のフリーズをおこしてしまったのだ……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする