大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・031『俺たちが耳をそばだてたわけ』

2021-02-19 09:29:19 | 小説4

・031

『俺たちが耳をそばだてたわけ』ダッシュ   

 

 

 家に帰るまでが遠足だ!

 

 小学校のころから先生に言われ続けてきたことだ。

 予防的注意であったり叱責であったりしたけど、そう言って学校としてのアリバイを作っておかなければ責任が持てない。

 そう思われるくらいに、俺たちはヤンチャだった。ミクがいくらか抑制的なんだけど、ミクに言わせれば「ダッシュがやり過ぎ!」だそうで、俺としては「ミクの本性こそ野生児だ!」だった。

 若年寄の息子のヒコと飛び級のテルが同級になって「これで、大石(俺の苗字)と緒方(ミクの苗字)も落ち着くだろう」と先生たちも期待したが、ヒコの奴は、頭と血筋がいいぶん頭が回って、俺たちのやることは手が込んでくるようになった。俺たち的には、ただただ面白い学校生活を送りたかっただけなんだけどな。

 火星にもオリンピックがある。

 最初は母星である地球が懐かしくって、地球にあやかろうというだけだったんだが、火星の人口は全部足しても100万に手が届いたところで、国籍に関わらず、みんな寂しかったんだ。

 あ、それって、まだ地球の植民地だった百年前のことな。

 だから、オリンピックやると、地球の何倍も感動しちまう。

 オリンピックが済むと、結婚する奴が三倍くらいになって、十カ月後には、ちょっとした出産ラッシュになる。感動した火星人たちは『いっそ、これを機に火星連邦政府を作ろう!』ってことになる。

 しかし、文化や言葉や宗教やらの違いは、一時の感動で統合できるほど簡単なもんじゃない。

 だから、火星は今でも、ほぼ地球の出身国別の国やら自治領の構成になってる。

 オリンピックと言えば聖火だ。

 聖火は、地球と同じくギリシアのオリンポスから運んでくるんだ。

 聖火は北半球と南半球の二つに分けてリレーされて、開会式のスタジアムに着いた時に一つにまとめられて聖火台に移される。

 去年の扶桑オリンピックで、俺たちはやっちまった。

 ヒコのツテで、幕府総合庁舎のアルバイトに行ってたんだ。ま、雑用いろいろのな。

 FOC(扶桑オリンピック委員会)が入っているフロアの雑用をやってる時にダクトから会議の音声が漏れてきたんだ。

 その会話の中に、聖火リレーのプランに関するものがあった。

 ちょっと略すけど、俺たちは聖火を掠め取ることにしたんだ。

 聖火は『火』なんだから、うつせばいいわけで、むろん警備とかがすごくって、常識じゃできないことなんだけど、ヒコとテルの知恵でやっちまった。

 しかし、上には上があるもんで、すっ飛ばして言うと担任の姉崎すみれに見つかって、そろって停学をくっちまった。

 むろん反省なんかしていない。なんたって面白かったしな。

 その面白い状況が、再びファルコンZのキャビンで起こった!

 晩飯のあと女子のキャビンで喋っていたんだ。女子の部屋に行って盛り上がるってのは修学旅行の御約束だしな(^▽^)/

 さっきも言ったけど、家に帰るまでが修学旅行だ。

 すると、去年のオリンピックと同じようにダクトから聞いてはいけないヒソヒソ話が聞こえてきたんだ。

 俺たちは去年と同じくらいにワクワクして耳をそばだててしまったぞ……。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)

 ※ 事項

  • 扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

らいと古典・わたしの徒然草・10『第三十段 人の亡き跡ばかり悲しきはなし』

2021-02-19 07:10:15 | 自己紹介

わたしの徒然草・10

『第三十段 人の亡き跡ばかり悲しきはなし』  

 



 ポツダム少尉という言葉をご存じでしょうか。

 大東亜戦争の敗戦時、帝国陸海軍を解体するにあたり、現役の軍人の階級を一階級上げました。その中でも陸軍士官学校在学中の生徒第五十九期の生徒を繰り上げ卒業させ、少尉に任官させたものを言います。
 少尉というのは最下級ではありますが士官です。生徒では下士官相当で、その違いには大きな開きがあり、このポツダム昇進の象徴として「ポツダム少尉」と呼ばれます。

 昨年末に、そのポツダム少尉の一人が他界されました。米寿までにあと一ヶ月でありました。

 商社を二社勤められ、昭和二十年代の半ばで結婚され、三人のお子さんに恵まれましたが、一番下のお子さんを幼くして亡くされました。
 六十歳で、無事定年をむかえられたあとは、近所の中高生を相手にささやかな寺子屋のような塾を開かれておられました。それだけでも退職後無為徒食に過ごしているわたしには眩いことなのですが、このポツダム少尉には感嘆に値することが二つあります。

 一つは、中年になってクリスチャンになられたこと。

 男が自発的に改宗することはめったにありません。奥さんの家がクリスチャンであったことと関りがあって、おそらくは御夫婦の間の事に起因してのことなのでしょうが、奥さんの事や宗教の事を真正面から受け止めて、自分の精神世界を一変させる決断力、行動力は凄いと、自分も、その年齢になって感じます。

 もう一つは奥さんとの結婚です。

 奥さんとの結婚は、彼女がほとんど嫁ぎ先が決まっていたところを、敵中突破の敢闘精神で、嫁にされたと人づてに聞いておりました。ポツダム少尉は大正の末年のお生まれで、この年頃の男は『男一人に女はトラック一杯』と言われるほどに少なく、たいていは条件のいい見合い結婚をしております。この部分だけでも源頼朝が北条政子を略奪婚したことにやや似て、ちょっとドラマチックであります。

 ポツダム少尉は、わたしの親友の父上でありましたが、四十年に近い友人とのつき合いで、わたしが承知していることは、この字数にして二百字程度のことに過ぎません。

 ご葬儀の後、この親友からお父さんのことについて聞いてみましたが、この二百字を超える内容のことは聞けませんでした。
 わたしは、事あるごとに大正や昭和一桁の人たちの話を聞くことにしていました。
 わたしたち戦後生まれの者が知っている戦前、戦中は、学生のころ授業で聞いた「知識」、またはマスコミのバイヤスのかかった「情報」にすぎません。

 しかし、戦後も六十年を超えると、聞き出すのが容易ではありません。戦後の垢にまみれている先人の記憶から、青春時代の「自分」を聞き出すのは、砂浜に落としたダイヤを捜すようなものであります。
 半ば職業的に語り部になっておられる人の話は、たいてい「反戦」のバイヤスがかかっていて、話半分であります。
 ごく平凡に歳を重ねてこられた人は、今まで、そういうことをまともに聞かれたことがないせいか、散文的な答えしか返ってきません。
 聞き出すには時間もかかります。
 友人のお父さんにも昨年の正月にお聞きするはずでありましたが、都合が合わず見送りとなって、そのままになりました。

 四十九日が過ぎた頃、友人から二枚の書類のコピーをもらいました。

 近所の神社の総代会の書類でした。本文はワープロで打たれていました。

 ところどころにメモ書きがあって。そのメモも端正な直線的な字で書かれていました。なにか旧制中学の生徒の字のように感じました。単語を並べただけのようなものでしたが、中味はよく分かります。ワープロの文章も無駄な修飾が無く、有能な前線指揮官の戦闘詳報を見るようでした。

 いつ、どこで、だれが、何を言ったか、報告したか、そういうことが天気の記録(情緒的表現がない)のようにに書かれていました。
 
 たった二枚の書類でしたが、実直でリアリストな人柄が窺えました。

 このポツダム少尉のリアリティーは、大げさに言うと日本人であることでありました。

 
 このポツダム少尉を今少し可視的に述べると、こうなります。

 春の日向にしばらく置いておいた小石のようなお人柄。

 寡黙で小石のようにじっとしておられるが、ほっこりとした温もりがあって……これだけのことしか言えないことがもどかしいです。
 しかし、このポツダム少尉は、その春の日向の小石のような生き様で、われわれ団塊の世代のハシクレにも、おぼろに忖度(そんたく)できるものを残された。

 亡き人の跡ばかり悲しきはなし、であります。

 ムムム(記憶を絞り出している)……一つだけ思い出しました。

 ご本人の話ではなく、一期か二期上の先輩の話であります。
 初めて受け持った小隊の中に同じ町内の兵隊が二人いた。日頃は小隊長と兵隊。
「小隊長殿!」
「なんとか一等兵!」
……の間柄であります。しかし三人だけになると「じゅんちゃん」「しげやん」「としぼう」にもどってしまう。
 三人の連隊は、日本最弱と言われた八連隊であります。明治の昔からこんな里謡がある。
「またも負けたか八連隊、それでは勲章九連隊」
 八連隊は大阪、九連隊は京都で、俗に日本最弱と言われていました(事実は違うようで、現実を冷静に判断し、無理押しの戦いはせず、占領地などの軍政の良さには定評があったらしい。また反面、昭和八年にはゴーストップ事件のようなもめ事を起こした軍特有の暗鬱さも持っていた)

 ある戦線で戦況が膠着したとき、この小隊長は頭に血が上ってしまいました。

「小隊、総員突撃!」と軍刀をきらめかせ、壕から飛び出そうとしました。
「あかん、じゅんちゃん。ここで死んだらお母ちゃんが泣く!」と、しげやん、としぼうに止められ、壕に引きずり戻され、実際は「小隊……」までしか言えなかったそうであります。
 まあ、わたしが二十代のころ、鍋を囲みながらホンワカと温もった小石のように言われたことなので、どこまで本当の話かは分かりませんが、その時代と、そのお父さんの人となりを温もりとして思い出させてくれる話でありました。

 亡き人の跡ばかり悲しきはなし。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妹が憎たらしいのには訳がある・66『C国多摩事変・1』 

2021-02-19 06:06:30 | 小説3

たらしいのにはがある・66
『C国多摩事変・1』
         


      


 よくある漢方薬の注文のメールだった。一日に数万件はあるうちのほんの三百件ほど。

 木下が、おかしいと思ったのは、それらが多摩ニュータウンに集中し、商品が、今はほとんど注文のない強壮剤だったからである。
 多摩ニュータウンは人口減少と多摩局地戦の影響で、規模が2/3に縮小され、高齢者の人口は減っている。

 勘の働いた木下は、そのうちの一軒を覗いてみた。

 内務省が極秘で持っている世帯個別調査のコードを使った。これを使えば、各世帯のテレビ内蔵のカメラや、PCカメラ、防犯カメラの映像を瞬時に覗くことができ、住人の個体識別もできるというスグレモノである。映された映像は、若い夫婦が子孫繁栄のための、ごく個人的な行為の真っ最中で、まちがっても強壮剤などは使わない。

「あ……」

 それはハッカーとしての直感であった。
 これは初歩的なハッキングによる情報操作だ。木下は受信先のアドレスを徹底的に洗った。
 その結果、今は壊滅した対馬戦争時代のC国陸軍の情報部宛になっていた。
 そこで木下は、その情報部のコードを偽造し、注文主に確認のメールを送った。すると、そこには、二世代前のチンタオ型、それもステルスタイプのロボットが十数台集結しつつある映像が映った。

「こいつはスリーパーだ……こないだのは、そのうちの一機にすぎなかったんだ!」

 チンタオ7号は考え、ついさっき再起動したことを偽装電で送った。宛はチンタオ統合情報部である。そこから、再起動確認の偽装電が送られてきた。他の300台にも短波無線で情報を流し、全てのロボットが再起動の連絡をやりなおした。
 すると今度は、チンタオ統合情報部からではなく、彼らが以前稼動していたころには存在しなかった陸軍中央情報局から、暗号文で活動停止の電文が送られてきた。チンタオたちはこれをフェイクと考え、最初の再起動確認の電信を送ってきた者を敵と見なし、その発信源を突き止めた。

「しまった、こいつらCPを並列化して捜索してやがる」

 こんな事態になるとは思っていなかったので、簡易偽装と通り一遍の迂回しかやっていない。いかに二世代前とは言え並列化したCPなら数分で、ここを特定するだろう。

 木下は、CPを使ってワルサはするが、ごく身近な人間には「親切」な男である。
 となりの真由と優子を助けてやろうと思った。PCの一つを覗きモードにすると真由と優子の部屋が見える。就寝準備のため、布団をしいて、パジャマに着替えている。
「いつ見ても、真由ちゃんのオッパイってかわいい……いかん、今は、そんな状況じゃない!」
 木下は、慌てて隣の部屋に行きドアを叩いた。
「真由、優子、すぐに逃げろ、間もなくミサイルが飛んでくる!」
『なに言ってんの。あたしたち、もう寝るとこだから』
「寝ちゃダメだ、逃げなきゃ!」
『おやすみなさ~い』
「くそ!」
 木下は、二人の乙女を助けるべく、ドアを蹴破って中に入った。

 部屋の中はもぬけの殻だった。

「真由、たいへん。木下クンが、あたしたちの部屋に入った」
「え、ほんとだ」
「あいつ、チンタオのスリーパーに気づいて、あたしたちを助けようとしてるんだ!」
 その時、渋谷にいた二人の上空を一発のミサイルが飛んでいったのが分かった。
――木下クン、逃げて!――
 わたしは部屋のPCを起動して、思念で呼びかけた。それが音声化されて木下の耳には届いたが、パニックになっている彼は、とっさには理解できなかった。

 そして、数秒後にミサイルは、マンションごと、木下を吹き飛ばしてしまった……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
  • 木下くん       ねねと優奈が女子大生に擬態生活しているマンションの隣の住人
  • 川口 春奈      N女の女子大生 真由(ねねちゃんと俺の融合)の友だち 
  • 高橋 宗司      W大の二年生   


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする