大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・198『四人掛けに三人の意味』

2021-02-20 09:25:20 | 小説

魔法少女マヂカ・198

『四人掛けに三人の意味』語り手:マヂカ    

 

 

 四人掛けに三人で収まってお弁当を膝の上に載せる。霧子は、もうそれだけでウキウキしている。

 

「わたし、列車の中でお弁当いただくなんて初めてよ(o^―^o)」

「食べるのは、ちょっと待って」

 霧子に言うとブリンダが頷く。

「え、なんで?」

「あれが起こる20分前だからよ」

「あ……」

 察したようで、霧子は解きかけた巾着の口を閉めた。

「そんなに緊張すんな、まわりが変に思うぞ」

「だって……」

 無理もない、20分後には関東大震災の最初の揺れがやってくるのだ。

「ブリンダもおしとやかにね、この姿でため口は目立つわよ」

「あ、そうか……そうだわよね、つい浅草軽演劇の真似なんかしてしまって、ごめんなさいませ」

 ブリンダのお嬢様言葉も気持ち悪いが、しかたない。

 それにしても、震災発生ニ十分前の列車に乗ってなにをすると言うんだ。中央線で深刻な列車事故が起こったと言う記憶は無いんだが……ま、当時ロシアに居たわたしは、震災の記録と言っても帰朝してからブリーフィングされたことだけだが。

「あのう……」

 思いを巡らせていると斜め上から男の声が降ってきた。

「あ、はい?」

 ブリンダがしおらしくお返事をする。

 男は、麻スーツの上着を腕にかけ、お弁当の折とカンカン帽を持ち、やや度のキツイ眼鏡の目をへの字にして、金髪のセーラー服に照れながら用件を言った。

「えと、ここ僕のなんですが、一緒に掛けさせていただいてよろしいでしょうか?」

 上着を持ったままの手で切符を出し、遠慮がちに示してくれる。

「ええ、もちろんです。指定席なんですから、あ、わたくし幅をとってしまっていますね(*´ω`*)。高坂さん、入れ替わってくださいますかしら?」

 なるほど、霧子なら、そう幅もとらない。

「ええ、いいことよ」

 ソヨソヨと席を入れ替わる日米のセーラー服。いかにもお嬢様然として可愛らしく、普段を知っているわたしは笑いをこらえるのに苦労する。

「エクスキューズミー……ひょっとして、航空関係の技術者でいらっしゃいますか?」

「え、あ、分かりますか?」

「はい、その英字新聞の記事……」

「あ、ああ」

 言われて初めて気が付いた。男が開いていたのは『航空機の翼面抵抗の軽減』というアメリカの技術記事なのだ。

「あ、すごい、これが目に留まったんですか?」

「ごめんなさい、母国語なので、つい目に留まってしまって、あ、わたくしブリンダ・ウッズと申します。こちら、お友だちの高坂さんと渡辺さんです」

 霧子と一緒に会釈すると、男は人のよさそうな笑顔を返してくれる。

「僕は、三菱内燃機製造の堀越って言います。御同席させていただいて光栄です」

 三菱の堀越……堀越二郎?

「内燃機じゃ分かりませんよね、飛行機の研究開発をやって……そうだ、これをどうぞ」

 両手に荷物を持ったまま、堀越は器用に名刺を出した。

「まあ、時代の最先端の御研究をされているんですね」

「高坂さんは、ひょっとして、高坂侯爵の……」

「は、はい、高坂のみそっかすです(#´0`#)」

「高坂中佐には技研でお世話になっています」

「あ、兄と?」

「はい、海軍では最も航空機開発にご理解のある方です」

「あ、そうなんですか。家では寝てばかリです」

「技研では不眠不休で働いておられますよ」

「あ、はい、恐縮でございませす」

 フフ、噛んだ。

 堀越二郎……たしか、後にゼロ戦を開発して、戦後も日本の飛行機開発にも尽くした世界的なエンジニアだ。

 その堀越と出会わせて、何をさせようとしているんだ?

 一つだけ分かった。

 ノンコを連れてこなかったのは足手まといというだけではない。

 ノンコが居れば、四人掛けに四人になって、堀越と同席することは無かったはずだ。

 考えていると、大震災発生の一分前になっていた……。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

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らいと古典・わたしの徒然草・11『第三十一段 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし』

2021-02-20 06:43:49 | 自己紹介

わたしの徒然草・11

『第三十一段 今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし』    

 

 

 原文は簡単です。

「大雪の降った日に、ある(やんごとなき人とも思われる)人に手紙を出したところ、『こんなにも珍しく、雪が降ったのに、そのことに一言も触れていないのはつまらないですねえ』と、返事が返ってきた。どうってことはないけど、亡くなった人からのものかと思うと忘れられない」
 二十九段からのブルーは、この人の死と関わりがあるのかも知れない。あとの三十二段にも読みようによっては「引きずってるなあ」と、思われるところがあります。
 どうやら、「ある人」とは兼好のオッチャンが想いを寄せていたように受け止める人が多いようです。

 しかし、これは『わたしの徒然草』なので、勝手に妄想を膨らませます。というか自分にビビっと感じたところで書かせていただきます。

 この歳になると、「今は亡き人」がゴマンといる。

 わたしの恩師(といっても、この方は女子校の先生で、演劇部の連盟の活動の上での恩師)に、F先生がおられます。読者は誰もご存じではないと思いますが、金井克子さん、秋野暢子さんの恩師と言えば「ああ」と、思われる方も多いのではとおもいます。
 大学の五回生(留年したので)のとき、呼び出されたときのことです。
「来年から、うちのS高校で、社会科の教師やれ」
 それだけ言われて、教頭や、教科主任の先生方に面通しさせられました。
「あ、これで、就職決まりや!」
 ところが、翌春に「採用は見合わせていただきます。なお、後日採用させていただくこともありますので、履歴書はお預かりいたします」と、葉書がきました。
「先生、これはないでしょ……」という意味のことを言った。
「大橋、もっと足運ばなあかんで」と、答えられた。
 わたしの履歴書はいまだにS高校にあるのかもしれない。
 当時のわたしは、世間知らずで、こういう就職の場合、足を運んで「運動」をしなければならないということに思い至りませんでした。

 おことわりしておきますが、今から四十五年前の話で、世間とはそういうものでありました。
S高校にも、F先生にもなんのオチドも、ヨコシマなところもありません。

 当時の高校演劇はアナーキーで、生徒が連盟の運営権を握っていました。だから連盟とは名乗れず研究会と称しておりました。藤木先生は、それを時間をかけて教師が責任をもってやれる連盟に変えていかれました。   これはと思う高校生を見つけては時間をかけて育て、連盟を担える教師にするという気の長さでありました。翌年、後輩がめでたくS高校に就職し、その職責を果たしております。

 F先生は、沖縄戦の生き残りでもあります。多くは語られませんでしたが、米軍により沖縄の南部に追いつめられた時、仲間の兵といっしょに斥候に出されました。
 米兵に見つかり、追撃され、仲間の兵は撃ち殺された……そのあとの話は、捕虜生活の話になります。
 その斥候に出され、捕虜になるまでには言い難いアレコレがあったのでしょう。ご退職後、真っ先にされたことは沖縄への訪問でありました。このことが先生の沖縄での屈託を物語っていると思います。

 先生は、学生のころ演劇にドップリ浸かり、特高にも追い回されたことがあるそうです。
 英語が堪能でいらっしゃったので、収容所でも通訳として重宝がられ、収容所で劇団を作り、タクマシク捕虜生活を送られました。そして一年余、無事に釈放され、復員されました。
 気の毒なのは奥さんで、終戦から毎日大阪駅へ行っては「○○部隊のFはおりませんでしょうか!?」と、捜されたそうであります。
 昭和二十一年の秋、大阪駅頭で、血色のよい復員兵と。やせ衰えた銃後の妻は再会を果たされました。そういう話を、面白おかしく語ってくださいました。
 わたしたちは、ほんのガキンチョであった。
「アハハ、またF先生の昔話や」としか聞いておりませんでした。
 先生も「アハハ」で、それ以上の話をなさろうとはされませんでした。
 もう少し真剣に聞いておくべきだったと、この歳になって思います。自分自身が藤木先生の歳に近づいてきました。

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妹が憎たらしいのには訳がある・67『C国多摩事変・2』 

2021-02-20 06:19:17 | 小説3

たらしいのにはがある・67
『C国多摩事変・2』
         


     


 300機のチンタオは二世代前のロボットであるために今のC国のコードも通用しない。

 私たちから連絡を受けたC国大使館は、すぐにチンタオたちに「行動中止」のコマンドを二世代前の様式で送ったが、彼らは通常のコマンドコードを受け付けず、C国大使館そのものを敵と見なし、攻撃を加えてきた。C国大使館は、自動でバリアーを張って無事だったが、周りの建物に被害が及んだ。Rヒルズの南側の窓ガラスは全部割れてしまった。
 国防省の対応も早く、阿佐ヶ谷駐屯地は、ミサイル発射の熱源に向けて反撃の地対地ミサイルを撃ち込んだが、ステルス化したチンタオたちはすでに移動したあとだった。

 ユースケは、首都防衛の精鋭ロボット部隊〔ロボコン〕を送った。彼らは国内最精鋭部隊で100機のロボコンで構成され、司令機の一機を上空で待機させ、3機編成の33の小隊に、それぞれ指令を送った。

 ロボコン部隊は、チンタオの初期ステルスを易々と見抜き、あっと言う間に半数を多摩地区で撃破した。それから残ったチンタオ達は、カメレオンのようにステルスのモードを変換し、都心部へと近づいてきた。
 都心は、100機以上のチンタオの攻撃を受け、あちこちで大惨事が起こった。ミサイル発射直後の熱源を衛星で探知し、その後20分でさらに50機のチンタオを撃破、擱座させた。
 チンタオは旧式ではあるが、偽装については能力が高く、都心に入ってきたものは、熱源を市販の自動車と変わらないものにし、トンネル内で、荒川で見かけたバンに擬態化し、都心の中枢に向かっていった。
 ロボコン部隊は、強力なセンサーで擬態するチンタオの速度に次第に追いつき、一機、また一機と撃破していく。

 わたしと優子は、ロボコンを除けば、数少ないチンタオのステルスが見破れる個体なので、彼らが目標としている新宿の国防省に向かった。新宿では、まだ市民に情報が行き渡っておらず。あちこちで交通事故や混乱が起こっている。
「あのバン、チンタオよ!」
「任せて!」
 わたしは腕のグレネードを発射した。徹甲弾モードにしたグレネードは、チンタオの内部に入って爆発するので、そんなに破片は飛び散らない。しかし程度問題で、数千個の大小の部品が凶器になって、あたりに飛び散る。わたしたちは、一度に一万個の目標を追尾する能力がある。飛び散った破片がどのような軌道を描くのか瞬時に計算し、危険の高い破片から対応する。ごく小さなものは目に仕込まれたレーザーで蒸発させ。それ以上のもので脅威にならないものは放置する。

――三時の方向の破片オッサンに!――

 真由の指示でジャンプ。オタオタしているオッサンにしがみつく。若い女にしがみつかれたと思ったオッサンは一瞬ニタリ。直後背中に衝撃、チタン合金の肋骨の下の柔らかい生体組織に突き刺さる。
「おじさん、早く逃げてね。都庁の方角が安全」
 そうアドバイスしながら、背中の破片を抜く。血が噴き出し、オッサンの顔にかかった。
「ごめん……」
 腰を抜かしたオッサンを尻目に、国防省へ急ぐ。真由も女の子を庇って首に破片が貫いている。両手両足のグレネードを使ったので、関節の生体組織が破れ、わたしたちは血みどろになった。
 国防省の構内に入ると、弾薬庫を目指した。もう手持ちのグレネードが切れてしまっている。
「甲殻機動隊。少し弾薬を分けて」
 相手はロボット兵だったので、0・1秒でIDを認識して弾薬庫に入れてくれた。
 両手足にグレネードを装填し終えた時に衝撃がやってきた。
「バリアーが破られた!」
 外に出てみると、国防省の東側のバリアーが破られていた。周囲の破片から三機のチンタオが同時に突っこんできたことが分かった。もう一機は、わずかに間に合わなかったのだろう、植え込みのところでデングリカエって黒煙を上げている。バリアーはすぐに回復を現す薄いグリーンになっている。
「お前達も大変だったな」
 ユースケが声をかけてきた。
「CICにいなくていいの?」
「ああ、やつらの目標はCICのコマンダーのオレだ。いっそ外に出た方が始末が早い」
「最後の1機が突っこんでくる!」
「司令機よ!」
 わたしと優子とユースケは、瞬時に同じコマンドコードになり、二百キロの速度で構内を走り回った。
 もう、グレネードを撃っている暇もない。
 直前で司令機は三つに分離し、三人それぞれに向かう姿勢を示したが、これはブラフであった。ユースケのコマンドコードを正確に読み取った司令機は、ユースケに集中した。
 優子は、その前に身を投げ出した。

 ドッゴーーーーーン!!

 強烈な炸裂音がして、司令機も優子もユースケも吹き飛んでしまった。

 優子は、正面で、まともに受け止めたので、胴体のところで千切れてしまった。生体組織がぶちまけられ凄惨な姿ではあるが、頭部は無事だったので元気ではある。
「優子、世話かけちまったな」
 片腕を失ったユースケが優子の顔を覗き込む。
「ハナちゃんが来るわ」
 そう言うと、二人とも安心したようだ。
「優子、おまえがサッチャンだってことは分かっているけど、そっちの勝負は当分お預けな。フェアにいきたいからな」

『いやあ、神楽坂も、マンションは爆破されるわ、新宿の方から人が逃げてくるわで大変でした』
「遅れた言い訳?」
「いいじゃん、ハナちゃんも大変だったみたいだから」
 同期した優子とハナちゃんは、情報を共有したようだ。
「木下クンは……」
『……なんとか、人間の形にして、あとのお世話はお願いしてきました』
「ありがとう……わたしたちもメンテナンス大変なんだろうな」
「もし、わたしのCPの中に優奈が生きてるって分かったら……ユースケ、どうしただろうね」
「生きてるって言っても、前頭葉の破片でしょ」
「今の戦闘で活性化が進んでニューロンが伸び始めてる……」
「それって……」
「フジツが量子コンピューターの小型化に成功したって情報あるから」
「復元……」
「やってみる価値はあるかも」
「よし、急いで帰ろう!」
『了解!』
「「うわ!」」

 ハナちゃんは急発進して、一路大阪を目指した……。

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
  • 木下くん       ねねと優奈が女子大生に擬態生活しているマンションの隣の住人
  • 川口 春奈      N女の女子大生 真由(ねねちゃんと俺の融合)の友だち 
  • 高橋 宗司      W大の二年生   


 

 

 

 

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